見える世界が歪んでる   作:藤藍 三色

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 生まれたときから自分の運命を知っている者などいない。

 すでに知っていたとのたまう者は、ただの知ったかぶりか諦めの早い愚か者である。
















 祖母は薬の臭いがする女性で、母も薬の臭いがする女性だった。父は分厚い眼鏡をかけた穏やかな男で、見た目に反してとても強い人だった。

 子供は女で、母親ゆずりの美しい顔立ちと父親ゆずりの髪色と髪質を持って生まれた。瞳の色は左右で異なり、右はヴァイオレット、左は黒色であった。

 ヴァイオレットは母と同じ色で、叔父も同じ色をしていた。なんでも母の生家の血が現れている証拠であるらしかった。

 母は父を愛していたし、父は母も娘も愛していた。祖母は一人きりの孫を可愛がった。

 娘が五歳の時だ。小学校に入学する一年前に父が死んだ。刑事であった彼は仕事中に追跡していた容疑者に抵抗され、ナイフで刺殺されたそうだ。

 たくさんの人が父の葬儀に参列した。人目もはばからず棺桶に入った父の遺体に縋り付いて泣く母を、祖母に抱きしめられながら娘は見ていた。いくら娘が泣いても母はちらりとも見なかった。

 その半年後に祖母が亡くなった。病死だった。葬儀は身内だけで済まされ、家には母と娘だけになった。

 娘がもう少しで十二歳となる夏に、物語は始まる。







賢者の石
第一章


 

 

 

 水無月(みなづき)(ゆづる)はさらさらとした指通りの良い黒髪に、分厚いレンズの黒縁眼鏡をかけた少女だ。しかし恰好は中性的で、男と間違われることも多い。

 そんな彼女は口調も男っぽくぶっきらぼうで多くは語らない。学校での彼女はいつも本を読んでいて、先生がびっくりするほど勉強ができて、運動もできる成績はつねに学年で一番だった。しかしその外見と態度から遠巻きにされるような存在で、いじめられても相手をコテンパンにしてしまうような気の強い少女だった。

 

 弦の家族は母一人だけだ。父は死んでしまったし、少し離れていたところに住んでいた祖母も死んでしまった。

 二人だけの家族だからと言って、弦とその母であるレティシャは決して仲良い親子とは言い難かった。二人の間で会話らしいことは滅多になく、弦が一方的に話しかけることなど日常茶飯事だった。

 

 レティシャはイギリス人で、公言はできないが魔女だ。いつも何かの研究に没頭している彼女は、実の娘である弦に欠片の興味も示さなかった。だから弦は自分で料理をし、洗濯をし、掃除をし、買い物をした。お金だけは用意してくれていたために、弦が生活に困ると言うことはなかった。

 

 弦の生活は家にいれば家事か勉強か読書をし、学校に行けば読書か勉強をするというものだった。母に愛情を与えてもらえなかった彼女ができることと言えばそれぐらいで、十一歳で彼女は一人で成し遂げるだけの耐性も落ち着きも身に着けていた。

 

 夫を亡くしてから家から一歩も出なくなった母のことを周囲は遠巻きにしたが、娘である弦が頑張っていればどうしても大人の力が必要なときは力を貸してくれた。たとえば地域の交流や学校のことだ。母に近づくことがなければそれでよかった。魔女だと知られるわけにはいかなかったのだから。

 

 小学六年生の夏休み間近に、弦のもとに一羽の梟が訪れた。それが西洋の魔法界の伝達手段だと知っていた弦はその足にくくりつけられた封筒をとり、中身を読む間に長旅をしてぼろぼろの梟を休ませた。水と梟フーズと呼ばれる専用の餌を用意したのだ。

 手紙の差出人はホグワーツ魔法魔術学校となっていて、中には二枚の手紙が入っていた。一枚は入学許可の通達。もう一枚は学用品のリストだった。

 

 弦は「とうとうきたか」と思うのと同時に、母に伝えなければと少し憂鬱になった。レティシャが嫌いなわけではない。自分の母だ。だがあの人には無視されることが多く、入学準備だって手伝ってもらえるとは到底思えなかった。

 母がいつも閉じこもっている部屋の扉を三回ノックし、弦ははっきりと言葉をかけた。

 

「お母さん。開けるよ」

 

 開ける許可はとるだけ無駄だ。これに答えてもらったことは一度としてないのだから。

 中の空気は薬の臭いで満たされ、たくさんの本や紙、薬の材料に散らかった部屋の真ん中で母は大鍋を正面にぶつぶつと何か呟いていた。

 西洋の魔法界には魔法薬学という学問があり、それにおいてレティシャは天才であると叔父は明言していた。父が死んでからレティシャはこの部屋に閉じこもり、怪しげな魔法や魔法薬の研究に従事している。

 

「ホグワーツから手紙が届いた。入学準備のことで相談をしたいんだけど」

 

 母が振り返ることはなかったが、珍しく言葉が帰ってきた。ホグワーツといえば母の出身校でもあるので、気になったのだろうか。

 

「勝手にしなさい」

「……一人でロンドンまで行けないから相談してる」

「コンラッドにでも頼めばいいでしょう」

 

 コンラッドとは叔父の名前だ。母の年子の弟であり、現在はフランスに住んでいる。しかし育ちはイギリスで、母と同じホグワーツを卒業していた。

 やはりこうなったかとため息を吐いて「わかった」と部屋を出る。はなから期待していなかった分、それほど堪えてはいなかったがやはりどこか虚しかった。

 一晩梟を休ませて、弦は叔父に手紙を送った。

 

 

 

 

 

 七月三十一日に弦はホグワーツへ行くことになった。母と叔父の間で何度か口論があったが、結局自分をロンドンに連れて行ってくれるのは叔父のようだ。ホグワーツへの返事も叔父が代筆してくれた。

 

「すまない、ユヅル」

「コンラッド叔父さんが気にすることじゃないです。私は連れて行ってもらえるだけで十分だから」

 叔父は申し訳ないという顔をしていたが、弦が「早く行こう」と促すと笑顔になって手をとった。

 

「じゃあ、行こう。準備はいいかい?」

「うん」

「よし。一、二、三!」

 バチンという音のあとに周囲の景色が歪み、パイプのような細い場所に押し込まれたような感覚があったあと、再び同じ音がしたと思ったら知らない場所にいた。日本の家からあっという間にイギリスのロンドンへと来てしまった弦は、しばし目を瞬いた後に叔父を見上げる。

 

「姿現し?」

「そうだよ。弦は平気そうで良かった。こればっかりは慣れるしかないから」

「ふうん」

「さあ、学用品を揃えに行こう。まずは“漏れ鍋”だ」

 

 手はつないだまま、コンラッドはどうにもさびれたようにしか見えない店へと入って行った。非魔法族――マグルよけでもしてあるのか、往来を歩く人々はこの店をちらりとも見ないし、その店に入ろうとしているコンラッドや弦でさえも気にしていない。

 店内はパブのようで、お客は明らかにマグルではない恰好をしていた。魔法族特有の非現代的なローブを着ていて、中には尖がった帽子をかぶる者までいる。

 

 コンラッドはどこからか深い紺色のローブを取り出すとそれを着た。弦はどうすると聞かれたのでこのままでいいと返す。

 店主のトムに挨拶をした二人は裏口から外へと出た。煉瓦の壁に閉ざされたそこは、コンラッドが壁を杖で三度手順通りに叩くとまるで意思があるように動きだし、一つのアーチを造りだした。その先に広がるのは魔法界だ。

 

「ようこそ、ダイアゴン横丁へ」

 少し芝居がかった叔父の様子を見て、弦はダイアゴン横丁に視線を巡らせた。魔法に溢れたそこに初めてきた弦は物珍しさからあちこちを見て、それから叔父に言う。

「まずはどこから?」

「グリンゴッツ銀行へ行こう。レティシャから君の金庫の鍵は預かっているから」

「はい」

 グリンゴッツ銀行とはダイアゴン横丁にある銀行で、魔法界唯一の銀行と言っても良い。そこは多くの小鬼(ゴブリン)がいて、神経質そうな顔で仕事をしていた。

 

 金庫に行くまでのトロッコはとても早くスリルのある絶叫マシーンのようだったが、弦は平気だった。コンラッドは「お気に入りなんだ」と始終楽しそうにしていて、案内役のゴブリンから訝しげな視線をもらっていた。

 金庫はレティシャが所有しているうちの一つをそのままもらったらしく、中には金貨が溢れかえっていた。それを必要の分だけ詰めて、二人は銀行をあとにした。

 

「何から買いますか?」

「うーん……それじゃあ、まずは鞄を見てみよう。トランクと旅行鞄は持っていないだろう? 授業道具をいれて持ち運ぶための鞄もいるだろうし。それは入学祝にプレゼントさせてくれ」

「いいんですか?」

「もちろん。弦はよく本を読むから、見た目よりたくさん入って、いくらいれても重たくならないものがいいね」

 

 鞄屋へ行く途中も、コンラッドは話を絶やさなかった。横丁に並ぶ店の説明をしてくれ、さらに彼の息子であるシアンが共に行きたがっていたと話していた。

「けど僕も日本からの付添姿現しは二回が限界だからね。すごく疲れるし。シアンには遠慮してもらったよ。お土産を買うって約束してしまったから、ユヅルが選んでくれるかい?」

「わかりました」

 

 それから鞄屋へと入った二人は、整理整頓に困らないトランク、そして見た目よりもずっと物を入れられて重くならない肩掛け鞄を買った。もう一つ旅行鞄を買う予定だったが、その見た目の四倍も五倍も物が入るトランクを見つけてそれだけ買った。肩掛け鞄はやはりコンラッドが買ってくれ、さっそく弦はそれを肩にかけた。

 空のトランクを先に家に送ると杖を振ったコンラッドは、空いた片手で再び弦の手を引いた。

 

 しかし少ししてコンラッドのもとへ一羽の梟が飛んできた。それが持って来た手紙を読んで、コランッドは顔をしかめる。

「くそ、魔法省からの呼び出しか。誰かここに来てるって告げ口したな…」

 恨めしそうなその声に、弦は彼を見上げた。するとコンラッドはすぐに申し訳なさそうな顔をする。

 

「すまない、ユヅル。魔法省に呼ばれたから行かなきゃいけない。漏れ鍋で待っていてくれるかい?」

「いえ、あとの買い物なら一人で出来ます。さっきお店の場所を教えてもらいましたし」

「そうかい? でもなあ…」

「この横丁の外には行きません。買い物が終わったら漏れ鍋で待っています」

「……わかった。変な大人もいるから、気を付けるんだよ」

「はい」

 コンラッドは名残惜しげに弦の手を離すと、姿眩ましを使って行ってしまった。

 

 ダイアゴン横丁での初めての一人だけの買い物が始まった。

 

 

 

 

 まずはマダム・マルキンの洋装店で制服を買うことに決め、弦はそこへ向かった。中に入ると丸眼鏡をかけたくしゃくしゃの髪の男の子が台の上に立って採寸されていた。

 新たなお客に店員が笑う。

 

「お坊ちゃんもホグワーツ?」

「あー、えっと、はい。あと女です、一応」

「あら、ごめんなさい! それじゃあ、お嬢ちゃん。この台に立って」

 少年の乗っている台の隣の台に乗る。同じマグルの恰好をしている弦に少年が視線を向けてきたので、見ると彼はちょっとだけ安心したような顔をして話しかけてきた。

 

「君もホグワーツなんだね」

「うん」

「名前は? 僕はハリー・ポッター」

「ユヅル・ミナヅキ」

 簡潔にそれだけ答えた弦に、ハリーは面食らった顔をした。

 

「何?」

「いやっ、その……君は僕の名前を聞いても驚かないんだと思って」

「名前……ああ、そういうこと。対して親しくもない相手にとやかく言う趣味はない」

「そ、そう……ユヅルって呼んでいい?」

「好きにしたら」

 

 弦の言葉にハリーは嬉しそうに笑うと「僕もハリーって呼んで」と言った。それからすぐにハリーの採寸は終わり、彼は「またね」と手を振って店を出て行く。

 ハリー・ポッターといえば近代魔法史にその名前が載る魔法界の有名人だ。生まれて一年と少しで誰もが恐れた「名前を言ってはいけないあの人」を打ち倒した「生き残った男の子」。名前だけは知っていた。

 

 しばらくして弦も採寸が終わり、制服をもらってお金を払った。それから順番に学用品を揃えていき、残ったのは杖と教科書だ。まずは杖から行こうとオリバンダーの店を目指す。

 杖を売っているところはいくつかあるようだが、コンラッドが薦めてきたのはオリバンダーの店だった。彼もそこで買ったらしい。

 

 店は古ぼけていて地震でも起こったら簡単に倒壊してしまいそうだった。中に入るとカウンターがあり、その奥に杖が入っているのだろう箱が入れられた背の高い棚が並んでいる。

「すみません」

 店主が見当たらないので奥まで届くようにそう声をかければ少しして一人の置いた男性が出てきた。彼がオリバンダーだろう。

 

「これはこれは……見かけない方だ。ホグワーツの新入生かな?」

「はい。杖を買いに来ました」

「そうでしょうとも。お名前は?」

「ユヅル・ミナヅキです」

「ミナヅキさん……不躾で申し訳ない。その眼鏡を取って顔をみせてくれませんか?」

「……」

 

 それに何の意味があのだと問いたかったが、弦は言葉を飲み込んで眼鏡を取った。

 小さな顔の半分を覆っていた分厚いレンズの黒縁眼鏡をとると、オリバンダー老人は息を呑んだ。それほどまでに弦の顔は整い、そして左右の色の違う両目の輝きは強かった。

 

 弦の母であるレティシャは誰もが息を呑むほど顔立ちが整っている。その母にそっくりな顔立ちをしている弦もまた、美形だった。それに加えて彼女は右がヴァイオレット、左が黒色のオッドアイであり珍しく、父親譲りのさらさらとした黒髪と相まって神秘的な美しさを発する。

 

 弦が自身の顔を覆い隠してしまう眼鏡をかけているのは、単純にそれが父の形見だからだ。その証拠といってはなんだが、眼鏡のレンズはただのガラスでありかける必要など本来ならばない。父を心底愛していた母のための行動なのだが、誰にもそれを一から説明したことはなかった。

 

 ただはっきりと言っておくなら、弦は自分の顔を隠したいわけではない。母や叔父との血の繋がりを感じさせる自身の顔を弦は嫌ってはいなかった。

 

「なんと、その顔、その右目の色……アクロイド家の方で間違いない」

 アクロイドとは母の実家の名だ。今は叔父が当主として継いでいるらしい。

「もしやレティシャ・アクロイドさんの娘さんなのですか?」

「母をご存じなのですか?」

「ええ、それはもう! 彼女の魔法薬の才能は素晴らしいものです! 杖選びだって大変だった。いやはや、あなたも大変そうだ」

 

 まるで腕がなるとばかりにオリバンダー老人はうきうきとしているように見えた。それから彼は弦に利き腕(彼は杖腕と言った)を出させると、勝手に採寸するメジャーで手のひらの大きさ、手首の太さ、腕の長さを測らせた。メジャーがそれ以上に弦の身体を測ろうとしたときは思わず浮かんでいるそれを叩き落としてしまったが、オリバンダー老人は気にした様子もなかった。

 

 彼は様々な杖を差し出し、ああでもない、こうでもないと唸る。そうしているうちに店内のあらゆるものが壊れた。

 少ししてから彼が持って来たのはヴァイオレットに色づけられた箱だった。その中から取り出されたのは紫紺色をした細い杖で先端に向けてとがっている。まるで小さな細剣(レイピア)のようだった。

 

「紫檀にグリフォンのかぎ爪、三十センチ。堅く、強力な杖じゃ」

 

 それを手渡され、弦はしっかりとそれを握った。するとそれは熱を持ったように熱くなり、先端から光を溢れさせた。柔らかく温かいその光は洪水のように店の中を飲み込み、おさまったときには壊れたものは元通りになっていた。

 

「素晴らしい! まっことに素晴らしい! いやはや、その杖はあなたをお選びになった!」

 感極まった様子で声高くそう言ったオリバンダーは、笑顔で弦を祝福した。

「その杖はアクロイド家の方のために作られたものと言われています。強い力をもつグリフォンのかぎ爪を杖芯にし、杖木はアクロイド家の庭にある紫檀の枝を使用しています」

 オリバンダーは九ガリオンだと値段を告げると、きっかりお金を受け取って恭しく頭を下げた。

 

 杖を鞄の中にしまったあとで弦はいつまでも鞄の中に入れるだけでは不便だと思った。ポケットにいれるには長すぎるそれを入れる丁度いいものを捜しておこう。叔父は杖をいれるためのホルダーを腰につけていたから、それを捜そうとあたりを見回す。

 すると小物屋を発見した。店先にそれらしきものを見つけて近づく。どうやらホルダーにも色々なタイプがあるらしい。店員は弦を見て分厚い眼鏡をかけたその外見に身を引いたが、それでも笑顔を浮かべた。

 

 それを相手にせず、弦は品物をよくよく吟味した。中には杖の長さに関係なく入るものや、持ち主しか取り出せないものもあるようだ。それを二つとも備えたものもあったがやはり少し値が張った。

 

「……」

 

 そこで思い至る。これ、杖以外も棒状の物なら入るんじゃないだろうか。

 少し値の張るほうの中から、腰だけでなく足にもつけかえられるものを二つ買った。色は黒と藍を選ぶ。母はレイブンクローだったらしいから自分も入るならそこだろうが、もし違ったら藍色のほうは学校で色を変えよう。

 

 二つのホルダーを鞄の中にしまい、最後に残っていた書店へと行った。フローシュ・アンド・ブロッツ店はたくさんの本があり、目移りしてしまうがまずは教科書を確保しなければ。しかしそれは定員に言えばすぐに用意してくれたので、他にも買いたい本を見繕う。

 

 弦が一番関心があったのは魔法薬学と薬草学だ。

 

 母であるレティシャが西洋の魔女で魔法薬の天才であったのに対し、父の母である祖母・水無月蓬は東洋魔術師であり優秀な薬師だった。彼女は漢方薬のエキスパートで、その知識と技術を弦に教えてくれた。その死後も彼女の残したたくさんの書や薬師の道具は弦の勉強道具として大いに役立っている。

 

 母と祖母の影響で小さいころから薬に触れてきた弦が魔法薬学と薬草学に関心を持つのは当たり前だった。家にほったらかしにされている母はもう使っていない本もたくさんあり、それ以外のものを探す。辞典のようなものがないのは残念だったが、参考になりそうなものはいくつか見つかった。あとは学校の図書館でどうにでもなるだろうと思い、会計をすませる。

 

 漏れ鍋に戻るとコンラッドはまだおらず、弦はさっそく買った教科書を開いた。それを読み込んでいれば、トムがサービスだと言ってアイスティーを出してくれありがたく頂く。

 コンラッドが漏れ鍋に戻ってきたのは夕方になってからだった。なかなか解放してもらえなかったのだと彼は愚痴り、それから日本へと送ってくれた。弦が夜中になっていてもかまわないと言ったからだ。彼は家に招きたがっていたが、はっきりと断った。

 

 すでに日付を変えていた家で弦は自室に入ると鞄を置いて寝間着代わりにつかっているラフな格好に着替えた。すぐにベッドに戻り眠る。遠出をしたからか、すぐに意識は落ちて行った。

 

 






 ご指摘がありましたので、弦さんの言葉を少々いじりました。直し忘れていたようで、失礼いたしました。
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