異分子兵士、提督となる   作:遊々自適

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第六話 演習を開始する

*演習区画海域*

 

 鎮守府正面に浮かべられた八つのブイ―――妖精の謎技術としか言えないオ-パーツ―――によって各鎮守府と同期がなされ、立体映像という形で演習を遠く離れた鎮守府同士で行うことができる。本来であれば演習相手の目標艦に互いが攻撃しそのダメージ計算によって演習を行っているが今回は違った。

 一三四〇。件の演習(決闘)の開始を待っているところだ。その演習内容の立体映像が各鎮守府へと送られ観戦される、それぞれの提督達も流石の事態に普段の出撃や遠征任務を控えて、艦隊の旗艦たちや秘書艦を連れだって待機していた。

 

 余談であるが、この演習は艦娘に損傷(ダメージ)を与えない方法として重宝されており、ペイント弾や炸薬を取り除いた演習弾を使用しないことで国内の生産ラインを統一し資源の節約にも一役を買っている。その反面使用するのが全て実弾となるため練度の向上は演習と出撃遠征に絞られるというデメリットも存在する。

 

 男が用意された足場―――3m四方の浮島―――をタンタンと軽く足踏みをして確認している。波に揺られるものの非常に安定しており、嵐に巻き込まれるか直接力を加えなければしなければ転覆することもないだろう。

 

「では時間も近づいてきましたので試射の方を開始してください(`・ω・´) 各艦一度ずつで浮島からは20m以内を狙うことは禁止です。あ、それとそちらの敗北条件である海への転落時は漣たちで救助しますのでご安心を

(^Д^)」

 

 大本営から審判として遣わされた漣とその後ろに控える二人の艦娘、五十鈴と古鷹が男へ向けて手を振る。

 

「長門型、扶桑型、共に砲撃開始!! 赤城、加賀は艦載機発艦だ!!」

 

 提督の指示のもと戦艦である長門、陸奥、扶桑、山城が一度ずつ砲撃。正規空母赤城と加賀は艦戦を発艦させてそのうちの一機が浮島から25m外れた場に銃撃を放った。

 

「大人げないわねえ!! 戦艦4隻に正規空母2隻だなんてどこの海域攻略よ!!」

「仕方ないんじゃないかな、見せてもらった映像で争ってた感じだと。そのストッパーとして私たちが派遣されたわけだし」

「別に不満があるわけじゃないんだけど」

「二人ともあの人が負けると思ってるんですよね(・ω・) 総督(ご主人様)は『もしかしたらがある』って仰ってましたよ」

「いくら総督でも今回ばかりは……ねえ?」

「流石に戦力差があり過ぎるかな」

(漣もあり得ないって思いますよ。でも総督(ご主人様)の『かもしれない』はほとんどフラグレベルですし、何よりそれだけの読みが総督たる所以なんですよね~(~_~))

 

 

 

 

「天龍さんの言った通り大変なことになったわね」

「でもどうして響たちの部屋で観戦するんだい?」

「モノのついでだ、気にすんな」

 

 暁型姉妹の部屋に昨日と同じく天龍と龍田がやってきている。また響と雷、暁と電の姉妹である彼女たちも今日は全ての出撃遠征がなくなったため部屋にいる。

 

「そもそもこんな無茶苦茶なのを演習だなんて言わないわ!」

「大丈夫よ電。本当に危なくなったら大本営の艦娘たちが止めてくれるわよ!電の行動が無駄になる事なんてないに決まってるじゃない!!」

「果たしてそうなるかしらねえ?」

「龍田さんは彼女たちが止めないと思ってるのです?」

「天龍ちゃんはどう思う?」

 

 自分へ向けられた質問を窓際にもたれ掛って眺めていた天龍に流す龍田。天龍も慣れたものでこれに驚くこともなく普通に答えた。

 

「龍田が言いたかったのはそう言うことじゃねえよお前ら。あの男(アイツ)を見てて気づかねえか?」

「変わらずずっと立ってるだけなのです」

「そう立ってるだけ。戦艦の砲撃をすぐそばで目の当たりにしてだぜ」

「艦戦の攻撃はイマイチ分かり辛かったかも知れないけど、あの狭い空間で逃げ回るのはほぼ無理だと思うわ」

「なのに震えも怯えもしてやがらねえ。数的不利にも何もかもにだ」

 

 天龍達ふたりの説明を受けて彼女たちもハッと気づいた。砲弾が海面に着弾して生まれた波で浮島が大きく揺れてもバランスを崩すことなく男が立っていたことも。

 

「天龍ちゃんが目を付けた時点で分かってたことだけど、強者(やり手)みたいね」

「ああ、だが装備らしきものがねえ。反撃の手がねえのをどうする気だ?」

 

 天龍の瞳はこれから始まる演習(お楽しみ)を前に喜色に染まっていた。

 

 

 

 

「それでは時間となりましたので”臨時演習”を開始します」

 

 一四〇〇。漣の号令で演習が開始される。

 

「撃て!! 奴を蹴散らせ!!」

 

 提督に言われ、戦艦四人の砲が一斉に男へ向けられ放たれる。

 

(馬鹿がっ!! 貴様が望んだ試射のおかげで照準を簡単に合わせられるわ!!)

 

 放たれた砲弾が狂い無く男目がけ飛んでいく。提督は今回の編成で練度の高いモノの中で火力を持つ艦娘を集めた。もちろん一撃で全てを終わらせるためだ。その目論み通り砲弾が吸い込まれるかのように正確に放たれており、だが外れた。たった一歩で正確過ぎた砲弾が全て浮島の上を通過して海を揺らす。

 

「どうした? 躱すのは当たり前だろう。それすら頭に無かったとなると流石に呆れることもできないのだが」

「っく、艦載機全機発艦!! 奴を釘付けにしろ!!」

「っ全機ですか!?」

「そうだ赤城、やれ!!」

 

 慌てた様子の赤城と加賀に提督が命令する。これを受けて次々と艦載機が空に舞い上がってゆく。

 

「面白いな、矢が飛行機へと変わるなど自分の世界にはなかった技術だ!!」

 

 自分を攻撃するために放たれた艦載機に、新しい玩具を子供が目にしたかのように興味深く見つめる男。元より放たれていた艦戦が先行して銃撃を浮島の男に向けて仕掛ける。

 しかしこれも男はステップしターンしジャンプして次々躱す。合わせて放たれ続ける戦艦の砲も同じく。

 

「ちょっと漣! アレ!!」

 

 審判をしていた五十鈴が叫んで指差す先を見た漣と古鷹。そこには艦戦と共に飛ぶ艦爆、そして艦攻があった。

それぞれが爆弾、魚雷を投下して攻撃する艦載機である。それは男の回避を度外視した攻撃、足場となる浮島にダメージが行く。

 

「浮島への攻撃は反則です!! 今すぐ中止して着艦させて下さいヽ(`Д´)ノ」

「初めに取り決めていない以上反則とは言えないはずだが!? それにこれは演習だ、打てる手を使わぬなど愚かにもほどがあるというものだ」

 

 漣の抗議を取り合うような提督でもなく、そう言っている間にも艦載機は有効射程内まで進んでしまい、それぞれから爆弾と魚雷が投下される。

 投下されたそれを見た男は軽く飛び上がって体重を乗せて浮島の端を踏みつけた。

 

「はぁ!?」

 

 提督はあり得ないものを見たとマヌケな声を出し、艦娘達もモニターの向こうで見ていた者たちも一様に驚き固まった。

 

「見慣れぬ挙動一つで固まってどうする?」

 

 男の踏みつけ、その威力によって角を軸として反対側が浮かび上がり縦になるとともに投下された爆雷が海に沈んで爆発し、衝突先を失った魚雷が横を素通りした。男は浮島の縁を掴み、絶妙なバランスで浮島を倒すことなく浮かんでいる。

 

「さて、これで見せてもらえなかった攻撃手段も知ることが出来た。それでは演習を開始する(・・・・・・・)

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