「ここは…?」
気がつくと、見慣れない部屋のベッドで寝ていた。
周囲を見回す限り、自分の部屋ではないのは明白だ。
まるで、何処かの医務室のような印象を感じる。
「たしか、俺はあの時…」
妙なメールが届いてたのを確認して中を開いたら、パソコンに吸い込まれて…
「助かったのか?」
何か、首が少し痛い気がするが、それが生きていると実感できた。
「あれ?気がついたんですね」
ドアから誰かが入ってきて、話しかけてくる。
話しかけてきたのは、薄い紫の髪をした俺より少し年下の少女。
笑顔が似合う、優しい雰囲気の少女だった。
「えっと…君は誰?」
「あら、まずはあなたの名前から聞きたいんだけど?」
少女の後ろから出てきた女性を見た瞬間、俺は驚いた。
少女に似た紫の髪に綺麗な瞳の女性。
あの時、俺を助けてくれた女性だった。
「あ…すいません」
その言葉に女性は少し笑いながら笑顔を浮かべる。
「いいえ、でもよかったわ。助けるときに間違って首を掴んじゃったのよ。痛みはあるかしら?」
この首の僅かな痛みの理由はとりあえず分かったが、命を助けてくれたこともあり、文句は無かった。
「とりあえず、助けてくれてありがとうございます。それと、俺の名前なんですが、轟雷陵牙といいます」
「轟雷…陵牙。なら、陵牙と呼ばせてもらってもいいかしら?」
「いいですよ」
「そうそう、一つ聞きたいことがあったのよ。あなた、どうして空から降ってきたの?」
「それですか…実は…」
―――――――
そこから俺は全てを説明した。
自分のパソコンに入っていた妙なメール。それを見た途端パソコンに吸い込まれ、いつの間にかこの場所にいたということ。
「パソコンのメール…それとあの黒雲に何かの関連性があるのね…」
そこまで話し、俺は肝心なことを聞くのを忘れていたことに気付く。
「あ、あの~」
「?どうしたの?」
「いや、そういえばあなたの名前を聞くのを忘れてて…」
「そういえばそうだったわね。私の名はネプテューヌ。今の姿のときはパープルハートって名前で、この世界に存在する国の一つ、プラネテューヌを治める女神よ」
「…え?女神?プラネテューヌ?」
女神という単語。そして聞いた事の無いプラネテューヌという名前の国。
「あの、日本って国、聞いたことありませんか?」
故郷の名を聞くが、二人は首をかしげる。
「ニホン?聞いたこと無いわね。ネプギアは聞いたことある?」
「ううん、聞いたことないけど…」
パープルハートに声を掛けられたネプギアという名前の少女は首を振る。
「ってことは…」
日本を知らない。更に、聞いた事の無い国。もしかしてと考えるうちに、俺は一つの結論に達した。
「嘘…だろ!?」
その様子が心配になったのか、ネプギアが話しかけてくる。
「ど、どうかしたんですか!?」
「いや、ちょっと自分でも驚くような結論がでたからね…」
「それって、どういうこと?」
「俺は…もしかしたらこの世界の人間じゃないかもしれないってことです」
その言葉に2人とも目を丸くしていた。
まあ無理も無い。目の前にいる人間が別世界から来たなんて、簡単に信じられる話じゃないから。
「…根拠はあるのかしら?」
「俺の世界にプラネテューヌという国は存在しませんし、女神は空想の産物です。俺の世界には存在しない」
「なるほどね…」
そこまで考えると、色々と気になることがあった。
「あ、あの!」
俺は持っていた携帯からある画像を選んで見せる。
「俺が落ちてきたとき、この男もいませんでしたか?」
写っていたのは、陵牙と、彼より年下の少年。
「いいえ、落ちて来たのはあなただけだったわ」
「そうですか…」
どうやら、弟の零夜はこの世界に迷っているわけではなさそうだ。
しかし、これからどうすればいいか、不安が俺の中を渦巻いていた。
すると、俺の手をパープルハートが握ってきた。
そのときの表情に、思わず顔が赤くなる。
「大丈夫。私たちも協力するから、一緒に考えていきましょう?」
「…ありがとう…ございます」
彼女の手の暖かさ、励ましてくれる言葉を聞くと、不思議と元気が出てきた。
「どうやら、話は終わったようね」
すると、後ろからパープルハートと似たような雰囲気の女性(女神だろうか?)が3人入ってくる。
「ノワール、ブラン、ベール。3人とも来たのね」
「ああ。ちょっと気になったからな」
「目を覚ましたのなら、何よりですわ」
「あ、ありがとうございます…」
すると、ノワールと呼ばれた女性がパープルハートに話しかける。
「で、彼の素性は?」
「それが…どうやら別世界から出てきたみたいなのよね…」
「「「え?」」」
3人とも信じられなかったのか、俺にややきつい疑いのまなざしを向けていたが、パープルハートの説得で信じてくれた。
「でも、それが本当だとしても、これからどうするの?」
「それが、まだ混乱してるみたいで…」
「ネプギアの言う通りよ。これからゆっくり決めればいいと思うわ」
パープルハートの言葉に3人とも納得してくれた。
「ネプテューヌの言う通りね。心に余裕を持たさなくちゃ始まりませんわね」
「そうだな。コイツにこの世界について説明しないと」
「そうね。だから安心して。私たちも出来る限り協力するから」
ノワールさん…といったか、彼女は俺を励ましてくれた。
見た目とは裏腹に案外優しい人らしい。
「あの、俺の名前は轟雷陵牙って言います!」
「一応自己紹介するわ。私はノワール。ブラックハートって名前もあるし、この世界の国の一つ、ラステイションの女神よ」
「やっぱり女神でしたか」
「気付いてたのか、私はブラン。またの名をホワイトハート。ルウィーの女神だ」
「私の名はグリーンハート、またの名をベールと申します。リーンボックスの女神をしてますわ。以後お見知りおきを」
「ど、どうも…」
「さて、パーティーも始まるし、皆で行くとしましょうか」
パープルハートの言葉に全員が立ち上がる。
「ほら、陵牙も行くわよ!」
「い、良いんですか!?」
「当然。今日は私たちの友好条約が結ばれた日だからな、お前も来いよ」
ホワイトハートからも誘われることとなり、俺は返事をする。
「じゃあ…お願いします」
この時、俺はこのメンバーと上手くやっていけるのか、まだわからなかったが、一つだけ理解していたことがある。
この世界の国を守護する存在は、すばらしい人たちだということだ。
――――――
次回予告
この世界にも慣れていった。
自分の身を守るために強くなっていった。
次回『鎧』
そして、俺は運命の出会いを果たすこととなった。
はい、第2話の投稿です!
パーティーのシーンはカットして、次回はオリジナル回に入ります!