「僕、式見蛍がプロデュースするゲーム企画っ!」
日曜日の昼間という時間帯。アパートの一室で暇を持て余していた僕、式見蛍が声を上げると、その言葉にユウがおののく。
「えっ、いきなり何っ!?」
「いきなり発狂する、それが式見蛍クオリティ」
「訳分かんないよっ! ……ケイ、説明してくれると助かるんだけど」
「まあ、ぶっちゃければ特に深い理由はないけれど、見たい番組もないし暇だから、もし自分がゲームを作れる人間だとしたらどんなゲームを作るんだろう。そう想像して会話のネタにしようと思って」
「う~ん、まあ、暇だから聞いてみても良いけれど、ケイだったらどんなゲームを作るの?」
ユウが納得してくれたので、内心考えていたゲームを発表する。
「第一弾、主人公は高校生の男子、ヒロインフルボイスのアドベンチャーゲーム」
「今時フルボイスぐらい、普通じゃん」
「ただし、ヒロイン全員が言葉を喋れないキャラだけど」
「それ、フルボイスじゃないからっ! 絶対に違うからっ! フルボイスを謳った詐欺だからっ!」
ナイス突っ込み。
「第二弾……ネタ尽きた」
「一つしかないのかーーーー」
ユウの絶叫が響き渡る。
僕は頷いて、ちょっとした小話をすることにした。
「ゲーム企画は潰えたけど、同じゲームの話でちょっとした余談があるんだ。マリオカー○でスターを使うと、金ぴかに光るじゃないか」
「あっ、うん。それがどうかしたの?」
「金色の戦士、スーパーサイ○人って傘が言い出して、『誰が上手いことを言えと』そう突っ込みを入れた事を思い出した」
「ケイがネタキャラ化してきてるよっ! 不味い方向に向かって突っ走ってるよ」
「そんなの今に始まった事じゃないさ」
自分でも、自分のことが分からなくなってきているという困った事態に陥っている。
「ユウ、やらないか?」
「や、やらないかって……」
ユウが赤面して妙に恥ずかしくなったので、主語を口にする。
「ゲームでも」
「しゅ、主語が抜けてるなんて紛らわしいよっ!」
「ニコニコ、ふたば、2ちゃんねる……様々なネットの世界で洗脳されて、僕の心は汚れてしまったのさ」
「うううっ……」
さて――
「ユウ、いきなりで悪いんだけどオセロをしたい気分になってきた」
「本当に唐突だねぇ」
「でも、そういうのってないか。理由は分からないんだけど、無性にこれが食いたいっ! これで遊びたいっ! って感情が溢れ出てくる事が」
「ケイが言うことが分からないこともないけれど……どちらかといえば、分かるような気もするけれど」
押し入れの奥からオセロを取り出し、ユウと勝負開始――結果、圧勝。
「ユウ、サンポールとムトーハップを使った硫化水素自殺についてはどう思う?」
「えっ、なんでいきなり自殺の話にっ!?」
「そう言われても昔は自殺志願者だったんだし、こういう話題はお手の物なんだ」
にっこりと微笑んで、ユウに告げる。
「それ、笑いながら言うような話題じゃないからっ!」
「まー、今の冗談だけど」
「なんか黒かったよ。ケイのお腹、真っ黒だったよ」
腹黒いと言いたいのだろう。
「こほんっ……ともかく、たまには社会問題について話し合ってみるのもいいんじゃないか」
「別に良いけど……ケイは、硫化水素を使った自殺について、どう思うの?」
「硫化水素自殺が流行ってて、世論……特にマスコミはネットでそんなことを公開している方が悪いとか、自殺サイトがあるのが悪いって意見があるけどさ、僕は違うと思うんだよ」
「そんな方法とかサイトがなければ、死なない人だって居るように思うけど」
ユウの意見も一理ある。
それは否定しない。
「確かに、硫化水素自殺の方法を知らなかったら一人や二人は減ったかもしれない。でも、結局のところ死にたいと思う人間は誰がなんと言おうと死んじゃうわけでさ……自殺する方法は硫化水素自殺だけじゃないし、そもそも自殺の件数そのものだって増えてるって言うじゃないか」
「嫌な、世の中だけどね」
ユウは僕の意見を肯定した。
少子高齢化に年金。高齢化に伴う介護問題。派遣切りにワーキングプアなどの、格差問題。
日本だけでも数多の問題を抱えている。
世界は悪い方向に進んでいて、明るい話題なんてほとんどない。
特に、増税なんて生活を圧迫する身近な問題だ。まあ、僕自身はまだ、支払ってないけれど。
「だから、自殺の方法云々が悪いじゃなくて、『自殺したいと思わない世の中』を作っていく。そういう根本的な問題を国を挙げて解決すべきじゃないかって」
神様の間違いで幽霊を物質化させる能力を持って生まれた僕は、生まれながらにして全人類から敵視されていた。思い心付くときには……いや、僕は生まれときから死にたいと願っていたのだろう。でも、そんなふうに思うのは希で、生まれたときから死にたがる人はいないと思う。
死にたいと思えるだけの理由が今の世界にある。自ら命を絶とうと思える。そういう歪な世界なのだ。
「情報の規制なんて、絶対に出来ないし……ユウは、どう思う?」
「う~ん……ケイの意見は正しいと思うけれど、誰もが自殺したいと思わない世界を作るなんて不可能だよね。ゲームをやったり、オセロをやっても楽しいと思えない人だって居るように、人には色々な考えがあるから。誰かにとって幸福なことでも、その人にとって死んじゃうと思えるぐらい不幸なことはあると思うんだ」
「みんながみんな幸せになれる方法なんて、ないんだろなぁ」
「うん……でも、自殺はその人に関わっている人を中心に、家族を、恋人を、友達を苦しませる行為だから止めた方が良いと思う。だから、なるべく楽しいことを考えたら良いんじゃないかな。笑う門には福来たる、って言うぐらいだし」
「そうだな……おっと、丁度十七時半になったな。笑点でも見ようか」
「だね」
僕たちに出来ることなんて何もない。誰かの自殺なんて止める権利はない。
全ては、本人の意志にかかっている。
生きていれば誰にだって辛いことはあるだろうけれど、少しでも笑えるのなら、頑張ってみて欲しい。
最後には死んじゃうんだし、生きていれさえいれば、楽しいことだってある筈なのだから。
「ちなみに、完全自殺マニュアルという一昔前の本だと、感電死がお勧めされてたけどな」
「ケイ、まだその話題、終わってなかったの! なんか良い感じで終わりそうだったのに」
「良い感じで終わらない。それがマテゴクオリティ」
「訳分かんないよっ! 意味不明だよーーー」
ユウの叫びが、今日も式見家にこだまする。
死にたがりだった僕だけど、こんな楽しい日々が続ける事が出来るなら、これからも生き続けることが出来ると思う。