亡者だよ! 全員集合!   作:ニンジンマン

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ダークソウルLv×12%≒OL原作Lv(少数点以下切り捨て)
みたいな感じで
※ご指摘により10%から12%へ変更しました


2

 カルネ村を襲撃した部隊の隊長であるベリュースは、どこでミスを犯したのだろうかと現状を嘆いた。

 茂みから突如として現れた赤髪の狂人と黒髪の美女を皮切りに、どこかの国の騎士のような風貌をした者たちが十数人も出現した。

 部下たちは屈強な肉体をした腰巻以外裸の男に殴り殺され、あるいは騎士たちに胸部を刺剣で一突きされ、巨大なクラブで叩き潰され……、気がつけば立っている味方は己一人のみ。そして、自分の率いる部隊を一方的に葬った集団のリーダーだろうと思われる男が、尻餅を付くベリュースの喉元に剣を突き付けていた。

 

「お前が隊長か。なぜこの村を襲っていた?」

 

「ひっ、ひぃぃぃぃぃぃぃ!!」

 

 スパルタカスがハイデの直剣をぐっと押すと、ベリュースは目に涙を浮かべて悲鳴を上げた。

 

「お、お、お願いします! 何でもいたしますから! い、命だけはぁ!」

 

「ならば、村を襲っていた理由を言ってもらおう」

 

 スパルタカスが顎でしゃくって、他のプレイヤーたちに集まるよう言外に言う。プレイヤーたちが集まったところで、ベリュースは口を開いた。

 

 

 

 ベリュースの言い分を聞いたスパルタカスたちは皆神妙な顔つきとなった。

 

「バハルス帝国ってなんだ?」

 

「スレイン法国ってのもなんだ?」

 

「リ・うんたら王国?」

 

「ガゼフ・なんたらかんたらって誰だし」

 

「知ってる?」

 

「知らん」

 

 プレイヤーたちが顔を向かい合わせると、口々にそう言った。

 そんな彼らの台詞にベリュースは呆気にとられた。バハルス帝国を知らない? スレイン法国を知らない? そんな馬鹿な、と。この者たちは一体何者なんだ……?

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 結局ベリュースは疑問を解消する間もなく、拘束されて村の倉庫の一つに収容された。

 スパルタカスは現在、礼をしたいという村長の案内で村長宅にいる。暫定的なリーダーであるスパルタカスが村長に村で休む許可を得たためか、プレイヤーたちは各々が好き勝手に村を見回っている。

 亡者状態で人前に出たくないマッチは、木陰で座りながら先の戦いを思い出していた。結局、戦いに一切参加できずに傍観しているだけだったが、彼の目にはあの場にいるプレイヤー全員が理性なき亡者に見えていた。何故皆、ああも残酷な行動を何とも思わずに行えるのだろうか? やはりここがゲームの世界だと思っているのだろうか? ゲームの世界だから何をしてもいいと思っているのだろうか……。そんな暗い考えをしていると、すぐそばで足音が聞こえた。その方を見ると、クラーゲがじっとこちらを見ていた。

 

「クラーゲさん、どうかしましたか?」

 

 戸惑いがちに訊くと、クラーゲは、

 

「少し、隣に座っても?」

 

 と訊いてきた。マッチは断る理由が特に浮かばなかったため、首を縦に振った。周りの話では、どうやら彼女はダークソウル2の前作のボスとまったく同じ顔をしているらしい。その美貌に思わずマッチは喉を鳴らす。こんな美形のボスがいるのか、もしかしてダークソウルって神ゲ―か……などと思っていると、

 

「少し訊きたいんですが」

 

「えっ、あ、すみません」

 

 横顔をじっと見ていたのがばれたのかと思い、マッチは焦った。

 

「? あの、突然なんですが、マッチさんはソウルをどれくらい所持していますか?」

 

「ソウルですか?」

 

 本当に突然な質問に、マッチは面食らいながらも、3万くらいありますね、と答えた。情報交換時に得た情報によると、所持ソウル量のチェックは、見たいと思えばその量が見えるらしい。マッチもクラーゲへと、そちらは? と訊き返すと、彼女は1000しか持っていないと告げた。

 彼女の意図が読めないマッチは、

 

「どうしてそんな事を訊くんです?」

 

「……ちょっと、確認したいことがあって」

 

「確認したいことですか?」

 

「ええ……。マッチさん、ゲーム開始時に老婆たちの言っていたことを覚えていますか? ソウルを落とすなということと、ソウルがなくなればそれだけ亡者に近づいていく云々……」

 

 途中で説明が面倒になり、クラーゲは端折ったが、マッチは理解したのか、はい、と頷いた。

 

「マッチさんは亡者ですが、理性的で、現代人らしい振る舞いですよね。あの戦いの最中、あなたは震えて見ているだけでしたし」

 

「す、すみません」

 

 臆病者の自分を責められているのだと思い、マッチは頭を下げる。そんな彼に、クラーゲは慌てて、責めているわけではないですよ、と言った。

 

「……ですが逆に、生者のセイサイさんはまさに亡者でした。訊いたところ、戦う前の所持ソウルは0だったそうですよ、彼。今は144持ってるらしいですが、そのおかげか、纏っていた狂気のようなものがほんの少し落ち着いていました」

 

 クラーゲの言葉の意味に、マッチは驚いた。それでは、まるでゲームみたいではないかと。

 

「どうもありがとう、マッチさん。あなたのおかげで一つの疑問が解けました」

 

「いえ、どういたしまして」

 

「お礼といってはなんですけど、亡者から生者に戻らないってことは、もしかして人の像を持ってらっしゃらない?」

 

「持ってないです」

 

「そうですか。ならよかった」

 

 クラーゲが懐から人の像を取り出すと、それをマッチへと差し出す。

 

「貰ってもいいんですか?」

 

「さすがに、いつまでもその姿のままでいるわけにはいかないでしょう」

 

 クラーゲが苦笑を浮かべると、マッチはへこへこしながら彼女から人の像を受け取った。彼はおもむろに人の像を自身へと近付けると、それを一気に体へと押し付けた。瞬間、彼のボロボロの身体は綺麗な元の身体へと復活を遂げた。

 生者へと戻ったマッチの姿、その顔を見てクラーゲは、

 

(でた~。量産型パッチ)

 

 と失礼な感想を抱いていた。

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 太陽の後継者を自負するプレイヤー『YYY(ワイ)』はアイテム整理中に、見慣れないアイテムを発見した。そのアイテムの名は『篝火の剣』と表示されていた。使用回数3回という消耗品であり、見た目はよく見知った篝火に突き立てられているソレだ。使ってみたいという好奇心に駆られたワイは、早速その剣を村の広場、その中心へと突き立てた。

 すると――

 

『ボッ』

 

 という聞き慣れた音と共に、突き立てられた剣の周囲に火が出現した。やはりこれは、ゲーム内の篝火に突き立てられているあの剣なのだろうか。

 疑念は絶えなかったが、火を見ているとどういうわけか暖かい気持ちになる。今はこの火の暖かみを享受しよう。

 ワイは膝を折って篝火の前に座り、一息ついた。

 

「ワイさん、今のどうやってやったんすか?」

 

 いつの間にか向かいに腰掛けていたプレイヤーが訊いた。あちらも篝火に惹かれて座ったようだ。ワイはそのことに少し気分を良くすると、インベントリのアイテム欄にあると教えた。

 

「どうだ、あったか?」

 

「あるっす。ほら、これ」

 

 そう言って、『Yoroi(ヨロイ)』という名の女プレイヤーは、篝火の剣を見えるように掲げた。

 

「おそらくそれは3回限りの貴重なアイテムだから、無暗に使わない方がいいかもしれんな」

 

「げっ。これ、回数に限りあるんすか」

 

 ヨロイは眉を顰め、露骨に嫌そうな表情を作った。アイテム欄から確認してみると、確かに3という使用回数制限の数字が篝火の剣についていた。

 

「有効時間を検証したいところだな」

 

 ワイはそう呟いた。ゲームの中の篝火のようにずっと燃え続けていればいいのだが、ゲームの世界かどうか怪しいこの世界では、どうなるかはわからないのだ。数分、数十分後に消えてしまうかもしれないし、もしかしたら何日、何十日ともつかもしれない。

 彼はこの篝火を検証するために、しばらくこの村に厄介になろうと決めた。と、同時に周りが騒がしくなってきた。どうやらヨロイ以外のプレイヤーたちも篝火の存在に気づいたらしい。

 

「おおー、篝火ぃ!」

 

「やっぱりここって、ダクソの世界じゃねーか」

 

「ああ~、あったけぇ~」

 

「へへっ、ありがてぇありがてぇ」

 

 十数人のプレイヤーたちがぞろぞろと篝火へと集まっていく。それに対して、篝火の前に座れる周囲はそんなに広くはない。

 結果、渋滞を起こした。

 

「お前いつまで座ってんだよ」

 

「次座るの俺な!」

 

「早くかがらせろー!」

 

 がやがやと喧しいプレイヤーたちに、篝火の前に座っているヨロイが怒った表情をして、

 

「みんなー! かがりたければ自分たちで篝火作ればいいじゃないっすかー! アイテム欄に剣があるっすよー!」

 

 と叫んだ。自分のことは棚の上にあげて言う彼女に、ワイと彼女のやり取りを見ていた者たちからブーイングが起きる。が、それを見ていなかった者たちは、何も考えずに、我先にとその場に篝火の剣を突き立てていった。

 

『ドスドスドスドスドス』

 

『ボッボッボッボッボッ』

 

 計5人が5つの篝火の剣を、ワイの作った篝火の近くに突き立てた。

 それを見ていたヨロイは、うなじに手を当てながら、

 

「うわー、超もったいねえ」

 

 篝火の剣を使わせた元凶が何言ってんだ。ワイを含めた皆がそう思った。

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 村長宅の一室で、スパルタカスは村長からこの世界の国や情勢についての情報を聞いていた。ちなみに、自分たちの出自について訊かれた時は、『とんでもなく強い老婆のお化けに魔法で飛ばされてきた』という小学生が考えたような言い訳をした。したのだが、村長は『そ、そうでございましたか』などといって納得してしまった。納得したならそれでよし。と、スパルタカスは早々に自分たちへの質問の流れを断ち切ると、村長に質問攻めを開始したのだ。

 

「――でありまして、こちらがリ・エスティーゼ王国直轄地の城塞都市エ・ランテルででございます」

 

「なるほど。では、まず近場の都市はそのエ・ランテルという都市になるのですね?」

 

「はい。ですので、いろいろな情報が欲しいのでしたらまずは――」

 

 そこまで言って、村長の声は扉を開け放たれて出た、けたたましい音に遮られた。

 

「村長! 兵士の皆様が奇妙な行動を起こしておられます!」

 

 扉を開け放った村人の第一声に、スパルタカスは顔を手で覆った。どっかの馬鹿たちが浮かれて問題でも起してるのかと考えると、先が思いやられた。




OLのLvに換算した場合

マッチ Lv2

クラーゲ 約Lv99

スパルタカス Lv28

セイサイ Lv40
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