空と海のアルス・スブティリオル   作:青二蒼

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まあ、その……なんだ。
勢いでやってしまった。

ストパンをOVA含め、全部見た挙句。
蒼き鋼のアルペジオは漫画版の設定を見てると……妄想が膨らみましてね……

ほぼ原作と変わりない展開ですが、お楽しみください。


1Mile:次元の海の果てへ

 

 ――2056年日本近くの太平洋――

 

 一隻の青い重巡洋艦――高雄型と思しき艦船に魚雷が着弾した。

 すぐに鳴り響くのは空間を切り裂くような轟音。誰が見てもこの世の兵器ではないと分かる威力。

 しかし、その空間を削り取るような爆風と形容しがたい攻撃にその重巡洋艦は耐えた。

 いや、耐えたと言うよりは防いだと言うのが正しいだろう。

 その重巡洋艦の上には1人の少女。明るい水色のツインテールが揺れる。船員(クルー)は見当たらない。

 揺れる船体の上で甲板に齧り付くように耐え、伏していた彼女は手を力強く握り、

「自らが提督と仰ぎ見た者の意志を貫徹出来ずして……何が……何が艦隊直衛艦か!」

 そして自らを奮い立たせるようにして海――海中にいる敵に向かって自らの意思を、

「奢るな重巡タカオ!」

 名前と共に吠え立てる。

 だが、そんな彼女の意思を踏みにじるように驚異が迫っていた。

 再び弾着。今度は船体の側面を大きく削られた。

「チッ!」

 少女は悪態を吐く。

 直後に信じられない事に、船体が修復されていく。まるで生き物の傷の治癒再生を高速で見ているかのような光景。

 すぐさま船は転進して、敵から逃げるように海を走る。

 けれども少女の瞳に撤退の意思は宿っていない。

 むしろ追ってくる敵を気にしているような素振り。

 そして、追って来た敵が自分の網に掛かった事を認識し、

「もう、気付いても遅いよ!」

 敵に対して1人呟き、額が光ったかと思うと何かを起動する素振りを見せる。

 直後に海中からの震音、僅かに光る海。少女が何かしらの迎撃に出て海中にいる大多数の敵を撃滅したのだろう。

 すぐに索敵を開始しようとするが、彼女は失態に気付く。

「まずい……爆発音で海中音が聞こえなくなった。やり過ぎた? もう少し"ソノブイ"を作っておくべきだった」

 弾薬優先にしてしまうのは自分の悪いクセだ、と最後に呟く。

 相手は潜水艦、それもかなりの数。

 すぐに思考を切り替える。

「エンジン始動、多分こちらへ撃ってくる」

 艦首の側面から吹き出す噴射炎。

 普通の艦船では考えられない速度で面舵(おもかじ)を、その場で旋回するような形で取り始める。

 この状況を如何にしてやり過ごすか、少女は考える。

 同時に自分の今の状況を把握する。

(機関は80%の出力が限界……か。回避に徹して潜行してやり過ごすか?)

 問題は、潜行するにしても――

「この海域に私が入り込める場所なんてあったかなぁ」

 隠れる場所があるかどうかだ。

 直後、扇状に広がってくる雷跡。タカオの近辺で先程の魚雷が炸裂する。

「やっぱり、危ないなぁ」

 それは自分が最初に考えていた潜行と言う選択肢のリスクを認識しての発言でもあった。

 かなりの数が撃たれたのか、魚雷が船尾付近に直撃、抉り取る爆風と振動が襲う。

「まったく、せっかく修復したのに……!」

 続いて同じ場所に2発目の直撃。

 かなりの損害だが、

「動きを止めるなよ、私!」

 自分を鼓舞(こぶ)しながらも前へと進もうとするが、容赦のない波状攻撃が襲う。

「フィールド消失……修復不能……」

 今まで魚雷を防いでいた何らかの盾が消えた。

 何とか動けと思うも、船体が悲鳴を上げているのが嫌でも分かる。

 数十秒後、艦船を360度囲うかのように接近する雷跡。

 最早、逃げ場はない。

 今までにない耳を裂くような複数の炸裂音とともに、船体は周りから削り取られていく。

 未だに船としての形が残っているのが奇跡に近い。

 だがそれも限界――少女の体が粒子となって消えようとしている。

「機関部、被弾……出力34%……ここまでか……私」

 残るのは、未練、後悔、タカオにとっては最初に持っていなかったものだ。

「作戦、完遂できなかったよ……ゴメン艦長」

 この場にいない、自分が仰ぎ見た者に対して詫びる。

「私……メンタルモデル……うまく、使えたのかな……」

 少女の体が右の手足から徐々に崩壊していく。

 せめて、あと一手……あと一矢――切り札が使えていれば。

 けれども今の自分では、ある種のリミットが掛かっている状態。

 高望みだと分かっていても、最初から使えていればと悔やむ。

「せめて……超重砲さえ使えればなぁ」

 

 

『なら、使わせてやろう』

 

 

 自分の中に響く声に、タカオは驚愕する。

『何をやってるのか知らんが、ダミーのコントロールコードをよこせ。引き受けてやろう』

『……402』

 タカオは話し掛けてきた人物の名前を驚きと共に呼ぶ。

『どう言う……こと?』

『急げ。お前の船体は、もう保たんぞ?』

 抑揚のない言い方で催促してくる402と言う少女の声。

 タカオは少し迷ったが、すぐに決断した。

 データを402にすぐさま送信し、何かしらのダミーのコントロールコードをネットワークを通じて送る。

 その間にも船は傾斜していく。

 どうやらデータの受信を完了したのか、402から反応が返ってくる

『ダミーのコントロールコード、全領収完了。これを横須賀のドックへと持っていけば良いんだな?』

『そう。あとは中の乗員のコントロールに合わせてやって』

『了解した。地下ドックとやらをダミーを通じて拝ませて貰おう』

 直後、タカオはすぐさま何かが近付いて来るのを察知、海を見ればトビウオのように海面を飛び出す魚雷。

「来た!」

 すぐさま両手を突き出すと、ハニカム構造のシールドのようなものを展開し、魚雷の爆風を受け止める。

「まったく、きっついなぁ……!」

 それが決定打だったのか船体は大きく損壊、艦橋より後ろが吹き飛び、折れる。

 少女の姿は消え、船はさらに傾斜し、徐々に沈降して行く。

 どうやら完全に沈黙したと判断したのか、攻撃が止んだ。

 エンジンの鼓動が消えかかったと思いきや……

 ――数秒後。

 ゴォォォン! と言う、唸りを上げるような重低音と共に息を吹き返した。

 同時に割れる艦橋、割れたのではなく正確には変型して行く。艦橋の中からはリング上の浮遊する機械が2基現れた。

 すると、その艦橋の前に粒子が集まり、先程の少女の姿が形成されていく。

(生憎だったわね。どの艦も常に、コアをメンタルモデルに持ってると思ったら大間違いなんだから)

 タカオは内心でしてやったりとばかりに呟く。

「情報マトリクスを解析してくれちゃったんだろうけど、私ほど経験を積んだ艦ならそれぐらいの偽装はお手の物よ」

 姿を完全に形成しそれから相手が取った行動を口に出しながら、すぐに攻撃目標を見つけようとするが――

「しまった……エネルギー系と収束機関類を優先で修復したからセンサー系が足りない。2501どこ?」

 索敵するための手段がほぼない事に気付く。

『手間のかかる……』

 呆れたような402の呟きと共にタカオに情報が送られてくる。

『姉の401は攻撃型へと姿を変えたが、総旗艦直衛の我らの本来の能力を見せてやろう。タカオへのデータリンク開始』

 何かが同期し、タカオの中でデータが更新されていく。

『海中深査レベルA、情報深度A、観測監視』

 言葉と共に402から送られてきたのは、海中の索敵データ。

 それもリアルタイムで3次元的な詳細な位置データとして送られていた。

 どの深度にどの艦種がいるかも手に取るように分かる。

『おお~! あんた横須賀に近いんでしょ? 超戦艦様並の索敵能力じゃない』

 タカオは素直に感心するが402からは、

『いいから早く撃て、私はお使いがある』

 そう淡々と言い返された。

 タカオとしてもある意味限界で、悠長に構えてる暇はない。

 これでようやくやられた借りを返せるとばかりに笑みを浮かる。

「よおし! 沈んでもらう!」

 言葉と共に放たれるリングとリングの間から赤い閃光。

 SF映画に出てくるようなビームが海中を突き抜けて敵に直進していく。

 確実に目標を捕らえた一撃、すぐに手応えを感じる。

 が――

「なによ、あれ……!!」

 先程のビームが相殺されていく。

 理解しがたい現象にタカオは驚愕を覚える。

 それは402も同様のようで、

次元空間曲率変位(ミラーリング)システム……』

 呆然としたような呟きがタカオに聞こえた。

 どう言った代物かは分からないが、相手がとんでもない隠し球を持っていた事はタカオは理解していた。

『まずい。タカオ! 今すぐ船体からコアを切り離せ! あとで拾ってやる!』

『一体、なんなのよ! あれ!』

『あとで幾らでも説明してやる! とにかく今すぐに海中深くに退避しろ!』

 今まで402の抑揚のない声から一変して、感情の乗った言葉が吐き出される。

『ヤツは、捉えた超重砲のエネルギーを打ち消すために別次元の時空にエネルギーに相転移させる! その衝撃波に巻き込まれたらひとたまりも無いぞ!』

 明らかな警告。

 タカオが海中を見れば、海が少しずつ沈み込んでいる。

 溜め込んだ何かのエネルギーが今にも破裂しようとしているようだ。

 次の瞬間――襲って来るのは衝撃の波紋。音は遅れてやってくる。離れたところで海と空を突き抜けるように水柱が上がり、水柱を中心に円状に衝撃波が襲ってくる。

 すぐに船体は衝撃波に呑まれ、分解されるが如く崩壊していく。

 少女の体は海へと投げ出された。

 その様子を見ているかのように402は再び警告する。

『なぜ「メンタルモデル」を捨てない!? 早くコアを停止させろ! 見つかるぞ!』

『だって、これは……これ、は……』

 タカオは着ているBLUESTEEL(蒼 き 鋼)と言うロゴとそれを表す鳥が飛び立つようなエンブレム白いシャツを握り締める。

(私の……)

 そこでタカオの思考は途切れ、停止する。

 

 

 横須賀の近海の海上にいた白銀のような伊号潜水艦。

 その上の幼顔の少女――402は更なる変化に気付く。

「今日はなんて日だ……地球が保たんぞ」

 402が観測を続けた先では、海が割れようとしている。

 観測結果から海が割れる中心部に存在し、思い出されるのは……

(姉は随分と野蛮になったな)

 自分の姉の姿であった。

 海は更に荒れる事になるだろう事を予測して402はすぐさま船内スイカを持ってハッチの近くに行き、潜行の準備をする。

 同時に自分の姉の意図が分かった。

「なるほど……401の狙いはアレか。しかし、そのままでは2501が生み出した空間変異までは矯正出来まい。……仕方ないな」

 すぐさま401に向かってデータを送る。

 それは2501とは別の大型の潜水艦の座標データ。

 これで大丈夫だろうと、ひと仕事を終えた402はすぐさま潜行する。

 ……。

 …………。

 ………………。

 ほどなくして、海を貫く閃光と爆音が聞こえる。

 その余波は海中にいる402にも届いた。

 岩陰によって多少なりとも衝撃を防ぐ。それは、ここまで届く程に威力が凄まじかったのを物語っている。

 ガツンと船体に岩が落ちる音。

 治まったと見るやいなや、402は浮上する。

 先程までの天候は一変して荒波。

 まるで嵐のようであった。

「治まったか。さて、取れるだけの観測データは取ったが……まずは、あのダミーを届けてやろう。約束だからな」

 そう1人ごちた後に、ネットワークに接続して連絡を取る。

『402から400へ』

『こちら400』

 すぐに402と似たような声音の少女が応答する。

『お使いが遅れることになった。こちらの動きはリアルタイムで総旗艦艦隊(フラッグフリート)のネットワークに上げる。確認しながら動いてくれ』

『了解。面白いものが見られたね』

『総旗艦がおっしゃった通りだ。臨機応変に行動してみるものだな』

次元空間曲率変位(ミラーリング)システムは本来、ヤマト級にしかない装備。その存在も発動をしているのを見るのもの初めて』

『ああ、だが2501のは……総旗艦の本来の規模に比べれば桁違いに小さいがね。初めて"驚愕"と言うものを体験させて貰った。ともかく、しばらくは臨機応変に動いてみようと思う』

『総旗艦は私達の動きを常に監視しているわ。何もおっしゃって来ないと言う事は、それでいいんじゃない?』

『ああそうだな……』

 返答しながら402は艦橋の上を降り、甲板の上に立つ。

『こちらに特に動きはないわ。マヤは北管区のヘリのエスコートに従って潜行北上中』

『潜行?』

 400からの言葉に疑問が浮かぶが、すぐに合点がいった。

『ああ、北管区の連中は霧の艦艇が入港するのを民衆に見られたくないのだろう』

『私達を憎んでいる人間は大勢いるわ』

『それを認識できるようになったのも、メンタルモデルのおかげか』

『そうね』

『では、お互いに臨機応変と言うことで』

『ことで』

 そこで400との通信は切れた。

「やれやれ……今日はお使いが終わったら、水没した人間の街から色々とサルベージしてやろうと思ったのに」

 402は残念そうに言いながらも、どこか満足したような感じもしていた。

 ふと、自分の持っているスイカに目を移し、適当な台になりそうな物の上に置く。

「スイカの保存方法も調べないとな」

 言いながらも、引き続き仕事に取り掛かり始める。

 何かをコントロールしているような雰囲気。

 すぐさま、タカオ目的であり402が約束した事が、果たされようとしていた。

(ふむ、ここが横須賀の地下ドックか)

 自分と同じ伊号潜水艦のダミーを通してドックの中を見ている。

 だがすぐに、1人の老人がダミーの船体に力強い足並みで近付く。

 注意しようと1人の作業員が声を掛ける。

『議員、それ以上は近づかないで――』

『お前達は何を観ている!』

 が、老人から返って来たのは怒声。

 何の事か分からず、作業員が混乱していると――

『固定アームのしなり具合を良く見てみろ!』

 老人が指差す先を見て、作業員はハッとなる。

「バレたぞ、ツンデレ重巡」

 言いながら、ここまでだとばかりに402はダミーのコントロールを破棄する。

 そうして、ダミーの船体が崩れると同時にリンクは途切れてダミーから見ていた映像は消えた。

(さて、人間の物をサルベージは出来ないが……別のモノをサルベージしに行くとしよう)

 すぐさま潜行を開始し、402は例の衝撃波の中心へと向かう。

 海中をタカオが沈んだ位置まで近付くに連れて、揺れが激しくなる。

(かなり空間が乱れているな。まるで次元の嵐だ。重力子機関内でも影響が出ている)

 先程の次元空間曲率変位(ミラーリング)システムの影響が大きく出ているのだろう。

 長居をすれば、船体のエネルギー系統に甚大な被害が出る可能性は多いにある。

 目的の場所に辿り着くとともにセンサーを起動し、すぐさま目標を発見する。

(ノイズが酷いが、それでも観測できないほどではなかったな。それに、沈んだ時から観測していた事もあってすんなりと見つけられた)

 海が割れて、滝のように落ちている中で……本来は海中にあったであろう岩の上にタカオが倒れていた。

 すぐさま船体を岩に近付けて、何か放射状のビームを照射。

 タカオは分解されて粒子となって、船体へと回収されていく。

(これで一段落……!?)

 すぐに海域を離脱しようとしたところで、402は異変を感じた。

 船体が引き込まれていく。

 それも先程の爆心地とも言うべき場所に向かって。

(全速離脱……なに?)

 推進力を最大にして離脱しようとするが、何故か作動しない。

(もう重力子機関に影響が出たのか! 速度が、上がらない……!)

 そのまま引力に引かれるように402の船体は引きずり込まれる。

 未知の事象に対して402は為すすべもなく流されていく。

『400!』

 通信しようと一瞬だけネットワークを繋げたが、もう遅い。

 そのまま何かを伝える事もなく402の船体は、消えた。

 

 ――次元の海の向こうへと――

 

 時の歩みは三重である

 

 未来はためらいつつ近づき、

 

 現在は矢のように速く飛び去り、

 

 過去は永久に静かに立っている…

 

 




オリ主を出すかどうか迷うな。
特にストパンの世界観に男主人公を出すか出すまいか……

いや、そもそも続くかどうかすら分からないんですけどね。

そもそも需要があるのかどうか……

でも、形にしたかったのでしてみました。
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