あと、今回で陵牙の過去が少しだけ明らかに…?
今回、少し残酷な描写があります。
俺達は今、白銀の雪が覆う国、ルウィーへと来ていた。
「わ~!綺麗な町!私、一度来てみたかったんだ!」
「凄いな…」
ネプギアが目を輝かせながら町を見渡す。
俺の住んでいた町では雪はほとんど降らない。そのため、こういった雪景色は何気に初めてだ。
そして何より、道行く人が笑顔にあふれている。こういった町になっているのもブランさんのお陰なのかもしれない。
「でも、予定よりだいぶ遅くなっちゃったよね~。陵牙のせいで!」
「…面目ねえ…」
実は俺、ルウィーに行く直前まで例の番犬所で魔戒剣の浄化、さらに洞窟内の探索を時間を忘れてやっていたせいで予定時間より30分遅れてしまった。
「ネプテューヌ。あんまり陵牙を責めない方がいいわよ。ちゃんと本人も反省してることだし」
助け舟を出したのは、目の前に座っているノワール。
そんな会話の中、俺はポケットから『赤い封筒』を取り出す。
「それ、何ですか?」
ネプギアが気付いたのか話しかけてくる。
「ああ。番犬所…例の遺跡のテーブルに置いてあったんだよ」
封筒の正体は『赤の指令書』。
番犬所の神官たちが魔戒騎士にホラー討伐の指令を綴った封筒である。
尤も、誰があの場所に置いたのかわからないが、これが届いた以上確認しないわけには行かない。
俺はポケットから魔界の炎が入ったライター『魔導火』を取り出し、ネプ
テューヌに聞く。
「一応聞くけど、少しだけ火ぃ使っていい?」
「え?うん、いいけど…」
俺は指令書を魔導火で燃やす。
すると、空中に文字が浮かぶ。
「『幼き女性の悲鳴と命を好むホラー現れし。これを討滅せよ』…か」
「どういうこと?」
「多分、少女ばかりを狙うホラーがいるのかもしれない。教会に行ったら
俺はブランさんに聞いてみるよ」
俺は魔導火をポケットにしまう。
―――――――
ルウィーの教会の一室。ドアや窓は全て閉められており、その中心で2人の人物が話をしていた。
一人はこの国の女神、ブラン。そしてもう一人はリーンボックスの女神、ベール。
「よろしいのですね?この計画を実行すれば、世界に革命的な変化が訪れますわよ?」
「承知している…実行まで絶対にばれないようにしないと…」
そんな重要そうな話をする中…
「キャハハハハハ!!!!」
「お待ちなさああい!!!」
「逃げろ~!」
「ロム様!ラム様!」
外が騒がしい。その理由はブランの妹であるロムとラム。
悪戯がばれてメイドに追いかけられているらしい。
ブランの堪忍袋の尾が切れ、ドアを荒々しく開けて叫ぶ。
「お前ら…仕事中は静かにしろって言ってんだろ!」
「も、申し訳ありません!」
ブランの叫びが廊下に響き渡り、メイドが必死に謝るが、二人の妹は笑顔を向けてブランに何かを差し出した。
「お姉ちゃんこれ見て見て!」
「…!?こ、これ…」
ロムとラムが見せたのは、ブランの似顔絵。普通なら感動する場面だが、ブランの様子は何処か可笑しかった。
うれし泣きではなく、怒りで肩を震わせている。
その理由は、似顔絵が描かれている物が理由だった。
「私の大事な本に!!お・ま・え・らああああああああ!!!!!!!!」
似顔絵に使われたのはブランのコレクションである貴重な本の一冊。長い年月を掛けて集めた貴重品故、ブランの怒りはますますヒートアップすることとなった。
「本と同じ顔になった!」
「にげろ~!」
「待ちやがれお前らああああ!!!」
鬼のように怒りを爆発させるブランはロムとラムを捕まえようとして全力で走る。
「…っ!」
「ネプギア!ユニちゃん!」
丁度、ルウィーの教会に到着したネプテューヌたちと鉢合わせした。
ロムとラムはネプギアとユニが来てくれたことに喜ぶ。
「やっほ~!ブラン~!」
「どうも、お久しぶりです」
「貴方は…轟雷陵牙…」
ネプテューヌはわざとらしく笑いながら話しかけ、ブランの前にはあの
パーティーの時以来となる異世界からの青年がいた。
―――――――
教会の中庭。傍らで妹組が雪ダルマを作って遊ぶ中、女神たちと陵牙はテーブルで紅茶を飲んでいた。
そんな中、ネプテューヌがここに来た理由を話す。
「ま~そんなわけでね、ルウィーに新しいテーマパークが出来たって言うから皆で遊びに来たの!」
そう。ルウィーに出来た新しいテーマパークで遊ぶのが理由。
本来なら俺も行く予定だったのだが…
「そうなんですけど、俺は急遽調べなきゃならないことが出来て、いけなくなりました」
「それって…」
ノワールは何かに気付いたのか、陵牙に目を合わせる。
答えるかのように陵牙はポケットからライターを取り出した。
「実は、ある事件の捜査をしたいので、ブランさんに協力を要請したくて」
―――――――
数時間後、俺はルウィーの町を歩いている。
「しっかし、よく話が通じたな」
自分でも驚いている。
あの後、ブランさんだけ教会で留守番をするといってロムちゃんとラムちゃんが不満そうになったりと色々あったが俺は2人を宥め、今は一人で
事件の調査をしている。
「この事件が…ホラーと関係があるとすれば…」
喫茶店の一番奥の席で俺はブランさんから受け取ったある事件の報告書を
チェックしていた。
(……『連続幼女誘拐事件…2ヶ月前まで起きていた事件で、未だに犯人は逮捕されておらず、誘拐された子供たちも行方不明のまま』…か)
『幼き女性の悲鳴と命』…このキーワードに関係ありそうな事件はこれくらいしかなかったが…
「ちっ、胸糞悪ぃ…」
嫌でも思い出してしまうものがある。
薄暗い倉庫。その中の血溜まり。
その中で目を抉られた、『家族』。
(どうも嫌な記憶を思い出しちまう…)
喫茶店をでた陵牙は事件現場を探し回っていく。
――――――
30分後、陵牙は地元の住民から事情を聞いて、ある廃倉庫に辿り着く。
何でも、トカゲの様な怪物がうろついているという噂のために人が近づかない場所だった。
事件現場からも大きく離れていたため、誰も気にしていなかったが…
「…ゲートの気配…って奴なのか?」
妙な寒気を感じる。
そう思った俺はゆっくりと倉庫の中に歩いていった。
―――――――
倉庫の中は凄まじい臭いがした。
「ひでえな…」
顔をしかめながらも、陵牙はゆっくりと進む。
その中で、陵牙は見つけた。
腐敗しかけた少女の死体を。
「う…………ああ………」
ボロボロになった顔の、目がこっちを見つめている。
すると、頭の中に誰かの声が聞こえる。
『だれか……助けて』
その声に、陵牙は目の前の死体を見る。
「まさか…君か?」
『怖い…苦しい…お願い…だれか…』
今度は、映像が頭の中に流れる。
不気味な怪物が舌で少女を舐めると、舐められた部分が腐食していき、少女が悲鳴を上げる。
『いやあああああ!!!!!痛い!痛いよおおおお!!!!!!』
怪物はその様子を見て笑い、更に黒い悪魔のような姿…『ホラー』へと変貌する。
「ああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!」
陵牙はその凄惨な映像に、悲鳴を上げた。
―――――――
「はあ……はあ……」
陵牙は心を落ち着けるが、そのときにネプギアから通信が入る。
「…どうした、ネプギア」
すると、画面内のネプギアは非常に焦っていた。
《た、大変です陵牙さん!」》
ネプギアの次の言葉で、陵牙は再び頭が真っ白となる。
「ロムちゃんとラムちゃんが、誘拐されました!」
一瞬、倉庫の中に映る俺の影が醜く歪んだ。
しかし、この時の俺はそれに気づくことができなかった。
次回予告
捕まったロムとラム。
ブランに迫る『敵』に陵牙の怒りが爆発し…
次回『怒気』
憤怒の感情が、全ての者を震えさせる。
今回はここまでとなります。
次回、陵牙の暴走…もといブチキレモードが発生します。
後、活動報告でアンケートを行ってますので、良かったらそちらも確認していただけると嬉しいです。