何故ゲイムギョウ界に魔戒騎士が誕生したのか…始まりの秘密が明かされる!
そして、先代牙狼の正体とは…?
教会の庭で遊んでいたロムとラム。
すると、見慣れた人影が歩いてきた。
「あ、お兄ちゃん!」
「お兄ちゃん…お帰り…!」
帰ってきたのは、いつもの様に黒い魔法衣を着た陵牙。
「………ただいま…ロムちゃん、ラムちゃん」
笑顔で声をかける陵牙だが、その顔には疲労の色が見えていた。
「お兄ちゃん…どうかしたの?」
「ううん?ちょっと疲れただけだよ」
ロムちゃんが心配そうな顔をするが、笑顔で問題ないと言う。
俺は残る力を振り絞って部屋に戻ると、そのまま眠りについた。
――――――――――
「ロム!ラム!」
陵牙が戻ってきてから、ブランは妹達に声をかけた。
「お姉ちゃん、どうしたの?」
「陵牙、帰ってきた?」
「お兄ちゃんならさっきお部屋に戻ったよ?」
ロムの言葉でブランは陵牙の部屋の前まで行き、扉をノックする。
「陵牙?寝てるの?」
ブランはそっと入るが、陵牙は魔法衣を着たままベッドで眠っていた。
「陵牙…」
ブランは陵牙からそっとコートを脱がせ、ハンガーにかける。
「あの話は、陵牙が起きてからね」
ブランは陵牙を起こさないようにそっと部屋から出ていく。
すると、ミナがブランに声をかける。
「ブラン様。面会を希望する人がいるのですが…」
「面会?名前は分かる?」
「えっと…楠神裕也と名乗ってます」
――――――――――
その頃、陵牙の意識はある場所を訪れていた。
「ここは…どこだ?」
周囲を見回すが、まったく見覚えがない。
すると、遠くで爆発が見えた。
「!」
陵牙は爆発した方へと走っていく。
その現場にはボロボロになって倒れている人間たち。
そして…
巨大な斧を携えた、漆黒の騎士が立っていた。
「あいつ…まさか!」
陵牙はその騎士に見覚えがある。
自分が知る中で、最も恐ろしい敵。
闇に落ちた魔戒騎士…
『暗黒騎士・
「なんで…キバがいるんだ!?」
キバの鎧はかつて、牙狼の手によって敗北し、消滅したはず。
にも拘らず、キバは人間達を襲っている。
「そうだ…止めないと!」
陵牙は魔法衣の懐から魔戒剣を取り出そうとするが…
「ない…!?」
どういうわけか、魔戒剣が無い。
「どうして、魔戒剣が!?」
焦る陵牙だったが、目の前で倒れる男性に駆け寄る。
「だ、大丈夫ですか!?」
しかし…その手は男性の体をすり抜けた。
「まさか…この世界は夢なのか?」
目が覚めたらこの世界にいた。
その記憶から、この世界は夢の中だと考える。
だけど、どうして…?
すると、天空から二つの『金色の騎士』が現れた。
片方は、金色の翼が輝く騎士。
もう片方は、金と銀の混ざり合い、両肩に狼の顔がついた騎士。
「あれは…」
すると、突然目の前の光景がぼやけて、俺は再び意識を失った。
――――――――――
その頃、ブランの目の前には銀髪の魔戒騎士…楠神裕也が紅茶を飲んでいた。
彼女が聞きたかったのは、裕也が教えるといっていた『魔戒騎士の秘密』。
「そろそろ、話してもらうわよ」
「わかってる。で、何が聞きたいの?」
とぼけたような表情の裕也に、ブランは内心苛立ちを覚える。
「私が聞きたいのは…ゲイムギョウ界にはいつから『魔戒騎士』が出現したか。それが一番聞きたいわね」
それは、陵牙も気になっていたこと。
牙狼達『魔戒騎士』は、いつからこのゲイムギョウ界に現れたのか。
ブランはそれを知りたかった。
「………わかった。だが最初に断っておくが…俺だって全てを知ってるわけじゃねえ。知ってるのは精々、魔戒騎士の間で語られている話だけだ」
裕也はゆっくりと語り始める。
――――――――――
「昔の話だ。過去の女神達がシェアエナジーを争っていた時代。人々も信仰する女神のためにと争いを繰り返していた」
そう。まだブラン達が女神となるより昔。
シェアエナジーを争う女神達の他、信仰する人間達同士が武器を交え、多くの民が命を落とした。
「結果、その戦いが火種となり、人々の抱える陰我がホラーが住む魔界とゲイムギョウ界を繋げてしまった。それが、この世界にホラーが現れるようになった理由だ」
ブランはその理由を聞いて驚いていた。
「ということは…女神達の争いが陰我を発生させて、ホラーを呼び寄せたって事?」
「まあ、そうなるだろうな。だけど…それと同時期に、『黄金騎士』が現れた」
「黄金騎士…それってまさか…牙狼?」
裕也は首を振る。
「いや、牙狼ではない。だけど、その黄金騎士の力、技術を使うことで、ゲイムギョウ界
の人々は魔戒騎士の鎧、魔戒法師といった存在を完成させたんだ」
「つまり…その黄金騎士から、魔戒騎士、魔戒法師が誕生したって事?」
「そうなる。だけど…ある、とんでもない事件が起きたんだ」
「とんでもない…事件?」
「始まりの黄金騎士が、人々を斬り始めたんだ」
「どういうこと!?黄金騎士が人々を斬ったって!?」
これには動揺した。
何故、ホラーを狩り人間を守る魔戒騎士が、人間にその剣を向けたのか。
「なぜ、その黄金騎士が人を斬ったのか、その理由は未だにわかっていない。だけど、その黄金騎士は闇に堕ちて、ホラーと同等の存在と言われる『暗黒騎士』へと生まれ変わってしまったんだ」
「暗黒…騎士」
「そう。暗黒騎士は自らの部下だった魔戒騎士と魔戒法師を連れ、ゲイムギョウ界の頂点に立とうとしたらしい」
かつて、ゲイムギョウ界が魔戒騎士の手によって危機に陥っていたらしいことを聞いてブランは驚くしかなかった。
「だけど、そんな暗黒騎士を倒すために、ある2人の魔戒騎士が現れたんだ」
「2人の魔戒騎士?」
「ああ。その片方が使っていた鎧が、今現在轟雷陵牙が使っている…黄金騎士・牙狼の鎧だ」
*
――――――――――
目が覚めた陵牙は、シャワーを浴びて、先ほどの夢を思い出す。
「あの夢…いったい何なんだ?」
夢に出てきた、暗黒騎士・呀。
そして…二人の黄金騎士。
「あの鎧………牙狼なのか?」
はっきり見えなかったが、シルエットに見覚えがある。だけど…
「あの牙狼は…誰だ?」
わからない。あの牙狼達が何者なのか。
そして…思い出すのは自分が変身した黄金の牙狼。その圧倒的な迫力。
それを思い出すと、身震いがする。
あの時、自分の中には自分じゃない『誰か』がいた。
黄金の牙狼になった時、何かが体を動かしていた。
それに…ヤイバが叫んでいた名前…冴島鋼牙。
もはや、たくさんのことが一気に起きて、頭が混乱してきた。
「くっそ…!何なんだよ!何がおきてんだよ!」
俺は左手を見る。
そこには、本来牙狼の相棒となる存在…『魔導輪ザルバ』はいない。
それを見て、余計に不安が大きくなる。
まるで、周囲には誰もいなくなったかのように。
「陵牙…起きてる?」
ノックをしてきたのはブランだった。
「………ブラン?」
――――――――――
ブランは陵牙の部屋に入ると驚いた。
昼間とは異なり、どこか怯えているような雰囲気。
「どうかしたの?」
「…いや、なんでもないよ」
笑顔で答える陵牙だったが、無理のある笑顔だった。
ブランは、陵牙の横に座る。
「実は…さっきまで楠神裕也が来てたのよ」
「裕也が?」
「ええ。わかったことがあるわ。
あなたの鎧の事とかね」
「!本当か!?」
陵牙は目を丸くして叫ぶ。
「私が知ったのは、この世界に現れた最初の牙狼の事」
最初の牙狼。
つまり、この鎧を使っていた先代の牙狼のことだ。
「当時、魔戒騎士の中に裏切り者が存在した。その者は暗黒騎士…貴方達とは異なる存在となった騎士を倒すため、牙狼の鎧が誕生した。そして…」
ブランはあの話を思い出す。
「暗黒騎士を倒すために、2人の牙狼が現れたのよ」
「2人…?だけど、牙狼の鎧は本来一つのはずだ?」
そう。牙狼の鎧は一つ。
例え黄金騎士の称号が複数あったとしても、『牙狼』の名は一つの世代にたった一つ。
「資料が残ってないから、何で二人も牙狼がいたのか、その理由はわからない。だけど、一つだけわかったことがある」
ブランは一冊の絵本を取り出す。
タイトルは『四人の女神と二匹の狼』
昔からゲイムギョウ界に存在する絵本。
ブランが見せたのは、この絵本の作者の名前。
「御月…カオル?」
御月カオル。黄金騎士によってその命を救われ、後に彼の生涯のパートナーになったといわれる女性。
「彼女の名前のこともあったし、私は確証を得るために裕也に聞いたわ。先代の牙狼が誰なのか」
ブランはゆっくりとその名を告げる。
「冴島鋼牙。彼が、貴方の前に黄金の鎧を纏っていたのよ」
――――――――――
「やっぱり鋼牙さんか…」
その名前を聞いたとき、俺の中にはある種の納得といった感情が出てきた。
あの時、自分の体で戦っていた力強い意思、そして迫力。
あれが、冴島鋼牙の意思だと言われれば、納得できる。
「どうかしたの?」
「いや……正直、先代が鋼牙さんだってわかって、ホッとしてる」
だけど…と言葉を続けた。
「だからこそ思うんだよな。そんな俺が、この鎧を使いこなせるのかって」
思い出すのは、黄金の力を解き放ったときの事。
突然の事に体がついていかず、疲労で気を失ってしまった。
そして…夢に出てきた、呀のこと。
これから先、ひょっとしたら奴と戦うのかもしれない。
それが怖かった。
「やっぱり臆病だな、俺は…」
魔戒騎士になっても、肝心な時には恐怖で体が動かなくなってしまう。
もしあんな奴と戦うことになったら…俺は勝てるのか?
「牙狼は…何で俺を選んだ?」
あの日、洞窟で出会ってから、牙狼は俺の力となった。
最近は、その理由が分からなくなってきた。
ひょっとしたら、もっと強い人間のほうが良かったのではないか。
ゲイムギョウ界とは関係のない人間である自分より、この世界のことを真剣に考えられる人間が鎧を纏ったほうが良かったのではないか。
「陵牙」
ブランは陵牙の手をそっと掴む。
「貴方が牙狼の鎧を手に入れた理由。それははっきりとは分からない…けど」
その目は優しく、陵牙を見つめていた。
「たぶん、陵牙が誰よりも優しいからじゃないかな?」
「俺が…?」
「ええ。人の痛みを分かってあげられる。誰かをもう二度と失わないって強い理由で真っ直ぐにその剣を振れる」
「権力や力じゃない、ましてや生まれた世界でもない。大事な人たちを失う痛みを分かって、その悲しみを終わらせたいと願う心が、貴方が黄金騎士に選ばれた理由だと私は思ってるわ」
「心…か」
すると、ブランが後ろからそっと抱きしめてきた。
「ぶ、ブラン!?」
「…今日だけだから。今日だけ、何もかも忘れて。騎士としての戦いも、体験入国の勉強も…黄金騎士としての戦いの運命も」
「……………ありがとう、ブラン」
――――――――――
暫くすると、小さな寝息が聞こえる。
どうやら、リラックスして眠ったようだ。
「全く…締まりのない顔」
安らいだ寝顔を見ていると、胸が熱くなる。
「…やっぱり、そうなのかもね」
以前、ロムとラムを助けてくれたときのことを思い出す。
あの時、例の不法侵入者からのインタビューで追い込まれていたとき、私を救ってくれた陵牙。
彼はそれだけでなく、妹達を助けてくれた。
しかし、あのホラーによって傷を負ったとき、私は頭の中が真っ白になった。
だから、翌日に彼が無事に目を覚ましたとき、私は心から嬉しかった。
そして…私は理解した。
私は轟雷陵牙のことが好きだ。
だから、私は決めた。
彼が苦しむなら、私が居場所になる。
例え、この思いが届かなくても。
この優しい黄金騎士の心が安らぐのなら。
――――――――――
次回予告(ナレーション ブラン)
イメージBGM 闇を照らす者(次回予告)
もう折れることはない
何故なら心は迷わないから
もう負けはない
何故なら奴を知り尽くしてるから
次回『剣』
もう止まらない
何故なら心が輝いているから
お待たせしました、『牙狼 超次元の騎士』も20話に突入です!
今回は牙狼の鎧に関する秘密とブランの心をメインで進めましたが、まもなくルウィーでの体験入国もクライマックスです!
感想、評価を引き続きお待ちしてます!
零夜「絶狼の方も、応援よろしくね!」
陵牙「お前勝手に出てくんな!」