異分子兵士、提督となる 作:遊々自適
私事ですが勤務先が変わってしまいドタバタとしております。
そのためGWが明けるまではちょっと更新も怪しい感じです。
なんとか頑張ります。
そしてお知らせしていた通り、説明回になります。
「ちっとはマシな面構えだ。これから嬢ちゃんたちのこと、よろしく頼むよサクマの旦那」
「こちらこそよろしくお願いしたい」
「それでサクマの旦那がやりたい事ってのは、旦那が
五月雨が親方さんと呼んだ妖精は、尋ねるというより確証を持った確認としてムラサキに問うと、どこからとなく煙管を出して咥え煙をくゆらせ始めた。
「確かに。しかし五月雨にも詳細に話していないのだが……」
「親方さんは”鎮守府妖精”さんですから何でもご存じなんですよ!」
「分からねえって顔だなあ。嬢ちゃん達も理解してねえってか初めてあたしに会う娘も居るんだったっけ。いやぁイケねえなあたしは嬢ちゃん達のことをいつも見てっからついな」
「流石長門さんですね!」
「む、まあな」
(長門ったら勘違いしてたわね、ふふ。今回は黙っててあげましょうか)
親方が煙管をクルリと回して腰かけている移動白板をカツンと叩くとデフォルメされた艦娘と船の絵、その間にシルエットだけの妖精の図が浮かぶ。
「よし。じゃあちと長くなるがよく聴け。
「ですが親方さん、私たちは守護妖精という妖精さんに会ったことがありませんよ?」
「そりゃそうだ。守護妖精はあたし同様、この世界を
「ふむ。だがそれだと親方が今自分達の目の前に現れていることはおかしくないだろうか?」
「それはあたしには
「なるほど」
この時点で情報検索端末から知識を得ていたムラサキと、誕生前から与えられていた知識に頼る艦娘たちとの間で理解にひらきが生まれた。
「いやいやいきなり分霊だとか言われてもさぁ、そりゃあたしたちだってなんとなくならわかるけど……」
「難しかったかぁ? そうだな艦内神社なんかも分霊の一種と言えんこともないが、いやちょうどいい。
「九六式艦戦と九九式艦爆と九七式艦攻だけど」
「よし。じゃあ
親方はニカっと笑って二人を走らせる。戻ってくるまでに隼鷹は白板の横にずっと立たされて少し居心地が悪かったらしい。
「じゃあ旦那。まずは
「ふむ、了解だ」
普段ドジな部分が目立つものの気配り上手な五月雨が持って来た仕舞い込まれていたみかん箱でムラサキは隼鷹の装備更新の書類を書き進めていく。まあみかん箱である辺りが五月雨クオリティとでも言うべきか。
「よしよし。ちなみに旦那、今降ろした艦載機を運んでるのが”工廠妖精”の連中だ。んで
「この娘たちは親方や守護妖精とは別なのか」
「大きくは同じだ。旦那の下に
「それであたしはどうしたらいいのさぁ~!」
「じゃとりあえず発艦!」
親方に指示された隼鷹は一度提督に確認の視線を送り、彼も頷いて応える。
艤装を展開した隼鷹は飛鷹と同じように巻物を持っており、それを広げると飛行甲板が描かれていた。隼鷹の手に勅令の字が浮かび巻物の上を滑らせると、人型だった紙が徐々に先ほど見た九六式艦戦の姿へと変わり、十二の艦載機が空に舞い上がった。
「おぉいいぞ! それじゃあ着艦だ」
「今発艦したとこだって!」
「知っとるよ、見てたし」
「じゃあ」
「着艦だな」
「隼鷹、頼む」
「まぁ~、必要ってんならやるけど」
発艦した九六式艦戦が巻物の飛行甲板を滑り、一機ごとに人型の紙に戻ってゆく。
「じゃあ次は旦那、
「了解した」
この換装作業中、ところどころから「なるほど」「そういうことでしたか」など艦載機に理解の深い艦娘たちが親方の意図を察し始めた。
「終わったら
「あいよ」
先ほどと同じように舞い上がってゆく艦載機。しかし今度は数が増え十八の艦戦が空へと飛び立った。
「見て分かっただろうが同じ艦載機だ。空母は艤装ごとに運用可能な艦載機の数に違いがある。水上機を積める連中も差はほとんどないが同じだ。
「なるほど一人の”装備妖精”でありながら組む
「もともと言語概念で説明し切れることでもねえから、分かんなかったら不思議でいっぱいなんだ、位に思っとけ」
「いや発想というのは理解という下地無くして生まれないのだが」
「ああなるほど? 旦那は
ムラサキの考えを親方一人だけが先読みして理解する。
「なるほど確かに旦那一人で考えるよりも嬢ちゃんら全員からアイディアを貰った方がいいだろうなあ。でも旦那、新戦術だなんてホイホイ考え付くもんでもないぞ?」
親方の指摘によって艦娘達も理解が及んでざわめきが起こった。しかしムラサキの考えていた事はそれとも少し異なるようで。
「新戦術、と言えなくもないが自分としては戦い方を皆が間違えているように思うのだ。でなければ先の演習で自分がまともに立っていることすらできなかっただろうからな。それと隼鷹ありがとう」
「いやいいってこれくらい」
礼を受けて隼鷹は艦載機をしまって席に戻ってゆく。
「間違えているというのは具体的にどのようなことでしょうか司令」
「最も基本的なことだが攻撃が当たるか当たらないかは、その攻撃の軌道に居るか居ないかと言い換えられる。その居てもいい場所、居てはならない場所を見極めることを自分は教えようと思う」
「それは旦那の居た世界での知識ってことかい?」
「そう大仰なことではない。自分が戦っていた敵、修羅と呼ぶがそいつらは近接戦が多かった。そのままとはいかないが、ある程度研究され体系化された知識でもある。誰か協力をして欲しいが不知火、質問してくれた君に頼みたい」
「分かりました」
席を立って不知火が前に出る。ムラサキは簡易的に立ち回れるスペースを確保するために移動白板を少し押し、5m四方ほどの空間を作った。
「不知火は近接戦の知識はあるか?」
「簡単にでしたら」
「そうかならば問題はないだろう。速度は出さない、自分がこれからする攻撃を躱しなさい」
分かりやすく手刀の構えを取ったムラサキは不知火まで距離を積め、袈裟に切るように不知火の左肩目がけて振りかぶった手刀をゆっくりと振り下ろす。それを不知火は身を引き距離を取ることで躱した。
「そうだな。今不知火が見せたように攻撃が当たる場所から居なくなる、これが回避の基本だ。そしてここからは君たちが行う、銃撃、砲撃、爆撃についてだ。不知火、艤装を出して君の主砲を向けなさい」
「ですが」
「実際に撃つ必要は無いし、
少し挑発じみてはいるが事実艦娘達の共通認識として全て躱されてしまうだろうということは予想が出来た。そのため不知火はそれ以上何も言わず艤装を展開し、背部艤装に連結した連装砲をムラサキに向ける。
「この距離であれば砲弾の軌道はほとんど意味をなさない。よってまずは銃撃という扱いで説明をさせてもらうがこれは一番簡単だ。砲身銃口の直線状に居なければいい。そして簡単である理由だが、自分はあえてその直線状に一度入る方法を取っている。今自分は不知火の主砲を向けられ、その主砲の中が見える位置に居る。つまり
半歩右に体を置きムラサキは主砲の射線からそれる。
「ですが司令、それだと胴体や銃身内部が見えない位置を狙われていた場合は意味がないのでは?」
「良い質問だ。そこで次は砲撃の躱し方だ、先の演習で自分が使っていた方法でもある。砲撃の攻撃軌道は放物線だ、風等の影響はあるだろうが今回は考えないものとしよう。先ほどの銃撃の応用、さてどうすればいいか分かる者はいるか?」
「「「…………」」」
「ではヒント、放物線の軌道は上空から見れば直線の軌道になる」
「砲身の側面が見える位置に移動する、ですか?」
「正解だ不知火。今の状態だと自分の肩が狙われているが半身反らすだけでそれも外れる。そして今自分は不知火の主砲、その二つ共の側面を目にできる位置に居る。そして裏技もあるんだが、長門これは君が一番分かるだろう」
「ああ、接敵だろう」
「そうだ。これは危険を孕んでいるから知識として持っているだけで使うことは原則禁じる。今回ならば」
瞬く間に不知火へと近づき内側の砲を左手で掴み、外側の砲にその肘を添えて攻撃可能範囲
残る右手でムラサキは不知火の左手首を掴もうとしたが、不知火もまた反射的に迫る手を掴んもうとし、互いが握り合う形となった。
「おお凄いな。ここからの近接戦は必要と判断した段階で教える。それと不知火、よく反応したな。自分の手をこのように取ったのは君が最初だ、誇るといい」
ムラサキにとって自己判断とは言え他者からの初めての命中判定であったため、それをやってのけた不知火を素直に褒める。そしてそれは自然に彼の左手が不知火の頭を撫でた。
これに
「そして爆撃だが、これは流石に口頭で説明するしかないか。不知火、協力ありがとう」
「いえ、お気になさらず」
戻っていく不知火を眩しそうに見つめる姉妹艦の黒潮。
「なんでしょうか。……不知火に落ち度でも?」
「そんなキラッキラしてすまし顔されてもなー。嬉しいんやったらそう言いや」
彼の艦隊最初の