異分子兵士、提督となる   作:遊々自適

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すみませんが主人公が提督となるまでは艦娘たちの名前などは今のような表現でいきます。読みづらさ分かり難さなどご迷惑をおかけします。


第二話 投獄される

男を拾った艦隊が鎮守府に帰投する。彼女たちが向かう先にある防波堤、埋め立てられたコンクリの岸には多くの少女たちが同じように武装を纏って立っていた。

 

「凄いものだ、だが女子ばかり。男の兵士はいないのか?」

 

 男の問いかけに答える者はいなく、海を渡り時間が経つごとに―――鎮守府に近づくにつれ―――彼女たちの口数が減っていったのだ。そもそも男の問いには何一つとして返事からしなかったのだが。

 海底から坂になるように固められたコンクリに上がるとき少女たちの脚部に装着された装備が光の粒子へと変わって消え、替わりに一般的と見える靴を履いていた。

 

『全艦砲撃用意!!』

 

 岸の上で待機していた少女たちが装備する砲が、放送機器から聞こえる声に従い、男と男を拾ってきた六人に向けられる。

 男にとって異常すぎて理解できない状況だった。何者か分からぬ自分が砲を向けられるのはまだ分かる。そして自分を連れてきた少女たち、彼女たちに向ける理由を男は思い至らない。

 

 何よりも異常に感じるのは砲を向けている方の少女たちの方だった。向けられた六人の顔色が悪くなることは仕方ない。それ以上に。涙を流している子さえ――――――

 

(敵に対する脅えではない。この少女たちは同輩ではないのか?)

 

『何をしている!! 早く拘束しろ!!』

(すぐには殺されないか。ならば問題ない)

「君たちの上官だろう存在から指示が出ている。抵抗の意志は無い」

 

 男は牽引の為に掴まっていた縄で器用に自分の両手首を繋いだ。

 

「足の拘束をしてもいいが独房まで自分で歩いてもいい」

「着いてこい、陸奥」

「分かってるわ」

 

 装備服装に類似が見られる二人の少女に挟まれ男は歩いてゆく。男は学習していた。一兵卒でしかなかった自分がただ説得しようとするだけでは兵士が動くことはないということを。そして情報検索端末で得た知識を掘り起こしながら、主要施設と思しき建物に入り地下への階段を下った。

 

「悪いわね皆、あの人が洗脳されている恐れがあるって―――」

「そんなわけないでしょう!!」

「落ち着きなさい足柄」

「妙高とて本気でそう思っているわけではない。それで私たちはどうなるのだ? 地下牢の数は足りないだろう」

「ええ申し訳ないけれどそれぞれが自室で監視付きの謹慎になったわ。伊勢には日向、飛鷹は隼鷹、足柄は私、多摩と北上には球磨と木曾、電は暁よ」

「ちょっと待って、もしかして大井っち」

「あなたに砲を向けるなんてできないって暴れてね、艤装解体処分の上で牢に入れられたの」

「……そっか、大井っち暴れてくれたんだ」

「ごめんなさいね、私たちの目の前で―――」

「もういい妙高!!」

「そうね、皆は悪くないわ」

「天気もぐずりだしたし早く部屋に行こう。皆には嫌な役目させちゃったね」

 

 六人が装備を脚部の時と同じように粒子として囲まれて歩く。彼女たちの一団が進むのは男が入って行った建物とは別の三棟に分かれたレンガ造りの建物だった。周りを囲む少女たちが装備を粒子に変えたのは六人が建物の中に入った後だった。

 

 

 

 

「ここで大人しくしていてもらうぞ」

「分かった」

 

 牢の鍵がかけられ男を連れてきた二人がさらに牢に繋がる扉を閉じた。重厚な音が地下牢に響き渡り、間もなく静寂が包み込む。牢は六つ。男が入れられた扉に近い牢から並んで三つ。中央に通路を挟んだ向かいにも同じように三つ。

 

「いきなり牢からとはな」

「ちょっとあなた北上さんに変な真似してないでしょうね!!」

 

 男の入れられた牢の斜向かい、鉄格子を掴み射殺す視線と共に一人の少女が怒鳴りかけてきた。

 

「済まないが、自分は北上というのが誰を指すのかを知らない。自分を連れてきた少女で名を知るのは、電、多摩、伊勢の三名だ。が、君と同種の服を着たおさげ髪の少女の事であれば何もしていない。無論ほかの少―――」

「本当でしょうね!? 嘘だったら酸素魚雷をしこたま食らわせるから」

「誓って本当だ」

「まあ今は何もできないしその言葉を信じます。それより私の服なんてよく見えたわね」

 

 牢屋は暗い。照明は点けられておらず、扉にある定規ほどのガラス窓から入る廊下の光を差し込むのみだ。

 

「職業柄夜目が効く。もっとも今はその職も無いようなものだ」

「あなた何者なの?」

「兵士だ。いや、だったという方が正しい。この世界についてすぐに水場に落ち、こうして牢の中にいる」

「この世界って、まるで別世界から来ましたって言い方ね。嘘をつくにしてもおとぎ話よりもっと別の方がいいと思うわ」

「別世界の生まれだ。何より自分のいた世界にはあのように辛い水が大量に存在するなどあり得ないことだ」

「辛い水ねえ、海をそんな風に言えば嘘も真実味を帯びると―――」

「あの辛い水場の名は”海”と言うのか!!」

「っっ」

 

 男が少女と話し始めて、一番食いついたことが”海”だった。反応が急激に変わったことで少女が僅かにたじろいだ。

 

(なんなのいったい? 本当に何者よ!?)

「せっかくだ!! 他にも彼女たちが教えてくれなかったことを聞きたい!! いや待ってくれ、そうだ。済まない北上という少女にも尋ねたのだった。何もしていないは誤りだった。申し訳ない」

 

 男が床に頭を打った音が響いた。

 

「…………(本当になんなの、初対面の私の言葉に本気で謝ってきて)」

「サンソギョライが何かは自分も知らないができることならば自分は死にたくはない。腕一本で容赦して欲しい」

「……はぁ、いいわよ別に」

「ありがとう。右と左、好きな方で構わない」

「そうじゃなくて! 魚雷もいいわ。それ以前にあなた、アイツに殺されそうだし」

「アイツというのは?」

「ここの”提督”よ……」

 

 少女が発した”提督”という言葉。その言葉に奥の牢屋で脅えた気配がした。

 

「他にも誰かいたのか」

「お呼びみたいよ金剛さん」

 

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