ダンジョンに道化がいるのは、恐らく間違っている。 作:猫パン
この話ができた理由。
気分転換に書いてて……アレンとベルって目以外同じじゃんって思ったから。
反省はしてない。後悔もしてない。
因みに続きは無い。
洞窟内、風切り音と共に苦しみ混じりの咆哮が響く。
音の中心に居たのは白髪の少年。
黒く染まった奇っ怪な左腕を振り回し、モンスターを切り裂いていく。
牛頭のモンスター……『ミノタウロス』は首を裂かれ絶命していく。
そして音の無くなった洞窟で一人、溜め息を溢した。
「はぁ……どうしてこうなったんだろう。」
彼の名前はベル・クラネル。
四時間前にこの街へとやって来て、ファミリアに入りたての新米冒険者である。
ーーーー△ーーーー
事の発端は所属した『ヘスティアファミリア』の実情を知ったときだ。
最近現界したばかりで眷属は誰も居ない、資金もない極貧ファミリア。
主神であるヘスティア自らバイトをして生活費を稼いでいる状況。
まあそんな状況ならファミリアを変えれば良いのだが、ベル自身がそれを許さなかった。
最も、他のファミリアからは外見で弱そうと判断され門前払いを食らっている為唯一拾ってくれたヘスティアに恩を返すためでもある。
ベルは状況を知った途端、
第二階層。
新米冒険者が経験を積みやすい、それくらいのモンスターしかいない場所。
ベルはそこで肩慣らし程度に近隣のモンスターを相手取っていた。
《弱いモンスターしか出ない》
という情報を信頼しながら。
だがそれは悪い意味で裏切られる。
突然響き渡る咆哮。
迫り来る足音の方向に顔を向けると、五体のミノタウロスが走ってくる。
明らかに下層のモンスターであり、新米が倒せるような相手ではない事は一目で分かった。
だがベルは、慌てることなく冷静に対処する。
帰ったらギルドに文句を言ってやろう、そう思いながらその言葉を口にした。
「
ベルの左腕が変化し、黒い鉤爪状の
そして左腕を中心に、真っ白なマントが展開され最後に仮面が装着される。
展開後、ベルは冷静にその左腕を繰り出した。
「ヴァァァ!!!」
「煩いよ。」
繰り出された左腕により、首を切り裂かれたミノタウロスは絶命していく。
その一撃で起こった出来事により、残り四体となったミノタウロスが一瞬固まる。
その一瞬の隙を突き、次の一体の心臓部を貫く。
モンスターは魔石と呼ばれるものを核にして動いている。
心臓部が魔石であり、それを貫かれれば否応なく即死する。
「残り三体。 次はどいつだ?」
ベルが黒い笑みを浮かべながらミノタウロスに歩み寄る。
全身に返り血を浴び真っ黒な左腕を振り回すその姿は、さながら悪魔のよう。
実力差を知ったのか、はたまた本能的に恐怖を感じ取ったのか。
ミノタウロス達はベルから距離を取り、逃げるように去っていく。
「逃がすか!」
そんな良い的に成り下がった獲物を、ベルが見逃すわけもなく。
「
右腕から延びた白い帯状の物が、三体のミノタウロスの心臓部……魔石を貫いた。
ミノタウロスの残骸が転がり、静かになったダンジョン。
そこにひとつの音が響き渡る。
グゥゥゥ。
「お腹すいた……帰ろ。」
空腹に耐えきれず、ドロップ品と魔石を集めて帰ろうとしたところで……
「えっ?」
ベル以外の声がした。
そこに居たのは蒼い装備を身に纏った金眼金髪の女剣士。
ベルも情報だけなら知っていた。
『ロキ・ファミリア』に所属する第一級冒険者であり、異種属間の女性の中で最強と謳われるLv.5『【剣姫】アイズ・ヴァレンシュタイン』
だがそんなことよりベルは別のことを考えていた。
(み、見られた!!!!どうしよう!!)
この状況についてではなく、見られてしまった対処法についてだった。
ベルは発動を解除しておらず、未だに道化の格好である。
そして見てしまった彼女、アイズは現状を理解できないで居た。
遠征を終えた彼女達ロキ・ファミリアの一行は十七階層でミノタウロスの群れに遭遇した。
彼女達にしてみればその辺の雑魚と対して変わらなかった、ただ問題はその内約半数が上層へと逃げたことだ。
彼女達なら問題ない、だが上層にはレベルの低い新米冒険者がいる。
Lv.1の冒険者にはミノタウロスを倒すことはできない、殺されてしまう。
故に道中ではぐれたミノタウロスを倒しながら急いで上層へと向かった。
彼女、アイズだけはその心配が特に大きく一人先行していた。他のメンバーが遅れているのはそのせいである。
しかし着いてみれば、どうゆうことかと目を疑った。
彼女がまず先に見たのは逃げ出そうとしていた三体のミノタウロス、そしてそれを貫く三本の帯。
そしてその先には右腕からミノタウロスを貫いた帯を出す少年。
白いマントから覗く装備は明らかにギルドから支給されるLv.1用の物だった。
「えっと……どちら様でしょうか?」
仮面だけを外したベルが作り笑いを浮かべながら話しかける。
「私はアイズ。ロキ・ファミリア所属、アイズ・ヴァレンシュタイン。 君は?」
「あー……えっとヘスティア・ファミリア所属、ベル・クラネルです。」
取り敢えずの自己紹介をする二人、そして間髪入れずにアイズが投げ掛けた。
「所でベル、さっきのミノタウロスを倒したの。あれは何?」
いきなりの呼び捨てに驚きつつも、やっぱりという表情をしたベル。
「やっぱり見てました?」
「うん、バッチリと。」
その返答を聞き、溜め息を吐きつつも見られたなら良いかと言った楽観的態度でそれを行う。
淡い光に包まれベルの神ノ道化が発動解除される。
そして左腕も元の黒い物へと変わった。
「それでベル。これは何?」
目の前で解除したからか、ベルの手首を掴み目に見えて興味深く聞いてきたアイズ。
だが……
(近い近い!鼻と鼻が引っ付きそうなくらい。それよりも怖い!)
女の子と言うより完全に歴戦の冒険者のオーラを発するアイズに、ベルは若干の恐怖心を抱いた。
だが、言うまで離さないと言わんばかりに掴んでくるアイズをどうしたものかと考えるベル。
「えっと……帰ってやらなきゃいけないことがあるので、また今度で良いですか?」
自らが考えうる最低限の言葉を絞り出した。
ーーーー△ーーーー
「エイナさん居ますか?」
「お帰りベルk ウワァァ!?」
早々に驚かれるベル。
無理もないだろう。全身血塗れなのだから。
「ななな、何で血塗れ!?」
「ん?ああすいません。つい癖で落としてませんでしたね。シャワー借りますよ。」
△ーーーー
「ベル君、返り血を浴びたなら落としてから来ようよ。その血生臭い状態で街を突っ切って来ちゃうなんて……」
「ハハハ、すいません。」
「はぁ、笑い事じゃないよ全く。それで数時間前に冒険者になったベル君は何の用なのかな?」
シャワーを浴び、さっぱりしたベルはとある一室でエイナと向かい合っていた。
「ああ、はい。換金について教わっていなかった事を思い出しまして。」
「と言うことは早速狩ってきたの?換金するまえに私に見せてもらっても良いかな?」
「はい、これですね。」
そう言いながら一個ずつ魔石の欠片やドロップ品出していく。
ゴブリンの魔石の欠片 25個
コボルトの魔石の欠片 18個
ミノタウロスの魔石の欠片 5個
ミノタウロスの角 3個
「ってまてまて!!何でミノタウロス!?ベル君、君は何処まで降りたの!?」
「何処って二層ですよ。いやービックリしましたよ。下層から上がってくるモンスターも居るんですねぇ。」
ベルの言葉に絶句するエイナ。
ベルは今日冒険者登録をした新米だ、つまりLv.1。
ミノタウロスはLv2の冒険者がパーティーを組んで漸く1匹倒せるようなモンスター、それをLv1でしかもソロで5匹倒したような口振りに驚愕を隠せない。
魔石の欠片はモンスター一体倒せば1個ドロップする、5個も持っている時点で倒したのは明白だ。
「ベル君……本当にミノタウロスを一人で倒したの?」
「はい。あ、それと倒した後にアイズさんに色々聞かれましたね。あの人、見た目に反して以外と怖いんですね。」
最早何も言えなくなった。
もう何を言っても意味がない、そうエイナは判断した。
「取り敢えず換金所まで行こうか。案内するよ。」
二人は本部内の換金所へ向かった。
ベルが倒したモンスターの魔石の欠片、どういう風にこの場所を使えば良いのか手解きを受けながら換金していく。
ゴブリンとコボルトの魔石の欠片、合わせて5,000ヴァリス
ミノタウロスの魔石の欠片は5個で10万ヴァリス、ミノタウロスの角は3個で3万6,000ヴァリス。
今回の収穫は14万1,000ヴァリス、隣で冒険者一日目の成果じゃねぇよといった顔をしているエイナが居た。
「エイナさんありがとうございました。」
「困ったことが有ったらまた何時でも。」
入り口まで来たエイナに別れを告げ、簡単な会釈をしてベルは街の雑踏へと走って行った。
ーーーー△ーーーー
迷宮都市オラリオ。
ダンジョンと呼ばれる巨大地下迷宮の上に建てられた巨大都市。
ダンジョンを管理する『ギルド』を中心に栄えるこの都市は
そんな街を、ベルは人気のない裏路地を幾度も曲がる。
たどり着いたのは廃墟と言われても否定は出来ないであろう教会だった。
内部は半壊し、床のタイルは所々剥がれ草が生えていた。
天井は崩れ落ち、そこから降り注ぐ日差しが祭壇を照らしている。
ベルは戸惑うことなく祭壇を通りすぎ、その先にある地下へと続く階段を降りていく。
降りきったベルは光が漏れるドアを開け放った。
「ヘスティア様、只今帰りました。」
ドアの向こうには、廃墟の先にあるとは思えない程に生活感がある小部屋だった。
その小部屋のソファーでモゾモゾと動いていたものが、ベルの声で読んでいた本を投げ捨てバッと起き上がる。
外見で判断するなら幼女、もっと言えばロリキョヌー。
ベルより小さい、ヘスティアと呼ばれた彼女は音を立てながら近付いてくる。
「やぁやぁお帰りベル君、初めてのダンジョンはどうだった?」
「はい、凄く楽しかったです。初日とは思えない程の収穫も有りましたし。」
ベルが話し掛けたヘスティアと呼ばれた彼女。
黒髪ツインテールの美少女、将来成長すれば絶世の美女になることが約束されていそうだが……彼女が成長することはありえない。
彼女は神。
姿形が変わることもなく、老いることも死ぬこともない。冒険者やモンスターとは違う『
「それは良かった。あ、そうだ。そう言えばベル君とは契約しただけでステイタスを見せて無かったね。ささ、服を脱いで寝っ転がって。」
「はい、分かりました。」
ベルは言われた通り冒険者用のライトアーマーとインナーを脱いでいく。
上半身を包むものが何もなくなり、漆黒に染まった左腕が露になる。
手の甲に
ベルは不意に後ろを向く、その先にあるのは姿見。
注目していたのは自身の背中だった。
ヘスティアが契約時に刻み込んだ
「ささ、寝た寝た。」
ベルはヘスティアに促されるままベットにうつ伏せになる。
そしてヘスティアがベルのお尻辺りにピョンと飛び乗る。
「それにしても、すごいよねこの腕。」
「そうですか?」
会話をしてる間も、ヘスティアはベルの背中を撫でる。
そしてヘスティアは自らの指に針を刺し、その滴る血をベルの背中に垂らす。
その血はベルの背中に、文字通り波紋を広げながら吸い込まれた。
「そうさ、僕も聞いたことしかないけどそれは旧世代に存在していた
そう言いながらも、ヘスティアは垂らした血を指でなぞり刻印を施していく。
既に刻み込まれていた神聖文字が書き加えられ、別のものへと変わっていく。
これこそが神々が地上で使うことを許された唯一の力。
『
成し遂げた事の質と量の値、経験値。
神は経験値を使い神聖文字を塗り替え、レベルアップ…能力向上などを行う。
「生まれたときから持っていたので、実感湧きませんねぇ。」
「まあそんなものさ。はい終わり、書き写すからちょっと待ってね。」
ベルが着替えを始めている隣で、ヘスティアが神聖文字を現代文字にしながら羊皮紙に写していく。
ベル・クラネル
Lv.1
力: ???→D562
耐久: ???→C611
器用: ???→C620
俊敏: ???→B783
魔力: ???→E400
悪運: A
魔法
【???】
スキル
【
・早熟する。
・懸想が続くかぎり効果持続。
・懸想の丈により効果向上。
【
・爪《エッジ》と攻魔ノ剣の二つの形態が存在。
・攻撃力防御力共に上昇。
・?????
・宿している限り大食い。
それは神であるヘスティアが見ても異様な光景だった。
初期値が不明、これだけでも異常なのにその後のアビリティ上昇値が可笑しかった。
(何でLv.1で全アビリティが400以上なのかな!?)
「ん?どうしました?ヘスティア様。」
思考に集中していたヘスティアは話し掛けられ事でビクッと震える。
「な、何かなベル君。」
「いえ、ボーッとしていたようなので…そうだヘスティア様、ファミリア結成祝いに何処か食べに行きましょう。食費は出しますので。」
「あ、言ったな?僕はよく食べるから、覚悟しておいてくれよ?」
現状の悩みよりも目先のご馳走を取ったヘスティアだった。
「あと一言言って良いかい? ベル君のバグ!」
「何故に!?」
ーーーー△ーーーー
夜になりベルはヘスティアを連れ、メインストリートにある一軒の酒場『豊穣の女主人』へと来ていた。
この酒場はベルがこの街に来て直ぐに向かった場所だ、この場所で色々な情報を仕入れていた。
「なんだいあんたまた来たのかい。」
突然の背後から声を掛けられヘスティアはビックリしてベルの後ろへと隠れた。
「ああ、女将さん数時間ぶりです。今回はファミリア結成祝いと言うことでちょっとした祝杯をと思いまして。」
「そうかい!そうかい!あんたの食いっプリは気に入ってるからね。さあ入った入った!」
そう言って、中へと入っていく女将さんの後ろを着いていくベル。
その後ろをまるで妹のように着いていくヘスティア。
そして二人でカウンターへと座る。
「さあヘスティア様、どんどん頼んじゃってください。」
ヘスティアとしては内心ドキドキだった。
連れてこられた店は(ヘスティアにとって)高級な料理を出す店で(ヘスティアにとry)夢であった場所だ、だからこそいくらベルが出すと言ってもあまり高い物は止めようと思うヘスティアは……
「じゃ……じゃあ、無難にパスタで。」
比較的安く、尚且つ贅沢な物を頼んだ。
「はいよパスタね。」
女将さんは準備に取りかかる。
「じゃあ僕は……」
そう言おうとしたところで
統一性を感じない、冒険者の集団が入ってきた。
全員が生半可じゃない実力者……
(って何でいるの!?)
ベルは目を見開いて驚き、咄嗟に反対側を向いた。
ベルが見たのは輝くような金髪、っというか昼間会ったアイズ・ヴァレンシュタインその人だった。
そしてもう一人が音頭をとり……
「よっしゃ今日はダンジョン遠征ごくろうさん。今日は宴や、みんな飲めぇ!!」
そこから『ロキ・ファミリア』の面々は騒ぎ出した。
ガキンとジョッキをぶつける音が響き料理を豪快に口へ運んでいく。
そこでベルは思い出した。
そう、自身は昼から何も食べてなかったと言うことを。
故に気付かれるとかそんな小さな事を気にする気が無くなり。
「女将さん!僕も注文を」
「はいよ、なんだい?」
「取り敢えずメニューに書いてあるもの全部ください。」
そう言った途端、ワイワイと騒いでいた店内は静まり返った。
ーーーー△ーーーー
ロキ・ファミリアの一行、主神であるヘスティア。果ては従業員にまでも唖然とされているベル・クラネル君。
そんななか唯一笑って居たのは女将さんだけだった。
「あれ?モグモグどうしたんですか?モグモグ皆さんモグモグ」
直ぐに生成された皿の山。
一見して30人分はあるであろう量を、たった一人で食べているのだから驚きだ。
「ベル君……君がそれほどの量を一人で食べているからだよ……」
ヘスティアが驚きつつも言葉を捻り出す。
「というかベル君お金大丈夫なの?僕そんなお金持ってないけど。」
「もふ? んん、もふもふふももふふ。もふふもふももふふも。(ん?ああ、大丈夫ですよ。これでも稼いでるんで。)」
「ごめん、流石の僕でも何言ってるかわかんない。」
そんな茶番劇を繰り広げているベルのもとに近付いてくる人影。
「ベル、数時間ぶり。」
例の彼女、アイズ・ヴァレンシュタインがやってくる。
「僕としてはこんなに早くは再会したくなかったかな、アイズさん。」
飲み込んだベルがそう答える。
そしてロキ・ファミリアだけじゃなく、店内が驚愕する人間で溢れ変える。
まあ、例えば
(あの浮わついた話が一切無いアイズ・ヴァレンシュタインが呼び捨てで呼んだ……だと。)とか
「それでベル、あの時ミノタウロスを倒した物について教えてほしい。」
そして、ある意味爆弾を投下した。
「べ、ベル君!君は今日契約したばかりなのにあのあとそんなことをしてたのかい!?」
そしてヘスティアが輪を掛けるように追撃する。
今日契約したLv.1という情報はこの場にいる全員が驚愕するに足る物だった。
「(なんでこの場で言うのかなこの人達は……」
まあ当の本人は、別に隠している訳ではなかったけど情報が一人歩きして面倒極まりない状況になり困り果てているような顔をしていた。
「その話、うちにも聞かせてえな。」
そしてそこに、悪ノリするようにロキが近づいてくる。
「君には関係ない話だと思うけど?」
「関係ない訳があらへん!アイズたんが関わってる時点で大有りや!」
そしてヘスティアと取っ組み合いを始めるロキ。
いがみ合う神様二人が退場したことで、再びベルと対面になるアイズ。
その真剣な表情に、ベルが折れた。
「はぁ……分かりましたよ。ある程度ならおしえて……」
「おいてめぇ、さっきから調子に乗ってんじゃねぇ!」
ロキ・ファミリアの一人の獣人、ベートローガが声を荒げた。
「さっきから調子に乗りやがって!何よりその態度が気に食わねぇ!!」
何を言っているのか分からなかったベル。
「僕の何処を気に入らないと?」
「はっ!全部だ。ミノタウロスを倒したのだってマグレだろう?
Lv.1の雑魚が意気がってんじゃねぇ!」
ブチッ
「ミノタウロスごとき雑魚を逃したお前には言われたくないな。」
ベートの台詞によりベルが静かにキレ、そして言い返した。
そして酒場の空気が凍った。
ベート・ローガは強者の部類に入る。
血ヘドを吐く程の厳しい訓練に耐え、必死にあがき続けたLv.5だ。
強者故に弱者を嫌う。
覚悟の無いやつが戦うなと。
故に弱者という言葉を返されたベートは、自分が誰に喧嘩を売ったのか教えてやると……
「てめぇ、表出ろ。」
そう言い放った。
だがまあ、ベルにも同じ感情があるにはあった。
自らが生きるために師事し、鍛え戦い抜いた10年間をたった一言 雑魚と切り捨てられた。
「口の次は拳か……良いでしょう付き合ってあげますよ。」
そして二人は外へ行こうとして……
「二人とも本気で戦って。」
あろうことかアイズがそう言った。
「ちょアイズたん言うてることわかっとるか!?」
「分かってる。今ならベルのあれが見れるかもしれないから。」
確信めいた発言にベルは溜め息を吐く。
「はぁ、本当はもう少し行けたはずなんだけどなぁ。」
そう言いながらも割りと乗り気だったベル。
「まあ良いでしょう。ベートさん、貴方も本気で来てください。僕も本気で……」
(
「貴方を倒します。」
ーーーー△ーーーー
ベートとベル、二人が激突しているなか後ろではロキが驚愕していた。
ベルの強さではなく、その身に宿しているものについて。
「なんやあれ、あないなもん人の身で宿していいもんとちゃう。」
ロキが注目したのはその神秘性だ。
魔法による属性付与ではなく、最初から属性が宿っている。それも神と同質の神聖属性が。
「ヘスティア、あんたあの子に
「ん?使ってないよ。それに、使ったとしてもオラトリアにいる神ではないのは確かだね。」
ヘスティアは確信を持ったような言葉を言った。
「そもそもあの腕は僕の所に来る前、それこそ生まれたときから持っていた代物らしいし。神の力を使ったとしてもベル君の
「せやけど、あないなものは……」
ロキにとっては信じられないことだった。
神によってもたらされた恩恵を用いて戦うのではなく、神と同質の力を使う人間……ベルのことが。
そんなロキの視界の端では今も二人は戦っていた。怒りを露に己の武器すらも本気でぶつけるベート。そんなベートの蹴りを左腕一本で受け止め右腕で殴りかかるベル。
Lv.5とLv.1が互角以上に渡り合っている。
異常な光景だった。
そんななか……
「そろそろ(やめて)ストップだよ(ベートさん)ベル君」
ヘスティアとアイズが双方を止めた。
激突していた二人は止められてムスッとしていたが互いにスッキリとした顔であった。
拳を交えることで何かを得たのだろうか。
ベートは舌打ちをし、隠しきれない笑みを浮かべながらもダンジョンへと向かった。
一方のベルは……
「えっと……どういうことで?」
再度酒場のテーブルへと連れられロキ・ファミリアのメンバー、及びヘスティアを含むその他大勢に囲まれていた。
「うちん所のメンバー全員が君の使った物に興味があるんよ。」
聞きたそうな面々はロキを代表してそう言った。
ベルはヘスティアへと助けを求めるように視線を送る、だが……
「良いじゃないかベル君。スキルの詮索は御法度だけど、君のそれはスキルじゃない。ほら。」
頼みの綱である主神すらも相手側に着いた。
ガクッと肩を落とし、ヤケになりながら口を開いた。
「師匠に聞いた話では、旧世代の神自身とも神の力そのものとも呼ばれている
話によればその数は109個有るらしいですが……僕にはわかりません。」
ロキ・ファミリア、ひいては聞いていたもの達にとってそれは驚愕する情報であった。
そんななかアイズが、
「ベルのはどんな物なの?」
誰もが気になるであろう事を聞いた。
「僕の、ですか。そうですねぇ、これと言って特徴は無いんですけどねぇ。」
そう言いながら左腕を見せる。
「イノセンスを用いた武器の形状は二種類あって、僕みたいに人体と融合している寄生タイプとイノセンス単体で武器になっている装備タイプがあります。現在は発動していない状態ですが、これが僕のですね。ただまあ、デメリットも大きいんですが。」
「それってどんな物があるの?」
「そうですね。まず装備タイプはイノセンスとの繋がりが寄生タイプより弱い分適合者にかかる負担も少ないですね。寄生タイプは繋がりが大きい分負担も大きいですが、より強い力を引き出せます。」
ほへー。
約一名位頭から湯気が出ていたが、気にせず話続ける。
「あと寄生タイプは装備タイプに比べて寿命が少し短くなり、そしてそれはもう大食いです。」
「だからあんなに食べてたのか。」
「はい。あ、そうそう僕のイノセンスでしたね。名前は
ズコッと一同スッ転ぶ。
「そんな簡単に教えるわけ無いじゃないですか。」
そう言いながら胸を張るベル。
やり返したつもりなのだろうか。
そして一行は、再三宴会騒ぎとなり解散となった。
まんま退魔だと面白くないじゃんw
ベル・クラネル
迷宮都市オラリオに来る前は、師匠の元で様々な事を学びながら色々な所を転々としていた。
そして師匠の事はベルの中でも特に強いトラウマ。
生まれながら
臨界した段階の心構えが異なり、カースド……つまり呪いを宿している。
退魔ノ剣ではなく攻魔ノ剣に変質。
攻魔ノ剣
実体非実体問わず切り裂く呪いの魔剣。
自然治癒阻害及び回復効果の無効の呪いを宿しており、ベルは好んで使う形態ではない。
あと賭け事全般では負け無し
(イカサマ)