《世の中の人は誰でも幸せになりたいと思っている。それを手に入れる方法が一つある。それは自分の気持ちの持ち方を変えることだ。》
昔、何処かの誰かが言ったとても素晴らしい言葉だ。
この言葉が真実ならば、俺は今、とてつもなく幸せなのかもしれない。
前の俺は[人と一緒に暮らすなど面倒だ]と思っていたが、今の俺は人と一緒に暮らす事に、確かな喜びを覚えている。
あの婆さんに拾われた後、俺とセレンはずっとこの家で暮らしている。殺されそうにもならないし、美味い飯を毎日食えるし、何より他愛の無い話で盛り上がる事が出来る相手が居るってのはとても良い気分だ。それに家に帰ってきた時、俺を待っている人が居るのも嬉しいものだ。
婆さんはまるで本当の母親の様に接してくれた。
世間的に見れば、どう考えても[関わっては行けない人間]なのに婆さんは俺達に、家を貸してくれ、美味しいご馳走も作ってくれて・・・もしかしたら今が人生で一番楽しい時期かもしれない
「婆さん、ホントに良いのかよ?」
スパゲティを啜りながら、そう尋ねる
すると婆さんは不思議そうな顔をしながら
「はて…なんの事かねぇ?」
「…前にも言ったろ、俺たちゃ人殺しに追われてるんだ。懸賞金だってかけられてるんだ。今の内に追い出した方が、身の安全は守れるんじゃない…」
俺の言葉を遮る様にして婆さんはこう言う
「前にも言わなかったかい…どうせ短い老い先さね、アンタらの為に死ねるなら、そりゃ本望だよ」
顔をクシャッとさせて婆さんは笑いかける
そんな笑顔を見せられては、これ以上食い下がるなんて出来るはずも無く・・・
「そんな事言わないでくれよ・・・婆さんにはまだま生きてもらわないと」
台所で皿を洗っているセレンが便乗する様に口を開く
「そうですよ?お婆ちゃんは私たちの母親みたいな人なんですから」
「嬉しいねぇ・・・家の子供はいい子ばかりだわ・・・」
婆さんは涙を流しながら笑顔でそう言う
「あぁあぁ、お婆ちゃん泣かないで~」
エプロン姿のセレンが婆さんを宥めるように抱きしめる
微笑ましいなぁ・・・と思いながら見ていると、外で妙にでかい音が聞こえたので少し窓から除くようにして見てみる
見えたのはバンとその中から出てくる男が数人、こちらへ向かってきている様だった
「まさか・・・!」
「どうしたんです?」
「セレン、婆さんと一緒に隠れてろ」
「え・・・急にどうして…」
「良いから隠れろッ!!」
脅すようにしてそう言って全速力で自分の部屋に置いてあるアサルトライフルとサブマシンガンを手にする
「出来ればもう・・・」
準備が出来ると、自分の部屋の窓から飛び降りる
「握りたく無かったんだがなぁ・・・」
突然現れた人影に焦っている様子の男達の1人の頭をサブマシンガンでぶち抜く
「どうしたよ…欲しいのは俺の命だろう?」
ようやっと自分達の置かれた状況に気づいたのか、手にしていた拳銃でこちらに発砲してくる
牽制にアサルトライフルの弾をばら撒きつつ、家から街から距離を取るようにして走る
男達は俺に掛けられた懸賞金が余程欲しいのだろう。何の考えも無しに追っ掛けてくる
(すまないなぁ・・・お前らともう少しだけ・・・一緒に暮らしたかったよ)
心の中でセレンと婆さんに謝りつつ、走る。走る。
最悪、死んだって構わん。
だがあの2人に絶対手出しはさせない。
走りながら俺は、自分の性格が大きく変わっていた事に気づいた