幼いころからアークスに憧れていた主人公、レイ=ブレイズ。
しかし、アークスである彼の父が戦死してしまい、彼はアークスに絶望する。
10年後、高校卒業間近の彼の選んだ道とは・・・。




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Pixivにて掲載していたものですが、内容が若干更新されています。
感想等お待ちしております。
アフィンなどの原作のキャラクターも出てきますが、ストーリー上アフィンの設定が本編とことなる部分がありますが、まぁ温かい目で見ていただけると幸いです。



PSO2二次作品―愛のチェンジオーバーー

僕はレイ。レイ=ブレイズっていうんだ。

 

僕にはなりたいものがある。

 

僕の父さんはアークスだった。

 

立派なアークスだったと、周りの人は言っていた。

誰かのために戦って、人の役に立ち、誰からも感謝され、そして尊敬された人だった。

 

そんな父さんは僕の誇りで、僕も将来は、父さんのような立派なアークスになりたくて、今から父さんに稽古をつけてもらっていた。

 

「父さん、僕も父さんみたいなかっこいいアークスになれるかな?」

「どうだろうなぁ。俺は最高にかっこいいアークスだからな!レイ、お前は俺の次にかっこよくなれるんじゃないか?ハッハッハ!」

「よく言うわ。レイ、父さんなんてすぐ追い越してやりなさい。父さんなんて、バレンタインデーのチョコは私からしかもらえないんだから」

「サナ、余計なことは言わなくていいぞ?」

 

僕達は家族3人、仲良く暮らしていて、いつか父さんと一緒に知らない星を冒険できる日を楽しみにしながら、毎日を過ごしていたんだ。

 

 

 

そう、悪夢のようなあの日がくるまでは・・・。

 

 

 

 

「緊急任務だ。・・・かなり危険な任務になると思う。レイを頼んだぞ、サナ。いざとなったらすぐに避難してくれ」

 

ある日、アークス船団のうちのアークスシップの一隻が、ダーカーの襲撃を受け、父さんは、シップに残された人たちを助けに行く為に緊急出動することになった。

 

 

「・・・わかったわ。気をつけてね、あなた」

「・・・父さん」

「心配するなレイ。ちょっくら悪い奴らやっつけて、すぐ帰ってくるさ。帰ってきたらまたツインダガーの練習に付き合ってやるから、良い子にして待ってろよ?あと、母さんを頼むぞ。お前が母さんを守るんだ。いいな、レイ。じゃあ、いってくる」

「絶対だよ!?絶対すぐ帰ってきてね!」

 

引き止めるべきだったんだ。しがみついてでも、引き止めるべきだった。

 

 

・・・父さんは、冷たい棺に入れられ、変わり果てた姿で僕たちのもとへと帰ってきた。

 

 

「・・・逃げ遅れた市民を救うために、最後まで必死に戦っていました。一人、大型ダーカーの群れに囲まれながら・・・最後まで必死に!」

 

父さんの最期を管制室のモニターから見届けた女性が涙を流しながら、父さんの最期を語る。

最後の救助艇が敵の攻撃を受けて緊急着陸してしまい、再び救助艇が飛び立つまでの間、たった一人で父さんは戦い続けたと・・・。

 

父さんがいなければ、何人もの人が犠牲になった・・・と。

 

 

「レイ君、君のお父さんは、・・・本当に立派なアークスだった。君のお父さんは、誰もが認める英雄だ。お父さんを誇りに思いなさい」

 

アークスの偉い人が僕にそんなことを言って僕を慰める。

 

「・・・そんなの知ってる。だって父さんは最初から僕のヒーローだもん。でも・・・でも!どんなにかっこ悪くても良い、どんなに卑怯者でもいいよ!・・・なんで、なんで死んじゃったの?すぐ帰ってくるって言ったじゃん!うそつき・・・!父さんの嘘つき!・・・父さん、ねぇ起きてよ!ツインダガー教えてくれるんでしょ!ねぇ、父さん!父さん!」

 

父さんは、棺の中で静かに眠ったままだった。母さんはただただ、俺のことを強く抱きしめ涙を流し続けていた。

 

『レオン=ブレイズ 家族を愛し、仲間を思い、市民の盾となった英雄。ここに眠る』

 

そんな簡単な文章で、父さんの人生は締めくくられてしまう・・・。

 

「ひっく・・・あなた・・・レオン・・・レオン!」

 

いつも明るく優しい母さんが泣いていた。

 

僕はずっと父さんみたいなアークスになりたかった。

強くてかっこよくて、優しかった父さん。

なんで父さんはたった一人で戦わなければならなかったんだろう。

たった一人で父さんは皆を救ったのに、どうしてアークスはたった一人の父さんを助けてくれなかったんだろう。

そう思った瞬間、アークスという存在が許せなくなった。

 

 

僕は、アークスに絶望し、10年後。

アークスになるという夢をビリビリに破いてゴミ箱に捨てた。

 

 

 

―10年後―

 

 

・Ship1フェオ第3居住区ハイスクールにて・

 

「おーい相棒、先生が進路決めてないのおまえだけだつってたぞ?」

「・・・ホスト」

 

購買部で買ったコーヒー牛乳を飲みながら、俺は話しかけてきた相棒に一言告げる。

 

「アホか!それ真顔で言ったらお袋さんに泣かれるぞ」

「・・・アークスって言ったほうが泣かれると思うけどな。お前はアークスなんだっけ?アフィン」

「ん、まーな。お前もアークスになればいいのに。てかお前なんてスカウト来てんだろ?なろうと思えばすぐアークスになれるじゃんか」

「やだよ。俺アークス嫌いだし。ホストになって女のことイチャイチャしながら金もらえるなんてチョーハッピーじゃん?しかも不特定多数の女とイチャイチャできるんだぜ?オウイェア。夢に胸が膨らむぜ」

「それ夢じゃなくて妄想な」

 

コイツはアフィン。3年前、俺が大切な親父の形見のマフラーをなくしてしまい、見つけてくれたことがきっかけで知り合い、アフィンが不良から絡まれたところを助けたことで親友になった俺のよき相棒だ。

 

俺達は学校の屋上に陣取り、昼休みを満喫しているのだった。

 

「んまーそんな進路だなんてどーでもいいさ。アークス以外の職業なんて別にどれもこれもかわらん。いざとなれば料理得意だから料理学校にでも行ってコックにでもなるさ。それよか相棒、良いネタ仕入れてきたぜ?」

「昼間っからお前という奴は。学校にエロ動画持ち込むとか、ほんと英雄だなお前は。呆れてものも言えないぜ」

「あれー?いらないの?『現役女性アークスの夜の顔』っていうタイトルで結構そそるんだけど?うっひっひっひっひ」

「要らないなんて言ってない。・・・あれ、お前アークス嫌いなのにこんなん見るのか?」

「おっぱいに罪は無ぇ。おっぱいは絶対正義!」

「うわ、名言来ちゃったよ・・・。よし、とりあえず内容をちらっとチェックしてから俺の端末にデータを移そう」

「OK。再生するぞ?覚悟はいいな・・・?相棒!」

「おうよ!」

 

俺達は期待に胸を膨らませ、端末の再生アイコンを・・・。

 

「レイー?アフィン君ー?」

 

「「ぎゃひぃぃぃ!!!」」

 

突然の背後からの声に俺とアフィンの口から変な悲鳴と心臓が飛び出したかと思った。

俺達はあわてて端末を閉じた。

 

「ななななんだ委員長か!脅かすなよ~」

 

背後には見慣れた姿が仁王立ちしていた。

美しい栗色のカジュアルロングの髪をなびかせ、優雅に歩くその様はまさにお嬢様。

そしてなによりも、スッと引き締まったウェストが際立たせる破壊力抜群のバスト。世の中の男達が求める黄金比を体現したスタイル。

そしてアイドルにだって引けを取らないと謳われるその笑顔(俺にはどうみても営業用)。

誰もが憧れ、誰もが羨む完璧すぎるそいつは・・・。

 

「なんか用かよ、エリシア」

 

我が幼馴染、エリシアである・・・。

 

「・・・さて、今度は何をしてたのかしら。喫煙?飲酒?はレイはしなさそうだしね。どうせエッチな画像の共有でもしてたんでしょ」

 

さすが我が幼馴染。30秒も隠せなかった。

 

「わかってるなら邪魔をしないでくれたまえ。あ、それともお前も一緒に見る?けっこう激しくって興奮する動画なんだけど」

 

『ゲシッ!』

 

エリシアの蹴りが俺の脛にクリーンヒットする。

 

「いってー!?」

「お前ってほんと大物だよな、相棒。生徒会長、風紀員長、学級委員長を兼任するスーパーニューマンの委員長にエロ動画勧める奴なんてお前くらいだ」

「ふっふっふ、存分に痺れろ憧れろ」

「いやいや、ねーから・・・」

「ってか何の用だよ、こんなところまで。わざわざお説教でもするためにこんなところに来たわけ?お前もほんと暇人だよな」

「な・・・っ!私だって暇じゃないわよ!お昼休みだってゆっくり出来ないんだから!それにお説教だって私もしたくないもん!」

 

そして屋上の床に座り込む俺にびしっと指をさし、いつものあれが始まる・・・。

 

「ほら!また髪整えてない!『俺はうまれてこの方ショートウルフ!』とかいってごまかしてるけど、ここも寝癖!ここも寝癖!これもこれも!」

 

はい、一個目。

 

「それにこの季節はずれの赤いロングチェックマフラー!お父さんの形見の大切なマフラーだって勿論知っているけど、校則では季節に合わせた服装を心がけるようにってちゃんと記載されています!大体それちゃんと洗ってるの!?真夏なんてほんと汗臭いって苦情来てるの!なぜか私に!私によ!?何で私に苦情が届くわけ!?私があなたの洗濯物をするとでも!?」

 

怒涛の二個目・・・。

 

「シャツのボタンだって第3ボタンまで開けて、制服だってダルダルに着てるし、暑いのならカバンに大切にしまっておけばいいでしょ!?わっ!Yシャツ第三ボタンまでぜんぶボタンついてない!ありえない!私は絶対つけてなんてあげないからお母さんにつけてもらうなり、自分で新しいのを購買で買って来るなりしてよ!!!」

 

飽きもせずに三個目。

 

「靴だって踵踏んで歩いてる!コレに関してはこの間あなたのお母さんからもやめなさいっていわれてたよね!?もうなんなのよ!ほんとにもう!靴がすぐだめになるってお母さん嘆いてたわよ!?この親不孝もの!」

 

よし、数えるのはやめよう。もちろんメモなんて取りもしない。

 

「この間も注意したけどカバンの中いっぱいにエッチな雑誌詰め込むのもやめて!周囲の男子とまるで当然の事のようにシェアするのもやめて!!!お願いだからそのパンドラの箱みたいなカバンを全開にして教室に放置するのぜーったいやーめーてー!!!!」

 

真昼の屋上からキーンと響き渡る、近隣住民も耳を塞ぐほどのエリシアスクリーム。近隣住民の皆様、毎度毎度うちのエリシアがご迷惑をおかけしております。

 

「ぜぇはぁぜぇはぁ・・・ああもう!コレだけ言ってるのになんでまだまだ思い浮かぶのよぅ!!!」

「あっはっはっはっはっは!もうだめ、相棒俺もうダメ!腹筋が崩壊する!いひひひひひ!」

「・・・母さん以上に口うるせーよな(音量的な意味でも)。そんなんだとアークスでも売れ残って『エリシアの局』とか呼ばれるようになっちゃうぜ?」

「ふ・・・ふふふふふふ。もう我慢の限界よ・・・!だれかこの悪の権化を懲らしめて・・・」

「はぁ?アレだけマシンガンのようにケチを付けて、我慢とかどの口が言うんだよ。お前ってそんな四六時中俺の監視して面白いの?他にやることなんていくらでもありそうなのに・・・」

「(こいつら見ててほんと飽きないよなー・・・。委員長ほんとお疲れさん。いつか委員長の気持ちが届くことを、レイの相棒として温かくこれからも見守らせてもらうよ)」

 

「で、説教とは別件で俺に用事があったんだろ?なに、そろそろ俺の子供でも欲しくなったか?」

 

最後の冗談が決め手となったのか、それまでワナワナと震え怒りを堪えていたエリシアは、助走をつけ高く高く跳躍し・・・。

 

「死んでもお断りよ!!!このダークファルス【卑猥】(エロダー)!!!」

「「シンフォニックドライブ!?」」

 

 

そのままビックリするほどの速度で急降下、流星のごとき飛び蹴りが俺を襲う。

まさかフォース志望のエリシアが、ファイターの真似事が出来るだなんて知らなかった俺は、もろにエリシアの蹴りを食らい、大いに吹っ飛ばされた・・・。

 

「・・・先生が進路指導室に来るようにと言っていました。今すぐに行くように。そして即刻その動画を消去するように。命のともし火を消されたくなかったらね」

「げっほげっほ!・・・いってぇ・・・お前前から思ってたけど、絶対フォース向きじゃねーよ・・・ファイターだって・・・いってー、アバラ逝ったぞ多分・・・」

「ふふふ、あらあら。私が立派なフォースになったら、あなたに自慢のテクニックをお見せするわ。的は勿論あなただけど」

 

そんな邪悪極まりない笑みを見せながら、エリシアは階段を下りていった。

だが、俺はしっかりと目視していた。脛の痛みにのた打ち回るフリをして、小さな復讐をかましていたのだ。

 

「・・・アフィン。今日のアイツのパンツ、紫色だ」

「・・・ダークファルス【卑猥】・・・。うん、まさにレイって感じだな」

「だれがダークファルスだ!エリシアこそ中学時代のあだ名は『ダークファルス・エリシア』なんだぜ?俺がつけたんだがな」

「なんだそれ」

「高校になって、あいつ家庭科の授業を選択項目から外したからな・・・。字で書くとこうだ」

 

俺は端末に文字を打ち込み、アフィンに見せる。

 

『ダークファルス【悪食】』

 

「・・・え」

「あれは忘れもしない、惑星ナベリウスの林間学校へ修学旅行に行った時のことだった。みんなでカレーを作ることになってだな、俺は反対したんだよ。絶対にエリシアに料理だけはさせるな!ってな・・・。本人に言ったら勿論ぶっ飛ばされるし、周りの皆にこっそり忠告して回ったんだがな、あの絵に描いた優等生のエリシアの作る料理だぜ?男子は勿論食べたがるし、女子はエリシアが何でもしてくれるから楽が出来ると思ったのだろう。誰も俺の声に耳を貸さなかった・・・。結果、自分で作ったエリシアと俺を除く全ての生徒が倒れ、林間学校どころの話じゃなくなって、同級生達の心に大きな傷が残った」

「んな大袈裟な・・・」

「・・・相棒、仮に『×××味のカレー』と『エリシアのカレー』のどちらかを食わなきゃ母さんが死んでしまうという極限状態に陥ってしまったとしたら、俺は迷わず前者を選ぶよ・・・」

「どんな危機的状況だよそれ!?ええ!?そんなに!!!???」

 

そんな話をしていると、校内放送が鳴り響く。

 

『ピンポンパンポン♪「・・・レ~イィィィィィィ!!!」・・・ブッツン!ピンポンパンポン♪』

「・・・はいはい、今行きますよ」

「あはっあははははは!お前だけだって!委員長にあそこまでしてケロっとしてるのは!もうだめ!俺の腹筋どうにかなっちまう!うひひひひいひぃひぃひぃ・・・呼吸できねぇ」

 

笑い転げる相棒を放置し、俺はしぶしぶジムの待つ進路指導室へと向かう。

ジム、それは俺達の担任のキャストのことだ。もともとはアークスで活躍していたらしいのだが、今は何処にでもいる量産・・・もとい平凡な教師だ。

 

 

・進路指導室・

 

 

「失礼しまーす。先生、俺進路はホストになるからよろぴく~。つーわけでもどっていい?」

「だめだ。とりあえず座れ・・・」

「ちぇ・・・」

 

俺はしぶしぶ席についた。

まぁ用件もなんとなく察しはついてるし、最初にけん制しておくか。

 

「アークスになら、ならねーぞ」

 

俺の最初の一言に、ジムは一瞬固まり、大きくため息をついた。

 

「・・・アークス士官学校から是非入学をと言われる人材がどれだけ居ると思う?うちの高校ではお前とエリシア。そしてアフィンくらいだ。・・・まぁアフィンはあれでいて結構がんばっているからな。3人とも仲がいいんだから、3人で入学って言うのも悪くないし、アークスになっても互いに協力して任務にあたるなんてこともできるんだぞ?」

「あのさ、二人ともなりたくてなろうとしてるわけ。そのために日々努力してきた奴らがアークスになるのは至極当然なわけだ。俺はなりたくねーって言ってるの。わかったら他の就職先とか紹介してくれるのが進路指導なんじゃねーの?」

 

至極真っ当な意見を述べたつもりなのだが、この堅物は一切受け付けなかった。

 

そして事もあろうことか、一番出しちゃいけない奴の名前を平気で出しやがった。

 

「父上もきっと君がアークスになることを望んでいるはずだ」

 

脳裏に、親父の顔が浮かぶ。そしてあの光景・・・。変わり果てた親父と、その棺にすがり泣く母さん、そして棺のガラスに映りこむ自分の顔・・・。

 

 

「・・・親父は死んだんだ。もう関係ない」

 

親父が生きていたならば、俺もアークスになることを望んだだろう。だが、もう俺はあんな母さんの顔を見たくない。

母親より早く死ぬこと以上の親不孝なんてあるものか・・・。

 

「・・・はぁ、もちろんアークスは兵役ではないし、強制力もない。が・・・レイ、お前には才能がある」

「才能?エリシアに比べたら吹いて飛ぶレベルだろ。それとも何か?俺みたいな腕っ節が強いだけのヒューマンつかまえて、エリシアみたいな優秀な奴の代わりに危険な現場に送り込んで、いざとなれば盾になれと命令して捨て駒にするのか?今も昔もかわらねーな、アークスってやつは」

「レイ、お前のお父さんのことを言っているなら、それは断じて違うぞ。彼は自分の意思で最後まで戦い・・・」

「違わねーんだよ!俺にとっては!!!・・・話は終わりだ」

「待て、レイ!」

「進路なら明日提出する。もうほっといてくれ」

 

胃がむかむかする。こんなにムカついたのはいつ以来だろう。何もかもが許せなくて、席を立った。

扉を出ようとすると、自動のドアが開かない。ロックはかかってないはずなんだ。動作不良なのだろうか、ドアが俺を拒絶したように思えた。普段ならなんともないそんな些細なことが許せなくなり・・・。

 

『ガッシャン!!!』

 

俺はドアを蹴破った。

もともとガラス製だったドアは真っ白になるほどひびが入り、そのまま粉砕された。

・・・ちょっとやりすぎたが、反省なんて出来る余裕もないようだ。イライラが収まらない。

 

「れ・・・レイ?」

「っ!」

 

その声に一瞬体が強張る。

エリシアがそこにいた。

怯えた瞳が、俺を捉えていた。

 

「・・・・・・・・・」

「あ・・・あの」

 

俺は何事もなかったように、エリシアを無視してすぐ傍を通り過ぎた。

 

「レイ!なんてことをするんだ!エリシア、怪我はないか?レイ、待つんだ!何処へ行く!話も終ってないし、こんな事をしていいと思っているのか!?」

「うるせぇ!!!停学にでも退学にでも好きにしやがれ!!!」

 

俺はそのままカバンを教室へ取りに戻り、荷物をつめて教室をでた。

 

「おい相棒、今すげー音してジムが頭から煙ぷんぷん出してたけど、何があったよ!?・・・ってどこいくんだよ相棒!」

「あ?フケんだよ、見りゃわかるだろ?」

「うわ、なに!?マジギレモード!?おいおい、ちょっと落ち着けよ相棒。話なら聞くからさ!今からでもジムに謝りに行ったほうがいいって!」

「何のために?アークスになれないから?最初からならねーっつーの!」

「ちげーよ!おい相棒・・・!あーもー。俺しらねーからな!?」

 

どいつもこいつもアークスアークスと!何をするにしたっていつだって親父を引き合いに出しやがる!さすが英雄の息子だとか!お父さんのような立派なアークスを目指せとか!

 

「ウンザリなんだよ!くっそ!」

 

俺は公園で適当に時間を潰してから、市街地にあるいつもの店に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

・ダーツ喫茶&BAR ハートショット・

 

『カランカラン♪』

 

古風な鈴が古風な手動扉の開閉と共に音を鳴らした。

最近じゃあまり見かけないこのスタイルは、ここのマスターの趣味でこんな仕様になってるらしい。

 

「いらっしゃーい、ってあらヤダ。レイちゃん来るのはやいんじゃない?授業サボってきたんじゃないでしょーね。ダメよぉ?学生の本分は学業でしょ?」

 

筋肉隆々の体にフリフリのエプロン。そして厚化粧でも隠しきれない青いケツ顎・・・。

オネェ口調の男?は、俺の顔をみるなりそんな事を言い出す。

 

 

「・・・ちょっと、ぶち切れて飛び出してきちまったわ」

「んもうやっぱり!・・・それが癖になると、社会人になったときにどの仕事も長続きしなくなるから気をつけなさい!今日は許してあげるけど、次は入れないわよ!?いいわね!」

「ん・・・」

 

ハートショットのマスター、通称マダムッシュ。オカマとよばれるヒューマンだ。体は男、心は女という中年のオカマだ。

もともとは親父の同僚だったそうなのだが、彼(彼女?)もまた、アークスに嫌気が差して今の職業についたという・・・。

俺の目的はもちろん、このオカマではなくダーツであるとキッパリと言っておかなくてはなるまい。

 

 

「・・・なぁマダムッシュ。アークスってそんなにいいもんかな?」

 

俺は自分のダーツのケースを開いて、ダーツを組み立てていく。

 

「・・・オラクルで生きていくにあたっては、花形職業よ。・・・私も嫌いだけどね。でーも、進路相談は学校の先生やお母さんとしなさいよ。でもきっとアークスはお母さんに反対されるんわね。レオンのことだってあるし・・・」

 

組み立てたダーツを構え、的の真ん中に狙いを定める・・・。

 

「アークスなんて、なりたいわけないだろ?」

 

投擲する。ダーツは狙い通りど真ん中へと突き刺さる。

 

 

「危険な星や危険な戦闘区域に、平気で家族を送り出すほうがどうかしてるんだよ。失わないと気がつかないなんてさ、俺達家族もきっと、どうかしてたんだ・・・」

 

次は20のトリプルに狙いを絞り、ダーツを構える。

 

「平気な人なんて今も昔も居ないわよ。待つ側はいつだって、行く側だってね」

 

投擲する。狙いよりもややずれてしまった・・・。

 

「レイちゃん。一度ちゃんとお母さんと話し合ったら?本当はあなた、アークスになりたいんじゃないの?だから毎晩トレーニングを欠かさずしてきたんじゃない?」

「ただ癖になってるだけだよ・・・」

 

こんどは特に狙いを定めなかったせいか、13のシングルにブスリとダーツは突き刺さった。

俺はダーツを的から引き抜いた。

 

 

『カランカラン♪』

 

「いらっしゃい。あら、女の子のお客様なんて珍しい。それも若い子なんて。もしかしてレイちゃんのお友達?」

「え、えと・・・その、はい・・・。(もうアフィン君ってば!こんなに個性的な人だなんて聞いてないよぉ!)」

 

聞きなれた声に振り返ると、見慣れた姿がそこにはあった・・・。

 

「・・・最優秀生徒が来る場所じゃないんじゃねぇ?それも学校帰りに制服のままなんて。見つかったら進路に響くぜ?」

「アフィン君から多分ここに居るって聞いて・・・」

「わざわざこんなとこまで説教しにきたのか?ご苦労なこった」

「こんなところ?ひっどいわねぇ。それだからモテないのよ?顔は悪くないのに。何か飲む?お嬢ちゃん。勿論ノンアルコールしか出せないけれど☆」

「えっと、じゃあアイスティを・・・」

「あら、紅茶派?わたしもよ、うふふ。気が合うわねぇ私達・・・」

「は・・はぁ・・・」

 

明らかに困惑しているエリシアをよそに、マダムッシュは鼻歌交じりにアイスティーを準備し始める。

エリシアはすこし怯えた様子で、俺のことをじっと見つめていた。

馬鹿な奴、怖ければ追っかけてなんてこなきゃいいのに・・・。

 

「あの・・・」

 

エリシアが話しかけてくるが、俺は特に気にすることもなくダーツを構える。

 

「・・・なんで、あんなに怒っていたの?レイがあんなに怒ったことなんて・・・」

「・・・量産型教師が言うんだよ。アークスになれ、それは親父だって望んでるってな」

 

ブルに狙いを定め、集中し、投擲する。思い描いた軌道イメージどおりに、ダーツは的に刺さった。

 

「アフィンだってそうだ。アークスになろうって言ってきたよ。よく知りもしないクラスの連中も、スカウトが来たからうちのクラスからアークス候補生が3人も出るだなんて勝手に騒ぎやがってさ。フォトンが扱えれば今時だれだってアークスになれるってのに。特待生扱いで半年でアークスになれるとかいうけど、本当にすごい奴は特例でほとんどその日のうちにアークスになれるんだろ?アークスアークスと、望まない奴がアークスになったところでクソの役にもたたないってのによ」

 

マダムッシュはなぜかエリシアにアイスティを提供すると、コソコソと店の奥に消えてしまった。

 

「言わないのは、母さんとお前くらいだな・・・」

「・・・私は、レイがアークスになりたくないって本気で思ってるって、知ってるから・・・」

 

そう、エリシアは知っている。

俺とエリシアが初めて会ったのは、親父の葬式の時だった。

 

『ごめんなさい・・・あなたのパパは、わたしのせいで・・・わたしがお母さんと離れ離れになんてならなかったら・・・!』

 

10年前、ダーカーの襲撃により、一隻のアークスシップが堕ちた。親父は生存者救出のため緊急出動し、市民の避難誘導を行ってる際に、ある女性から娘とはぐれてしまったと泣きつかれたという。親父は一人その女の子を探す為に、ダーカーが蔓延り燃える街にもどり、女の子を見つけて戻ってきたが、救助艇が複数の大型ダーカーに襲われていた。親父はまた一人で戦い、飛びたつまでの時間を稼ぐ為に犠牲になった・・・。

親父が助けたその女の子が、エリシアだった・・・。

もちろん、エリシアのせいで親父が死んだなんて思った事もないし、そのことで一度だってこいつを責めた事もない。

エリシアの移転先が俺の近所でもあったし、学校のクラスまで一緒になり、隣の席に着きやがった。

おかげで毎日幽霊のように暗い顔で付きまとわれてる気分になり、ある日初めてエリシアを責めた。

『これからもそんな暗い顔して生きていくつもりかよ。父さんのおかげで助かって、今お前がこうして生きてるなら笑え!思いっきり笑って生きるのがお前の役目だ!笑ってたほうがお前は絶対かわいいんだからそうしろよな!そんな暗い顔されたら友達にすらなれないだろ』と・・・。

本当は嬉しかったんだ。

エリシアが生きている事実が、親父が最後まで命を賭けて戦った意味そのもの。

エリシアがこれから先も元気に過ごしてくれさえすれば、それだけでも親父の魂は救われる。

それを一番近くで見守れる。その事実が、俺は嬉しかった。

 

「・・・お前はアークスになるんだってな。お前のことだから管制室勤めが妥当だと思うし、アフィンは現場に出たいって言ってたから、あいつのこと頼むぞ」

「・・・レイ、私もね・・・。現場に出ようと思うんだ」

「・・・え?」

 

ドクンと心臓が嫌な音を立てた。狙ったはずのダーツが、思わぬ方向に飛び、得点にはならなかった・・・。

 

「・・・私ね、レイのお父さんが助けてくれなかったら、今まで生きてこられなかった。だから今度は、私が助けてもらったこの命で、たくさんの人を守りたいし、ダーカーに汚染されてしまうたくさんの惑星を守りたいの。私一人が出来ることなんて少ないかもしれないけど・・・。それでも、あなたのお父さんが守ってくれた命で、出来るだけたくさんの命を守りたい。・・・それが、あなたのお父さんに出来る恩返しだって、勝手に思ってるの」

 

冗談じゃない。ふざけるな。

 

そんな抗議を口にするのを堪え、何もなかったようにダーツを構える。

 

 

「・・・お父様に言ったら、思いっきり怒られちゃった。・・・やっぱりレイも反対?」

「・・・親父がその言葉を聞いてどう思うかは知らないし、お前が決めた道を俺がどうこう言う筋合いもない。・・・ただ、殉職したお前の葬式に出るのだけは真っ平だ」

 

 

どうかしてる。どれだけアークスが危険な仕事か目の前で見て、理解してるはずなのになんでこいつは・・・。

 

「・・・ねぇ、レイ。私がアークスになったら、私のことも嫌いになっちゃうのかな」

「どアホが。アフィンだってアークスになるし、クラスメイトの何人かもアークスに志願してるんだぜ?アークスだから嫌いになるなんてどう考えても変だろ。マフィアじゃあるまいし。お前が六芒均衡並みに有名人になる前にサイン貰っとくのもいいな。いい金になりそう。とりあえず今つけてるブラジャーにサインして俺にくれ」

「あ、あげるわけないでしょ!?アホレイ!!!」

「ちぇー。オークションに出せば1千万メセタくらいの価値が出ると思ったんだが・・・。残念だ。じゃあ絶対売ったりしないから俺にくれ」

「知らない誰かに売られるのも嫌!レイ自身が私のブラ所持してるのも嫌ッ!!!」

「アハハハハ」

 

現場になんて出なくたっていいじゃんか・・・。管制室からだって人は救える。エリシアが危険な目に逢う必要なんてこれっぽっちもないのに・・・。

 

「進路、決まらないの・・・?」

「ジムか。アークスになるよう説得しろとか言われた?」

「・・・うん、言われた。お父さんのことで怖くなるのはわかるけれど、今はあの時以上にバックアップを強化してる。勇気を出してアークスになってほしいって。・・・わかってないよね、レイのこと。レイは戦うのが怖いんじゃなくて、お母さんを心配させたくないだけだもんね・・・」

 

今思えば、仕事に行く親父を笑顔で送り出しながらも、母さんはいつも不安そうにしていた。親父が遅くなる日は、親父が帰ってくるまで、自分は食事を取らずに待っていた。

親父は「先に食べててくれっていつも言ってるじゃないか・・・」と困った顔をしていた。

母さんは笑いながら「心配で食事が喉を通らなかっただけよ、次は早く帰ってきてくれなきゃ飢え死にしちゃうかもよ?」だなんて、冗談なんだか本気なんだかわからないことを言っていた。          

 

「・・・ま、料理得意だしコックにでもなるかな」

「レイなら消防隊員とかも向いてるかもしれないよ!体育の成績はスポーツ選手並だし、あ、なんならスポーツ選手になるとか!ボクシングとか好きじゃない!」

「はっはっは、それいいかもな。よし、今のうちにサイン書いといてやる。ブラを出せ」

 

『ゴッチン!!!』

 

脳天にエリシアのこぶしが突き刺さる・・・。

 

「痛ぅぅぅっ!お前絶対ファイター向きだって!」

「うるさいおっぱい星人!母星へ帰れ変態!」

 

そういえば、こうやってエリシアと会話をしたのはいつ以来だろうか。

顔を合わせれば風紀がどうのとか校則がどうのとか口うるさい印象ばかりが目立ち、面倒だから避けていた気がする。

 

「レイってダーツなんてするんだね」

「まぁな。なんかおもしろいからやってるだけだけど。投げてみるか?」

「うん・・・とりゃ!」

 

エリシアは適当に、そして思い切りダーツを投げつけて、本当に変なところにガッツンとぶつけた。

 

「おいおい、壊すなよ?って、あーあー針が曲がってるじゃんか。ったく」

「え!?ごめんなさい・・・」

「針の予備はあるからいいけど、ダーツそのもの壊されたらたまったもんじゃねーよ、まずは投げ方から教えてやる」

 

おれはまずエリシアに投げるフォームを手ほどきし、力の加減や狙いの定め方などをしっかり教えてやった。

さすが天才肌なエリシアだ。すぐにコツをつかんで、狙いどおりとは行かないけれど、的に刺さるようになった。

 

「ねぇレイ。なんか勝負してみようよ」

「いいぜ、んじゃあ簡単に3本投げた合計の数で勝敗を決めるか。ただやっても面白くないし、何か賭けるか・・・。そうだなぁ」

「エッチなのはだめだからね」

「え・・・・・・」

「残念そうにしない!んーそうねぇ、・・・じゃあ、勝った人は負けた人の言う事をひとつ聞くって言うのは?」

「えー・・・まぁいいけど後悔するなよ?」

「・・・何度も言うようだけど、エッチなのは絶対なしだからね」

 

簡単なゲームにしては随分でかくて不明瞭な内容だ。

さて、エリシアに何をしてもらおうか。

エロイのは無しと言っていたな。・・・準エロイ事をさせよう。ふふふふふ・・・。

おおそうだ!膝枕でもさせようではないか!膝枕であのエリシア最大の魅力であるバストを下から眺める!

 

「よーし!燃えてきたぜ・・・・!」

「エッチなのは無しだからね!だめ!絶対!」

 

とりあえず、エリシアには50点のハンデをやり、じゃんけんの結果、最初に俺が投げることになった。

 

俺は25、60、19、と、合計104点をマークした。

 

「む・・・これは・・・」

 

最後の1投が、やや逸れてシングルになってしまったのだ。

 

「なんか意外といけるかも!」

 

エリシアは意気揚々とダーツを構える。

 

エリシアの1投目は、7。だが、その場所に俺は少し冷や汗をかく。

 

「・・・もうすこし右斜め上か・・・むぅ、手痛いミスだわ」

 

センターサークルぎりぎりで外れてる・・・。下手すりゃど真ん中当たってたぞ今の・・・。

 

「そこっ!」

「うぇ!?」

 

ずぶっと深々と刺さったダーツは、25点をマーク。現在合計82点

 

「残り22点かぁ・・・・。無理にダーツが刺さって狭くなった的を狙う必要はないわね・・・」

 

50点のハンデは、やりすぎたかもしれない・・・。

 

「あ、左側のトリプルラインのどれかに入れば私の勝ちね。ねらい目は、8、11、14のトリプルラインがいいかも」

「ははは・・・うまく行けばいいけどな」

 

うおぉぉぉぉぉぉぉ!外せぇぇぇぇぇ!俺の膝枕がぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!

 

 

「くらえー!」

「くらえ!?」

 

嫌に気合の入ったダーツは、びしっと8のトリプルラインに突き刺さりやがる・・・。

 

「やったー!勝っちゃった勝っちゃった!」

「あら、ちょっと席を外してたら楽しそうなことしてたのね。どうしたの?」

「いや、ちょっとエリシアにダーツを教えててね。50点のハンディやったら負けた。2点差で・・・」

「50点?まぁお優しい・・・」

「さて、何してもらおうかなー♪」

「出来ることにしてくれよ?肩揉みとか乳揉みとか尻揉みとか・・・」

「ほぼレイちゃんがしたいことね、それ」

 

そんなこんなのやり取りをしていると、また店のベルがなる。

 

『カランカラン』

 

「お、委員長来てるな。ってことはさっそく練習の成果を試しに来たんだな!」

「あ・・・アフィン君」

「・・・まて、相棒。今何つった?練習の成果?」

「ああ、最近相棒が何かと自分を避けるから、前みたいに気兼ねなく遊べる関係になりたいって委員長が言うからさぁ、割って入った側としちゃーバツが悪くて、じゃあ・・・。ってことでダーツ教えてあげたんだよ。最初は委員長ほんとへたっぴで全然的にもあたりゃしなかったんだぜ?今はだいぶ上達したけど!はははははは!」

「ほう・・・?」

 

つまりは、ずぶの素人とみせかけて、ちょっとだけ経験者だったと・・・。

 

「あははは・・・ばれちゃった」

「ぶははははは!相棒負けてる!しかも50点もハンデつけてやがる!やっさしー!」

「まぁレイちゃんなら120点以上は軽く出せるから、ハンデつけたうえで手加減までしたんでしょうけどね・・・」

「あーあ・・・手加減なんてするんじゃなかったぜ・・・。もったいなかった、膝枕・・・!」

「・・・引くわぁ(普通に委員長彼女にして、思う存分膝枕してもらえばいいのに・・・)」

「エッチなのなしって言ってるのに。それじゃあ、これからは私を避けたりしないで、注意はちゃんと受け止めること!そもそもレイが風紀さえ乱さなければ私だって注意しなくて済むのだから、お互い気持いいでしょ?」

「ぶっ!今、相棒が襟元までぴっちりボタンしてる想像したらすげー笑えた!いいねそれ!いい!相棒!明日からお前制服第一ボタンまでぴっちりしてこい!髪の毛もびしっと整えて登校しろ!あっはっはっはっは!」

「するか!」

 

それから、3人で他愛のない話をしながら1時間ほどが過ぎた。

この二人がアークスになったら、今度は俺がエリシアみたいな立場になるのかな。

それはそれで、なんだか寂しい気もするな・・・。まぁ今更そんなことを考えてもしょうがないか・・・。

 

「あら、もうこんな時間。ほらほらあんた達、そろそろBarタイムになるし、学生服のままうろうろして補導なんて出世に響くわよ。大人になってからゆっくり遊びにいらっしゃいな」

「もうそんな時間か。ごちそうさま、マダムッシュ」

 

俺は一応3人分の会計を済ませた。

まぁ学割とかなんとかいって、3時間も遊んでドリンクも注文して1000メセタ。

残りは出世払いにしておいてくれるそうだ・・・。

店を出て、アフィンとはすぐに分かれることになる。アフィンの居住区は俺達とは間逆に位置するからだ。

反対に、エリシアは俺の家の近くだ。ただし、父親がお偉いさんのエリシアは、ここらの地区では一番デカイ豪邸に住んでいて、庭だけで4つくらい家が建てられる広さだ。

俺の家は狭い。

まぁ親子二人で暮らすには丁度いい。俺の個室だってあるし、今の生活に不満はない。

 

「それじゃあね、レイ。気をつけて帰ってね」

「おう、また明日な」

「明日はちゃんと登校すること。あとジム先生のお説教が待ってると思うよ」

「・・・停学とかにしてくれねーかな(存分にサボれるんだが)」

「んー、先生も少し反省してたからね、私のおかげで!感謝してよね!」

「なにそれ」

「先生に、『レイにアークスになれだなんて無神経なことをいうからこんなことになるんです!』ってフォローしておいたの」

「チッ。余計な真似を・・・」

「なんかいった?」

「いいえ・・・(本気で睨むなよ)それじゃ、また明日な」

 

俺は家に向かって歩き出した。

 

「・・・ねぇレイ。あの・・・私がアークスになったら、困ったことがあったら一番に相談してね!何かの心境の変化があったりして、アークスになりたくなったりしてもすぐ相談して?なんて・・・そんなことあるはずもないよね。何言ってんだろ私、ごめんね」

「・・・有名になったらブラにサイン書いて俺にくれりゃそれでいーよ。んじゃ、またなー」

「あげるかバカー!!!」

 

アークスになる。

人にとっては難しいことでもあれば、俺のようになりたくもないのにその切符を押し付けられてしまうこともある。

世の中とは実に不平等だ。

 

 

 

 

 

・自宅・

 

「ただい・・・ま・・・」

「お帰りなさいレイ。なにか母さんにいう事があるんじゃないの?」

 

家に帰ると、笑顔の裏に鬼のような顔をした母が仁王立ちしていた・・・。

 

「正座」

「・・・ハイ」

 

俺はその威圧に負けてリビングで正座する・・・。

 

「2件、母さんに連絡がありました。ひとつはジム先生からでした。あなた、進路相談室で暴れてドアを粉砕したとか・・・」

「申し訳ございませんマザー」

 

やめて、元アークスの癖でコンサイコンひっぱりだして手元でぽんぽんするのやめて!

 

「・・・もうひとつは、エリシアちゃんからでした」

「え・・・?エリシア?」

「その電話の内容はおいといて、部屋で以前こんなものを見つけました。何かの重要書類かと思われます。びりびりにされていますが、わたしが復元したデーターがこちら・・・」

 

母さんの端末から、画像データが立体的に映し出された。それは、アークスからの推薦状だった・・・。

 

「レイー?ママ怒ってるの。何でだと思うー?」

「うぅ・・・」

 

母さんの口調が変わる。これはマジギレモードの前兆・・・!

 

「えと・・・。進路指導室で暴れたから・・・ではないのでしょうか」

「この軟弱者!」

「ひっ!?」

 

頭をコンサイコンが掠めた。ギリギリ俺は頭を亀のようにひっこめ、間一髪でかわした。

 

「アークス以外になりたいものがあるのなら良し!それはあなたの人生だからしょうがないと私は思っていました!だけどエリシアちゃんの電話をもらって私はがっかりしたわ!」

「え、ええ!?」

「エリシアちゃんはね、『お母さんを心配させたくなくて、レイはアークスになりたくないんです』って言ってたわ。あんたねぇ・・・!」

 

いや、それは確かに本人を前にして恥ずかしくて言えないが、これは嘘偽りのない事実なんだが・・・。

 

「じゃ・・・じゃあ母さん俺がアークスになりたいって言ったら賛成するのかよ」

「反対するに決まってるでしょ!」

「なんだそれ!!!???じゃあ別に問題ないじゃないか!!!」

「私とレオンの息子ともあろう者がその程度で諦めるんじゃないの!反対を押し切ってアークスになるくらいの根性見せなさいと言ってるの!!!あんたは、結局戦うのが怖いのよ!母さんを言い訳にして戦いから逃げるような臆病者に育てた覚えはありません!!!」

 

俺はその一言に、大きくため息をついて母さんが振りかぶるコンサイコンを片手で軽く受け止めた。

 

「・・・母さん、まさか本気で、俺がびびってるからアークスになりたくないって言ってるだなんて、思ってないよね・・・」

「・・・・・・ええ、わかってるわ。でもね、あなたの夢を私のせいで潰してほしくないの。小さいときからあなたは、父さんみたいなアークスになりたいって、ずっと言って毎日トレーニングしてきたじゃない。父さんが死んでからもずっと・・・。だからいつか、自分もアークスになりたいって言い出すあなたを恐れていた反面、楽しみにしていたわ。・・・レイ。あなたがどんな道を歩もうと、母さんは何も言わない。だから、母さんのために遠慮なんてしないで?アークスになりたいのなら、父さんより強いアークスになればいい。父さんはあなたの才能を見て、いつか六芒均衡にだってなれるかもしれないって本気で言っていたのよ?六芒均衡の一員になったあなたを見て、『見ろ!アレは俺の息子だ!』って自慢するのが、父さんの夢だった。それだけ、覚えていてね・・・。あとは、あなたの自由よ」

 

母さんはコンサイコンを箪笥にしまった。

・・・そんな場所にそんな危ないの仕舞わないでほしいとか思ったけど、黙っていた。

 

「さ、ご飯にしましょう」

「ん・・・・」

 

次の日、俺はジムに進路票を提出した。

 

 

そこには、『民間警備会社就職希望』と書き込んでいた。

 

「相棒、お前ってさ・・・すげー頑固だよな。俺かーちゃんにそこまで言われたらアークスになっちゃうわ」

「るせーな。ただでさえ四面楚歌なんだ。これ以上攻め込むな」

 

ジムの落胆加減といったらなかった・・・。

どれだけ落胆していたかというと、もう事務作業をこなすコンピューターみたいに淡々と面接先のデータを表示して、好きなところを選べと・・・。

俺の就職先はすぐに決まった。そして事業主はプロバスケットボールチームのオーナーもしていて、是非そちらも検討してほしいと鼻の穴を大きくしていた。

あとはもう、卒業するまではあっという間だった。

そう、何か大事件があったとすれば、2月14日のことだった・・・。

 

 

「レイ、私の気持なの!ずっとあなたが好きでした!」

「・・・・・・・・・は?」

 

卒業直前、こともあろうことか、エリシアがアフィンや下校中の生徒の目の前で本命のチョコを突きつけてきたことだった・・・。

 

「・・・おまえさ、・・・この状況どうするんだよ」

 

『ヒューヒュー♪さっさと受け取れよレイー!』

『え!?お前らまだ付き合ってなかったの!?』

 

ギャラリーがうるさすぎるし、コレはもう断れる雰囲気でもない。

 

「この状況の責任なんてとらないからな・・・。それに俺は知ってのとおりエロ魔人なんだから、この後抱かれるくらいの覚悟くらいしてきたんだろうな」

「相棒自重しろ」

 

アフィンに思いっきりケツバットされる。

 

そして、俺はもちろん断る理由なんて最初からないから、チョコを受け取った。

なんだかんだ言い出せはしないし、なぁなぁになっていた部分もあるが、俺はエリシアのことが好きだった・・・。

ただ、エリシアがアークスになってしまったら当然疎遠になってしまうと思っていたので、半ば諦めていた。

それでもこうしてエリシアが俺と一緒に居たいと思った上での意思表示なのなら、俺は受け止めることにしたんだ・・・。

だが、覚えているだろうか。エリシアの手作りチョコレートを食べるという事が何を意味するか・・・。

 

 

・自宅 リビングにて・

 

「ディメイトよし。トリメイトよし。スターアトマイザーよし。ソルアトマイザーよし。では・・・開封する」

 

俺は震える指で、かわいくラッピングされたチョコレートをゆっくりと開封していく。

 

「ただいまー。レイー?今年も貰えなかったであろうかわいい息子に、お母さんからプレゼントー♪って、あら?あらあらあら!?これ本命のチョコレートよね!?しかも本命も本命も大本命のエリシアちゃんじゃない!きゃー!お赤飯!今日はお赤飯炊かなきゃ!」

「うるさい、今それどころじゃないんだ・・・」

「・・・何してるのよ。まるで爆弾でも解体するような死にそうな顔して」

「・・・母さん、エリシアの料理の腕知ってるだろ?」

「・・・お赤飯は明日にして、おかゆ作っておくわね」

「ゴクリッ。・・・生きてたら・・・な」

 

俺は一欠、ぶるぶると震えながら口に運ぶ。

 

口の中いっぱいに広がるカオス。鼻の奥から突き抜けるような刺激臭。ひどい、あまりにも酷い。アイツは調味料にアンモニアでも使ったのだろうか・・・。

 

「む゛~!!!ん゛~~!!!」

「はいお水」

「んぐ・・・んぐ・・・ぶはぁ!・・・何をしたらこうなるんだよ!母さん食ってみ!?」

「やーよ。母さん明日も仕事だもの。それにそのチョコはエリシアちゃんがあなたのために愛情を篭めて作ったものでしょ?母さんにそんな権利は無いなぁ。あ、勿論残さず食べるのよ?トイレでリバースも認めませんからね。男なら根性見せなさい」

 

その後、俺は三日ほど高熱にうなされることとなった。

 

 

 

 

それから一年後、エリシアは無事、アークスとなり、バリバリ任務をこなしている。。

俺はというと、民間の警備会社に勤め、プロバスケのルーキー選手としてデビューした。

お互い忙しい毎日を送りながらも、オフの日はデートをしたり、エリシアが試合の応援に駆けつけてくれたりと、恋人として日々を過ごしていた。

そんなある日のことだった・・・。

 

「レイ、今日試合でしょ?仕事終ったら観に行っていい?」

「おう、来い来い。チケット・・・ああ、あったあった。ほら、お前の特等席」

「ありがと♪じゃあまた夕方にね!負けちゃダメだぞ?」

「わかってるって。ほら、遅れるぞ」

 

エリシアは手を振りながら、アークス管制室へと続くテレパイプに乗り、消えていった。

 

俺は高くそびえる管制塔をみつめた。次々にキャンプシップが飛び立ち、今日もアークスがいろんな星へ調査をしに行くのだろう。そのどれか1隻に、エリシアは乗っているのだろうか・・・。

 

「さ、仕事仕事・・・」

 

今日の仕事はアークス専用の武器の輸送だ。どこぞのマフィア達からすれば喉から手が出るほど欲しがる物資なわけで、極まれに襲撃を受けることがある。

そのため、現役のアークスが一人、そして警備会社から数人が抜擢されて輸送にあたる。

 

「ええと、ええと、これがあれで、あれがこれで・・・ううん」

 

どうやら今回は新人だ。

 

まぁ積荷は大した武器でもないので問題はないだろう・・・。

 

「確認が完了し次第出発しますが」

 

俺は新人アークスに声をかけた。

 

「はい!よろしくおねがいしまひゅ!」

 

うわ、今こいつ思いっきり舌噛んだよ・・・大丈夫かな。

俺は先輩とトラックに乗り込み、エンジンをかけた。

 

「やれやれ、あれでもアークスかよ。レイのほうがよっぽど強そうじゃないか。なぁ?」

「それ、言わない約束っすよ先輩」

 

今居るのがC地区。ここから10キロほど離れたD地区へと荷物を運ぶだけの簡単な仕事だ。

 

 

そう、そのはずだったんだ。

 

10年前に鳴り響いたあのアラームがなるまでは・・・。

 

 

『緊急警報発令!緊急警報発令!アークスシップ内に多数のダーカーの反応を確認!繰り返します!アークスシップ内に多数のダーガーの反応を確認!C地区周辺区域の住民は速やかに避難してください!アークスの指示に従い、速やかに避難してください!』

 

「ダーカーの襲撃!?嘘だろ!?こんな近くで!?レイ、止めろ!」

「は、はい」

 

俺たちはトラックを降りて、新人アークスに指示を仰ぐ。

 

「ええとええとどうしようどうしよう!司令室司令室!応答願います!司令室!」

 

だめだ、完全にパニックおこしてる・・・。

 

「・・・!」

 

俺はすぐ傍に禍々しいフォトンを感じ取り、振り返った。

振り返った場所には赤黒いフォトンの固まりが渦を巻き、その渦の中心から巨大な虫の足がずぶずぶと生えてくる。

それも一つや二つじゃない、いくつも同じような現象が起きている。

これが、ダーカーか!

 

「ひ・・・ひぃ!殺される!殺されちゃうよぉ!」

「あ、おい!アイツあれでもアークスかよ!真っ先に逃げやがった!レイ、俺たちも逃げないとやばいぞ!」

「・・・先輩、どうやら逃げ遅れたみたいですよ。感じませんか?あいつが逃げた先にもダーカーっぽい気配感じます。完全に囲まれてます・・・」

 

これは・・・かなりやばそうだ・・・。

 

「ち・・・ちくしょう!どうすりゃいい。今すぐ助けを呼んで間に合うか!?」

 

俺はトラックのコンテナをこじ開け、アークスの武器を取り出した。

 

「おい!そんなことしたらお前・・・!」

「懲戒免職とここで野垂れ死に。どっち選ぶかなんて決まってるでしょ。先輩、退路は俺が確保しますんで、先輩は逃げてください。なぁに、俺は親父のおかげでフォトンを扱うことくらいはできるんですよ。あの弱虫アークスよりは役に立って見せますって」

 

コンテナの中に入っていたのは、ガンスラッシュだった。俺はその武器を手に取り、起動を確認する。

 

「よかった、俺でも扱えるみたいだ。逃げますよ、先輩・・・」

「お、おう!ほんと頼りになる後輩だぜ・・・!」

 

とにかく俺達は、あても無く逃げ続けた。俺は襲い来るダーカーの足を打ち抜き、動きを止めながら走り続ける。

 

「くっそ、救助はまだか!何処に避難すりゃ良い!」

「どんどん増えてやがる。とにかく走りますよ!先輩!」

 

こんな状況でも、俺が気になったことは自分の事ではなく、家に居る母のことと、そしてエリシアのことだった。

二人とも今どうしているのだろう・・・。

無事で居てくれればいいのだが・・・。

 

「うわぁ!なんだコイツは!?」

「っ!」

 

先ほどの4足歩行のダーカーとは別の2足歩行のカマキリのようなダーカーが急に現れ、先輩に斬りかかって来る!

 

「あぶねぇ!」

 

俺はその鎌をガンスラッシュで切り結び、弾き、コアに蹴りを入れ突き飛ばし、頭に弾丸を何発も叩き込み、コアにガンスラッシュを深々と突き刺した。

 

「はぁっはぁっはぁっ・・・ハハハッ!すげーよレイ、おまえすげーって!アークスみてーだ!ありがとよ、レイ!さっさとこんなとこずらかろうぜ・・・!」

「はぁはぁ・・・でも、どこにいけばいい・・・」

 

逃げてきた先は、地獄のような光景が広がっていた。

 

そこらかしこから火の手が上がり、ダーカーに殺されたであろう市民の遺体がいくつもあった・・・。

 

「レイー!レイお願い!返事して!レイーッ!」

 

どこからか、聞きなれた声が聞こえてくる。

その声は今にも泣き出しそうな声を上げてるエリシアだった。

 

「・・・先輩、どうやら生き残ったみたいですね。アークスの助けが来ましたよ。エリシア!こっちだ!俺はここに居るぞ!」

 

俺はさきほどのダーカーの奇襲をうけて負傷したであろう先輩に肩をかし、エリシアの声がするほうへと向かう。

ジェンダーピラートを着込んだエリシアは、俺を目視した途端全力で俺に駆け寄り抱きついてくる。

「レイ!良かった無事だったのね!」

「わっ!よせ人前だぞ!」

「え!?この人お前の彼女か!?」

 

先輩もその姿には大いに驚いたようだ・・・。

 

「・・それ、ガンスラッシュ?もしかしてレイが戦ってたの?一緒に居たアークスは?」

「我先に逃げ出したけど、行った先にもダーカーの気配を感じた。もしかしたらもう・・・」

「なんてこと・・・!アークスの癖に一般市民に戦わせるなんて!でもよかった、レイが無事で。・・・なんていうか、流石すぎるよ。ほんと、一般市民にしておくのがもったいないわ。でももう絶対、レイが戦ったりしないでね。ユニットだってつけてないほぼ丸裸同然じゃない。良かった無事で・・・本当に・・・。後は任せて、私がレイを守るよ」

「・・彼女に守られるなんて、バツの悪い彼氏だな。まぁ、わがままいってられる状況じゃないんで、任せるわ」

 

「まってね、今応援の人たちを呼ぶから。・・・こちらエリシア。生存者2名を確保しました。一人は負傷しています。至急救援をお願いします」

 

やれやれ、なんにせよ助かったようだ。

 

「ほら、コレ返すわ・・・」

 

俺はガンスラッシュをエリシアに渡した。

 

「・・・ねぇレイ。こんな武器で戦ってたの?よく無事だったね・・・」

「誰でも使えるガンスラッシュはそれしかなかったんだよ」

「っていってもこれ、ほんとに初期も初期。ただのガンスラッシュっていうか、むしろ訓練用?これじゃあダガンを倒せるかどうか・・・」

「うぇ・・・まじでか・・・ははは、人間死ぬ気になればなんでもできるもんだな・・・あはは」

「・・・ま、レイならコレくらいできて当然なのかもね。だってレイはレオンさんの息子なんだし・・・。あ、ほら助けがきたよ!」

 

むこうから何人かのアークスがこちらに向かって走ってきた。

アークスたちが周りのダーカーを殲滅し始めると、今度は救助艇がこちらに向かって飛んできた。

俺と先輩は、救助艇に乗り込む。

 

「レイ、私はまだ戻れないけど、絶対帰るから心配しないで待っててね」

「心配しないはずねーだろ?早く帰ってこいよな」

「わかってるよ。はい、指きり♪」

「は?やだよこんなときにこっぱずかしい・・・」

「いーからいーから♪」

「チッ」

 

俺はしぶしぶ小指を絡めようとしたが・・・。

 

「・・・・え?」

 

その小指は絡むことがなかった。

 

「エリシア!?」

 

エリシアの周りをさっきとは別の歪みが包み込んでいた。

 

「エリシア!」

 

俺はとっさに手を伸ばした。

 

「だめ!来ちゃダメ!」

「君!危ない離れるんだ!」

「緊急事態!ファンジだ!ファンジ発生!」

 

エリシアが突然現れた空間に引きずりこまれていく!

 

「何すんだ!離せ!離せよ!」

「君も巻き込まれる!」

「大丈夫、レイ。私は必ず帰るから安心して」

「何言ってんだ!手を伸ばせ!エリシア!」

 

目の前で、エリシアを包んでいた空間が元に戻り、エリシアは消えた・・・。

 

「えり・・・しあ?嘘だろ・・・?オイ!なんでエリシアを見捨てやがった!何で助けねぇ!」

「お、落ち着け!エリシアさんはまだ無事だ!・・・この区域のどこかに転送されただけだ!場所ならすぐに特定できる。すぐに付近のアークスが救出に向かう!君はすぐに避難を・・・!」

「ふざけんな・・・!お前らみたいなアークスに任せてられるか!我先に逃げ出して!目の前で易々とエリシアを危険にさらし、10年前親父を見捨てやがったお前らに!!!・・・どうしてエリシアを任せられるんだよ・・・!」

 

俺はアークスの端末を奪い、位置を確認する・・・。

そしてエリシアがさきほど落としたガンスラッシュを拾い上げた。

 

「オイ君!勝手な真似は・・・!」

「・・・・・・」

 

俺を制止しようとするアークスに斬りかかる。

 

「な!?」

 

アークスは慌てて俺と切り結び、何度かガンスラッシュを交差するが、俺はアークスのガンスラッシュを弾き飛ばし、眼前にガンスラッシュをつきつけた。

 

「・・・不合格だ」

「ま・・・まじかよ・・・」

 

その姿に先輩は唖然とするしかなかったようだ・・・。

 

「ハーッハッハッハッハ!!!やるじゃないか君ぃ!!!とぅ!!!!」

 

まるで拡声器をつかって叫んでいるんじゃないかと思うくらいの声がしたと思ったら、空から人が降ってきた・・・。

 

「困ったフォトンを感じ取り!俺、ただいま参上!!!」

 

なんだ、この暑苦しい奴は・・・。

 

「ヒューイさん!お疲れ様です!!!」

 

ヒューイ?じゃあこいつが六芒均衡の六?・・・世も末だな・・・。

 

「俺が来たからにはもう大丈夫だ!すぐに君の恋人を救出してやろうじゃないか!大船に乗った気でいたまえ!!!」

「はぁ・・・どいてくれ。自分で行く・・・」

 

素通りしようとした瞬間、奴が俺の腕を掴み、ガンスラッシュをとりあげようとしたので、俺は応戦する。

だが奴は俺の回し蹴りを易々とかわし、斬りつけたガンスラッシュを素手で弾き飛ばし、俺の裏拳をびしっと受け止めた。

・・・さすが六芒均衡、それだけで自分とのレベルの差を痛感した。

ただ暑苦しいだけのアホだと思ったが、こいつはマジで本物だ。

 

 

「・・・いい動きだ。なるほど、スカウト連中が目をつけるのも頷けるよ、レイ。そう、俺はお前を知っている。エリシア君のことは任務でときどき見かけている。彼女は実に優秀だが、そんな彼女がいつもいっていた。『本当は自分なんかより、彼氏のほうが全然アークスに向いている』と。確かに君なら今すぐにでもアークスにしたい。いいや!なるべきだと俺は思う!!!俺の権限でお前を今すぐアークスにしてやってもいい!お前もアークスになれ、レイ!!!」

「はぁ!?こんなときに何言い出すんだ!」

「こんな時だからだ!!!恋人を助けたくないのか!!!自分の手で!!!お前も男だろうが!!!これから先もアークスである以上、こんなことは日常茶飯事!時には命を落とすこともあるかもしれない。その時、お前は後悔しないのか!?自分が傍に居てやればと!!!そう、今のお前のように!!!!」

「く・・・!」

 

ああそうさ・・・。助けたいよ・・・。目の前でエリシアが危険に晒されてるんだ・・・。もしも、エリシアに何かあったら・・・考えるだけで足が震える・・・。

守りたい。これ以上大切な人を失いたくない。

ああ、今更だけど痛感する。

俺はこんなにも、エリシアを愛してしまっていた。

エリシアが居ない世界なんて、考えたくもない!!!

 

「・・・ああ、なってやるよ!エリシアを助けるためなら、悪魔にでもアークスにでもなってやる!今すぐ俺をアークスにしろ!!!」

 

決意する。俺は、エリシアを守るために・・・。アークスになる!

 

「・・・よく言った!六芒均衡のヒューイの名において・・・。レイ、お前をアークスに任命する。クラスは、ファイターだ!・・・そこの君!救助艇に緊急用のユニットがあるはずだ。すぐに持ってきたまえ!」

「一般人をいきなりアークスにするなんて、問題になっても知りませんよ!?」

「ただの一般人じゃないのは、お前も見ただろう。それに彼は、スカウトや元アークス、そして現役のアークス2名が強く推薦する逸材だ。特例処置に値するだろうさ!」

 

俺は渡されたユニットを身に纏った。

 

「ほら、これがお前の武器だ」

 

そういって、ヒューイは俺にツインダガーを渡してきた。

 

「さぁ、ぐずぐずしてる暇は無い。今まさに、君の恋人はピンチの真っ只中だ。すぐに行かないと彼女が危ない。いくぞ!ってオイ!俺より先に行くな!何かあったら問題になるんだから!!!」

 

俺は全力でエリシアの座標へと走った。目の前に湧いたダガンを蹴り飛ばし、ダガーをコアに突き刺して殺す。

 

背後に迫るダガンにもダガーを突き刺し蹴り上げる。

 

そして一気にフォトンを流し込んで殺す。

 

「ハッハッハ!見事だレイ!俺の目に狂いは無かった!あそこだ!あそこにエリシア君が囚われている!あの檻を叩き壊せばエリシア君を救うことが出来る!さぁ、行け!ここは俺が食い止める!」

 

走る。全力で駆け抜ける。迫るダーカーをすり抜け、とにかく一秒でも早くエリシアのところへ!

目の前に飛行型のダーカーが迫る。こいつを振りきることは出来そうにない。くっそ、もうエリシアは目の前だっていうのに!

 

「ったく、あんな説得一つでアークスになるくらいならとっととなれってんだ。待ちくたびれたぜ、相棒!そのまま走れ!」

 

目の前に居たダーカーを、聞きなれた声の主が蜂の巣に変えた。

見慣れた金髪のニューマン。俺の相棒、アフィンだった。

あいつもまた、エリシアを救出するために戦っていてくれたんだ。

 

 

「へへへ、俺も中々のもんだろ?相棒」

「ああ、流石だぜ、相棒!」

 

アフィン、感謝するぜ。お前はやっぱり俺の親友だ・・・!

 

親父、見ててくれてるか?成り行きだけど、俺はアークスになっちまったよ。

親父からみれば、まだまだひよっこで、足元にも及ばない。

そんな俺がおこがましいのかもしれないけど、俺はエリシアを守るためなら命を懸ける。

だから、今だけでいい・・・。

 

 

「親父、今だけでいい!エリシアを助ける力を貸してくれ!オウル・・・!」

 

両手の刃に全力を注ぎながら跳躍する。

 

「ケストラー!!!!」

 

斬る、とにかく斬りまくり、蹴りを叩き込み、そして両方の剣を突き刺したとき、エリシアを捕らえていた檻が割れた・・・。

中に居たダーカーを他のアークスたちが打ち抜き、霧散していく中。エリシアは息を切らしながらロッドを構えていた。

体中が傷つき、ところどころ血を流しながら、エリシアは膝から崩れ落ちる。

 

「エリシア!」

 

俺は倒れるエリシアを抱きとめ、声をかけ続ける。

 

「エリシア?しっかりしろよエリシア!おい・・・!」

 

途端に、エリシアがぎゅっと俺を抱きしめ、見たことが無いくらい泣きじゃくる。

 

「レイのばか・・・お母さんに泣かれても知らないからね!なんでアークスに・・・私がレイを守ってあげるって決めたのに・・・!」

 

エリシアは無事だった。

腕の中に感じる体温に安堵し、俺は立っていることができなくなった。

 

「バカ、お前を見捨てたなんてことになったら、勘当されちまうよ・・・ってか、お前に死なれたら、俺は生きてらんねーよ。エリシア、無事でよかった・・・」

「レイ・・・怖かった。怖かったよぉ・・・!もうレイに会えなくなるんじゃないかって、怖くて怖くて堪らなくて・・・!」

「ごめんな、エリシア。これからは、俺が傍にいるから。俺がお前のこと守るよ。エリシア、お前を愛してる」

 

俺はエリシアを抱きしめ、その唇に自分の唇を重ねた・・・。

 

 

 

―そして現在―

 

 

「ってことがあって、その後はいつの間にか二人で同棲を始めてたんだ!」

「アフィン、頼むから他のアークスに俺の恥ずかしいエピソード言いふらすのやめてくれ・・・!」

 

アフィンがなぜか俺とエリシアののろけ話をオーザとマールに言いふらしている場面に遭遇した俺は、穴があったら今にでも入りたい気分になった。

 

「なーんだよぅ!あの時は皆が見てるってのにちゅーしてたじゃんかぁ!もう二人でがっしり抱き合っちゃってさー?むっちゅーって!あっはっはっはっはっは!」

「アーフィーン!!!」

「あっはっは!うわあぶね!こんな所で武器振り回すな!冗談だってば冗談!」

「意外だわ・・・てっきり恐妻家だとおもってたのに」

「というより、酔っ払って裸踊りなんてしてるレイが、自分の恋愛話になるとあんな恥ずかしそうにするんだな。よっぽど裸踊りのほうが恥ずかしいと思うのだが・・・」

 

そんなこんなで、俺は今もアークスをしている。そしてもちろん・・・。

 

「レイ、任務受注してきたよ。今日はアムドゥスキアの火山探査ね」

「おう、サンキューエリシア。このバカ絞め殺したらすぐ行く」

「ぐえぇぇ!ぎぶぎぶ!そろそろほんとに死ぬぅぅぅ!」

 

 

エリシアも一緒だ。

 

 

「ん?何よ、急に手なんて繋いで・・・」

「別に?大した理由はないよ。繋いでたいから繋いでるだけだ」

「・・・ふふ、仕方ないなぁ。繋がれてあげる♪」

 

親父、見てるか?

俺は親父に負けないくらい強くなって、エリシアを守り抜いてみせる。

とりあえず、その天国の特等席から、俺の活躍を見逃すなよな!

 

「さぁ、ショータイムだ!ど派手に行こうぜ!!!」

「はいはい。着いた矢先にハイテンションにならないの。エネミーまだ居ないんだから寒いだけよ?」

「・・・ハイ」

 

 




ここまで読んでいただき有り難うございます。
感想やご意見をいただけると、尚幸いです。
交流や意見交換など、これからも沢山行って行きたいと思っていますので、どうぞよろしくお願いします。

近々、別サイトに掲載しているオリジナル作品のほうも投稿してみようかと思っています。
ただ、主人公とヒロインの名前が同じです。
若干の混乱はあるかもしれません。

一応理由はあるんですw

言い訳はまたの機会にw

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