つかの間の平和、そして幸せな日常。
これはいつまで続くのか…
感想、評価もお待ちしています!
第30話 開戦
リーンボックスの湾岸に設置されたライブステージ。
そこには沢山の人が詰め掛けていた。
そして、その中にはネプテューヌやノワール、ブランといった女神一同。
さらにはネプギアやユニ、ロムちゃんとラムちゃん、アイエフやコンパも一緒に来ていた。
俺達が見ていたのは、5pb.のコンサート。
以前はドーム内でのコンサートだったが、今回はかなり広い会場で行っている。
しかも、パフォーマンスにジェット機まで使うレベルだ。
「おいおい、こないだよりすごい事になってるな…」
「当たり前だろ。今回はスペシャルコンサートなんだ」
後ろからの声に振り向くと、ヘルマン局長が立っていた。
「局長!お久しぶりです!」
「おう!で、ベールちゃんは?」
局長の質問に俺たちはうまく返せない。
実は今日、ベール姉が俺達をホームパーティーに招待してくれたことが始まりである。
今回のライブもベール姉がチケットを取ってくれたのだが、どういうわけか当の本人が来ないという事態に。
…まあ、大体の察しは着くが。
「…ネトゲか?」
「多分」
どうやら局長も分かっていたらしい。
「ま、今は楽しむとしましょうかね?」
「賛成っす」
――――――――――
その後、俺達はリーンボックスの教会まで向かった。
「もう。ライブに招待してくれたのはいいけど、肝心のベールが来ないってどういうことなの!」
ノワールの言葉に俺もうなずく。
「まあ、十中八九『アレ』だろうけど…」
俺の案内でベール姉の部屋まで連れて行く。
「そういえば…陵牙ってどうしてベールのことを『ベール姉』って呼んでるの?」
振り返ると、不機嫌な表情のノワールがいた。
って、よく見るとブランもネプテューヌも!?
「え?まあ…体験入国のときにお互い堅苦しいのは無しにしようって話になったんだ」
「「「…ふ~ん…」」」
や、やっばい!なんか分からんけど怖いって!
「あ、そそそ…そういえばこの先だったな!ベール姉の部屋って!」
俺は急いで案内する。
―――――――――
「着いた着いた…」
俺はドアをノックするが、返事はない。
「お~い、ベール姉?いるの?」
返事はしないが、僅かに人の気配がある。
やっぱり…?
「入るよ~?」
「お邪魔しま~す!」
ドアを開けると…あちこちで物が散らかっている光景が広がっていた。
「何かあったですか…?」
「荒らされた…後?」
「いや、ベール姉はこれがデフォルトだから。いつものことだから」
ってか、せめて18禁ゲームとかは見えないところに隠してくれよ…ロムちゃんやラムちゃんの教育上悪いし。
あとネプギア。何でさっきからBLもののポスターと俺を交互に見て顔を赤らめてる?頼むから妙な妄想だけはやめてくれ!
「後方の部隊はなにをしてますの!?」
「…ん?」
「予感的中…か?」
そっと奥の部屋のドアを開ける。
嫌な予感はしたが、外れてほしかったなあ…
――――――――――
「あ、いた!」
「陵牙の予想通りね…ベール…」
「やっぱり、ネトゲしてた…」
頭が痛くなってきたよ。
「しゃあない。久しぶりにやってみるか」
俺は懐から魔戒剣を取り出す。
「ちょ!何で魔戒剣を出すのよ!」
ノワールが驚いているが、俺は魔戒剣を鞘から少しだけ引き抜き…
カアアアアァァァァァン!!
大きな音を出して鞘に収める。
「ひうっ!?」
ベール姉が驚いて固まる。
「………陵ちゃん?」
「久しぶり、ベール姉」
できる限り笑顔で対応しているが、ベール姉やネプテューヌはおびえている。
「何か、言うことがあるんじゃない?」
「あはは…その……」
「そっちがパーティーに誘っておいて何で今までネトゲで時間潰してんだアアアア!!!」
「ご、ごめんなさああああああい!!」
――――――――――
「す、すみませんでしたわ…一時間だけと決めていたのですが…」
「だったらちゃんと一時間で終わらせる!普段ならともかく、こういうときは色々とアウトでしょ?」
さすがにこれ以上の説教はかわいそうかな…30分は正座させたし、本人も反省してるし…
「…とりあえず、久しぶりだね。ベール姉」
「うう……陵ちゃん…陵ちゃああん!嬉しいですわああああ!」
喜びのあまりベール姉が俺に抱きついてきた!?
ちょ!何か顔にやわらかい感触が…!ってやばいって!俺の理性が削られてる!?
「あの体験入国からはや2ヶ月…!ホラー狩りでこっちに来てもタイミングがずれて会えなくて、寂しかったですわ!」
「いや久しぶりに会えて嬉しいよ!嬉しいけども時と場所を考えて!後ろからヤバイ殺気をビシビシ感じるんだからさ!」
後ろからネプテューヌ、ノワール、ブランが凄まじい殺気で睨み付けてくる。
こないだヤイバの罠にはまって名前持ちのホラー50体に一斉に襲われたけど、今の3人から感じる殺気はあれより怖い!
「てめぇベール!陵牙を殺す気か!今すぐ離れろ!」
「そうだそうだ!卑怯な武器で誑かすな!」
「陵牙の顔が青くなってるわよ!いい加減にしなさいよ!」
顔が青くなってるのはそっちの殺気のせいだっての!
「私達は姉弟の関係ですわ!姉が弟を可愛がるのは当然のことです!」
「そもそも!どうして陵牙がベールの弟になんてなってんだよ!」
何かどんどん話が混乱してきてる!?
「と、ところでベール姉!パーティーの準備は!?」
「……………あ」
そのとたん、ベール姉が固まる。
「…すっかり忘れてましたわ」
『おいおいおいおい!!!』
――――――――――
結局…
「さあ、準備するわよ!」
どこからか取り出したお手製メイド服に着替えるノワール。
おお…前の奴の改造か…前よりスカートが長くなって…
「ええ~?準備するのって私達?」
「文句言わない!せっかくリーンボックスまで来たんだし、きっちりパーティーをしてから帰りましょう!」
「それもそうだな。今日は珍しく皆が集まったんだし、さっさと帰るのはもったいない」
ノワールが指揮を執る。
「まずネプギア、アイエフ、コンパは食料の買出しに!」
「「「はい!」」」
「残りのメンバーは部屋の掃除!ベールと陵牙が指揮を執って!」
「「りょ、了解!」」
こうして俺達はノワール隊長の指示の元、ホームパーティーの準備を始めることとなった。
「ねえ陵牙。このゲームは?」
ああ。それは後ろの棚の上から二番目で…」
陵牙達は何事もなく作業を進めていたのだが…
「もう、ベールってばソフトの箱積みすぎ!これじゃいつ崩れても…ねぷうっ!?」
ネプテューヌがソフトの箱を片付けようとした瞬間、ソフトが崩れる。
「ネプテューヌ!」
陵牙はすぐさまネプテューヌを引き寄せた。
「大丈夫か!?」
「う、うん…」
「気をつけろよ?怪我とかしたら大変なんだから!」
「あ、ありがとう…」
陵牙はいくつかの本を纏めて持っていく。
「これは確か隣の部屋だったな…」
本を抱えて陵牙は部屋を出て行った。
「……ふふ♪」
陵牙がいなくなったのを見計らい、笑顔になるネプテューヌ。
しかし、それを見逃さないメンバーが3人いた。
「…何にやけてるのよネプテューヌ」
「ねぷ!?に、にやけてなんかないよ!」
「何か腹立つような笑顔だったじゃない…」
「べ、べつにいいじゃん!ノワールが気にすることじゃないし!」
「き、気にするわよ!だって…」
言いづらそうになるノワール。
「だって…私は…」
「私は…何?」
「ううう………
私は、陵牙のことが好きだからに決まってるでしょ!」
突然のノワールの言葉にネプテューヌ、ブラン、ベールは固まる。
「嘘おお!?ノワールまで!?いつから!いつからなの!?」
ネプテューヌはノワールの肩を掴んで揺さぶる。
「ノワールまでって…まさか!」
「ネプテューヌもですの!?」
「ねぷ!?ばれちゃった!?」
どうやら、全員同じ気持ちだったようでネプテューヌは叫んだ。
「こんなの驚きだよ!まさか陵牙がノワール達にフラグ建ててたなんて!予想の斜め上すぎるよ!」
驚いてうろうろするネプテューヌ。
「…ねえ、ブランが陵牙のことを好きになったきっかけって…なに?」
「わ、私から聞くのかよ!えっと…」
文句を言いつつも、話し始めるブラン。
「……あの誘拐事件の時から…かな。一度散々なことを言ったのに、あいつは私を助けてくれた。それだけじゃない。ロムとラムを助けてくれたし…それに…」
「「「それに?」」」
「体験入国のときに分かったんだ。陵牙は完璧な魔戒騎士ってわけじゃない。普通の人間と同じ、悩んで迷って生きてるって。だから、決めたの」
ブランはまっすぐに宣言する。
「この想いが届くかは分からないけど、私は陵牙の心の居場所になりたいって」
そのときのブランの表情に、思わず見惚れるネプテューヌ達。
「まあノワールの場合大体の予想はつくけど、ベールは?」
「私は…あの誘拐事件がきっかけですわね」
どうやら、ベールも同じようだ。
「あの時、陵ちゃんは私を女神ではなく、一人の女性として守りたいといってくれました。正直、ああいわれたのは初めてでしたけど、悪い気にはならなかったですわ」
それに…とベールは続ける。
「ヘルマン局長に言われて、決意しましたの。伝えられずに後悔だけはしたくない。だから、いずれは自分の想いを伝えるつもりですわ」
ブランとベールの想いをしったノワールとネプテューヌ。
「私が自覚したのは体験入国の時だけど、陵牙が来て間もないとき、私はクエストでホラーに襲われてね…その時に助けてもらっただけじゃなくて、教えてくれたんだ。『家族だっている。仲間だっている。一人じゃ掴めなくても、今はもう一人じゃない』ってね。それから、私は少しでも周囲に頼るようにしようと決めた。それからかな…大切なことを教えてくれた陵牙のことが好きになったのは…」
「私は…最初のころ、ドジやらかして陵牙を大変な目に巻き込んじゃって…でも陵牙は私を怒るんじゃなくて、笑顔でいてほしいって言ってくれた…だからかな?」
ネプテューヌは、皆にまだ言っていないことがある。
あの日、ゼクスによって見せられた陵牙の過去。
今はまだ、陵牙が皆に話せるようになるまで秘密にしようと誓った。
「………あ~あ。結局皆、陵牙のことが好きだったなんてね…」
「ってことはまさか…」
ノワールは持っていたカバンから、ある立派な箱を取り出す。
「…やっぱり、ノワールも同じことを考えてましたわね…」
ベールとブランが取り出したのは、ノワールの持つ箱と比べるとずいぶん小さな箱。
「や、やっぱり皆この時を待っていた!?」
ネプテューヌはベール達の持っているものより少し大きめの箱を取り出す。
「皆陵ちゃんと会える数少ないタイミングを狙ったのですね…ですが、負ける気はありませんわよ」
「当然…あんな話聞かされて、おとなしく下がる気はない…」
「絶対、譲る気はないからね…」
「ふふん♪一つ屋根の下という最強のアドバンテージを持つ私に、勝てると思ってるの?」
こういうところはそっくりな一同。だが、会話に反して彼女達は笑顔だった。
しかし………この時は誰も予想すらしていなかった。
この幸せな時間は、永遠に続くわけではないということを…
――――――――――
一方、買い物途中のネプギア達は、目の前のつり目の男がポケットから赤い石を落としたことに気がついた。
「あ、あの!これ、落としまし…!?」
石を拾い上げたネプギアだが、突然体に力が入らなくなる。
「ギアちゃん!?」
コンパが駆け寄る。
それに気づいたのか、男もネプギアに近づく。
男はネプギアから石を拾い上げると、そのまま去っていく。
「何よあいつ…何も言わずにさっさといなくなるなんて…」
アイエフも思わず文句を言うような態度だったが、それよりもネプギアの方が心配だ。
「ごめんなさい…急に力が入らなくなって…」
立ち上がろうとするネプギアだが、まだ力が入らないのか、転びそうになる。
「おっと!」
寸前で誰かがネプギアを抱きとめた。
「大丈夫…ですか?」
「は、はい……え?」
顔を上げるネプギアだが、思わずはっとした。
目の前にいるのは黒いコートを着た青年。
陵牙の着る魔法衣に似ているが、あちこちが継ぎ接ぎだらけだ。
しかし、彼女が驚いたのは青年の『顔』である。
「陵…牙…さん?」
「ん?」
青年は陵牙に似ていたのだ。
「す、すいません!人違いでした!」
雰囲気から察したネプギアは何とか立ち上がる。
「まあいいけど…気をつけてね?」
「あ、ありがとうございます…」
アイエフ達に支えられて帰っていくネプギア。
その後姿を見て、青年は思わず呟く。
「………やっぱ、『向こう』とは違う世界なんだな…」
『当たり前でしょ?『あの子』とさっきの『彼女』は、違う世界のよく似た別人。あなたも分かってるはずよ……『ゼロ』』
青年の左手の甲には女性の顔を模したような不思議なアクセサリーが付いており、そこから声が出ていた。
「はいはい。分かってますよ。まだ俺の出番じゃないみたいだし、甘いものでも食べに行きますかね?」
――――――――――
その日の夕暮れ、リーンボックスの郊外にある廃棄物処理場。
ここに、複数の影が揃っていた。
「………ついに、時が来たな…」
そう言ったのは、昼間にネプギアにぶつかった男…ベルナルド。
「ああ。今宵、我らの計画が最終段階へと動き出す」
赤いローブの騎士、ヤイバ。
その声は男女が入り混じった奇妙な声だった。
「アンチクリスタルも揃った今、我らに恐れるものはない!」
魔女のような雰囲気の…ルウィーの誘拐事件で動いていた謎の女がその姿を現す。
「今夜だ………」
その声を聞いたとたん、ヤイバ、ベルナルド、謎の女はひれ伏す。
「ザドリ…ルマニ…手駒をいくつか失ったが、ついにこの時が訪れた!」
そこにいたのは、呀の鎧を纏った男。
「今こそ、この世界を終わらせるときだ!」
呀は巨大な斧『暗黒斬』を持って宣言した。
それぞれの気持ちに気づいた女神達。
ネプギアが出会った黒コートの青年。
動き出した暗黒騎士達。
物語は大きく動き出そうとしていた…
―G A R O―
次回予告(ナレーション パープルハート)
突如現れたモンスター。
しかしそれは、私達に迫る罠だった!
暗黒の呀が動くとき、滅びの時間が動き出す!
次回『聖域』
堕ちるのは、人の希望と、未来の光
お待たせしました、最新話です!
ついに始まった第3章、果たしてどうなるか!?
これからもよろしくお願いします!