導入部分で燃え尽きた残りカス   作:キューブケーキ

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銀英伝に転生してみた 13~15話

13.5月から9月までの出来事

 

 5月。反乱鎮圧から間もなく新たな出兵計画により、軍が慌ただしく動き出していた。クロプシュトック侯討伐で名をあげたフレーゲルは艦隊の1つを預けられる事になったそうだ。

 その頃、僕は別の仕事に従事していた。

 自由惑星同盟が独裁国家と敵視する銀河帝国であろうとも、司法の基準を持って罪と罰については定義されている。

 そして国家を脅かす大罪として、麻薬はその一つに上げられていた。

 帝国領内に流通する非合法麻薬の入手経路は三つ存在する。一つは国策として麻薬が合法なアンラック大公国からの密輸。もう一つはフェザーン経由での密輸。そして最後が帝国領内での密造だ。

 数年前の大規模な取締りで、帝国領内の密造に関しては壊滅的打撃を与えたと言う。

 今は密輸の取締りが争点となっている。

 クロプシュトック侯討伐から2ヵ月後の、帝国暦486年5月18日。僕はサイオキシン麻薬取り締まりに参加していた。

 小さい頃、TV番組の「魔法BBAリリカル般若0083」で見た事がある。危険な麻薬だ。

 事のきっかけは、第6次イゼルローン要塞攻防戦で戦死されたグリンメルスハウゼン閣下が、生前書き残されていた文書の発覚にあった。

 それを遺品整理をしていた孫娘が見つけ、親交のあったリヒテンラーデ侯を通して、畏れながらと陛下に上奏した。

 内容は悪事の証拠と暴露話で、陛下が激怒されたとか。

「これ程の膿が溜まっていたのか!」

 暗愚ではないが平凡と言われる陛下。皆がアル中のジジイと舐めていた。

 その時の怒りはリヒテンラーデ侯をしても、背筋を震わせるものがあったらしい。

 何をするつもりも無い。それが陛下の口癖であったという。

 だが、亡き友グリンメルスハウゼンの書き残した物には犯罪の証拠が山とあった。

 いつの日か、公正に裁ける者の手に委ねる積りであったらしい。

(本当か? 胡散臭いな……)

 僕はそんな美談を信用しない。

 グリンメルスハウゼンは陛下に近い者だった。本当に告発するつもりならいつでも出来たはずだ。

(政治的に自分が有利になる脅迫材料だな)

 ともかく御聖断は下った。皇帝である自分なら出切ると判断されたのかもしれない。

 なんと言っても今年は皇帝陛下の戴冠30周年だ。あらゆる膿を出し切る大掃除を行うよう勅命が下った。

 証拠があっても、今まで手出しできなかった内務省は大喜びしたと言う。

 密売責任者は貴族だと判明していた。だからこそ、慎重に行わねばならない。

 内務省と軍が密接な協力を行い、裏付け捜査を開始した。

 そして捜査員の努力によって遂に一斉検挙の日がやって来た。

 ある貴族の屋敷。官憲には治外法権となって今まで手出しできなかった場所だ。

 敷地内で麻薬の精製は行っていないそうだが、流通元として集積所の役割を兼ねているとの事だ。

 屋敷には、軽火器で武装した護衛が小隊規模存在する。軍歴のあるものは少ない。

「ふん。敵じゃないな」

 打ち合わせで、小隊長の一人が馬鹿にしたように言った。皆同じ気持ちだろう。異口同音の声を上げる。

「威勢が良いのは構わんが、油断して部下を死なせるなよ」

 中隊長として締めるところは締めておく。

 外周を警官と憲兵が包囲し、僕達装甲擲弾兵が突入する。

 上からは「発砲を許可する」と言う事で、遠慮などしない。

 0530時。まだ外は暗いがお仕事の時間だ。

 現場責任者で内務省警察の警視正に敬礼し状況開始を報告する。このおっさんが現場で射撃の許可を出す権限を持っていた。

「始めます」

 指揮所で僕は各小隊の動きを見つめる。あまりトロい動きをしてると、後で締めないといけない。

「交通規制開始します」

 館に通じる通りを地元警察が封鎖開始したと報告が入る。

 三次元スクリーンに部隊符号が表示され、館に向かって進む。

『コイケ7。暖簾に到着』

 第1小隊が正門に到着した。

 別のスクリーンに装甲擲弾兵の視点が表示される。警備兵が接近する装甲車に気付いて騒いでいた。

 投降勧告が行われるが警備兵は発砲して来た。馬鹿じゃないか。

 傍らの警視正に視線を向けると頷いた。

(よし、許可は出た)

 判決、死刑だ。

「コイケαから練馬へ。敵の発砲を確認した」

 コイケαは中隊長である僕、練馬はうちの中隊の呼出し符号だ。

「全火器射撃許可。突入しろ」

 車載機銃が唸り、警備兵がひき肉に変えられるまでまで時間はかからなかった。

 門を破壊し車列は突入する。

 中庭で敵の抵抗が激しくなって来た。

 路肩に土煙が起こり間断無く軽快な銃声が聴こえる。

(ふん。機銃も装備しているようだな)

 邸宅に機関銃を用意してるとは内乱罪も適用出来そうだ。

『下車。戦闘用意!』

 号令が無線を通してこちらにも聴こえて来る。

 下車した装甲擲弾兵が相互躍進しながら、各分隊ごと前進する。

 中腰に姿勢を下げ、戦斧や小銃、機関銃などを手にそれぞれ駆けて行く。

 映像の端にロケット発射筒を装備した敵の姿が見えた。

「コイケ7。10時方向に散兵、RRを装備している模様。注意しろ」

 無線機を受け取り注意を与えるが、敵がロケットランチャーを撃つ方が早かった。

『うわああ!』

 土砂が噴き上がる様子が見えた

『リカルドが負傷!』

 呻き声が聴こえる。

 上半身を焼け爛らせた兵士の姿がスクリーン一杯に映し出される。

「うっ……」

 若手の警察官が嘔吐感を感じたのだろう。呻き声をあげて天幕の外に出て行く。

(兵役の経験は無いのか? SAPやKoevetを見習わせたいな)

 SAPは南アフリカ警察、Koevetは南西アフリカ警察の特殊部隊で対ゲリラ戦に活躍していた。帝国では共和主義者を狩り出す仕事も減少し、武装蜂起の鎮圧に出る事も無いらしい。

『糞。あれを黙らせろ!』

 画面の向こうでは分隊長の指示でこちらも反撃をしていた。

「中隊長、熱源反応です。戦闘車両と思われます」

 その報告で、待機していたワルキューレに対地支援を要請する。

 報告では軽装備のはずだった。

 だが実際に来てみれば敵の火力は高い。

 やはり用心して備えておいて良かった。

 最初の顔見せが終わった後、僕が投入する予定の戦力を報告すると「たかが犯罪者の取り締まりに念を入れ過ぎだろ」と警視正をはじめ関係機関の責任者達は顔をひきつらせていた。

 相手を舐め何かあれば、血を流すのは僕の部下だ。

 軌道上には1個駆逐隊が展開していて、逃走に備えている。

 正直、艦砲射撃で館ごと吹き飛ばしたかったぐらいだ。

「ケッセルリンク大尉。被疑者の身柄は確保してくれよ」

 推定無罪が原則なのだからと、警視正は僕に告げる。

「承知しております」

 何人も有罪と宣告されるまでは無罪と推定される、だろ。習ったよ。

 疑わしきは罰せずどころか、公務執行妨害罪の現行犯じゃないか。

 始末すれば証明責任もいらないんだがな。

 結局、館の制圧にかかった時間は約1時間。問題の貴族を逮捕拘束できたが、うちの中隊は13名戦死、4名重傷の損害を受けた。

(糞。初めから僕が指揮をしていたら……)

 気分は最悪だ。

 他の場所では、もっと大規模な戦力を保有する貴族の所領もあったそうで、そこでは警備艦隊と交戦し叛乱鎮圧の様相を呈していたそうだ。

 まだ運が良かったと思うべきなのか。

 なお今回の捜査対象には、帝国軍の生きる英雄であるミヒャエル・ジギスムント・フォン・カイザーリング大将とクリストフ・フォン・バーゼル中将も含まれていた。

 しかしながらカストロプ公オイゲンの圧力もあり、捜査は中断された。

 カストロプ公自身が黒い噂のある人物だったので怪しく見えるばかりだった。

 身内に甘い軍は両名を予備役に編入する事で不問とする事にした。英雄が犯罪者であってはならないからだ。

 両者はカストロプ公の広大な領地を守る警備隊に迎え入れられ、全ては穏便に解決させられた。

 

 

 

 6月に入ると噂のフレーゲル艦隊が編成された。

 艦隊の運用方法・惑星攻略に当たっての地上部隊の投入時期など繰り返し打ち合わせが行われ、僕も装甲擲弾兵中隊を預かる身として参加した。

 休憩の合間、会議室で僕は兄さんと灰色の脳細胞について語り合っていた。

 アガサ・クリスティーは最高だ。

「失礼」

 そこに扉が開いて士官が入って来た。どこかで見たことのある顔つきだ。

「ルパート・ケッセルリンク大尉は」

「はい。自分です」

 すると笑顔を浮かべて近付いてきた。

「卿か。弟が生前は世話になった」

 そう言われてまじまじと見る。その士官の顔にフォン・コルプト大尉の面影を見た。

「もしや、フォン・コルプト大尉の?」

 その士官は頷く。

 ああ。やっぱりそうだ。どこかあの心優しい大尉に似ている。確か兄が子爵と言っていたか。

「兄だ。弟の復讐を代わりに果たしてくれたようで礼を言う」

 報告書を読んだと言っていた。道理で一介の大尉に過ぎない僕を知っていたのか理解した。

 あの市街戦で、僕は艦砲射撃を要請し根こそぎ吹き飛ばした。

 非戦闘員への被害は、あいつらが虐殺してしまったから考慮する必要は無かった。

「いえ。中隊長には下士官候補生の頃からお世話になっていましたから。それに、身近な知り合いが殺られたら誰であれ贖いはさせますよ」

 血は血で贖うしかないって昔から人の歴史は証明している。手っ取り早い手段を使っただけだ。

 本当の意味での復讐すべき相手は、リッテンハイム侯かもしれない。彼の私兵が暴れたのは統制できなかった侯自身の責任である。

 その事を告げると、生粋の貴族であるコルプト子爵は苦笑していた。

 嫌味のない笑顔を浮かべ、それでもありがとうと言ってくれた。

「戦闘中の背後は安心してくれ。私の戦隊がいる」

 そういってコルプト子爵は去っていった。凄く感謝している様子だった。きっと仲がいい兄弟だったのだろう。

 多分、うちの兄さんも僕が先に死んだら復讐してくれるだろう。

(それにしても戦隊って何隻かの艦艇を指揮する指揮官だろ。さすが子爵様、凄い出世)

 僕ら歩兵は最後に降下し足で制圧するのが任務だ。艦隊決戦の時は後方に下がって待機するが、それに付いて来るのかな。

「貴族にしては珍しくまともな奴じゃないか。わざわざ礼を言いに来るなんて」

 ロイエンタール少将が感心した様に言うと兄さんが突っ込みを入れた。

「卿も末席とは言え帝国騎士だろ」

 兄さんとロイエンタール少将も、謙虚な彼の姿勢に好意を持った様だった。

 軍では貰える物は何でも貰っておけという。好意も有難く頂いておく。

 

 

 

 7月にオーディンを出兵した遠征軍は8月22日、イゼルローン要塞に到着する。一方、帝国軍の大規模動員を察知した同盟軍の反応も早かった。

 第三次ティアマト会戦でロボス元帥は、自分たちが前衛と離れすぎたために第11艦隊司令官を戦死させたと考えている。

 あの場合は運に近い確立で被弾したようなものなのだが、そう言った考えから、戦力を集中させた迎撃で乾坤一擲の決戦を行おうとした。

 構想は中部太平洋における日米両軍の迎撃作戦に近く、遠く遠征してきて疲弊してきた敵艦隊を屠るという、至極単純なものだ。そのため、決戦の地は因縁のティアマトが選ばれた。

 ミュッケンベルガー元帥としても決戦は望む所で、長期戦は兵の疲労も高く継戦能力にも限界がある。

「フレーゲル中将に先陣を頼みたい」

「小官にですか!」

 クロプシュトック侯討伐で戦果をあげ中将に昇任したフレーゲル男爵は、9月1日の作戦会議で惑星レグニツァ周辺の威力偵察が命令された。

 麾下の艦艇は12,200隻。将兵1,347,000名。

 クロプシュトック侯討伐で人材を適材適所に使いこなす器量と、厳格に軍規を守る姿勢を見せて、幕僚には参謀長ノルディン少将、先任参謀エルネスト・メックリンガー准将、実戦部隊指揮官として左翼集団指揮官ウォルフガング・ミッターマイヤー少将、右翼集団指揮官オスカー・フォン・ロイエンタール少将など蒼々たるメンバーが集っている。

 そして惑星レグニツァには因縁深い相手が待ち構えていた。

 480年にP2A5でフレーゲルを叩きのめしたパエッタと、今彼が指揮する第2艦隊である。

 惑星レグニツァは曲型的な恒星系外縁部ガス惑星で、過酷な自然環境は両軍の索敵能力を著しく低下させていた。

 巨大なガス状惑星の雲と秒速数百メートルの嵐の中、レグニツァ上空遭遇戦は唐突に始まる。

「どう思う。ビッテンフェルト?」

 ラインハルトの問いにビッテンフェルトはFTLを通して答える。

『昔読んだ、古典的小説に書いていた一説がある』

 迷った時は前進あるのみ、突撃しろと―――。

 ラインハルトはこの猪武者のような男が読書することに少し驚き、呼吸音で笑いながらも同意した。

「わが賢明なる友の判断に従おう」

 ラインハルトが友という表現を使った事に傍らで控えていたキルヒアイスは驚いた。(ラインハルト様は良い意味で変わられた。信頼できる相手は作るべきです。例え一方通行でも──)

 フリッツ・ヨーゼフ・ビッテンフェルト大佐とラインハルト・フォン・ミューゼル大佐の戦艦は、帝国軍の右翼に回り込み核融合ミサイルを打ち込もうとしていた同盟軍戦艦「ユリシーズ」「セントルシア」を迎撃する。

 同調した2隻の戦艦による主砲斉射。それは「セントルシア」のミサイル発射孔に命中し熱量を以て誘爆させレグニツァの大地に叩きつけ、さらに1隻の戦艦と2隻の巡航艦を撃沈した。

「撃て!」 

 ラインハルトが頬を昂揚させ指示を飛ばす姿を見て、キルヒアイスは安堵する。

(やはりラインハルト様には戦場こそ相応しい)

 

 

 

 不意の遭遇戦に両軍は混乱したものの、同盟軍第2艦隊が主導権を握っていた。

 指揮官が落ち着いていないと部下が混乱する。

 内心、パエッタは無秩序な戦闘突入に苛立たしく思っていた。

 無論、司令部に波風立てぬよう表面に出さず静観していた。

 深呼吸して気分を落ち着かせ周りを見てみる。

 幕僚の一人、ヤン・ウェンリー准将が何か言いたげにこちらを窺がっていた。

(たしか、エル・ファシルの生き残りだったな)

「ヤン准将。何か意見でもあるか?」

「はい閣下」

 ヤンは前髪をかきあげベレー帽を被り直しやって来る。

「僭越ながら、小官が思いますに……」

 その時、嵐が突然向きを変えた。

 スクリーンの向こうで乱流が帝国軍の艦列を襲うのが見えた。ヤンの意見も雲散霧消してしまう状況変化だ。それを見逃すほどパエッタも未熟ではない。

「今だ。全艦突撃!」

 パエッタは号令をかけた。闘将として名高い彼の実力を発揮する時が来た。

 同盟軍の艦艇は隊列を維持しようとしながら、帝国軍に砲火を浴びせ増速する。

(まぁ、今は仕方ないよな)

 ヤンはこの好機を理解し進言を中断する。

 パエッタは聞く気が在りそうだったので、後で様子を見て話しかけようと思った。

 

 

 

 フレーゲル男爵は人柄の良い提督だが、熟練した戦術家ではない。

 経験のない嵐に唖然としていた。

 おまけに降り注ぐ敵の砲火。思考をかき乱すには十分だった。

 それでも、幕僚や各級指揮官は彼を守り立て戦い抜こうとしていた。ミッターマイヤー、ロイエンタールも陣形を支えようと必死で指揮している。下手な貴族の提督よりも、自由な裁量の許される彼の下で戦う方が腕を揮えるからだ。

 義眼の参謀が先任参謀のメックリンガーに何か耳打ちしていたが、注目しているものはいない。メックリンガーは頷きフレーゲルに近付き発言する。

「閣下。意見具申をさせて戴きたいのですが」

「うん」

 状況を打開できるなら藁にでも掴む心境だったフレーゲルは、芸術家提督として知られるこの先任参謀の意見を聞く。

 それは、加熱された天ぷら油に水をぶち込むような物だった。弾ける凄まじい油が自分の腕に襲いかかる。そういう状況を想像してもらえばいい。

 勝利を確信し帝国軍を押していた同盟軍。その直下に位置する惑星レグニツァの大気層に核融合ミサイルが撃ち込まれた。

 瞬間にして巨大なガスの塊が第2艦隊に叩きつけられた。

「よし。今だ! 叛徒の奴らに倍にして返してやれ」

 ミッターマイヤーの指揮する艦隊は、同盟軍の艦列に疾風のように食い込んでいく。

「我らも行くぞ」

 ロイエンタールもその様子を見て盟友の片翼を支えるべく前進し、陣形が崩壊し混乱する同盟軍に痛烈な打撃を与える。

「何とか勝てたか……」

 フレーゲルの目の前では帝国軍の砲撃が敵の艦艇を貫き、爆発が連鎖する光景が広がっていた。

 

 

 

 一瞬にして攻守が逆転した。パエッタは拳を握り締めスクリーンを注視していた。

 ヤンが声をかけようとした時、パエッタは震えそうになる声を抑え命令を発した。

「撤退する」

 自己の名誉よりも兵の生存を優先し、パエッタは無用な損害を避け速やかに艦隊をまとめ上げ引き揚げる事を決断した。その決断にヤンは好感を持った。

 素直に敗北を認めるのは難しい。凡人なら負けを認めずこの場に留まり損害を増やしていたかもしれない。

(今回は負けたな。だが致命的損害は免れたか)

 ヤンは艦隊の損害を概算し、その様に分析した。

 同盟軍が戦場から離脱することにより、両軍ともに消化不良な状態で、この雲中の戦いは終了する。

「ヤン准将」

「はい」

 パエッタは傍らで苦虫を噛み潰したような表情をしてる幕僚に声をかけた。

「先程、貴官が意見具申しようとしていた内容は……」

「はい。同じ手です」

 内心で少し、自惚れしていたかも知れないとヤンは自分を責めた。

(敵を舐めていたのかもしれない。まさか、同じ事を考え付く変わった人間がいるとは思ってもいなかった)

「そうか」

(この男は使える。我が軍にとって有益だ)

 ヤンは悔しそうだったが、パエッタは自分の幕僚が同じ戦法を考え出していた事にささやかな満足を覚えていた。自分にヤンを使いこなせるかは分からないが、今後は彼の意見を活用しようと決意した。

 

 

 

 9月11日。両軍はティアマト星域に集結する。

 フレーゲル男爵は左翼部隊指揮官という、本人にとって驚愕すべき責務を与えられた。

 ここ2年で同盟は軍事的に大きな消耗を加速させており、それは経済的な負担となっている。

 昨年3月のヴァンフリート星系で同盟は第6、第10艦隊に壊滅的損害を受け再編中で、11月に発生した第6次イゼルローン要塞攻防戦の前哨戦で、帝国軍のミューゼル分艦隊を散々に打ち破り壊滅させたが、その後の戦闘で多大な損害を出し、12月7日に同盟軍は全面撤退している。

 そして今年に入って皇帝の戴冠30周年ということで帝国軍は大規模な軍事攻勢を行った。

 第3次ティアマト会戦ではウィレム・ホーランドが勇戦したものの戦死した。つい先日のレグニツァ上空遭遇戦でも第2艦隊が敗北したと言う。連敗続きだ。

 レグニツァで少なからぬ損害を受けた同盟軍第2艦隊は第10艦隊の後方に予備隊として下がっていた。

 戦闘は9月13日1240時、右翼の第12艦隊にフレーゲル男爵率いる帝国軍左翼部隊が襲いかかる事で始まった。

 フレーゲルの麾下には元からのフレーゲル艦隊の他に、シュターデン中将、フォーゲル中将、ファーレンハイト少将、エルラッハ少将が指揮する2万余隻が加わり合計3万隻以上。

 連携の慣れていない艦隊同士のため、一部の部隊が突出するベストよりも戦線を安定させるベターな戦果を求める。それがフレーゲルの立てた基本計画だ。

 そのため双璧も縦横無尽に駆け巡ることが出来ず消化不良らしい。一部の精鋭など、代えが利かないため消耗させる訳には行かない。

「なかなか、あの司令官は楽をさせてくれんぞ」

 フレーゲル男爵の事をミッターマイヤーは後日、嬉しそうにそう洩らしていた。

 一方でボロディン中将は、帝国軍内部で「足手まといにしかならん」と評価されていたエルラッハ少将が指揮する前衛の分艦隊3,000隻を相手に苦戦していた。

 エルラッハ少将の側翼を守るアーダルベルト・フォン・ファーレンハイト少将は扱いづらい男ではあるが、十分な指揮能力を持って第10艦隊の応援を阻止している。

 戦線を支えるのはこういった指揮官たちだ。

「ファーレンハイト少将はよくやっているようだな」

 フレーゲルは感心した。

「食うために軍人になった」と公言しているだけに給料分の仕事はきっちりこなしている。

 同じ頃、「フレーゲル男爵ばかりに武勲をたてさせるな!」と、ミュッケンベルガー元帥に叱咤激励された帝国軍が勇み立ち、中央の第10艦隊が帝国軍中央部隊、左翼の第6艦隊も帝国軍右翼部隊とそれぞれ交戦に突入していた。

 帝国軍の攻勢に勇将として誉れ高いウランフは眉をひそめた。

(個々で独立して動いてるようで、巧妙に連動されておりやりにくい相手だ)

 1340時。同盟軍参謀長ドワイト・グリーンヒル大将は第2艦隊を迂回起動させ、帝国軍後背の連絡線を遮断する手にでた。

 後背遮断を恐れた敵の機動予備をできるだけ多く引き付け、イゼルローン方面に誘引して敵戦列に裂け目を作り出し、中央のミュッケンベルガー本隊を突き崩す計画だった。

 グリーンヒルから命令を伝えられたパエッタは、レイテ沖の小沢機動部隊やガウガメラのアレキサンダーのつもりだったのかもしれない。

 9月15日0535時。これに対応できたのはコルプト子爵の戦隊である。

 第2艦隊の戦力は8,800隻。対するコルプト戦隊は、各種艦艇合わせて40隻。220倍の戦力に立ち向かおうと言うのだ。

「あの小うるさい蝿を叩き落せ!」

 叱咤激励もむなしく艦列がかき乱され、各処で核融合炉爆発の閃光がほとばしる。

 結果的に第2艦隊の牽制作戦は、この戦隊によって阻止された。

 1040時。コルプト子爵は時間稼ぎで防ぎきり、手間取った第2艦隊は機動予備の双璧が急転回して駆けつけ圧倒されていた。

「反応が遅い」

 ロイエンタールはパエッタをそう評価した。

 帝国軍の砲火が第2艦隊旗艦パトロクロスの近くまで迫り、至近弾が艦を揺らす中、パエッタは幕僚の中で一人落ち着いて、髪をかき上げているヤンに声をかけた。急転していくこの戦況を打開する手はあるのかという意味を含ませて。

「ヤン准将、意見はあるか」

「はい?」

 ヤンがしばしば的確な判断で自分を補助していたので意見を求めてみたのである。

「単純に機動予備が投入され機先を制したのが敵側だったということでしょう。撤退すべきだと思います」

 パエッタはしばし、最近逃げてばかりだなと考えるが決断する。死んで帰って家で待つ妻に怒られるわけにはいかない。

「よかろう。各艦に発令――」

 第二艦隊はミッターマイヤーの分艦隊に砲火を浴びせ食い破り、1500隻のうち、一挙に500隻以上の損害を与えた。死兵を相手にする訳にはいかない。ミッターマイヤーは追撃の手を緩める。

 パエッタが友軍戦線にたどり着いた9月16日。そろそろ同盟軍の継戦能力が限界になろうとしている。帝国軍もそれは同じだ。

 

 

 

 1440時。敵の侵攻意図を挫いたと判断したロボス元帥は引き上げを命じた。

『我が軍の忠勇なる将兵は、不法に我が国固有の主権的領土に侵攻してきた専制国家の侵略軍に対して勇戦しその企図を頓挫させた。よって抗戦の目的を達成され、任務の完了とし帰還する。今後も我が国への侵略には断固とした処置をとっていく――――』

 トイレで用を足しながら僕はその放送を聴いた。装甲擲弾兵の仕事は無かったので暇をもた余していた。

 2230時。帝国軍も戦場から離脱を開始し、イゼルローン要塞へ向かう。

 フレーゲル男爵は旗艦に兄さんとロイエンタール少将を招いて労ってくれた。

「いやぁご苦労さん。ご苦労さん」

 腰の低いフレーゲルの後で控えるエルラッハ少将たち幕僚が、強張った表情をしてたと兄さんは言っていた。そりゃまあそうだ。

「卿らの戦いぶりは見事だった。実にいいね。また機会があれば、よろしく頼むよ」

 その言葉に、グレーの瞳と金銀妖瞳(ヘテロクロミア)をするどく輝いた。蜂蜜色の頭とダークブラウンの頭が、うやうやしく下がる。

「御意」

 砕けた言葉の裏で、自分のために次も戦えと勧誘されていると誤解したのだ。

 話を聞く限りフレーゲル男爵はそこまで考えていたとは思えない。

(単純にお礼を言いたかっただけだろうな)

 こうして、星の大海で行われた第4次ティアマト会戦は虚しい消耗を繰り返しただけで終了した。

 本当、今回は脇役で暇だったな。

 僕の乗る揚陸艦は後方待機で、今回の戦闘に貢献される事は無かった。

 次も無事帰れたら良い。

 戦闘配置解除の指示を受け取り、武器庫への武器返納と解散を部下に伝えた。

 

 

 

 10月1日。どこかの馬鹿が余計な一言を漏らした為だ。

 イゼルローン要塞に帰還後、やっと帰れるなと思ったのもつかの間、第16会議場に集合するよう命じられた。

(何だよ、帰れるんじゃないのか)

 今回の戦闘で活躍できなかったオフレッサー上級大将は、不満が溜まっていた。

 ガス抜きの為、ミュッケンベルガー元帥が演習でもしたらどうだと漏らしたようで、装甲擲弾兵総監の欲求不満は、演習で発散される事になった。

 まったく余計な事を言いやがって。

「状況を説明する」

 仮想敵である叛徒の艦隊約1万隻がイゼルローン回廊に侵入。惑星の1つを占領した。

 友軍の艦隊が敵艦隊を撃滅し、軌道上を確保。

 装甲擲弾兵が例によって降下して、敵地上軍を掃討し惑星を奪還するのが任務だ。

 そこまでは、普通の演習でよくある状況付与だ。

 しかし、凄いのはこれからだ。

 降下作戦に投入される戦力は1個旅団。想定ではなく実際にイゼルローン回廊同盟側出口に近い惑星に向かう。

 叛徒の奴らが攻めてきたらそのまま最前線の戦場に切り替わる。

(これは挑発と思われても仕方がない。敵が出てくるんじゃないか)

 オフレッサー上級大将の顔を見ていると、もしかしたら、それが狙いなのかもしれないと思えて来る。

 周りに居る他の中隊長連中も、気付いた様で顔色を変えている。

「よろしいでしょうか」

 連隊長の一人が挙手して発言を求める。

「もし叛徒が攻め寄せてきたら、その場合はどうされますか?」

「無論、叩き潰すだけだ」

 何。その強気な発言。

 声無きざわめきが広がる。

 オフレッサー上級大将はかなり乗り気で、本格的な物になった。

 手際が良い事に、今回の戦闘で使用されなかった弾薬、エネルギーパック、糧食、推進剤など必要な物は十分用意された。

 うちの中隊に回って来た書類を見て驚いたぐらいだ。

 この件は幸いにして無事終了した。

 4夜5日の演習を2回、1夜2日の演習を5回繰り返しへとへとに疲れた頃、ようやく状況終了の連絡が来た。敵が本当に来るかもしれないと言う恐怖が演習中、ずっとあった。

「うちのボスは何を考えてるんですかね」

「戦争狂だろう」

 部下の問いにそれしか答えられなかった。

 宇宙艦隊の連中より、オーディンへの帰還が1ヶ月近く遅れた。

 

 

 忙しかった帝国暦486年もようやく終わる。

 12月31日の大晦日。僕は駐屯地当直司令として上番していた。

 夕食に出た鴨の胸肉が良い味をしていた。

 営内で休暇の者は飲酒が許されシャンペンを開けているが、僕は業務が有るので飲まない。

 夕食後。各中隊の当直からの報告も終わり、のんびりと時間を過ごしていた。

 下番してからの年始休暇の過ごし方を考えていると電話がかかって来た。

『甲1種非常呼集!』

 相手は連隊長だ。凄い興奮して、こっちに駆け付けると言っていた。

 詳しい事は後で訊くとして、各中隊の当直士官に呼集命令を伝える。

 20分後。残留していた営内者と、駆けつけた営外者で出発準備を終わらせた。

 各中隊残留者3分の1で、集成2個中隊にはなる。会議室に各中隊の士官が集まり連隊長を待つ。

 待ちきれなくて、一部の者が僕に訊ねて来る。

「ケッセルリンク大尉。状況は?」

「いや、僕も詳しい事は知らないんだ。連隊長の到着を待とう」

 電話を貰っただけだし。

 しばらくして幕僚を連れ連隊長が到着した。号令をかける。

「気をつけ!」

 一斉に起立する。

「ああ、そのままで良い」

 敬礼を省略し着席する。全員が座ったのを確認すると、連隊長は状況説明を始める。

「然る高貴な身分の方から内密の指示が有った」

 1時間ほど前に、寵姫の筆頭で皇太后になるのも間も無くと思われているシュザンナ・フォン・ベーネミュンデ侯爵夫人が拉致された。

 犯行グループは訓練された元軍人らしく、護衛を撃破すると標的を確保して引き揚げた。

 護衛の武官が重傷を負いながらも通報した。

 相手の装備は、帝国軍装甲擲弾兵と同じ装備であった事。命に危害を加える兆候は無く、まだ生存している可能性が有る事など。

(何それ、皇帝陛下喧嘩売ってるだろう)

 警察が調べた所、近くに犯行グループが逃げ込めそうな館は一つ。

 リッテンハイム侯爵の館だ。

「リッテンハイム侯が誘拐を!」驚きの声があがった。

 司法の管轄外になるその館。内務省から報告を受けてリヒテンラーデ侯はこの知らせを皇帝に上奏した。

 ブラウンシュヴァイク公爵が貴族の中で飛び抜けている中、今最も権勢が低下しているリッテンハイム侯は焦っていた。

 皇帝の不興を買うと読めなかった馬鹿。事件が発覚しないとでも思ったのだろうか。

「大逆罪は死刑。それが法の定める所じゃ」

 あとは分かるなと、皇帝はおっしゃったらしい。

 ベーネミュンデ侯爵夫人を無事、救出せよ。皇帝の勅命である。

「警察にも協力を要請している。思う存分暴れて来い」

 貴族の屋敷を舞台に戦争ごっこ。最近多いな。

 突入の指揮は僕が執る事になった。

(でも貴族の屋敷なんだろ。やり過ぎて問題にならないのだろうか)

 お姫様を助け出す勇者と言う配役だが、現実は殺伐としている。

 大晦日がこんな事になるとは、関係者全員がついていない。

「無人偵察機の撮影した館の映像だ。確認しておけ」

「ここはリッテンハイム侯爵の別邸として登記されており、普段の生活を行う本邸とは異なる。警備は装甲車数両に小隊規模の歩兵。ワルキューレと艦艇も保有している」

 小規模の宙港施設まで備えている。どれだけ領民の血税が使われているのだろう。

「本邸には憲兵を派遣するそうなので、我々はここだけに集中する」

 障害となる敵の車両、ワルキューレや艦艇は、空爆で事前に破壊する。

 僕たちは、重迫撃砲の煙幕支援で邸内に突入する。

 今回、邸内での発砲は厳禁とされている。人質の確保が最優先だ。

「ゼッフル粒子を使いますか?」

「否。相手が使って、目標が被爆されても困る」

 戦斧を手に昔ながらの肉弾戦だ。

「目標の確保に全力を尽くせ」

 失敗したら全員、皇帝から処罰を下されるだろうな。

 中隊本部に小銃小隊4個、迫撃砲と対戦車の小隊で車両22両、人員168名。僕も装甲服に身を包み、戦斧を片手に装甲車に乗り込む。

 2330時。館の灯りが一斉に消えた。敵のライフラインを寸断した。

 続けて航空隊が爆音をあげて降りて来た。

 軌道上の艦隊からの支援だ。

 爆発の轟音が鳴り響いた。軍事目標だけを狙った精密爆撃だ。

 突然の攻撃に敵は混乱の渦中だろう。

「行くぞ」

 車列を連ねて、装輪装甲車が一斉に館に向けて走り出す。

 館の敷地は黒煙と発煙弾の煙幕に覆われていた。

「下車!」

「止まれ、何物だ」

 銃を向けて静止じて来た警備兵を戦斧で一閃する。

「帝国軍だ」

 答えてあげたが、相手は首元に叩きこまれて、ひゅーひゅーと血を吐きながら倒れた。お返事は無い。

 玄関まで一気に前進する。重厚感のあるドアが目に入った。

 壊すのは勿体ないが、鍵など持っていない。

「悪いな」

 熟練の木工職人が丹精こめて作ったであろうドアを、容赦なく叩き壊し屋内に突入する。チーク材の破片を踏み散らかしながら、周囲を確認する。

「正面玄関確保」

 向かって右側の扉を開け中に入る。

 光沢が美しいテーブルに一瞬、目を奪われた。

「ほお」

 キャビネットの横から銃撃が来た。舌打ちをする。

 小火器程度では装甲服の表面に傷しか付けられない。

 だから、振り向き様に戦斧でキャビネットごと、相手のいる辺りを突いた。

 肉を突いた確かな手応えを感じる。

 引き抜くと同時に、どさりと敵が倒れる。

(ここは違うな)

 次の部屋に向かう。

 豪華な装飾品が破壊され血糊で汚されていく様子は、価値が分かるものにとって悪夢でしかない。

(そんな遠慮をしないがな)

 屋敷の中央に位置する応接室で、敵の抵抗が激しくなった。

(ここか)

 ここが最期の拠点と言った所か。他の部屋を捜索し終えた部下達が集まってくる。

「人質には気を付けろ。突入用意」

 僕の号令で部下達は、突入の姿勢をとり配置に着く。その後は訓練通りのルーチンワークだ。室内に居た敵は全て片付けた。

 お姫様は救出したし、敵は一掃した。

 近衛師団からわざわざ迎えが来ていた。人質の身分を考えれば当然かと納得する。

「貴様ら、ここがどなたの屋敷だかわかっているのか!」

 その場に残された捕虜の一人が喚く。

 随分と強気だがその発言は耳障りだ。一発、蹴りを入れておく。

 装甲服で蹴ら骨折と内蔵破損だが、犯罪者に人権は無い。

「お前らこそどなたを相手にしたか考えるんだな」

 皇帝陛下を敵に回せば全員死罪だ。その事を伝えると、ようやく分かった様で顔色を変えた。

「あとは、内務省と憲兵のお世話になるんだな」

「ま、待ってくれ! 私達は何も知らなかったんだ」

 知らないにしても公務執行妨害にはなるわな。

「言い訳すんな糞が」

 時計を見ると日付が丁度、帝国暦487年1月1日になった。最悪の年越しだ。

 夜空に花火が上がり歓声が聴こえる。

 馬鹿騒ぎも終了だ。

 警察に犯人を引き渡す。

「中隊長。各小隊出発準備完了しました」

 素早い撤収。陣地移動の基本だ。

 先任の報告に頷く。

 整列した部下を前に、何と声をかけるべきが迷う。

「新年おめでとう。便所掃除は終了だ、帰るぞ」

 僕は気持ちを切り替えそう挨拶した。

 

 

 

 後日の取り調べで、リッテンハイム侯爵は、自分の名前と屋敷を勝手に使われただけだと弁明した。

 確かに犯人との繋がりを示す物は発見できなかった。状況証拠だけで大貴族を裁く訳にはいかない。

「リッテンハイムめ。首は繋がったようじゃな」

 憲兵総監からの報告に皇帝は苦々しげに言った。

「しばらく奴の顔は見とう無い。登城も不要と伝えよ」

 皇帝の不興を買い、ますますリッテンハイム侯の権勢は落ちた。

 この知らせにブラウンシュヴァイク公は喜んだと言う。

 

 

 年明けの休暇で、同期の飲み会があった。

 ハルオが相変わらず豚みたいに喰っていたが、激やせしていた。

 装甲服来て駆けまわれば当然だな。

 今は装甲擲弾兵の中隊長だと言う。

 お互いの近況報告を交わす。

 ヴェーネミュンデ侯爵夫人の事は伏せながら、リッテンハイム侯爵が犯罪に関わっていた事を話題に提供した。

「で、物証は見つからず処罰されなかったんだってさ」

 ハルオが黒ビールに舌鼓を打ちながら口を挟む。

「お前さ、上に睨まれてるだろ」

 枝豆を取り出す手を止め考える。

 ミューゼル大佐に、リッテンハイム侯爵。今の所、この2人だけだと思いたい。

「絶対、次の人事異動でどこかに飛ばされるぞ」

 ハルオは確信めいた表情で告げた。

「まさか」

 その時は笑い飛ばした。

 しかし休暇明け早々に、人事から移動命令を受けた。

 ベーネミュンデ侯爵夫人の件では、うちの中隊も活躍したし今度は大隊長に昇任かな、などと楽観的に考えていた。しかし、現実は甘くなかった。

 駆逐艦「ミステル」艦長に任ず。

(また、だと?)

 今回はリッテンハイム侯爵の意向だと言う。

 自分の館を襲撃された復讐か。

 でも、決めたのは僕ではないんだがな。

 権勢が衰えたとは言ってもさすがは侯爵様だ。平民の大尉風情の人事はどうでも好きに出来るらしい。冷や汗が流れる気分だった。

「ミステル」の方も問題があったらしい。

 何でも僕の後任で「恩賜の銀時計組」の一人であるヤマモト中尉が連絡艇の事故で入院したそうだ。

 先祖が宇宙艦隊の英雄で注目されている人物だっただけに、今回の事故は不運だな。

 他人を憐れんでいる余裕はない。

 駆逐艦の生存性は最悪だ。自分の努力ではどうにもならない。

 乗ったら死ぬじゃないか。

 絶対生き延びてやる。

 

 

 

14.アスターテの調理法

 

 帝国暦487年初頭の2月。ウィリバルト・ヨアヒム・フォン・メルカッツ大将は最後の奉公として、帝国の武威を示すため艦艇4万隻余、将兵4,659,000名を率いて率いて出兵の指揮を執り、イゼルローン要塞にやって来た。

 メルカッツは今回の出兵を最後に退役し、家族と余生を過ごすと周りの親しい者に打ち明けていた。だからと言って、手を抜いたり、気負ったりはしなかった。最後の戦いに対する彼の意気込みは普段と変わらず、部下の将兵を一人でも多く無事に家に帰らせる心算だった。

 第22会議室で、メルカッツ艦隊を構成する司令部幕僚に、シュターデン、フォーゲル、ファーレンハイト、エルラッハ、ルッツ、ワーレン、ケンプといった分艦隊・戦隊・駆逐隊の各級指揮官に交じり、戦艦「ブリュンヒルト」艦長ラインハルト・ミューゼル大佐はいた。

 艦長以上の出席で行われるその会議は、作戦自体が既に決定しており、圧倒的戦力の我が軍が、敵を包囲殲滅するだけだ。

 ラインハルトは眉をひそめた。

(同盟軍が動けば、各個撃破の危険もあるな)

 そう思っていると、シュターデンが発言した。

「宜しいでしょうか?」

 メルカッツは頷き、発言を許可する。

 シュターデンは今回、左翼集団の指揮権を預けられていた。当然、それなりの見識を持っている人物だ。

(さて、どんな話を聞かせてくれるのかな)

 ラインハルトは耳を傾ける。

「司令長官にお伺いします。分散は各個撃破される恐れがないでしょうか」

 シュターデンが他の者に聞かせるよう質問した。

 その言葉に、会議室が一瞬ざわめいた。

 メルカッツは頷き皆に説明した。

「全くそのとおりだ。だが分散は運用上止むを得ない」

 複数の経路の使用は、結果的に包囲・迂回の効果が得られ、主動性を会得できる。そのため、各艦隊は有機的に連携するよう努力しなければならない。

 その事が、各個撃破を避ける方法だ。

 その後、安全管理確認の徹底と補足事項の説明といった細部の調整が行われている。

 メルカッツの指導は無能な貴族連中の士官にも分かるように基本に忠実で、それでいて的確で無駄がない。

(なるほど、老練といわれるだけの実戦経験をしているわけだ)

 ラインハルトは感心した。

 シュターデンも最初から分かっていたようで、全員に聞かせる為に質問したのだった。

 色眼鏡なしで、素直に彼らの作戦指導を聴いていると、新たな発見があり面白い。

 隣に座る同僚フリッツ・ヨーゼフ・ビッテンフェルト大佐に、彼の意見を訊いて見ようと目をやった。

 ビッテンフェルトは後席で、人ごみの背中に隠れてるのを良い事に、居眠りを始めていた。

 寝言すら交じっている。信じられないと一瞬驚いたが、彼らしいと諦めに似た気分を味わう。

 親しく知り合う前のラインハルトなら侮蔑の表情を浮かべただろうが、この男は、実戦では実に頼りになる男なので放っておく。

 周囲を見回すと、艦長クラスになると似たり寄ったりで居眠りしてるものもいる。

 ふと一人、壁のディスプレイ・スクリーンに映し出される光点をじっと見つめる青年に気付いた。

 駆逐艦「ミステル」艦長のルパート・ケッツセルリンク大尉。ラインハルトによって少なからず人生を動かされた男だ。

 ルパートが両軍の配置を見ている訳ではないことにラインハルトは見て取れた。

(あの士官は装甲擲弾兵として陸戦の指揮能力はあった。だから駆逐艦長もやらせてみた。まぁ、嫌がらせだったのも事実だが)

 戦場で死ぬか負傷させる積もりだったが、ともかく生き残り、その後、クロプシュトック侯討伐で地上掃討の立案に加わり戦果をあげ、何の因果かまた駆逐艦長に戻っている。

 

 

 

 僕らの敵はイゼルローン方面への大規模な帝国軍到着の報告を受け、再侵攻と判断。逃げ上手といわれながらも艦隊の生存率が高いパエッタ中将の第2艦隊に、第6艦隊から分派した戦力で増強して迎撃に出た。参加艦艇は2万隻余、将兵2,448,600名。

 此方も各個撃破されるような愚作は取るまい。相互部隊の間隔をつめ連携した機動により、カンネーの戦いを再現するつもりだ。いってみれば、ダゴン会戦の復讐かな。

(さて、こちらが打つ手としてサルフの戦いのヌルハチみたいに野戦築城するわけにもいかないな。ふん、思えば遠くに来たものだ)

 アンゴラで32大隊の一員として戦い、コンゴへの偵察命令を受けたら死んだ。そして生まれ変わったら宇宙で数万隻の艦隊がぶつかり合う世界。

 自分でもぶっ飛んだ人生だと思う。

 駆逐艦の艦長という畑違いの職種変更の人事移動も、内心むかつくものを覚えたが今では慣れた。特に入港での操艦指示は適切で素早く、上陸を心待にしている乗員を喜ばせていた。

 ふと視線を感じた。

(ああ、金髪野郎か)

 考えていた未来と違い進路を狂わされて、ラインハルトに好感情を抱けはしない。

(あいつ死んでくれないかな)

 僕の軍歴は楽な道筋では無いが、それより悲惨な生活を送ってる人が居た。

 アーダルベルト・フォン・ファーレンハイト少将は、戦場に於いては勇猛果敢。その攻撃は第4次ティアマト会戦で同盟軍のウランフ中将を唸らせている。

 人間と言うのは生まれた時から運命が決まっており、貴族の子供は貴族と言うが、ファーレンハイトの人生はそんな甘い物ではなかった。

 平民よりも貧しくその日の食べる物にも困る毎日で、農家の畑の片隅に捨てられた売り物にならない野菜を貰って帰ったり、時には飲食店のゴミ箱を漁った。

 恥辱に塗れた貧困生活から抜け出し生きるため、食べるため軍に入った。

 成長期をそんな体験で過ごしたファーレンハイトは人一倍、質素倹約をモットーとしている。

 昼休憩の時間になり、昼食を摂るため各自会議室を出て行く。

「俺たちも行こう」

 ビッテンフェルトに誘われ僕も席を立つ。僕は友達じゃ無いんだけどな。金髪野郎も一緒だ。

(鬱陶しいな)

 人の波に紛れ食堂に移動する。

 今日は給料日。少し奮発して、栄養価の高い物が食べたいと券売機にカードを入れ注文した。

「おい、ルパート。見てみろよ!」

「はい?」

 列に並んでいた僕は、興奮した様子でビッテンフェルトが話しかけて来て、訝しげに思いながら視線の先を見た。

「あの貧乏提督が外食してるぞ!」

 貧乏提督として知られているファーレンハイト。

 周囲の人間もちらちらと注目している。トレイを持ち、受け取り口で待つファーレンハイト。

 異様な期待の空気が食堂を覆っている気がした。

 注文の品は、忙しい昼時だというのに直ぐに出てきた。

 ――卵二個、丼御飯、刻み海苔、葱、醤油、漬物。それは卵かけ御飯だ。

 普段、何を食べているのかと思う一方で、そんなメニューが有ったのかと全員が思った。

 

 

 

 人類は空飛ぶ鳥を研究し、そしてついに宇宙へ飛び出した。文明の発達と生活圏の拡大は、同時に戦場の範囲に宇宙を加えた。

 メルカッツ艦隊左翼集団12,600隻が、シュターデン中将の指揮下、前進目標に向かい航行している。シュターデンは堅実な用兵で知られていた。一方で奇策を使い意表を突いた攻撃に弱いと言う要素も持っていた。

 1500時。同盟軍の先攻により、双方の戦略的意義のない戦いがアスターテの会戦という形で始まった。

「突撃!」

 パトリチェフ大佐の鍛え上げられた宙雷戦隊が、高速戦艦と巡航艦の増強を受け帝国軍に襲いかかった。

 高速戦艦は宙雷戦隊の火力増強と指揮統制のために生み出された、戦艦と重巡の中間──超甲型巡航艦で、敵主力艦に対しても対処可能な強力な武装を誇る。

 フョードル・パトリチェフ大佐はこの高速戦艦に将旗を揚げ、5,500隻の艦艇を統率していた。

 巨漢の怪力と言う容姿に似合わず、誠実で子供に好かれる人柄を知るヤンは、シュターデンを引きつける繊細な役割を与えた。

『目標地域へ導くため偽装された退却をすること』

 そして、それがわざとらしくないよう反復攻撃を実施しなくてはいけない。

 果敢な攻撃を行う敢闘精神が指揮官には求められた。パトリチェフはそれに最適な人材だ。

「エネルギー波、ミサイル、多数接近!」

 シュターデン艦隊左翼の分艦隊を指揮するヒルデスハイム伯爵は、落ち着いて回避と迎撃の指示を出した。

 三次元で表示される敵の編成は、高速艦艇を中核とした機動打撃部隊。一撃離脱という単純だが、足止めには効果のある戦術機動を行ってくる。

 事前の指示では、もし敵にぶつかったら壊走を演じた擬態で敵を吊り上げると言うものだった。

(しかし、目の前の敵戦力は少な過ぎる)

 このまま後退を演じるべきか、構わず撃破するべきか頭を悩ます。

(シュターデン提督の指示があるまで、撃破する心算で普通に対応するか)

 そのように考えた。

 

 

 

 私室で読書するメルカッツのページをめくる手を、呼び出しのコールが止めた。

「どうした?」

 報告が入る。

『左翼集団が敵と接触。交戦に入りました』

 メルカッツは顔をしかめた。戦力差が有るにもかかわらず、大胆な攻勢をかけてこようとは想像もしていなかった。本にしおりを挟み閉じる。

(敵の意図するところは遅滞行動で時間稼ぎのつもりか)

 戦力差を承知した上での交戦。普通なら、そんな無駄な戦いを行うなど在り得ない。しかしながら、政治が撤退を許さない。ならば何ができるか。

(となると、考えられるのは分艦隊単位に分散した遊撃戦か)

 少なくとも、自分達はある程度抵抗したと言う事実を残せ、面子は保てる。

(簡単には引き下がらないか)

 少々厄介になったとメルカッツは考えた。

 敵が粘るつもりなら、楽に勝たしてはもらえない。

(増援を待つつもりだろうか?)

 帝国軍としては長居はできない。速やかに撃破して引き上げたいところだ。

「右翼集団の様子はどうか?」

 フォーゲルの艦隊も敵と遭遇した可能性が在ると考えて問う。

 

 

 

 同じ頃、フォーゲル中将麾下右翼集団13,000隻に対して、同盟軍は3,500隻の分艦隊が繰り出していた。

 まともにぶつかったら勝ち目は無い。だから針路上に機雷をばらまき、小惑星の影で機会を待っていた。

 牙を研ぎ澄まし待ち伏せる獣の指揮官はグエン・バン・ヒュー大佐。遊撃戦の達人と自負している男だった。

 俄然に広がる光景は圧巻だ。観艦式のように並んだ航行序列の艦列。そのすべてが、こちら側に向かってくる。グエンは自分のおかれた状況を楽しんでさえ居た。

 電波妨害も行っており、帝国軍は同盟軍の正確な位置を確認していない。

「何処を向いても敵ばかりだな」

 グエンは傍らに立つ褐色の肌をした美人の副官、イヴリン・ドールトン中尉に話しかける。

「ええ、まぁ」

 これほどの敵を相手に物怖じしない分艦隊司令にドールトン中尉は感心している。

 スクリーンには、機雷やデブリで敵の艦隊が細長くなった瞬間が映し出されていた。

「よし。頃合も良いな、撃ち方始め!」

 音こそ聞こえない物の、真空の宇宙空間を切り裂き、弾着の衝撃波が密集した艦列に響きわたる。

 青い矢が四方から放たれる。

「撃てば当たるぞ」と 満足げに副官に片目を瞑りウインクをする。

 そして帝国軍の艦艇が次々と降り注ぐ砲火によって屑鉄に変えられていく。グエンは、今日を記念日にしてやると味方を鼓舞した。

 1540時、同盟軍の動きに変化が現れた。

 同盟軍は帝国軍を誘引すために攻撃を行っていた両翼の分艦隊に後退を命じた。

 この動きに対してシュターデン、フォーゲルから報告を受けたメルカッツは考える。

(罠か? しかし戦力を小出しにしては敵の方が不利なはずだ)

 敵が撤退し始めたことを知ったメルカッツは両翼の集団が本隊と離れたが、敵に各個撃破できるほどの戦力差はないと考えている。

(前提条件が崩れてしまうが、勝機が見えるなら臨機応変に動くべきか)

「追撃を許可する」

 その様に決断した。

 後退していく同盟軍を追撃するのに夢中になっていたシュテーデン、フォーゲル麾下の帝国軍が気付いた時、同盟軍の分艦隊が左右に分かれて反転し手痛い逆襲を食らった。

 左翼集団に所属するファーレンハイト分艦隊は、パトリチェフに食いつこうとするが高速機動で動き回る敵を捕らえきれないでいた。

 帝国軍に比べて人的資源の限られた同盟軍は帝国軍の専用艦には劣るが、個艦性能として艦隊の基準上げており、帝国軍からしてみれば信じがたいほど正確に攻撃を浴びせていた。

 帝国軍は気がつけば一部の艦艇が同盟軍に半包囲され、次々と降り注ぐ砲火を浴び、100隻単位で撃沈されている。それに対して効果的な戦果をあげていない。

 

 

 

 僕の正面にいる敵戦艦は、軽々と味方の巡航艦を撃沈した。魚雷発射管に直撃したのだろう。青白い光球を放って消えた。

「『ニュールンベルグ』沈みます」

「あらら」

 宙雷戦隊旗艦沈没の報告が入たけど所詮は他人事だ。

 僕の所属する駆逐隊は敵の第二撃を浴びた。

 この攻撃によりさらに2隻の駆逐艦「オーバーエスターライヒ」「インスブルック」が撃沈された。

 駆逐隊の構成する駆逐艦は通常3~4隻。戦力の激減だ。

(この状況で撤退を始めたらまずい。どうする? やっぱりやるしかないか)

 短い人生だったと回想しながらも、適切な手段を弾き出していた。

(とにかく、敵に接近して魚雷で片付けるしかない。)

 家族の顔が脳裏に浮かぶが、覚悟を決めた。

 駆逐艦というのは、1866年にロバート・ホワイトヘッドが魚雷を発明して以来、魚雷を使った対艦攻撃で最も戦果をあげられる様に設計されている。それは宇宙に出た今でも変わらない。

「針路そのまま、第二戦速」

「針路そのまま、第二戦速。宜候」

 冷静に聞こえるよう落ち着かせた声で命じた。

 指揮官の立場から費用対効果を考えるなら、駆逐艦の損害で戦艦を沈めるのは得る物が大きい。

「突撃、あの目障りな戦艦を沈めるぞ」

「ミステル」に遅れること数秒後、両翼の2個駆逐隊を構成する8隻の駆逐艦も増速してついて来た。

 味方艦が追従してくる事にほっとしていた。

(幾らなんでも1隻で敵とは戦えないからな)

 元々、帝国軍は数で買っている。勢いさえ取り戻せば負ける事は無い。敵の砲撃命中率は此方の4倍と言うデータもあるが、戦場で絶対は無い。

 後に知ったが、相手の戦艦は艦名を「メリーゴーランド」と言う。遊園地の回転木馬が回る姿が脳裏に浮かんだ。

 ビッテンフェルトとラインハルトの率いる2隻の戦艦を主力に、宙雷戦隊規模の帝国軍が、局地的では在るが反撃を行い、パトリチェフの麾下に少なからぬ損害を与えられていた。

 パトリチェフは、帝国軍の立て直りの早さに内心驚いた。

(中々やるじゃないか)

 パトリチェフに与えられた任務はシュターデン艦隊を誘致しかき乱す事だ。

 本命は、パエッタがメルカッツの本隊を撃破することだ。

「さて、食いついてくれると良いのだがな」

 一撃離脱で長居をするつもりは無い。シュターデンが離れようとするなら、こちらに目が向くまで何度でも攻撃を仕掛ける計画だ。

 

 

 

 1600時。前方に敵艦隊確認の報告が双方の艦隊に響き渡った。

 メルカッツは敵の土俵に上がってしまった事に気付いた。内心で舌打ちをする。

(敵の罠か……)

「両翼の艦隊に合流命令を出せ」

 ここで決着が付くまでに間に合うかは不明だが指示は出しておく。

 メルカッツの本隊15,000隻に対し、パエッタは11,000隻を率いて相対した。

 これはヤンの望む条件にほぼ一致した。

 ヤンの立てた構想は簡単。分散した同盟軍を帝国軍が追撃して本体が手薄になったら叩く。そして一撃を加えたら引き上げるというものだ。

 正統派の指揮官であるメルカッツなら損害が許容範囲を超えれば撤退すると睨んだ。

 ここからはパエッタの腕次第だ。

「スパルタニアンを出せ」

 相手もワルキューレを出してきた。前座として、双方の艦載艇が発艦しぶつかり合う。

撃て(ファイエル)!」

撃て(ファイアー)!」

 戦の作法と呼べるほどルーチンワークと化した、いつもと同じ号令で戦闘が始まり、双方の艦艇から砲火が交わされる。

 戦いの勝敗を決めるのは航空優勢の時代のように艦載艇が取って代わる事は無い。大出力・大口径の光線砲を備えた戦艦が戦場の支配者だ。大艦巨砲主義が海から宇宙へと場所を変え復活したのは当然の事だった。

(そもそも戦艦が飛行機に沈められた事が間違いだったんだ)

 ヤンは司令部の与えられた席でぼんやりと、そんな事を考えながら戦況を見ていた。

 艦隊戦は地上戦と異なり現実感が薄い。スクリーンに映し出される光球と火球そして砲火は色とりどりで鮮やかだが、火球1つで艦艇が沈み2桁の以上の生命が失われている。

 ブランデーにしたら何本分何だろうと、不謹慎な事を考えていた。

「これが敵の本隊でしょうか」

 参謀長の言葉にルッツは頷く。

「だろうな」

 コルネリアス・ルッツは、ワーレン、ケンプら僚友の指揮する分艦隊と共に敵中央を突き崩そうとした。

(自分達を同じ条件で舞台に立たせた。それは認めてやる)

 しかし、負けない自身はあった。

 相対する同盟軍の指揮官も負ける心算はなかった。

 正面の戦艦群を指揮するムライ准将は、堅実な指揮でルッツらの攻撃に耐えていた。

 戦列の一角がルッツの攻撃に耐え切れず崩れた。圧迫された味方艦が後退してくる。

 メルカッツがパエッタと死闘を繰り広げている頃、シュターデンにはヤンの様に紅茶を楽しむ余裕も無かった。

「司令長官から救援要請です」

「何だと。このタイミングでか!」

 パトリチェフの艦隊がしつこく絡み付いてきて迎撃で手は一杯だった。

(すぐに応援に向かうのは不可能だ)

 ヒルデスハイム伯爵の分艦隊を分派し、差し向ける事を思いついた。

 すぐに移動命令を出す。

「我々も、小うるさい敵を蹴散らしたら後を追う。卿はメルカッツ提督との合流を急げ」

『御意』

 ヒルデスハイム伯は麾下の艦艇をまとめ戦場から離脱する。

 パトリチェフはその事に気付き阻止しようとするが、ファーレンハイトの分艦隊が戦列を埋めるように展開して同盟軍の進撃を阻止する。

 

 

 

 左翼集団は組織だった行動が出来るだけ、まだましな方だった。

 右翼集団は寡兵と侮った敵の猛攻を受け、エルラッハ少将が戦死。エルラッハ分艦隊は混乱状態に陥っていた。そのためフォーゲル艦隊の動きも阻害される。

「エルラッハ艦隊の馬鹿どもが!」

 自分の艦隊まで巻き込まれフォーゲル中将は激怒した。無様すぎる壊乱状況だ。

 不意の攻撃に即応できるよう各艦の開間隔を十分に取らせていた。フォーゲルも少なくない実戦を経験しており、同盟軍を手強い敵だと認識していた。

(にもかかわらず、負けた……)

 歴史学者を志し古代史研究を常日頃から行っていたフォーゲル中将は、歴史書の一説を思い出す。

(お父さん、お母さんを大切にしよう。……何か違うな)

 思考はすぐに中断される。旗艦が被弾したのだった。

 爆風が襲いかかり意識が消える。それがフォーゲル中将の最後だった。グエン・バン・ヒューは、敵艦隊の混乱を見て取ると、さらに戦果拡張すべく巧みな艦隊運用で、突撃して蹴散していく。

 

 

 

「右翼集団司令部壊滅。フォーゲル中将も戦死の模様」

 メルカッツは驚愕した。

 右翼集団の艦艇は統制を失い先を争って戦場から離脱していき、壊滅状態になっている。

 勝てるはずの戦で負けた。

「帰還したら皇帝陛下にお詫びせねばならんな」

 メルカッツが責任を感じて自害するのではないかと副官のシュナイダー少佐は不安に感じた。

「撤退する。左翼集団にも後退の指示を」

 右翼集団の崩壊と頑強な正面の抵抗、左翼集団は拘束されている。これ以上の継戦は不要だと判断した。

「シュナイダー少佐」

「はい」

「敵の指揮官に、私の名前で電文を送ってくれ」

 敬愛する上官の顔には疲労と同時に、敵に対する賞賛が浮かんでいた。そうか、そういう敵を相手にして敗北したならば、責任を感じて死ぬこともないなとシュナイダー少佐は納得した。

 一方の同盟軍でもそろそろ限界だった。

「そろそろ撤退の時期ですな」

「うむ」

 パエッタも撤退の指示を与えようとした。

「敵が引き上げて生きます!」

 同盟軍は賭けに勝ち、帝国軍は後退して行く。

「やれやれ、どうやら助かったようですな」

 ほっとした空気が流れる。

 パエッタのもとに、ラオ少佐がやってきて電文を渡す。それを一読して、笑みを浮かべるとヤンを呼んだ。

「ヤン准将、君にだ」

 渡された紙片を見てヤンは苦笑する。短く電文には書かれていた。 

『貴官の勇戦に敬意を表す。銀河帝国軍大将ウィリバルト・ヨアヒム・フォン・メルカッツ』

 アスターテの会戦は帝国軍の惨敗をもって終了する。失った艦艇は帝国軍22,600隻、同盟軍6,400隻。帰還後、メルカッツ大将は長年の武勲と忠勤を省みた皇帝の温情をもって不問の上、退役となった。

 

 

 

15.次はイゼルローン

 

 自由惑星同盟軍の内部には、宇宙艦隊司令長官のラザール・ロボス元帥と統合作戦本部長シドニー・シトレ元帥の二大派閥が存在する。

 ロボス元帥は温厚な人柄で意図せず人が集まるのに対して、シトレ元帥は自らの権勢を維持しようとする思惑と、それを利用しようとする者の思惑が重なった共生体であり、彼らは四半世紀にわたる競争関係とみなされていた。

 惑星ハイネセンの北半球で、秋は落葉樹に囲まれる地上55階、地下80階のビルが統合作戦本部だ。ここのボスであるシトレ元帥は忌々しげに、自室でTV画面を眺めていた。

 そこには、アスターテの会戦で自軍に倍する帝国軍を撃退し英雄となった男達の姿が会った。

 艦隊の司令部幕僚には自由戦士勲章を全員に与えられている。そして彼らを率いた指揮官、ロボス派と目されるパエッタ中将は今回の功績で大将への昇任も決定している。

 自分の子飼いと思っていたヤン・ウェンリーもパエッタの側近として作戦立案に活躍し、ロボス派に取り込まれている。飼い犬に手を噛まれた気分だ。

 フェザーン経由で情報を流したにも関わらず、帝国軍は敗れた。戦勝報告を受け表面上は穏やかに喜んだが、皆が退室して一人になった後、自室で荒れ狂った。

 どす黒い感情が沸き立つのを抑えきれなかった。

 画面を見詰めるシトレの琥珀色の瞳には憎悪が浮かんでいる。

(ロボスもグリーンヒルもパエッタも戦争しか出来ない阿呆共だ。今はその勝利の美酒を味わっているがいい。生きた英雄などいらん。次は必ず殺してやる)

『同盟国万歳! 共和国万歳! 打倒帝国!』

 拍手と喚声が聴こえてくる。

 その彼の部屋を新たな出兵計画を片手に訪ねてくるものがいた。

 

 

 

 アスターテの会戦の後、メルカッツ艦隊は解散された。

 だがファーレンハイト分艦隊はイゼルローン要塞に残り、回廊の哨戒任務に就いた。

「このままイゼルローン駐留って、島流しですね」

 先任の言葉に失望色が滲んでいた。彼は妻帯者だから家に帰りたかったのだろう。

「上からの情報では、本年中に叛徒の攻勢があるんだって。僕も帰りたかったけど仕方無いよ」

 民主政治を声高々に標榜する彼らは、議会の席を争い、有権者に目に見える成果を示すため、最も分かりやすい軍事的成功により自身の評価を得ようとする。

「選挙の為の戦争さ」

 それはアスターテの会戦での熱が冷めないうちに実行されるだろう。そのように帝国は判断した。

「共和主義者ってのは録でもありませんな」

「だね」

 幾ら、帝国が同盟より国力で勝っているとはいえ、度重なる軍事行動は財政的に負担を強いる。

 宇宙空間で、双方合わせて、数万隻の艦隊がぶつかり合う様は真に壮大で、見る者を魅了するものがあるが、消費される人的資源も天文学的数字となるため、無人化できる所は極力無人化が行われ、人的資源の消費を抑える努力が行われていた。

 大量生産を前提とする駆逐艦も例外ではない。

 人が集まる所には、当然のように様々な問題が発生する。

 駆逐艦ミステルにおいて艦長たる僕も、こうした問題の処理の書類仕事に追われる毎日だ。

 具体的にあげると、トイレットペーパーの在庫が切れそうだ、電球が切れたといった補給関係や、出港前の上陸で食べ過ぎた新兵が腹を壊して寝込んでるといった人事関係の書類を確認し、関係各部署への手配で課業時間が過ぎていく。

 担当の各係の責任者が書類を作り上げているとはいえ、目を通す量も多い。

「はぁ……」

 僕は人生何度目かになるのか分からない溜息をつく。

 ここ最近、戦闘もなくやっと落ち着いたと思ったら、書類の山だ。

 現在ミステルは、僚艦と共にイゼルローン回廊の同盟側出口にある哨戒区域に向かっている。

 何事もなければ帰って交代だ。そう思って紅茶に手を伸ばすと艦内に警報が鳴り響いた。同時に、報告が来る。

「敵艦影を捕捉しました」

 

 ああ。これでまた書類仕事が増える。げんなりした気分で指揮に向かう。

 駆逐隊司令クルムバッツハ大佐は先制攻撃をかけようと指示を出してきた。

「ケムニッツ」を先頭に、僚艦の「エルツ」と共に「ミステル」は後に続く。

 相手側も気づいたようで近付いてくる。数は4隻。

 この時、相手を自分達と同じ駆逐艦と勘違いをしていた。遭遇したのは、フェーガン中佐を指揮官とし、巡航艦「グランド・カナル」以下、駆逐艦3隻の部隊。

 同じく偵察だったが、巡航艦1隻分の火力が違う。

 正確な情報と判断。それが生き残る術だ。

 そういう意味では、クルムバッハ大佐はついていなかった。

 先頭の1番艦=指揮官という訳ではないが、接近中の優先順位の高い脅威と認識するのは普通の反応だ。だからその後の出来事は、当然の帰結だった。

「敵艦、発砲」

 スクリーンを見る僕の目の前で、先頭を進む「ケムニッツ」は巡航艦の砲撃を受け真っ先に爆沈してしまった。続けて、こちらにも砲撃が向かってくる。

(うわ。沈んだ……)

 一瞬、思考麻痺になりかけるが、「ケムニッツ」が沈んで、順番として次席指揮官は僕だ。

 僕は回避運動の指示を出しながら、「エルツ」と生存を図らねばならない。

 右舷に回頭し進路を変え魚雷を時間稼ぎに撃ち、本命のEMC型機雷をばら撒き敵との距離を開ける。

 銀河帝国における標準的機雷(Einheitsmine)であるEMシリーズの特徴である球形機雷は、EMA~EMFの各型と、ワルキューレの運用する軽量型のLMAなど複数の種類がある。

 駆逐艦の運用目的で主要な戦術の1つが、「機雷敷設」である。これは敵の侵攻宙域の封鎖に大いに役立つ。今回の場合は足止めだ。

「逃げるぞ」

 その言葉に皆、唖然としている。敢闘精神という言葉があるが、知ったことではない!

 こんな価値のない遭遇戦で死んでは意味が無い。さっさと逃げるに限る。

 こちらが、交戦意思を放棄して逃走に移っているので、敵はまもなく射撃を停止した。

「まもなく時間です」

 先任が報告してくる。

「うん」

 僕はスクリーンに後方を写すよう指示して待った。

 その瞬間、炸裂の閃光が光球となって現れた。1つ、2つ、3つ……。

「3発命中か、悪くないね」

 2隻合計で12発撃って、3発命中。25%の命中率。

 とりあえず敵の足はとめた。

(いけるかな? よし、迷ったら突撃あるのみとビッテンフェルト大佐も言っていた。やるか!)

「エルツに通達。やるぞ」

 僕の言葉に皆、やる気になったようだ。我に続け、と反転し今度こそ突撃する。

 敵の損害は先頭の巡航艦が艦首を吹き飛ばされ中破。後続の駆逐艦1隻が同軸の射線上にいたようで2発命中し沈んだ。生き残った駆逐艦2隻が、本気で立ち塞がろうと向かってくる。

 だがその先には、先ほど散布した機雷がある。

 上方に5箇所、下方に2箇所、合計7箇所の信管があるEMC機雷は、遠距離起爆もできた。

「ぼん」僕は口で呟いた。

 それを合図に信号が送られ、漂っていた機雷が爆発し2隻を飲み込む。

(う~む。ここまで上手くいくとは)

 生き残った巡航艦は果敢に抵抗してくる。

「あの艦長、馬鹿なのか?」

 思わず呟いてしまったが、反応する者は居なかった。皆、仕事に忙しい。

 無駄な抵抗せず、投降すれば乗員の生命は助けられるのに。

「艦長」

 僕の指示を待っている。

「ああ、うん。沈めて良いよ。無駄弾撃ったら飲酒禁止な」

 2隻から放たれた砲火が「グランド・カナル」を包み撃沈する。

 

 

 

 自由惑星同盟の代表である政府として国民を導く最高評議会は、議長・副議長兼国防委員長・国務委員長・書記・国防委員長・財政委員長・天然資源委員長・人的資源委員長・経済開発委員長・地域社会開発委員長・情報交通委員長の11名で構成されている。

 その日、3月6日の会議の議題は、急遽、評議会にシトレ元帥が直接、提出してきた出兵案の可否を決定するということになった。

 長年の友である財政委員長のジョアン・レベロは、2メートル近いあの黒人の偉丈夫に見下ろされると否と断れなかった。

(あいつ怒ると怖いんだよな……)

 内容は、過去6回にわたって失敗したイゼルローン要塞に対する7度目の攻略。

 動員される将兵の数を見て人的資源委員長のホワン・ルイは驚愕した。2000万以上の将兵。それを維持するために必要とされる消耗品の量にレベロも頭を抱えた。膨大な資源が消費される。

「君たち。要塞があるから責めなくてはいけないという考えは間違いだ」

 国防委員長ヨブ・トリューニヒトはいい加減に、うんざりしていた。

「要塞が攻めてくることはないからだ。確かに、我が国の領土への侵攻拠点としては十分脅威だが、侵攻艦隊に対処不可能なわけではない。これまでも迎撃してきたし、これからもそうするだろう」

 これまであの要塞を落とそうとして幾らの人命を失ったと思っているんだと含ませる。

「何だったら、物理的に回廊を封鎖してもいいんだ!」

 今まで誰も提案しなかったが、あの回廊を封鎖してもいい。百害あって一利なし、何なのだから。

「しかしこれは絶対君主制に対する正義の戦いです。散っていった多くの英霊のためにも、ここで諦める訳にはいきません。怯むことなく正面から挑み百倍、千倍の報復で勝利を勝ち取りましょう!」

 評議員、ただ1人の女性である情報交通委員長コーネリア・ウィンザーから声が上がった。

 彼女は初めから乗り気だった。

 トリューニヒトは舌打ちしたいのを堪えて、顔をしかめる。

(今までが、正面から挑んで駄目だったんだろう。度し難い馬鹿どもが。政界に出馬する野心丸出しのシトレに踊らされてどうする。あいつが欲しいのは自らの地位と権力。目先の利益だけだ。大体、英霊などという精神論で国家の行く末を左右しようとするな)

 トリューニヒトが声を上げようとした所で、議長サンフォードがはじめて発言した。

「あぁ。国防委員長と情報交通委員長の意見もわかるが、ここに資料がある。皆、端末の画面を見てくれないか」

 そこから、空気が変わった。評議会に対する支持率と不支持率。軍事的勝利を収めた場合の支持率。そうなると、最早、出兵反対者など少数派になる。

 賛成7・反対4で第7次イゼルローン要塞攻略作戦が可決された。

 もちろんトリューニヒトは反対票だ。

 意外なことにシトレの親友であるレベロが反対の票を投じた。

「私はシトレの親友だ。だがこれは常に個人的友情で彼を支持することを意味するものではない」

 疑問に対する、それが彼の返答だった。

 ウィンザー婦人が席を立ち会議室を去り際に、腕を組み座り込んだままのトリューニヒトに声をかけた。

「これも、国民の士気を高める政府の宣伝の一つと思えばいいのですわ」

(そのために、また多くの将兵を危険に晒すのか。この女も権力を維持しようとする醜い豚だ)

 トリューニヒトは呼吸音だけで笑った。

 ウィンザー婦人はトリューニヒトが納得したと思ったのか、笑みを浮かべ一礼して去っていく。

(フェザーンや地球教と繋がる自分とこの女の何が違う。ただ手段が違うだけだ)

 自分も唾棄すべき政治家の一人に過ぎないということを、嫌になるほど自覚して自嘲する。

 

 

 

 駆逐艦「ミステル」は、イゼルローン要塞への帰路を航行していた。

 敵の哨戒部隊を撃退したからって、簡単に階級が上がる訳でもない。

 僕は報告書をまとめ一息を吐いた。

(給料分の仕事はしっかりしているよな)

 我ながら自分を褒めてあげたくなる。

 FTLを通して同盟側のプロパガンダを見たが、撃沈した敵の巡航艦、「グランドカナル」は単艦で帝国軍と交戦し沈んだという事にされ、戦死した艦長以下乗員は軍神とされたそうだ。

(え。帝国軍は悪党扱いですか?)

 あ、捏造ではなく映像戦略か。

 でも事実を歪曲して伝え自国民さえ騙す。酷いよな本当に。

 他の撃沈した艦はどうなったのだろう。姑息な手を使う奴らだ。

 自由惑星同盟と言う名称に僕は騙されない。

 言論の統制をして、これでは敵とは言え勇戦して散った死者に対する冒涜だと思う。

 僕たちは、そんな邪悪な政治家が支配する敵と戦っている。

 さて、そろそろ仮眠をするかな。交代まであと二時間はある。

 僕はタンク・ベッドに横になった。

 早く家に帰りたいな。

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