ネプテューヌの思い付きから物語が始まる…
俺が謎の遺跡で牙狼剣を見つけてから二週間、この世界に来てはや一ヶ月となる。
しかし元の世界に帰る方法は未だに見つからず、イストワールさんに謝られることもあった。
気がつけば今日も仕事をサボるネプテューヌの変わりに書類整理をする日々を過ごしていた。
「ネプテューヌさん!ぜんぜん女神の仕事してないじゃないですか!」
イストワールさんの言葉を無視し、ネプテューヌはゴロゴロしながらゲーム中。
「うりゃ!高速じゃ~んぷ!!ああ!?むき~!!!」
「って、聞いてるんですか!?」
なんか、イストワールさんがいつか倒れないか心配になる…
「ん~、いわゆる一つの平和ボケ?」
「お前の場合はサボりだろ?」
「ねぷう!?何気に刺さるよその言葉!」
刺さるってことは自覚があるんだろうが…
「まったく、陵牙さんの言うとおりですよ!女神には沢山の仕事が…!」
「お姉ちゃ~ん、お茶入ったよ~」
「うおいっ!」
ネプギア、気を利かせることが間違っているとは言わないが、タイミングが悪い。
お姉ちゃんが大好きなのはわかるが、こういう時くらい注意しようぜ。
「お~!ネプギアさんきゅ~!対戦プレイしよ!」
「うん!」
やっべ!イストワールさんがそろそろ爆発する…!
「いい加減に…してくださあああい!!!!!!!!!」
イストワールさんはゲームのコンセントを引っこ抜きゲームを終了させた。
みんなは、絶対に真似しないでね?
―――――――
「見てくださいこれを!」
イストワールさんに連れられ、教会の一室にある不思議な空間で見せられたのは、パソコンの電源のマークみたいな形の結晶だった。
「シェアクリスタルを見てください!」
結晶…シェアクリスタルを見ているとイストワールさんは怒り口調で言った。
「このシェアクリスタルがどうかしたんですか?」
「クリスタルに集まるわが国のシェアエナジーが最近下降傾向にあるんです!」
イストワールさんが見せてくれたグラフを見ると、確かに少しずつだが下がっている。
「まだ沢山あるんでしょ?心配することなくない?」
「なくないです!シェアの源が何かご存知でしょ!」
「国民の皆さんが女神を信じる心、ですよね?」
ネプギアの言うとおりである。
シェアの源は女神を信じる国民の心。それが下がっているということは…
「そうです!この下降傾向は国民の皆さんの心がネプテューヌさんから少しずつ離れていってると言うことなのです!」
「え~?嫌われるようなことをした覚えはないよ~!?」
「そうだな。嫌われるようなことも、慕われるようなこともしてないな」
「うぐっ!?」
ネプテューヌは胸を押さえ、俺は頭が痛くなってくる。
「まったく、陵牙の言うとおりね」
「アイエフ、コンパ」
「すいませんイストワール様、話が聞こえたもので」
アイエフとコンパが部屋の中に入ってくるなり、ネプテューヌに呆れていた。
自国の女神の堕落っぷりをこうも見るとね…
「あいちゃんまで~!陵牙といーすんの味方するの!?」
周囲からどんどん味方が減ってきて項垂れるネプテューヌ。事実だから仕方ない。
「こんぱは違うよね?」
しかし、コンパは…
「ねぷねぷ、これ見るです」
「え?女神…いらない…はうう!?」
コンパが見せたチラシは女神を必要ないと綴られていたらしい。
ここまでくると…
「こういう人たちにねぷねぷのことをわかってもらうためには…お仕事もっと頑張らないとです」
この国、大丈夫か?ネプテューヌのサボりっぷりがここまで浮き彫りになるとは…
「おお!?これぞまさに四面楚歌!?私大ピンチ!?」
「ピンチなのはこの国のほうです!そもそも女神は国民のために努力しなければならないんです!女神が大きな力を持っているのはそのためなのですよ!」
「そうだな。大きな力は多くの人の未来を照らす。イストワールさんの言うことは正しい」
(うう~…お説教やだな~…ここから抜け出すには…そうだ!)
ネプテューヌは勢いよく立ち上がり、イストワールさんに宣言する。
「私!女神の心得を教わってくるよ!」
突然どうしたんだ?
「教わるって…誰から?」
「ノワール!」
「…うぇ?」
「ラステイションの!ノワール!」
「「「「はああああぁ!?」」」」
こうして、俺たちはラステイションに向かうこととなったが…
俺は改めてこの国の行く末が不安になってきた。
―――――――
ラステイション。女神ブラックハートことノワールが治めている国。
「ねえ…よくわからないんだけど…どうしてお隣の国の女神が私の所の教会で寝てるのかしら!?」
「あ~…かまわずにお仕事してて~、私気にしないから~」
「私が気にするのよ!!」
「ごめん!ほんっとうにごめんノワール!うちのグータラ駄女神が迷惑かけて!」
内心こっちの国で過ごしたいなと僅かながら思っていると、ノワールが呆れながらも挨拶してくれる。
「久しぶりね、陵牙。あなたも中々大変みたいね」
「まあ一ヶ月もこの調子だからさ、少しは慣れたよ」
「お姉ちゃん!起きてよ~!」
「う~ん…いいじゃ~ん…」
さすがに俺も限界だ。
わざわざ心得を聞くとか言って他国でまでグータラしてるとは…
「ちょっとごめん、少しいいかな?」
「え、ええ…構わないけど」
俺は魔戒剣をコールし、鞘から引き抜く。
「ちょ!ちょっと待って!?何で剣を引き抜くの!?」
「いつまで寝てるんじゃこの駄女神があああああああ!!!!!」
俺は魔戒剣を手放し、魔戒剣は地面に落ちる。
ズウウウウウウウン!!!!!
「ねぷうううううう!!!!???」
魔戒剣はソウルメタルと呼ばれる特殊な素材でできており、時には羽毛のように軽くも、またあるときはクレーンでも引き上げられないほどの重量となる。
そして、魔戒剣が地面にぶつかるとすさまじい衝撃が発せられる。
その衝撃でネプテューヌを起こした。
「陵牙~!いきなり何するの!?」
「いつまでも寝てるお前が悪いんだろうが!ノワールから女神の心得を聞くために来たんだろ!」
「本当よ、まったく、ねぷ子は…」
「あいちゃん!?あいちゃんは陵牙と私のどっちの味方なの!?」
「陵牙」
「即答!?」
この会話にノワールが頭を抱えてその場を去ろうとする。
「悪いけどお断りよ。私、敵に塩を送る気なんてないから」
「ねぷう…え~?敵は違うでしょ?友好条約を結んだんだからもう仲間で…」
「シェアを奪い合うことに変わりはないんだから、敵よ」
そう言いきった時のノワールの表情に、俺は何かが引っかかった感覚がした。
何というか…あえて突き放すというか…無理をしているような…
「も~!そういう可愛くないこと言うから友達いないとか言われちゃうんだよ」
おいおいネプテューヌ。それは言いすぎだろ。ノワールだって友達の一人や二人いるだろうが。
「な!?と、友達ならいるわよ!」
「へ~?どこの誰さん?」
「えっ!?そ、それは…」
なんか、だんだん声が小さくなっていくが…まさか本当に友達いないの!?
「おいおいネプテューヌ。ノワールを弄るのやめろよ」
「え~?これって結構重要なことだよ!ノワールがボッチかどうか、本人にとっても重要な…」
「はいストップ!!」
もうノワール凹んでるなんてレベルじゃないよ!?泣きそうになってるよ!ほら、目が潤んでるよ!?
「お姉ちゃん、この書類終わったよ」
「あ、ユニお疲れ様。そこに置いといて」
「…どうかした?」
ノワールの妹であるユニちゃんが入ってきてくれた。
「べ、別に何もないわよ?」
「な、ならいいけど…そ、それより今日早かったでしょ?アタシ結構頑張って…」
「そうね、普通レベルにはなったわね」
その言葉を聴いたユニちゃんは少し悲しそうな表情を浮かべていた。
「あ~!もしかして友達ってユニちゃんのこと?妹は友達とは言わないんじゃないのかな?」
「ち、違うわよ!ほかにちゃんと…」
未だに言い争いを続けるなか、ユニちゃんは書類を置いてその場を後にした。
すぐにネプギアがユニちゃんを追っていく。
「…な~んか、ほっとけないんだよな」
――――――――
「はあ…」
私はため息をつく。アタシはこれまで頑張って仕事をしても、まだお姉ちゃんには届かない、認めてもらえない…
「アタシって…駄目なのかな…?」
そう考えると涙が出てきた。
こんなことじゃ駄目だ!アタシは女神ブラックハートの妹で、女神候補生なんだから!
「ユニちゃん!」
すると、後ろから声をかけられる。
「…陵牙さん?」
―――――――
俺は教会を走り回りながらネプギアとユニちゃんを探す。
「ネプギア!」
「陵牙さん?」
俺はネプギアに追いつき、話しかける。
「悪いけど、ユニちゃんのことは俺に任せてくれないかな?」
「え?」
俺はその理由を説明する。
確かに任せてほしいというのは俺のわがままだが、なんとなく彼女の考えがわかる気がしたから。
「ネプギアにはネプテューヌを止めてほしい。あの二人を止めるのはネプギアのほうが向いてると思うからな」
「…あはは、そうですね」
ネプギアはさっきの部屋に戻る途中、「ユニちゃんをよろしくお願いします」といって戻っていった。
―――――――
そして現在、俺はユニちゃんの横にいる。
「どうしてここに?」
「さっきの表情。なんか悲しそうだから気になってね。ネプギアに無理言って来たんだ」
「ネプギアも?」
「ああ。ユニちゃんのこと心配してたぞ」
ネプギアの名前を聞くと、ユニちゃんは顔を上げる。
「それより、うちのグータラが迷惑かけたな」
「いいえ、お姉ちゃん、普段からあんな感じなんで」
「そうなんだな…」
ノワールは自分に厳しいといった印象があったけど、妹にもあんな感じだったのか。
「お姉ちゃんよりもうまくいかないと褒められないみたいで…そんなの無理に決まってるのに…」
まあ、俺も二週間でこの世界の文字を頭に無理やり叩き込んだからな…
「それにアタシ…まだ変身もできないし」
「それって、女神化のこと?ユニちゃんもいずれ変身できるってこと?」
「は、はい。今はまだですけど…ネプギアもロムもラムをいずれは…」
「それって…すごいな」
俺は魔戒剣をコールする。
「それは?」
「以前、遺跡調査で見つけた剣でさ、俺が憧れてた英雄の使う剣と何故か同じものなんだ」
しかし、本来の牙狼剣との違いはいくつかある。
鞘の色。本来は真っ赤な鞘が、今は色が抜けたかのように白い。
「この剣を使えば、俺は特殊な鎧を召喚できる。前に俺はエンシェントドラゴンを鎧をまとった状態で斬った」
「エンシェントドラゴンを!?」
ユニちゃんは驚いているが、俺の表情は晴れない。
「でも、これは劣化している状態なんだよ。だから、本当のピンチでしか使えない」
俺がこの力を持っていても抱いている思い。
それはこの鎧の力を引き出せていないという『悔しさ』。
この剣で鎧を召喚しても、解除した後はすぐに体力が尽きて気絶してしまう。
しかも、鎧が完全な状態ではないことが余計に悔しかった。
「せっかく手に入れた力も、俺はまだ満足に使いこなせていない。だから、不安なんだよ。肝心なときに力を使えなくて、みんなの足を引っ張るんじゃないかって」
「そんな!」
「だから、俺は誓っている。いつか、鎧の本当の力を使いこなせるようになりたい」
「陵牙さん…」
そう。俺はまだ牙狼の黄金の力を使えない。
俺から魔戒剣と鎧の力を取れば、せいぜいザコモンスターに勝つことが精一杯だろう。
だが、ユニちゃんは俺と違い自分の力で強くなっていた。
「でも…」
「俺が知っている英雄達も、どこか欠点が存在してたよ」
「え?」
「誰よりも強くありながら、人としての心を知らない戦士。力が足りず、甘さがあったために命を助けられなかった戦士。復讐の炎に心を蝕まれ、一度すべてを失った戦士。俺のあこがれる英雄たちだって、最初から完璧なヒーローなんかじゃなかった」
冴島鋼牙、道外流牙、レオン・ルイス。
俺の知っている黄金騎士の中でも何かしらの問題を抱えていた。
「だけど、大事な人たちがいるから、皆答えを見つけて強くなれた。ユニちゃんだって同じはずだよ。答えを見つけて、これからもっと強くなれる」
「あ、ありがとうございます…」
顔を赤くしながらも、ユニちゃんはお礼を言ってくれた。
「さて、さすがに向こうもそろそろ終わってるだろうし、戻ろうか」
「そ、そうですね!」
向こうに戻ってみれば、さらに面倒なこととなっていた。
「やめてぇ!もうそれ以上触らないでぇ!」
「え~?女神の心得その一はまず書類の整理からって…」
「それは貴女の教会でやってよ!」
「……もう少し外に出てる?」
「そう…ですね」
――――――
次回予告
黒の女神の思い。それは果たして?
女神に迫る危機。古の龍が迫り来る。
次回『絆』
黒く染まった黄金騎士。その姿を彼女は目に焼き付ける。
お待たせしました!
次回でノワールとのフラグを建てられるようにしたいですが…
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