今回登場するホラーは、MAKAI SENKIでおなじみのあいつです。
感想、評価を待ってます!
リーンボックスにたどり着いてからおよそ5時間後、俺は教会で受けたクエスト20件を片付けて戻ってきた。
「すいませ~ん、クエスト20件、片付けてきました!」
その言葉を聞くと周囲の職員達が驚く。
『20件!?』
俺は報告書をチカさんに渡す。
「この通りです。他に仕事はありますか?」
「え、ええ…あとは、書類仕事を任せてもいい?」
「わかりました!」
――――――――――
仕事が終わったのは、結局夜だった。
「つ…つかれた…」
「お疲れ様ですわ、陵牙君」
「ええ…初日からハードでしたね…どこかの女神様のおかげで…」
多少だが口調が荒くなってしまう。
「う…すみません…」
いや、大変だった…クエスト20件に、書類仕事まであんなにあるとは…
まあ、めったにない経験だったけど。
「そして…ようこそ、陵牙君。我が国リーンボックスへ!」
「はい!ではこれから1週間、よろしくお願いします!」
今まで見たことのない笑顔に、一瞬ドキっとして俺は目をそらす。
「?どうかしたんですか?」
「い、いや何でもないですよ!」
すると、ドアがノックされる。
「お姉さま?チカです」
「入りなさい」
チカさんがドアを開けて部屋に入ってくる。
……その手には赤い封筒…指令書が握られていた。
「先ほど、お姉さまの部屋の前にこの封筒が…」
ベールさんは指令書を受け取る。
「陵牙君…これって…?」
「ああ…ホラー討伐の仕事だ」
ホラー討伐。その言葉を聞いて、ベールさんは表情を曇らせる。
「…戦いですか?」
「はい。じゃあ準備してきます」
俺は魔法衣を取り出して袖を通す。
――――――――――
準備を整える陵牙を見て、ベールは考える。
「私にも…力になれるでしょうか?」
彼女は、陵牙が魔戒騎士の力を持っていることを知っている。
だが、陵牙が戦っているところを『見たことがない』のだ。
ホラーの存在自体は知っている。ルウィーでロムとラムの二人を誘拐した異形の怪物。
結局、あの時のホラーは陵牙が倒したが、それを見たのはブランとロム、ラムの3人だけ。
それ以降も各国でホラーと戦う陵牙の話は聞いていたが、彼が実際に戦うのは見たことがない。
すこしだけ考えると、ベールは決意した。
「陵牙君!」
陵牙が振り返ると、ベールは真剣な表情をしていた。
「私も、ホラーとの戦いに参加させてください!」
その言葉に陵牙は目を丸くする。
「……危険ですよ、ベールさん」
陵牙の目は鋭くなっていた。
「ホラーとの戦いは相手との力の差が大きくない限り、いつ死ぬかもわからない戦いばかりです。ソウルメタルを操れる魔戒騎士でも、術を使える魔戒法師でもない貴女が戦ったところで、まず勝ち目はありません」
それでも…と言葉を区切った。
「それを覚悟して、この話をしたんですよね?」
しっかりとベールはうなずいた。
「……………はあ。わかりました。特別ですよ」
陵牙はコートから界符を取り出し、ベールに渡す。
「ホラーが出たらこいつに力をこめてください。そうすればホラーとから身を守れるはずです」
この界符、かつて番犬所で発掘したアイテムであり、大地から使用方法を聞いたものだ。
どうやら、かつて魔戒法師達が蓄えた法力が篭められているものらしい。
『GOLDSTORM翔』の中盤で莉杏が使った水晶型の魔道具と似た性質だと俺は個人的に解釈している。
陵牙は魔導火を取り出して指令書を燃やした。
「…『新たなるホラー出現せり。人間の恨みの篭った炎をゲートにした魔獣、直ちに討伐すべし』」
読み上げると、魔界文字は消滅する。
しかし、今回はある文章が小さく記されているが、誰も気づかなかった。
その文字は、こう記されていた。
『緑の神官より』
――――――――――
夜、リーンボックスのとある小さなビル。
その中には所謂『暴力団』と世間から言われるような組織の事務所があった。
しかし、現在事務所の中は滅茶苦茶になっている。
理由は、一人の男。
「…くっくっく。凄いな、この力」
男の正体は、組織の構成員。早い話が下っ端だった。
この男は、組織の金を持ち逃げしようとして殺されかけていた。
結局、杜撰な計画のためにすぐに捕まり、あとは殺されるだけ…のはずだった。
しかし、彼を救ったのは一つのライター。
古の戦争で様々な軍人の手に渡り、彼らが敵を殺すたびに使っていたライターだった。
元々、骨董品を集めるのが小さな趣味だった彼だが、そのライターから声が聞こえた。
『リシカリサ?チイカスバアリンア?(生きたいか?死にたくはないよな?』
普通なら何を言ってるのかはわからないが、なぜかこの言葉は理解できた。
「死にたくない…助かるなら…何だってやってやる!」
『トルサ…アマ、シタナオサマガヨヤメインソテ!(そうか…なら、貴様の体を我に寄越せ!)』
すると、ライターから『闇』があふれ出た。
「ああ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!?」
闇は男の体に入り込み、男は瞳を金色に輝かせた。
それから、男は不思議な力で事務所の人間を食らい尽くした。
火花へと人間を変え、捕食する。それが男の力だった。
「モットダ…モット、クワセロ…!」
「悪いけど、そういうわけにはいかないね」
後ろから声が聞こえる。
そこに立っていたのは、黒いコートを着た青年と、金髪の女性。
男は黒コートの青年を見て、呟いた。
「シタナ…アイノオガ?(貴様…何者だ?)」
青年…陵牙は魔戒剣を取り出す。
「お前らの天敵だよ」
陵牙は魔戒剣を鞘から抜き、後ろの女性…ベールに話しかける。
「ベールさん。念のため、変身してたほうがいいですよ」
「ええ、わかりましたわ」
ベールは光に包まれ、女神グリーンハートへと姿を変える。
「ネザニ…トメイナサリシチサ(女神…それに魔戒騎士か)!」
「ゾネリコル。ヂャラ、シマテケノマルデ!(ご名答。じゃあ、斬らせてもらうぜ!)」
陵牙はジャンプして魔戒剣を振り下ろした。
「フッ!」
すると、男は右手を金属質な銃器のような形に変える。
「っ!デヤアァッ!」
とっさに男の手を蹴り飛ばした。
「ベールさん!」
すると、後ろに出現したベールが持っていた槍を振った。
「くらいなさい!」
全力で振りぬかれた槍が、男に命中した。
――――――――――
町外れに落下した男。
その前には陵牙とベールが立っていた。
「さて、ここまでくれば思いっきり倒せるな」
すると、男は笑い出す。
「くっくっく…さすがは魔戒騎士だな?」
男の体が破裂すると、そこに立っていたのはホラー。
金属のようなボディに、右手は先ほどのように銃のような物がついている。
「お前は…」
その姿に見覚えがあるのか、陵牙は目つきを鋭くする。
「陵牙君。あのホラーに覚えでもあるのですか?」
「ええ。奴はシガレイン。人間を誑かすことが多い結構面倒なです」
すると、シガレインはため息をつく。
「全く、わかってないな。魔戒騎士」
「何?」
シガレインは男の姿に戻ると、何かを陵牙の前に投げ捨てる。
それは、拳銃だった。
「俺が襲った奴らの武器さ。あいつらは、リーンボックスで悪さをやらかすような組織だった。それを俺が食ってやっただけだ」
さも当然のようにシガレインは話を続ける。
「俺が食うのは、この国の発展の邪魔になるようないらない人間だけだ。女神様と魔戒騎士様なら、わかってくれるよな?一つのごみを掃除するだけで、多くの人間が救われるんだ」
その言葉に、一瞬ベールは戸惑う。
「それは…」
だが、彼女はすぐに迷いを断ち切る。
「悪いですが、お断りですわ」
その一言を待っていたのか、陵牙は微笑む。
「そういうことだホラー。どうやらお前と俺達じゃあ、考え方が致命的に異なるみたいだな」
まさかすんなり決めるとは思ってなかったのか、男はあわてる。
「ま、待てよ!悪い話じゃないはずだろ!?俺を見逃せば、この国は絶対に発展する!他
者に害を及ぼす人間を一人や二人食ったからって、多くの人生が変わるわけじゃないだろ!?」
すると、陵牙は男を思いっきり殴る。
「だから言ったろ。考え方が違うって」
陵牙は再び魔戒剣を構える。
「たった一人。それが例え、他者に害を及ぼす人間だとしても………貴様らに食われていい命などない!」
男はその言葉に怒り狂い、ライターを出す。
「そうかい…なら、本気でいくぜ!」
再びシガレインの姿になり、右手から炎の弾丸を発射しようとする。
「ベールさん!後は俺が!」
「はい!」
弾丸が放たれると同時に、陵牙は魔戒剣で頭上に円を描いた。
「死ね!」
弾丸が陵牙に命中する…
しかし、すでに遅かった。
「な!?」
そこに立っていたのは、陵牙ではない。
一部が金色に輝いている、漆黒の鎧。
ガロが立っていたのだ。
「チイッ!」
弾丸を連射するシガレインだが、ガロは拳、鞘に収めたままの牙狼剣で攻撃を防ぐ。
ゆっくりと近づくシガレインだったが、ガロはシガレインの右手を殴り飛ばす。
分が悪いと感じたのか、シガレインは体を球体のように丸めて突撃する。
「っく!」
とっさにガードするガロだが、少し後ろに下がる。
「貰ったぜ!」
もう一度後ろから攻撃しようとするが…
「甘い!」
振り向きざまに鋭いキックを放ち、空中で無防備になる。
「グアアッ!?」
その隙を見逃すガロではない。
一気に飛び上がり、シガレインとの距離を縮める。
「く、くく、来るなああああ!!」
必死で火炎弾を発射するシガレインだが、ガロはすべて防いで接近し…
「ハアアアア!!!!」
縦に真っ二つに切り裂いた。
シガレインの体が消滅し、男の魂だけが赤い光になった。
『た…助けてくれ…!死にたくない…!』
ガロは男に対し宣言する。
「…無理だ。ホラーにその身を捧げた時点で、すでに貴様の魂は死んだのだからな」
やがて、男の魂はシャボン玉のように弾けて消えた。
――――――――――
「ふう…」
ガロの鎧を解除した陵牙。するとベールも女神化を解いて話しかけた。
「お疲れ様です、陵牙君」
「ええ。あとはこれを浄化するだけです」
俺は魔戒剣を見せる。
先ほど斬ったシガレインの邪気が魔戒剣を覆っていた。
「俺はこれから番犬所に行ってきますので、先に教会に戻っててください」
陵牙はそう言って、どこかへとジャンプして姿を消した。
「………あれが、陵牙君の見ていた世界」
さっきの戦いで思い知らされた。
陵牙は、いつもあのような怪物と命がけで戦っている。
「…少し、羨ましいですわね」
彼と共に民を守るために戦うネプテューヌ、ノワール、ブランが。
「だけど、私だって負けません」
人々を守りたいと願う。その気持ちは女神も、魔戒騎士も同じだ。
「陵牙君…」
ベールの呟いた声は、誰にも届くことはなかった。
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次回予告(ナレーション 陵牙)
リーンボックスの歌姫、5pb.
だけど、何で俺から逃げるの!?
次回『歌姫』
響き渡る、安らぎの声