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「ここは…番犬所か?」
番犬所。魔戒騎士が元老院と呼ばれる上の組織からの指令を受け取る場所で、魔獣ホラーを浄化する場でもある。
「なんでゲイムギョウ界に番犬所が…?」
「ねえ陵牙。ここが何なのか知ってるの?」
「ああ…この魔戒剣を浄化する場所だと思う…多分」
本来なら存在するはずの神官もいない、ボロボロの状態となっていた番犬所を見回す。
かろうじて無事なのは浄化に必要な狼のオブジェクトとテーブル、神官が座っているはずの台座だけだ。
「とりあえず、この場所はイストワールさんに報告しておこう。この剣のことも気になるし、もしこれが本当に番犬所なら、嫌な仮説が一つできるからな」
そう。ここが本当に番犬所なら、この世界にはホラーが存在した、或いは今も存在するということだ。
「そう…だね。なら、早くいーすんのところに帰ろうか」
すると、出口の近くが崩れ、そこから何かが出てくる。
「ギュウウウオオオァアアアアアア!!!!!!!」
不気味な声を上げ、出てきたのは巨大なドラゴン。
「エンシェントドラゴン!?」
「ネプテューヌ!あのドラゴンは!?」
「エンシェントドラゴン。危険種に指定されてるやばいドラゴンだよ!」
しかし、エンシェントドラゴンの様子がおかしい。
瞳の色が赤から白に何度も変わったり、翼の形が歪になっている。
よく見ると翼からは真っ黒な手のような物が出ている。
そして、その瞳から放たれる殺気は尋常ではない。
実際、俺の手は震えていた。
「陵牙!下がってて!」
ネプテューヌは走り、パープルハートの姿へと変身。
持っていた剣を振って攻撃するが…
「そんな!?剣が飲み込まれる!?」
エンシェントドラゴンの翼に剣は命中したが、あろうことかエンシェントドラゴンの翼の手は一斉に剣を掴み、剣を取り込もうとしていた。
そして、ネプテューヌの剣はヒビが入り、ネプテューヌは壁に叩きつけられる。
「ぐうっ!?」
「ネプテューヌ!」
俺はエンシェントドラゴンに攻撃しようとするが、相手にならずに尻尾ではじかれてしまう。
「グッ………!?」
今まで感じたことのないような凄まじい痛みに、一瞬意識が持っていかれそうになる。
さらに、エンシェントドラゴンはネプテューヌを腕で握りつぶそうとしている。
「うああっ!あああああああ!!!!!」
「この…その手を離しやがれ!」
俺は持っていた魔戒剣を引き抜こうとするが、ドラゴンの爪が俺に当たり、壁に叩きつけられ、またしても想像を超える痛みが全身を襲った。
「ぐう……この…」
「陵牙!早く逃げて…ああっ!」
ドラゴンはネプテューヌを握ったまま地面に叩きつけ、彼女の悲鳴がこだまする。
このままじゃ、ネプテューヌも、俺も、命は………無い。
「………冗談じゃ……ねえ…よ!」
全身が痛むが、痛みを超える心が俺の中に渦巻いていた。
一つは怒り。
俺の命を救ってくれた人が目の前で殺されそうになっていることへの怒り。
そしてもうひとつは…ネプテューヌを守れる力が欲しい。そう願う心だった。
「そうだ…もしかして…」
俺の手にはあの剣…『魔戒剣』がある。
「もし…これが『本物』なら…」
これが本物の魔戒剣なら、『あれ』が召喚できるかもしれない。
俺は鞘から剣を抜き、天に翳す。
「頼む…俺に…ネプテューヌを守る力を…貸してくれ!牙狼オオオオオオオ!!!!」
剣を振るい、頭上で円を描く。
すると、光が陵牙の体を包む。
(ここからは、道外流牙版牙狼のBGMをお薦めします)
「グウウ…?」
「陵…牙?」
ドラゴンも、ネプテューヌもその光を目で捉える。
そこに立っていたのは陵牙では無かった。
ほぼ全身を漆黒の鎧が包む騎士。
狼を模した特長的なマスクと胸の装甲が金色に輝いていた。
「あれは……?」
すると、騎士は一瞬でネプテューヌを掴むドラゴンの腕を持っていた『牙狼剣』で切断した。
「ギャアアアアア!!!」
悲鳴を上げるドラゴンは炎のブレスを吐いて来るが、騎士は剣の一振りでブレスをかき消した。
「……斬り裂いてやるよ!」
騎士は一言告げると、ドラゴンに向かって走り出す。
ドラゴンは騎士を潰そうと尻尾で攻撃しようとするが…
「ハアアッ!!」
一瞬のうちに尻尾を切り落とした。
「終わりだ……っ!」
騎士は牙狼剣でドラゴンを真っ二つに切り裂く。
「グギャアアアア!!!」
ドラゴンは断末魔の悲鳴を上げ、爆散した。
――――――
騎士はネプテューヌに目を合わせる。
「あなた…陵牙?」
すると、騎士の鎧が消滅し、陵牙が倒れる。
「陵牙!」
慌てて陵牙を抱きかかえるネプテューヌだが、陵牙は寝息を立てていた。
「寝てるだけ…みたいね」
ホッとしたのか、ネプテューヌはその場に座り込む。
「それにしても…」
ネプテューヌが気になっていたのは、先ほどの鎧。
「あの鎧…それに、あのエンシェントドラゴン」
女神の武器を取り込む能力を持ったエンシェントドラゴンに、それをいともたやすく倒した陵牙。
「あれ…?陵牙の傷が…無い?」
そう。先ほどまでエンシェントドラゴンから受けたはずの傷が無くなっていた。
しかし、今のネプテューヌにその理由を考える気力は残っていなかった。
ただ、彼が死なずに済んだこと。それだけで十分だった。
「…ありがとう、陵牙」
先ほどの鬼気迫る戦い方をしたとは思えない穏やかな寝顔に、ネプテューヌはあの時のことを思い出す。
(笑顔でいるお前の方が……好きだぜ)
「っ…どうして…あの時の言葉を思い出すの…?」
この胸の高鳴り。その正体をネプテューヌはまだ知る由も無かった。
おそらく、その理由を知るのはそう遠くない未来…かもしれない
―――――――
その夜。
「なるほど…歪なエンシェントドラゴンと謎の鎧ですか…」
いまだに眠ったままの陵牙に変わり、ネプテューヌがクエストの報告を行っていた。
「まあ、あれはビックリしたけど、隠しボスってダンジョンじゃ定番でしょ?だから気にしなくていいよ」
「でもねぷ子。そんなに危険なドラゴンを倒した陵牙の鎧に関しては何かわからない?」
アイエフがネプテューヌに聞いたのは、陵牙が纏っていた鎧について。
「う~ん、鎧に関しては分かんなかったけど、遺跡で変な部屋を見つけたよ。陵牙は番犬所って言ってたけど」
「番犬所って…もしかして」
コンパは番犬所という言葉に心当たりがあったのか、自分の考えを説明する。
「ひょっとして、陵牙君が使った鎧って『牙狼』じゃないんですか?」
陵牙が好きな黄金の騎士。
狼の鎧、番犬所、それに魔戒剣。
彼が遺跡で見つけた数々の品は彼の憧れのヒーローの力なのではないか。
「でも、それって陵牙の世界の物語でしょ?」
「それに、私が見たのは黒だったよ。金色だったのは顔と胸の部分だけだったし」
ネプテューヌが陵牙から聞いた牙狼は、全身が金色に輝く姿。
とても、あの時の姿とは当てはまらない。
そんな会話の中、イストワールはあるワードが頭の中に引っかかっていた。
(黄金の騎士…番犬所…それが陵牙さんがこの世界に来たことと関係があるのならば…)
――――――
次回予告
漆黒の鎧。その力はどんな物なのか。
黒の女神。彼女の本当の想いは。
次回『本心』
漆黒の黄金騎士は、黒の女神に手を差し伸べる。
おまけ
①ホラー・ドラゴ
エンシェントドラゴンの体に憑依したホラーで、基本的な技はエンシェントドラゴンと同一だが、翼には無数の手が生えていて、翼を切り落とそうとすると一斉に掴んでくる。
漆黒の牙狼の鎧を纏った陵牙に討伐される。
②牙狼の鎧
遺跡の奥で発見された牙狼剣を轟雷陵牙が振るい、召喚した鎧。
『闇を照らす者』で道外流牙が使っていた牙狼と同じく、黄金の輝きが失われているが…?
次回から、原作に入っていきたいと思います!
では、また次の話へと!