はたして、彼はこの試練を乗り越えられるのか!?
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陵牙の体験入国が終わりを迎え、陣龍大地はラステイションの『黒の番犬所』へと訪れていた。
「………」
大地は魔戒剣などの浄化に使う狼のオブジェクトの前に立つ。
彼の持つ魔戒鎚は特別製で、専用のオブジェクトが必要なのだ。
「いよいよか…」
これまで、大地は数多くのホラーからゲイムギョウ界を守り続け、封印したホラーの数は99体となった。
そして、現在魔戒鎚に宿っているホラーの邪気。
これを浄化すれば、大地は100体のホラーを封印したことになり、魔戒騎士にとっての『内なる試練』を受ける資格が得られる。
『…どうやら、内なる試練の資格を得られたようですね。牙嵐』
そこに現れたのは、一人の女性。
黒髪をウェーブヘアにしたその姿は、髪型や髪色を除けば、ノワールが女神化した姿『ブ
ラックハート』に酷似していた。
「オニキス様!」
オニキスと呼ばれた女性は、番犬所の小さな椅子に座っていた。
「おめでとうございます。本来、別次元のゲイムギョウ界を守護する魔戒騎士である貴方に力を貸して貰えるだけでもありがたいのですが…」
「いいえ。これが俺のやりたいこと。『守りし者』としての使命ですから」
大地は、専用のオブジェクトに魔戒鎚をかざす。
すると、邪気が鎚から消え、一本の短剣へと変化。
それと同時に、大地の姿は番犬所から消えた。
――――――――――
いつの間にか、大地は真っ白な空間にいた。
「ここは…?」
周囲を見回すが、なにもない。
すると、何者かが歩いてくる。
「お前は…牙嵐?」
瞳の色が消え、黒いマントを纏った牙嵐が立っていた。
「これより、お前に魔導馬獲得の為の試練を与える」
すると、周囲が変化した。
「これは…」
大地はその景色に驚く。
「ここは…俺の故郷?」
「そうだ。ここはお前、陣龍大地が生まれ育った故郷だ」
陣龍大地が生まれたのは、ゲイムギョウ界の中でも小さな村。
今まで彼が戦っていた世界とは別の次元に存在する『もう一つのゲイムギョウ界』。
その中の、『魔戒騎士、法師の村』だった。
「ここで、試練を行う。魔界の力が欲しければ、この私と戦え」
牙嵐は轟擂を構えた。
「…なるほど。これが内なる試練か」
大地も魔戒鎚を構え、戦闘態勢に入る。
「…っ!」
牙嵐が轟擂を振ってきた。
(先手を取ってきたか!)
轟擂が直撃すれば危険。咄嗟に左に回って避ける。
すぐさま魔戒鎚を横から振りぬくが、右腕で防がれる。
「くっ!」
やはり硬い。牙嵐の装甲は見た目どおり頑丈で、簡単には傷がつかない。
「ハアッ!」
その時、腹に衝撃が走る。
牙嵐の拳が命中したと気づいたのは、その直後だった。
「…ガッ!?」
―――――――――
その頃、ラステイションの町を歩いていたのはマーベラスとMAGES.の二人。
「大地、本当に大丈夫なのかな?」
試練の途中である大地の様子が気になるのか、さっきからうずうずしているマーベラス。
「問題ない。大地はもう十分に実力をつけた魔戒騎士だ。どのような試練だろうと容易いと私は信じている」
MAGES.の言葉に、迷いはなかった。
――――――――――
牙嵐の拳をくらって大地は一瞬意識が飛んだ。
(やばい…!こんなの、何発もくらったら死ぬ…!)
改めて理解する。
この試練、少しの隙が死に繋がる。
何とか起き上がり、魔戒鎚を振るうが、牙嵐は魔戒鎚を掴み、大地の顔面を蹴り飛ばす。
牙嵐は奪った魔戒鎚を投げつけ、大地はそれをとっさに掴む。
「はあああ!!」
全力で魔戒鎚を振るが、簡単に避けられる。
やがて、振っている魔戒鎚に違和感を感じる。
(どういうことだ…?魔戒鎚が…重い…!)
「重いか?魔戒鎚が」
牙嵐が問いかけてくる。
「この世界で、お前達魔戒騎士のソウルメタルは『単なる鉄』に変化する」
「何だと!?」
驚く大地だが、牙嵐の攻撃は続く。
(どうりで、さっきから戦いづらい…!)
いつもよりも武器が重い。それだけで大地の攻撃はキレをなくしている。
「なぜ貴様の武器が鉄になったのか。その真意がわからん限り貴様はこの試練を乗り越えることはできない!」
―――――――――
夜、見回りを行おうとしていたMAGES.だったが、町に仕掛けたホラーの探知トラップに反応があった。
「!マーベラス!」
「うん!」
マーベラスとMAGES.は共に走り、現場へ向かう。
町から少し離れた場所。そこには巨大な体を持つホラー『ハンプティ』がいた。
「あれは確か…」
「ハンプティだ。あの装甲は魔戒剣ですら弾くらしいぞ」
MAGES.は己の知識から、目の前のホラーの名前を言い当てる。
二人は魔導筆を取り出して構える。
「大地が来るまで、時間を稼ぐぞ!」
――――――――――
牙嵐の攻撃を受け、大地の体はボロボロになっていた。
何とか魔戒鎚を構えるが、体が重く、力も思うように出ない。
(どうして…)
必死に考える。
魔戒鎚がソウルメタルから単なる鉄に変化したのは、何か理由があるはずだ。
(ソウルメタルが鉄に変化した理由………そうか!)
大地は魔戒鎚を強く握り、牙嵐を睨む。
しばし睨みあいながら、大地は走り出した。
「ハアアアア!!」
牙嵐の持つ轟擂が振り下ろされるが、大地はそれをよけることなく…
『頭』で受け止めた。
「!?」
牙嵐もさすがに動揺を隠せない。
一瞬意識が飛びそうになる大地だが、そのまま持っていた魔戒鎚を横薙ぎに振りぬき、牙嵐の顔面を強打する。
「ヌグウ!?」
あまりの威力に牙嵐の頭部のソウルメタルから火花が散る。
さらに大地は牙嵐の顎にアッパーを打ち込んだ。
――――――――――
ボロボロになっていた大地だが、いつの間にか魔戒鎚が軽くなっていることに気がつく。
さらに体を見回すと、痣だらけとなっていたはずが、傷ひとつ残っていなかった。
「この世界…内なる魔界でのダメージは現実のものではない。試練を乗り越えたことで、幻の痛みも消えたのだ」
牙嵐が目の前に立っている。しかし、先ほどまでの威圧感はもう感じない。
「俺の姿は貴様の持つ陰我に繋がりかねない心…劣等感だ」
薄々気がついていた。この牙嵐は、自分の内なる影。つまり、自分が嫌っている姿。
「貴様は鎧を継いだことに負い目を感じていた。本来、牙嵐を継承するはずの貴様の兄は…」
「わかっている。本来、俺が牙嵐にはならないはずだったことはな」
大地は、牙嵐の真の継承者ではない。
真に継承するはずだった兄、大空(ソラ)。大地にとって頼りになる兄というだけでな
く、魔戒騎士として尊敬できる人物だった。
「…兄貴はもういない。だから、俺はずっと牙嵐を継ぐことに疑問を感じていたのかもしれない」
その心の迷い、心の弱さが魔戒鎚に形となって現れ、単なる鉄へと魔戒鎚が変化したのだ。
「だが、先ほど踏み込んできた貴様には確かな信念があった。この鎧を継ぐものとしての信念がな」
牙嵐の姿が少しずつ消えていく。
「覚えておけ、陣龍大地。お前は自身の負い目、迷いと向き合い、踏み込んだ。今のお前なら、大きな困難だって乗り越えられる」
牙嵐の姿が消滅すると、小さな光が轟擂へと変化した魔戒鎚に入る。
「………ありがとうございました」
大地は頭を下げた。
すると…
『大地!』
オニキスの声が聞こえる。
『ホラーの出現です!すでにマーベラスとMAGES.が戦っています!』
大地は内なる魔界を脱出し、走る。
内なる弱さを乗り越えた彼の目に、もう迷いはなかった。
――――――――――
ハンプティの装甲に苦戦していたマーベラス達。
ついに、二人は魔導筆を弾かれる。
「あ!」
「しまった!魔導筆が!」
ハンプティはゆっくりと迫ってくるが…
「でやああああ!!」
魔戒鎚を持った大地がハンプティの後頭部を全力で殴る。
「大地!」
「もしかして…」
大地は二人の魔導筆を拾い、投げ渡した。
「ああ。乗り越えてきたぜ!」
魔戒鎚を構え、召還の陣を描く。
一瞬光に包まれた大地は、牙嵐の鎧を纏った。
現れた魔戒騎士に対し、ハンプティは胸から目玉に似た弾丸を発射するが、牙嵐は轟擂を振るって防ぎ、ハンプティの頭に叩き込む。
しかし、ハンプティは怯む様子がない。
「大地!そいつの防御力は半端じゃないぞ!」
「どうやら、そのようだな!」
牙嵐は距離をとると、轟擂で目の前の空間に円を描く。
その瞬間、強烈な光が辺りを照らし、光が消えると…
『ヒヒイイイイィィィィン!』
牙嵐と同じ色の『馬』がいた。
刀のように鋭い角が二本、龍を模したデザインの兜、青みがかった銀色の鬣。
歴代の牙嵐と共に戦ってきた愛馬…
『魔導馬・迅雷』がその姿を現した。
「あれが…」
「大地の手に入れた力…」
迅雷に跨った牙嵐は、ハンプティに突撃する。
「てやあああ!!」
ハンプティに轟擂を撃ち込む牙嵐だが、ハンプティは少しよろける程度だった。
「さっきよりも威力は上がってるか…だったら一気に決める!」
迅雷を加速させ、牙嵐はすばやく迅雷を方向転換させ、迅雷は後ろ足でハンプティを蹴り
飛ばす。
「やれ、迅雷!」
牙嵐が迅雷の背中からジャンプすると、何と迅雷は牙嵐を上空に蹴り飛ばす。
「ええ!?」
驚くマーベラス達だったが、さらにとんでもないことがおきる!
何と迅雷の体が光ると、牙嵐の持つ轟擂と合体。
巨大で刺々しい外見のハンマー『迅雷剛爆大鉄槌』へと変化。
さらに、鉄槌から魔導馬の放つ『地獄の蹄音』が鳴り響き、牙嵐の鎧をさらに強固な姿に作り変えた。
「ハアアアアアアアアア!!!」
ハンプティは弾丸を連射するが、強化された牙嵐の鎧は弾丸をすべて弾き返した。
「貴様の陰我、俺が潰す!」
雷を帯びた迅雷剛爆大鉄槌が、ハンプティを一撃で叩き潰した。
――――――――――
着地した牙嵐は、鎧を解除して大地の姿に戻る。
「やったね、大地!」
「ああ…」
大地は魔戒鎚を見つめると、魔法衣にしまう。
ふと、MAGES.は大地の表情が変化しているのに気がついた。
「大地…お前…」
「ん?」
「何か、憑き物が落ちたような顔してるぞ?」
「そうかな?」
大地は二人と一緒に帰り道を歩きながら、決意を固める。
(そうだ。俺は…この二人と一緒に、魔戒騎士として戦っていく)
内に燻っていた迷いはもう無い。
自分は誰かの代わりではない。
一人の魔戒騎士…守りし者として、ゲイムギョウ界の人々をホラーから守る。
3人を照らす満月が、その日は明るく見えた。
陣龍大地 轟擂騎士・牙嵐
魔導馬・迅雷を獲得。
――――――――――
次回予告(アイエフ)
異質なる魔戒騎士・狼攻。
謎に包まれし狼攻の秘密の一端が、明らかになるのか?
次回『鋼』
カラクリの馬が天を舞う!
――――――――――
魔戒指南
①黒の神官 オニキス
ラステイション、黒の番犬所の神官。
外見は黒髪をウェーブにしたブラックハートで、黒の番犬所を治めている以外、一切が不明。
原作の牙狼に出てくる神官と比べると、非常に部下思いである。
②魔導馬・迅雷
牙嵐の召還する魔導馬。
色は牙嵐と同じ銅。
バイコーン(前に突き出た日本刀のような二本の角)に龍を模した造形の兜といった特徴的な頭部を持ち、体躯は暗黒騎士ゼクスの魔導馬で、蛇腹状の刃のような尾を持っている。鬣の色は青みがかった銀色。
基本的な能力は他の魔導馬と差異は無いが変形、魔戒鎚と合体することで『迅雷剛爆大鉄槌』と呼ばれる姿へと変化。
溜め込んだ地獄の蹄音が牙嵐の鎧をさらに厳ついものへと強化させ、強力な外穀を持つホラーですら叩き潰すことが可能。
魔導馬・迅雷はXENON-199X-Rさんから頂いた案です。
ご協力、ありがとうございました!
次回、特別編2と第2部からの登場人物設定を投稿してから、第3部に入る予定です。
では、これからもよろしくお願いします!