導入部分で燃え尽きた残りカス   作:キューブケーキ

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銀英伝に転生してみた 35~36話(2-1を選択)

35.2-1

 

 僕は佃煮海苔でご飯を食べていた。

 暖かい米は冷めてるより断然、美味い。だけど他には何もない。

(おかずが欲しい)

 と言ってもゆっくりと食事を楽しんでる訳ではない。

 フェザーン回廊同盟側出口で同盟軍と遭遇した駆逐艦「ミステル」は僚艦が沈んだ後、逃げた。

 当然と言ったら当然だね。艦隊相手に駆逐艦1巣隻で戦うなんて無謀だから、無駄死にはしたくない。

 戦闘配置は解除されてないので、指揮を取りながらの食事だ。ゆっくりと味わう余裕何てない。

 ファーレンハイト艦隊と合流のため帰路を急ぐ中、今度は不審船と遭遇した。

「艦長、どうしますか?」

「ああ、お代わりを頼む」

 茶碗を差し出した。

「それとあいつの処置だな」

 沈めるか、無視するか、拿捕するか。

「また余計な手間が……面倒臭いな」

 敵国船拿捕許可状など現代では必要ない。今は戦時で、そもそもフェザーンは帝国領だから。

「捕まえよう」

 即断で臨検すべく拿捕した。ダンボーと呼ばれるエアコンスーツにショックガンやショックスティックで武装した部下が艦内に突入していった。

「さて、鬼が出るか蛇が出るか……」

「何の事ですか?」

 不思議そうな表情を浮かべて先任は訊いてきた。

「古い地球の格言だよ」

 制圧にかかった時間は18分。

(装甲擲弾兵に比べたらまだまだだな)

 拿捕した高速艇から「ミステル」に乗員を連行して来る。

(こちらの姿を確認するなり逃走しだしたのはやましいことがあるからだ)

 インドシナでは疑わしい者はすべて殺害した。脅威になる前に排除するのは基本だ。

 連行される捕虜の顔をスクリーン越しに確認する。

(あれ……)

 記憶を刺激する。どこかで見た顔だと思った。

 

 

 軍には食べる為に入ったと言う者も少なくはない。

 食事は軍隊生活で、兵士にとっては唯一無二の娯楽と言える。特に非日常な戦場では尚更と言える。

 帝国軍ロイエンタール艦隊に所属する補給隊は、兵站が寸断される事を前提条件にした構成で艦隊を独自で支えられるだけの消耗品を搭載していた。食わせねば士気が落ちるからだ。

 悩ますのは同盟軍の襲撃だ。雲蚊の如く襲いかかる同盟軍の単座艦載艇は、将兵に負担を強いる。

 あの手この手と、あらゆる手を使ってくる敵の攻撃。例えば、途中の小惑星群に無人砲台が設置されていた。

 民間商船に大出力のレールガンを搭載した特設砲艦、ミサイルを搭載したミサイル艦、攻撃衛星。これらが遺棄されたように偽装されていた。飽きることなく繰り広げられる日常だ。

「随伴する支援艦艇に損害が出ております」

 ファーレンハイトの元に、後続する友軍の損害がまとめられた戦闘報告が届けられる。積み重なると無視できる数ではない。

「断固として我々を粉砕する意思か。敵も必死だな」

 ファーレンハイトは前衛の進撃速度を落とすべきかと問い合わせたが、ロイエンタールは気にせず進めと言う。

「俺達は使い捨ての道具扱いか!」

 先頭のファーレンハイト艦隊は割りを食うが、命じられるまま前進するだけだった。

 ウランフとボロディンによる後方遮断が侵攻した帝国軍に効果を出さなかったのもこのためだ。

「人は食って寝て排泄する生活が基本だ。戦闘中であろうと変わらん」

 ビュコックは兵站に被害を与える遊撃戦を展開し、少しでも時間を稼ごうとした。

 フェザーンと同盟に欠けているのは国家を守る覚悟だ。

 今この瞬間でもフェザーンの長老会議では帝国と和議を結ぼうと言うもの者がいた。

 同盟でも「サンフォード議長を我々は認めない。我々は平和実現の為に戦うぞ!」「ルビンスキー、感じ悪いよね」「I am not FPA」「議員は病院に行って辞めた方が良い」等と地区反戦運動が各地で行われていた。

 最高評議会はサンフォード議長一派が牛耳っており批難決議を採択される事はないが、極左集団がテロ・ゲリラ化するのは時間の問題であり同盟も内ゲバに揺れていた。

 覚悟のない平和主義など存在しない。将兵の血の代償が彼らの平和だと言うにも関わらずだ。戦死したウランフも「侵略を讚美する貴族制イデオロギーの打倒」と言う覚悟を以て大量殺人を行った。もっとも末端の兵士にしてみれば命令されたから戦うと言うのが殆どだった。

 

 

 

 不審船拿捕から数日後、残りの航路は穏やかに過ぎて僕はファーレンハイト艦隊に復帰した。

 駆逐艦「ミステル」の隣を見慣れない大型艦が並走している。特務艦「オンセンマーク」だ。この船の積み荷は非戦闘員殺害、情報漏洩、詐欺タグ、窃盗、横領、盗作、脱税などの犯罪者と捕虜で、いわゆる囚人護送船だ。

「ミステル」から「オンセンマーク」に捕虜が引き渡される。

「くそったれの恥さらしが」

 僕の罵声に顔を背けるのはディエッター・フォン・ゲルハルト男爵。僕が尋問した時は「帝国打倒を打倒する」等と意味不明な事を喋っていた。帝国打倒は叛徒の謳い文句だ。それを打倒するのは僕ら帝国側だ。文章として意味がわからない。

「このままでは戦争突撃する。帝国主義は粉砕せねばならんのだ!」

「戦争突撃って何だ、この野郎! 戦争突入だろ。戦争を止めたいのに粉砕するとか、反デューリング論の積もりか? 喋れば馬鹿が知れるぞ国賊」

 ゲルハルト男爵は内務省警察局の上級捜査官で、サイオキシン麻薬の流通経路摘発で面識があった。

 犯罪者とはいえ仮にも帝国貴族の端くれ。背後関係を吐かせるため、警戒が厳重な囚人護送船が選ばれた。

「まったく取締りに当たる人間が敵と通じているとはな……」

 ゲルハルトはフェザーンが帝国領内に残した残地諜者の一種で、軍の動員計画や物資の流れなどの資料を所持していた。

(とんでもない物を残してくれたな)

 特に眉をひそめたのはリッテンハイム侯の叛乱計画に関する資料だ。ゲルハルトの調査による物なので正確な情報は少ないが警鐘を鳴らすには十分な代物だった。

 

 

 

 国務尚書リヒテンラーデ侯爵クラウスの館は、帝都オーディンの高級住宅が建ち並ぶ一等地に位置する。

 朝は納豆御飯に味噌汁をぶっかけて掻き込むのが侯爵家の伝統である。

「行ってくる」

 玄関で見送りに来た孫が振る手に答えながら、リヒテンラーデ侯は迎えの地上車に乗ろうと歩き出した。

「おはようございます」

「おはよう」

 運転手に答えながら乗り込む。

 要人の送迎は有人で行われるのが通常だ。無人車では臨機応変な対応が行えないとの判断からだ。

 リヒテンラーデ侯と言えば皇帝の側近。居城に詰めているものだと思われているが、国務尚書として国務省での業務も存在する。

 情報端末で予定を確認する。

(午後から内務省と会談だったな)

 議事の内容は国内に於けるフェザーンの協力者取り締まりに関する件だ。

 リヒテンラーデ侯は口元に冷笑を浮かべる。

(誰が内通者か分からない現状で、会議の列席者が安全だと誰が証明するのだ)

 それは、ほかの者から見てもリヒテンラーデ侯が敵なのか味方なのか分からないと言う事だ。内通者が居るというだけで、疑心暗鬼から不和を生む。問題はそれだけではない。リッテンハイム侯爵の叛乱計画。観閲式は目前に迫っている。

(厄介ごとばかりだ)

 薔薇の庭園を誇る皇帝の居城“新無憂宮”(ノイエ・サンスーシー)。その広大な敷地内の一角に位置するベーネミュンデ侯爵夫人の館に皇帝が来訪していた。

 館の周囲を近衛兵が実戦的な配置で固めている。薔薇の騎士連隊による帝国領内での破壊活動以来、警備は儀仗兵になど任せておけんと強化され不粋だと咎める者は居ない。

 寵姫の元に皇帝が訪れるのは珍しい事ではない。人目を憚る密談を行うには最適な偽装でもある。

「内通者がおるのか」

「御意」

 皇帝は内務省官房長から説明を受けていた。

 ゲルハルトの逮捕と同時に、帝都オーディンのフェザーン高等弁務官事務所を捜査した所、入手した内部資料からフェザーンの指示で意図的なサボタージュや情報漏洩に関与していたことが追加で判明した。

「横流し目的の爆発物、銃器、劇毒物も押収しました」

 財務尚書を務めたカストロプ公オイゲンやクロプシュトック候ウィルヘルムが協力者だったことも立証された。本人が自覚なく機密情報を漏洩していたのではなく、自発的に協力していた。帝国を支える貴族の誇りは汚された。

 軍や内務省内部にもフェザーンへの協力者が相当数いた。ある部署では、歴代の責任者が全員関与していた。その事実に部下だった者達は驚愕した。

 先立って国内の不満分子を一掃していたが、愛国者のふりをして紛れ込んでいた為、今回の捜査に時間がかかった。

 誰が敵で味方かわからない。殺人や放火事件、爆弾テロで捜査を攪乱し犯人の逮捕は困難を極めた。

 結果として国内でフェザーンの息がかかった者を一斉摘発したが、まだ尻尾を見せていない者も居ると考えられた。なお逮捕された貴族から没収された資産は、国庫に収められかなりの額に昇ったと言う。

 皇帝は裏切りに慣れていた。誰が敵と通じていようが今更驚きはしない。

「鉄槌を下せ。社会的害毒に発展しない様に対処せよ。リヒテンラーデ侯に任せる」

 皇帝は手を振る。

「はい陛下」

 一礼して内務省官房長は下がる。

 皇帝に危害が加えられる事を心配して、傍らに控えていたベーネミュンデ侯爵婦人は物憂げな表情を浮かべている。

 振り返った皇帝は安心させるよう優しく手を握った。

「喉が乾いたな」

「そうですね。丁度良い時間ですしお茶になさいますか?」

 皇帝は寵姫の入れた物を好む。

 お茶に合う和菓子用意されていた。

「今日は納豆入りどら焼きですわ」

「でかした!」

 皇帝も貴族も放蕩三昧の生活で味覚を壊し、納豆をこよなく愛していた。この為、同盟では貴族の食材と納豆が忌避されている。

 ラー油をかけて納豆入りどら焼き食べる皇帝に、シュザンナも微笑み返す。

 

 

 

 奇跡は早々に起こりなどしない。だから奇跡と言われるのだ。

 悪い意味で期待は裏切られた。

 フェザーン統治の主府が置かれる第2惑惑星の軌道に帝国軍が到達したのである。

 同盟軍巡航艦「オクレール」は単艦で哨戒に当たっていた。僚艦は離れた哨戒区域を担当している。

「ん」

 レーダー見張員が帝国軍を発見した。

「12.5光秒先に敵艦隊発見」

「司令部に報告を!」

 現在位置、方位、距離の報告を終わった瞬間に「オクレール」は帝国軍の集中砲火を浴びて撃沈された。反革命の帝国軍を粉砕すると言う意地さえ見せられなかった。

 オスカー・フォン・ロイエンタールの朝はシャワーで始まる。熱い湯で寝汗を流し、下着を身につけると気が引き締まる。いつどこで果てるかもしれない武人の心得として下着は清潔でないといけない。

「む」

 その日はいつもと違い、真新しいはずのトランクスのゴムが切れた。

 不快感を感じながら替えを取る。

 従卒に着替えまで任せる者もいるが、ロイエンタールはそこまでは求めない。

『提督、先程、哨戒中の敵巡航艦を撃沈しましたが、此方の接近を通報されたらしく敵艦隊が現れました』

「叛徒の連中を叩き潰すには絶好の好機だな」

 ロイエンタールは会敵の報告を受けると私室を飛び出した。

 スクリーンに拡大表示される光点は数を増やしていく。

 艦橋に詰める者は喉頭を上下させ、緊張した空気が満ちてくる。今まで散々、遊撃戦に悩まされた帝国軍は敵艦隊を眼前に捕捉した。反革命戦争に突入した帝国軍を迎え撃つビュコックの第5艦隊である。

「遂に出てきたな」

 ロイエンタールは、ようやく敵が雌雄を決する気になったと満足気な口調で呟いた。

 他に選択がなかったとも言える。一度失った物は取り戻せない。ここが彼らにとっての最終防衛線だ。

 相対する敵は数だけ見れば1万隻近い。第5艦隊の全力出撃と判断できた。

 この敵を打ち破ればフェザーンは丸裸だった。

 両軍の艦艇が攻撃位置についた。同盟軍には後がない。フェザーン防衛の抵抗は激しいだろうが、ロイエンタールは勝利を確信している。

「各艦射撃準備完了です」

「撃ち方始め」

 試射はしない。いきなりの効力射で、エネルギービームと砲弾が蒼い尾を引き集束して濁流となり放たれる。

 第5艦隊の前衛。それは革命の起爆剤としての勢いが求められる任務だ。

 前哨を構成する駆逐艦「バーチュオンシティー」は僚艦の駆逐艦「アナトミー2」「ゴシカ」と、フェザーン警備軍から派遣された特設砲艦「ネクロノミカン」、護衛駆逐艦や哨戒フリゲートに相当する警備艦「エル・タロット」「ウィル・スミス」で小規模の戦隊を構成していた。

「敵艦発砲!」

「馬鹿め。この距離でまともに当たる物か」

 そう言った直後に集束したエネルギーを喰らい「バーチュオンシティー」を旗艦とした戦隊は消滅した。

 帝国軍にとっては精密な照準でお上品に狙い撃ちする必要などない。艦砲射撃で戦勢を制せれば良かった。経験学習によって弾幕攻撃が物を言う。

 第5艦隊の他にフェザーンの警備艦隊や民間軍事会社の艦艇もかき集められていた。最終決戦と言える。

(パエッタの到着まで後少し。だがその少しが長くなりそうだ)

 ビュコックは気持ちを切り替えて攻撃の指示を出す。

「各艦に発令。攻撃開始」

 ファーレンハイト艦隊に対して同盟軍は、数少ない戦艦の火力支援で巡航艦が魚雷を放ちながら突っ込ませてくる。その意図する所は、一点突破による全面展開だった。

 もちろん素直に敵の攻撃を許すわけがない。

 突撃破砕線に入った同盟軍は交差するエネルギーと実体弾の網に捕らえられる。

 爆発する同盟軍艦艇の数も多いが、先ほど沈む前に放った魚雷が弾着の時間になる。

 帝国軍が綺麗に並んだ光点。その光を覆い隠す様に爆発の閃光が広がった。

「行けるか!」

 帝国軍で発生した爆発の閃光を見て、同盟軍は穴をこじ開けようと殺到する。両軍の艦載艇が会敵し戦闘が始まった。

「単座艦載戦闘艇が戦艦を沈めた事例ならある。数さえ揃えば、戦果をあげることはできる」

 そのように理解されている。しかし、航空優勢の時代のように単座艦載戦闘艇が艦隊戦の主役になる事は無い。

 帰る母艦が沈められれば、まともな運用ができないため継戦能力も低い。

「艦隊戦の主役は戦艦だ」それが両軍の見解だった。

 単座式艦載艇の運用方法は艦隊戦に投入される事もあるが、あくまでも補助的な戦果しか期待されていない。

 駆逐艦「ミステル」も先頭集団を構成する宙雷戦隊に位置していた。

「主力艦は極一部、駆逐艦も数える程で、砲艦とミサイル艇が殆どですね」

「うーわ、本当に寄せ集めだな」

 先任の言葉に苦笑しか浮かばない。貧乏は惨めだ。

「ミステル」の射界に敵の単座戦闘艇が入って来た。僕らにとっては的でしかない。

「目標、敵単座戦闘艇。撃ち方始め!」

 限りなく無人化された砲塔は無人偵察機と同様で、操作は担当員に一元化されている。航行させるだけならば駆逐艦は10人も要らない。

(ハイテクの力は凄いな)

 撃つ的に困らない。休む暇も無いのは困った事だ。

 V字体型で襲いかかる単座戦闘艇の中隊。

 劣化ウラン弾が装甲をかすめ火花を散らす。

 

 

 

 同盟軍の単座戦闘艇は航宙戦隊で統一運用される。

 巡航艦「マルクス・レーニン」の中隊長を務めるコリン・ウィルソン中尉は、暇な余暇さえあれば神秘主義を探求していた。

 神と言うのは存在するのか。人の死後はどこにいくのか。しかし実際に自分が神の御許に行く事は、まだ遠慮したい心境だ。

 フェザーンを救うと言う革命的闘争に身を投じた同盟軍は、ウィルソンの目の前でまた一つの命が失われた。

「マーカス!」

 拳を握りしめる。士官学校以来の同期が落とされた。

 感傷に耽る暇など無い。すぐに意識を切り換える。帝国軍の防空網は濃密だ。自分たちが特設砲艦や警備艇まで掻き集めているのに対して、正規の艦艇で豪華な編成をしている。そのまま同盟と帝国の物量差を感じた。

(上等だ。思い知らせてやる!)

 ミサイルを掻い潜りスパルタニアンは加速した。照準レティクルに駆逐艦が拡大する。

(ああ、電信柱って言うのは嘘だな)

 昔読んだ古典的小説では、自分に向かってくるミサイルが電柱に見えると言う話を思い出した。チャフとフレアをばらまき擦れ違う様に振り切る。自分の後ろに部下の小隊が続いている。

(ばいばいお猿さん)

 対艦ミサイルが切り離され、軽くなったのを感じる。ミサイルは光速で加速し目標に突き進む。

 後続する各小隊も防空陣を構成する他の駆逐艦に対艦ミサイルを放っていた。

「全帰離脱!」

 そこに銃撃が降り注いだ。回避行動中の僚機が爆砕される。CSPのワルキューレだ。

 後席でレーダーを監視していた相方が報告してくる。

「後ろから付いてくるぞ」

 何隻かの駆逐艦が被弾して爆発していた。味方の艦を沈められて怒り狂った様に砲撃とミサイルを打ち上げてくる。

(このまますんなりとは返してくれないか)

『うあああああ……』

 ウィルソンの耳に被弾した僚機の叫び声が通信機越しに聴こえてくる。

「くそ!」

 今は自分が逃げる事が優先だ。中隊の内、何機が母艦に戻れるかは分からない。

 駆逐艦を沈められ防空陣に出来た穴はすぐに塞がれた。

 そこに駆け込んだ同盟軍は鴨撃ちの様に叩き落された。狡猾な罠と言うものでもない。ただ錬度が良いだけだ。

「ミステル」の前を航行していた巡航艦「レミカ」が同盟軍の砲火に捉えられて爆沈した。

「『レミカ』沈没!」

 宙雷戦隊旗艦だった「ボルシェヴィキ」沈んでから交代して、再び旗艦が沈んだ。

(始まって1時間で2隻目か。大きいと目立つし、巡航艦よりは身軽な駆逐艦の方が生存率は高いな)

 敵に後が無い事は承知している。そして帝国軍にも残された時間は少ない。応援が到着する前に決着を着けたかった。

「射撃準備完了」

「ミステル」の主砲が復讐を遂げるように同盟軍宙雷戦隊の旗艦を捕らえる。

「撃ち方始め!」

 他の駆逐艦と図った訳ではないが、複数の艦から砲火が集中して相手の旗艦を沈めた。

(これで借りは返したかな)

 残った駆逐隊は損害に構わず突撃を敢行して来る。

 自分達の後方に戦艦が控えている。それが目標だ

(死ぬなら大物を道連れにってか? させないよ)

「ミステル」は他の駆逐艦と共に敵の前進軸に殺到する。

 

 

 

 宙雷戦隊がCSPと連携して迅速に迎撃し、後方に控えていた主力艦が前に出る。滑らかな動き。革命としての主体的創造が足りず、自己変革を行わず錬度の低い寄せ集めの第5艦隊とは違う。

「敵は良く持ちこたえているな」

 ビュコックの言葉にフォークは答える。

「ええ。あれはファーレンハイト提督の艦隊ですね」

 初戦で戦った因縁深い相手。フォークの報告にビュコックは帝国軍はやはり油断ならないと認識を深める。

 自分よりも恵まれた環境にある敵将を羨ましく思った。もっともファーレンハイトにしてみれば、ロイエンタールが自分たちを使い潰そうとしている以上、ビュコックと比べてそこまで恵まれている環境とは思えない。

 同盟軍には苦しい時だった。帝国軍に混乱は見受けられず反撃の機会は訪れない。それでも多大な出血を強いられながら帝国軍を抑えていた。

「そう、悲観する物でも無いでしょう」

 一部の幕僚が楽観視した発言をする。その見解にフォークは不快な表情を浮かべた。

「これは帝国の圧政に対しての大衆決起で、人としての尊厳を賭けた闘争です。勝利とは犠牲を伴うものです。この犠牲を活かして更なるフェザーン、アンラック帝国に拡げ一斉蜂起を促す。すなわち民主主義実現の革命か、帝国に屈服する反革命か、ですよ」

(国家権力の弾圧に対する人民の決起。お題目の見映えは良いが、犠牲の数に自分が入っているのか?)

 同盟が帝国と痛み分けでは国力で劣っている以上、帝国主義の打倒どころか同盟の敗北と言うリスクを背負う事になる。レーニンも暴力による革命を認めていたので間違ってはいないと言える。だがフォークとしては受け入れがたかった。

(行動無き理論死んでいる。頭の中は正義を盲目的に信じるお花畑か)

 子や夫、妻やや恋人を亡くせば国が許しても世間は許さない。司令部を構成する幕僚にバカがいると程度の低さに頭を抱えたくなる。

 

 

 

 第10艦隊、第12艦隊の残存戦力と合流したヤン麾下の軍事顧問団。三者を合わせても2000隻にも満たない。各級指揮官が集まり指揮系統をヤンの下で統一すると言う事が決まった。

 当面の航路の打ち合わせが終わり落ち着くと、陸戦の指揮官として手持ち無沙汰なシェーンコップはフレデリカを自室に誘った。

「一緒に飲まないか?」

「良いですよ」

 フレデリカは二つ返事で了承した。

 同盟の種馬として、多くの女性と浮き名を流しているシェーンコップだが、これまで自分に迫って来ることはなかった。だからシェーンコップを信じていた。

 応接セットのソファーに腰掛け向い合わせで飲んでいる。つまみはフレデリカが用意したキムチと海苔。

(何でキムチと海苔何だ)

 フレデリカに料理の才能が無いことは、ここ数ヵ月の付き合いで学習していた。

(まさか圧力鍋を爆弾に変えてしまうとは思わなかったからな……)

 色んな女性と付き合ってきたが、ここまで料理の才能が無い女性も珍しい。 

 アルコールが入り、血色が良く赤くなってきたフレデリカ顔を眺め眺めながらシェーンコップは思い出していた。

「何ですか?」

 訝しげな表情を浮かべるフレデリカ。悪意に敏感らしい。

「良い女だと思ってな」

 自分の容姿に自信を持っているフレデリカは、シェーンコップのありふれた言葉につまらなさそうな表情で返事を返す。

「そんな事は分かっています」

 帝国領からの脱出の過程で、二人きりになる機会は幾度もあった。生物学的にも女である事は分かっている。むしゃぶりつきたくなる程の良い女だ。

 さすがのシェーンコップでも、現実に死線を潜っている中で、彼女に迫ろうなどとは思わなかった。

 そっと手を伸ばしてフレデリカの頬に触れると、熱くなっていた。

「えっ」

 今度こそ狼狽するフレデリカ。

 

 

 

 映画が流れていた。

 秋晴れの空。街路樹が立ち並ぶ公園を若い女性が歩いている。すれ違い様に青年は女性のハンドバッグから落ちるハンカチを目に止めた。

「お嬢さん、ハンカチを落としましたよ」

 振り返った女性は端正な青年の顔立ちに眩しそうな表情を浮かべた。

「有り難うございます」

「どういたしまして」

 シェーンコップは、使い古された演出に顔をしかめる。

(恋愛経験の無い童貞の描く駄作だな)

 シェーンコップなら時と場所を選ばず口説き落とす。

 今時、こんな古典的な演出が視聴者に受けるわけ無いだろうと立体TVの電源を消す。

 傍らに寝ているフレデリカの髪を撫で上げながら、肩に口付けをする。今回、口説き落とした美女だ。

「ん……」

 身じろぎしてずれたシーツをフレデリカにかけ直すと、シャワーを浴びにバスルームに向かう。

 その時呼び出しがかかった。

『シェーンコップ准将。会議室までお願いします』

「わかった」

 情事の後の残り香を身に付けたまま行くのはさすがに不味いかと皮肉な笑みを浮かべ、再びバスルームに向かう。

 会議室には各級指揮官が揃っていた。現状は帝国軍を振り切り、フェザーン本星に展開しているビュコック艦隊との合流を目指している。艦隊の指揮は、最先任のヤンがとっていた。

「現状、帝国の関心事がフェザーンにあるとはっきりしてるね。では長距離の遠征軍にとって必要な物とは何だろうか」

 ヤンは確認するように言った。その言葉に皆顔を見合わせる。

「じゃあ、君。答えて」

 ヤンは大学の講義で生徒を指名する教授のように若い士官を指名した。

「あ、はい」

 周囲の視線が集中することを感じて戸惑いがちに青年は答える。士官学校を出て間もないのだろう、まだ幼さを感じる顔立ちだ。

「水、食糧、弾薬、燃料でしょうか」

 その事にヤンは頷く。

「燃料! これがなくなると、弾があっても艦艇は鉄屑だ」

 推進剤。これが尽きると手も足も出ない。

「ビュコック提督が行っているのは帝国軍の兵站に負担をかける事だ。かの皇帝ナポレオンとの戦いでロシアは内陸に引き込んだ。日露戦争でロシアは、軍の戦略構想を皇帝が理解せず意思統一が行われていなかったために敗戦の道をたどった」

「ヤン提督宜しいですか?」

 歴史の講釈が好きなヤンの弁舌に水を差して、シェーンコップ挙手して発言の許可を求めた。

「どうぞ」

「ナポレオンって誰ですか?」

「あ……」

 絶句するヤンに代わって、構想を説明されていたムライが口を開いた。

「フェザーン本星での決戦だが、同盟軍の増援が到着するまでの時間稼ぎが出来れば帝国軍を追い返せるかもしれない。もちろん、そう簡単には行かない事も分かっている。現に後方に残した偵察衛星が破壊された」

 回廊突入時に自分達の航路が算定されないように気を配りながら、衛星と機雷をばらまいてきた。

「厄介な事に帝国軍は我々の後を追っている」

 通常なら航路を偽装するため幾何学的な軌跡を描くが、今回は真っ直ぐ進んだ。そして手の内が読まれていた。

「友軍と合流する為の時間を稼がなければならない」

 気を取り直した様にヤンが説明の後を引き継ぐ。

「とりあえずは隕石に無人砲台を設置し、仮設の陣地がある様に偽装する。普通なら艦砲射撃で破壊してそのまま進んでくるだろうが、慎重な指揮官なら注意を引くことが出来るかもしれない。シェーンコップ少将、君に任せて良いかな」

「船の中で揺られるだけでは体が鈍ると思っていた所です。丁度良い」

 シェーンコップの言葉にヤンは満足げな笑みを浮かべて頷く。フレデリカは不安そうな視線をシェーンコップの背中に注ぐ。

 

 

 

 ヤン艦隊を追跡するのはラインハルト・フォン・ミューゼル。

 クルーゼンシュテルンは「“大将軍の城”(グロスアドミラルスブルク)を襲った叛徒の輩はの掃討終了した。今度はこちらがフェザーン領内に雪崩れ込む番だ」と言った。

 本隊も補給と準備を終え次第、ラインハルトの後を追う。

 ラインハルトの任務は、帝国領に侵入した叛徒の残存戦力を追跡し処理する事。もう一つは、ロイエンタール艦隊との連絡回復だった。

 敵が残していった衛星によって妨害が行われており連絡が遮断されたままだ。それらも潰しながら進まなくてはならない。

「奴ら、こちらの裏をかいたつもりの様だがな」

「半日もあれば追い付きます」ラインハルトの言葉にキルヒアイスは答える。

 レーダーが漂流している同盟軍の駆逐艦を発見した。外殻の装甲板が所々失われており遺棄されていると考えられる。

 そのまま無視しても良いが、武士の情けなどと言う物は驕りに過ぎない。

 敵は完膚なきまでに叩き潰す必要がある。

 地上戦で死体にまで止めを刺すのは、死んだふりをしている者が居るからだ。

 艦艇も同じだ。沈黙した様にしか見えなくても、兵装が生きている可能性がある。

「まるで靴の底に付いたガムか犬の糞だ」

 捨てられていても踏めば靴を汚す。

「徹底抗戦の構えですね」

 ラインハルトは眉をひそめる。残して置かれた廃船か分からぬ漂流物が厄介だった。

 処理しなければ後続に被害が出る。

 露払いとして前衛のラインハルトが処理しなければならない。

「撃て」

 前衛は油断することなく脅威の可能性が有るものを排除する。それ自体が敵の時間稼ぎだとしてもだ。

 

 

 

 漆黒の宇宙空間では日没で戦闘が終わるという物でもない。

 フェザーン本星の輝きを肉眼で死人できる距離だが、不眠不休の戦いが行われ攻撃側は一歩踏み出す度に流血を強いられる。

 瓦解していく戦線を第5艦隊も支えるだけで手は一杯だ。決して弱卒では無いが、損害に構わず苛烈な攻撃で前進しようとする帝国軍に蹂躙されていく。敵の物量による恐怖が味方の士気を挫く。

 やり過ぎた。引き付けすぎるほど帝国軍の注意を自分達に引き付けた。

(パエッタの艦隊が間に合えば挟撃できる)

 耐えきることができれば生き残れる。だからこそ、皆必死に戦っている。内心ではビュコックも甘い期待でしかない事を理解している。

 補給物資の消耗が急角度なカーブを描いて行く。いつまで持ち堪えられるか。そればかり頭に浮かぶ。

「応援到着まで残り時間は僅か。間に合うようですね」

 フォークが囁いた。

 司令部の空気は安心感が漂っていた。だが戦力的に第5艦隊は劣勢で長くは持ちこたえられない。

「命令を違える事に成るが、一時的な撤退も仕方がない」

 防共協定を締結した以上、フェザーンを見捨てる訳にはいかない。限界まで粘ったビュコックはフォークに撤退の準備を命令していた。パエッタとの合流を選択したのだ。

「失礼します」

 帝国軍の兵站線を叩いていたヤマグチ少将が呼び戻されてきた。

 額の髪をかき上げながらフォークも同席している。ビュコックは少し疲れた表情を浮かべていた。無理もない。最近は深い眠りにつく事が出来ていないし、疲労が蓄積されるばかりだ。

「お疲れ様でした。大した戦果ですね」

 輸送船団襲撃で1000隻近くに損害を与えている。フォークの世辞にヤマグチは不適な笑みを浮かべた。

「次はもう少し楽をさせて欲しいですね」

「早速ですが、ウランフ提督とボロディン提督が戦死したのはご存知ですね」

 フォークの言葉にヤマグチは頷く。そうでなければ帝国軍がここまでこれた訳が無い。

 ビュコックが口を開いた。

「貴官は本日付で中将に昇任し、残存艦艇を以て編成される第13艦隊の指揮を委ねられる」

 現在、後退中の残存戦力はヤン・ウェンリーが指揮を執っている。そのままヤンに指揮を委ねてはと言う声もあるが、ヤンよりもヤマグチを押す声の方が大きかった。

「その艦隊には我が第5艦隊も含まれる。まあ、要するに貴官に尻拭いを頼むと言う事だな」

 今回は完全な負け戦だ。パエッタが来るまで持ち堪えられそうも無い。

 ならば責任を持って後衛をビュコックが務め、一人でも多くの部下を生き残らせる選択をした。合流さえすれば反撃が出来る。

 第5艦隊を含めた残存戦力の指揮権。これがヤマグチに委譲される。

 ビュコックとしてはヤンに艦隊を預けたかったが「彼には決断力が欠けています」とフォークが反対した。

 フォークもヤンの能力を評価しているが、それは艦隊の司令官と言うよりも幕僚として支える裏方としての能力だった。ヤンの性格では評議会を敵に回し排斥されるだろう。それならばもっと活躍できる場に置いてやる方が当人や周りのためにも一番良い、そう言った。

「第13艦隊。私がですか」

 幾ら敗残兵の混成とは言え艦隊を預かる。突然、降って沸いてきた話にヤマグチも驚きを隠せない。

「この人事に関してはシトレ元帥も承認している。ヤン分艦隊の収容とこの艦隊を宜しく頼むぞ」

 フェザーンに派遣された同盟軍艦隊第一陣の残余戦力はヤマグチ中将が指揮を執る。

「はい」

「参謀長、貴官もヤマグチ中将に同行しろ」

 司令部幕僚が全滅では、残余戦力を指揮して無事同盟領に帰還させる作業をヤマグチ一人でやる事になる。フォークはヤマグチを支えてくれと頼まれた。

「よろしいのですか?」

 参謀長に着任したばかりで、こうも早々と上官と自分の所属する艦隊を失う展開を迎えようとは思っていなかった。

「最後までお付き合いしたかったです」

 ビュコックは敬愛に値する上官だった。

「今までありがとうございました」

「何、わし達だけが全てを背負い込む訳じゃない。それに苦労するのは後に残る者たちだ」

 苦笑を浮かべる幕僚を前にしてビュコックは落ち着いていた。

(孫が高等部へ上がる姿を見たかった。だが自分達が戦う事で銀河帝国、皇帝によるファシトから未来を守れるなら問題無い。それに、急いであの世に行くつもりもない)

 ビュコックは自分なりに満足した気持ちで最後を迎え様としていた。ただし残って付き合わされる者にはたまらない。自己犠牲に陶酔する自己満足だ。

 

 

「第5艦隊との合流予定時間には間に合います」

「早く着けばその分だけ犠牲者は減らせられる。そうだろう?」

 パエッタは艦隊から高速艦艇を分派して先行させる事を決断した。

「諸君は第一の矢だ。敵を蹴散らしてやれ」

 戦隊規模の任務部隊を預けられたのはマッカーシー准将。選ばれた将兵の士気は旺盛だった。

 そしてビュコックが指揮権を移譲し司令部付の戦隊で敵を食い止めようと立ち塞がった時、ようやくにして帝国軍の側翼に展開する警戒線にたどり着いた。 

 死を覚悟していたビュコックには朗報だった。撤退を中止し、士気を盛り返す同盟軍に反比例して帝国軍の攻勢は鈍った。

「叛徒の応援が到着したのか。楽には行かんな」

 ファーレンハイトはビュコックの守りを抜けなかった事に悔しさを感じた。

 雑多な混成部隊である第5艦隊とは違い、応援の艦隊は錬度の高さを見せた。

 例えば、遊園地に似合いそうな名前の同盟軍戦艦「メリーゴーランド」は旧式であったが、鈍重どころか俊敏な操艦で帝国軍の迎撃をすり抜けて行く。

 マッカーシー合流したビュコックは、帝国軍の攻撃をかき乱せれば良い。

 足並みが乱れてパエッタの本隊が到着するまで時間を引き延ばせば勝ちだった。

「まさに蛮族的闘争だな」

 ファーレンハイトは同盟軍の動きを見て不快気に言った。

 CICでは当直士官がレーダー員と一緒に彼我の位置を覗き込んで頭を捻っていた。

 ファーレンハイトの旗艦「ダルムシュタット」には、周囲に6隻の戦艦が直衛として付いていた。6隻が組んだ立方体は、スパルタニアンごときの襲撃を寄せ付けない。

 到着した同盟軍は単座艦載艇を射出し始めた。それが蚊の様に隙間から入り込んでくる。消耗し補充で補われていた第5艦隊とは錬度が違った。

 戦艦「ナグナブロ」が艦尾にミサイルを受けて脱落する。

「叛徒共め!」

 陣形が崩れ始めた。戦艦「シュレック」も艦首から艦尾にかけて、舐めるように7発の光線を浴びて爆発した。爆風に煽られて「ダルムシュタット」も揺れる。

 隙を衝いてくる「メリーゴーランド」は旧式戦艦だ。だからこそ乗員も熟練していると言えた。

「準備よし!」

 射撃準備完了の報告に艦長は号令を出す。

「撃て!」

 旗艦の盾となり戦艦「ショゴス」が「メリーゴーランド」の射軸線上に立ち塞がる。戦艦とは言え至近距離の射撃を浴びては持たない。装甲は衝撃を受け止められず分解される。その先は墓場へ突撃だ。核融合炉が壮絶な熱量をぶちまけて、閃光が放たれる。

 パエッタの目論見通り高速艦艇で構成されたマッカーシー戦隊は帝国軍を攪乱し足止めに成功した。

「ビュコック提督、お待たせしました」

『何、もう少し踏ん張れたさ』

 到着したパエッタがビュコックに報告した時、第5艦隊旗艦「リオ・グランデ」被弾大爆発を起こした。

 ビュコックの戦死である。

 第13艦隊として撤退準備中、中止命令を受けたヤマグチ中将は、後衛についていたビュコック直轄戦隊の生き残りを収容した。

 後日、パエッタ達は意図的に戦場到着を遅らせたのではないかと批難された。

 到着後、パエッタは他の艦隊を第13艦隊の支援に向ける一方で、自ら率いる第2艦隊で延伸した帝国軍の戦列を叩こうとした。

 目的は後方遮断の脅威を与える事で、戦線を立て直す友軍への圧力を逸らす事だ。

「遂に来たか」

 スクリーンを見てロイエンタールは納得した様に呟いた。

 ロイエンタールは新手の同盟軍が到着した事でフェザーン本星攻略を断念した。

 早期攻略が出来るならまだしも相手は完全編成の艦隊だ。悠長に新手の艦隊まで相手にしていては消耗品が枯渇する。ミイラ取りがミイラになっては本末転倒だ。

(この借りは返す)

 復讐を胸に誓いロイエンタールは後退を指示する。

 

 

 

 活動的な馬鹿ほど恐ろしい物はないと言う。電子新聞には「帝国軍全面侵攻」「不法越境」の文字が踊っている。同盟軍は猛烈邀撃。敵主力部隊崩壊で総反撃戦展開。敗敵猛追と軍報道課は発表していた。

 同盟ではフェザーン回廊の状況について言論統制が行われていた。「フェザーンでは我が軍優勢」と景気の良い報道しか流されていないため、同盟市民たちは、自分達の国が長期戦に耐えうるだけの国力を持たないと言う事を知らない。

 それでも市場で出回る物資が減少傾向にある事から薄々は感付いていた。市民の中に

厭戦気分がゆっくりとではあるが、確実に浸透しつつあった。

『我が忠勇なる同盟軍巡航艦「ペクトゥサン」はフェザーン回廊会戦に於いて、降下企図の帝国軍艦を撃沈致しました──』

 送迎の車内で流していたニュースを消すとサンフォードは溜め息を漏らした。

 戦意高揚のニュースには飽きていた。妻に付き合わされるオペラも嫌いだ。必ず死人が出るからだ。

 正直、隣に座っている妻よりもクラブで若い女と踊る方が楽しい。

(アリア・ポコテン、頬のぷにぷにした良い女だった)

 情事を思い浮かべていると窓の外を眺めていた妻が振り返って口を開いた。

「事故かしら」

 信号が青になっても車列が進まない。

「そうだな」

 様子を見に行った私設秘書から、交通誘導システムの故障らしいと報告が届く。

「ふむ」

 人的資源の枯渇による事故が最近頻発していると電子新聞に上がっていた事を思い出す。

「嫌ね」

「時間には間に合うさ」

 こう言った些細な点でも、予備役を含む軍の大規模動員によるフェザーン支援は、同盟の日常生活に歪みをもたらしている。

 軍では駐屯地の警備や各種業務を民間軍事会社に委託していた。予備役召集により人での減った警察も、治安維持を委託していた。その最大手がカストロプを支援したホネカワ。フェザーン企業が、表立って同盟にも社会進出し始めていると言う象徴的な仕事だった。

 

 

 

 樹海の木々をかすめるようにワルキューレの編隊が低空飛行で通過していく。

 出兵の観閲式典を前日に控えて、帝都は戒厳令が布告されていた。皇帝が臨席する以上当然の警備だ。

(だが、多すぎる)

 リッテンハイムは上げられた報告に目を通して疑問を抱いた。帝都防衛軍司令部や内務省が事前にたてた計画と異なっている点があった。軍、警察、憲兵が当初の計画以上に動員されている。

 軍事の専門家でないが、そのため数字が気になった。

「予定をくりあげますか?」

 不確定要素は排除したい。決起の計画が漏れたかもしれないと不安が沸き出す。

 日付が変わろうとする深夜。自宅の玄関でリューネブルクは、訪問客を不快な表情を隠しもせず迎えた。相手はリッテンハイム侯の使いの者だ。

「夜分失礼致します。リューネブルク閣下、お迎えに参りました」

 口調こそ丁寧だが有無を言わせぬものがあった。

「ご家族の身の安全は、この者たちが保障致しますのでご安心下さい」

 そう男が言って体をずらす。戸口の外に二人の男が居た。

(ていの良い人質か)

 リューネブルクはまだ悩んでいた。家族を守る為に協力を決意した。しかし叛乱が成功しても無事過ごせるとは思えない。

 剣呑な夫の空気に気付いたのか、妻が不安そうな表情でリューネブルクを窺ってくる。

「父さん?」

 子供の純真な瞳にリューネブルクは自分の歪んだ顔を見た。

(子供に誇れる父親か……)

 口元に笑みを浮かべて子供の頭を撫ぜる。そして妻を抱き寄せて囁いた。

「後ろを見ていなさい」

 家族に恥じない行動を決意した。悪を倒し正義を貫くと。

 玄関に立つ男の顔面を殴りつけてそのまま外に放り出す。

「な、何を!」

 後ろ手に扉を閉めて外に出た。他の二人が慌ててブラスターを取り出そうとするが、庭弄りのために用意していたレンガを投げつけて気勢を制する。

 実の妹さえ利用しようとする義兄は、家族壊す敵と言えた。大切なのは我が身ではなく家族だ。

(俺は義理堅い男だ。だから謝礼と復讐は必ずする)

 リューネブルクの怒りが、吹き荒れる暴風となって三人にぶつけられる。

 この後、駆けつけた憲兵によって暴行、傷害、脅迫、誘拐、建築物侵入、威力妨害、器物損壊等、治安上憂慮すべき罪状を持つ反抗グループが摘発された。

 リューネブルクから通報を受けて叛乱計画の全容が関係機関に伝わると、侍従が完全武装の近衛兵を引き連れて皇帝の寝所に慌しくやって来た。兵達には扉の前に控えさせて、室内に入る。

「皇帝陛下。夜分遅く失礼致します」

 侍従のまとう剣呑な空気に皇帝は訝しげな表情で窺う。

「何事か」

「たった今、入った報告によりますとリッテンハイム侯爵が兵を率いて武装蜂起するとの事です」

 内務省と軍は武装解除に動き出しているが、皇帝の居城も戦場となる恐れがある。事体が沈静化するまでは避難すべきだ。

「ふむ」

 早急な帝都からの脱出を侍従は進言するが、皇帝は却下する。侍従は表情を強張らせ再考を嘆願する。

「陛下、何卒御考え直しを!」

 皇帝の身に何かあれば、リッテンハイムに寄与するだけだ。だが、皇帝には信念があった。

「皇帝は退かぬ」

 説得が不可能な事を知った侍従は、近衛師団長に皇帝の居城で迎え撃つ事を指示した。

 

 

 

「今回も悪党退治だ。リッテンハイムは殺すな。吐かせる事があるからな」

 帝都を朝靄が覆う早朝、執行部隊がリッテンハイム侯と側近の身柄を押さえるべく動き出した。装甲車の兵員室内でハルオは凄みのある笑みを浮かべた。

 アンラックでの治安回復が概ね終息した事で、ハルオの中隊はオーディンに戻ってきたばかりだった。装甲擲弾兵と宇宙艦隊も今回の件で動員されている。前線から戻ってきたばかりの部隊に内通者いないだろうとの判断だ。

 帝都全域で大規模な停電が発生した。時間にして5分程で復旧がなされた。

 その間に近衛師団が帝都防衛軍司令部へ逮捕に向かった。内務省を初めとして各官公庁でも一斉検挙が行われている。決起の参加部隊は、駐屯地を出る前に主だった将校が逮捕された。

 すべてが順調に行われていた。しかし最後の詰めが甘かった。

 動物的直感があったのか事前に情報が漏洩したのか、リッテンハイム侯爵の姿は屋敷に無かった。

「どうしますか、中隊長」

 ハルオは呑気に待っているつもりはなかった。使用人の中で一番の古株を連れて来させる。

「時間が惜しい。リッテンハイムは何処に言ったか吐いてもらおう」

「だれが喋る物か!」

「あ、そう?」

 主人への忠誠心から口を割らない執事を自白剤で尋問した所、城下に出かけると言い残していたそうだ。意識朦朧とした執事を椅子に縛り付けたまま、ハルオは外に飛び出す。

「監視は居眠りでもしていたのか?」

 帝都オーディンは、防衛上の観点から入り組んだ古い町並みを意図的に残している。裏通りに入れば、追跡する側にとっても迷路になっている。捜査を攪乱する為の欺瞞情報と言う可能性もあるが、そこまで考え出したら限が無い。少なくとも目の前の執事は、自分達のように尋問の訓練もされていないだろうし嘘を言っていないとハルオは判断した。

 敵の所在が不明。これ程、厄介な相手は無い。

(だが、リッテンハイム侯の狙いは分かっている)

 皇帝さえ抑えれば逆転が出来る――

「此方、チンジャオ。逮捕は失敗した。全部署に通達、奴らは“新無憂宮”(ノイエ・サンスーシー)に向かうぞ」

 大通りは憲兵が警察と共同で検問を張っている。何処を通過したか。皇帝の居城上空は飛行制限区域になっている。空を飛べば目立つ。地上しかない。

 装甲車に飛び乗り、最短経路である大通りに向かう。通りは観閲式の受閲部隊が更新するため交通規制をかけられていた。その為、一般車両は通っていない。

「おい貴様、何処の所属だ!」

 検問で規制をかけていた交通警察と憲兵が、相手が装甲敵弾兵である事に驚きながらも駆け寄ってくる。

「馬鹿野郎! そんな事を言っている場合か。逆賊が陛下を狙っているんだぞ」

 これまで一般市民には知らせず、観閲式の為の警備としか思わせてはいない。誰が敵で味方か分からなかったからだ。警察も一部にしか伝わっていない為、貴重な時間が説明で費やされる。

 

 

 

 皇帝の居城では、特別な式典があったり祝日の日には薔薇の庭園が一般解放されている。当然、立ち入り禁止の制限区域がある。

 鬘と帽子で変装したリッテンハイム侯爵と護衛が市バスから出てきた。

「警備の配置はどうだ?」

「確認しましたが、当初と同じです」

 一般の観光客に混ざって検問を通過した。通常は所持品の検査も行われるが、事前に協力者の手を通して装備を持ち込んでいた。

 庭園と言っても敷地面積は広い。小高い丘や森もある。

(まさか観光ルートに用意していたとは思うまい)

 待ち合わせの場所に近衛師団の制服を着た下士官がいた。

「巡回の目を潜って装備を持ち込むのは大変でしたよ」

 近衛師団の兵が全て皇帝に忠誠心持っている模範的な者ばかりではない。この下士官は闇金融で金を借り借金で首が回らなくなっていた。買収は簡単だった。

「ご苦労だった」

 リッテンハイム侯が頷き部下が現金の入った鞄を渡す。取引で支払の不履行等と言う姑息な真似はしない。下士官は中身を確認すると笑みを浮かべた。

「世の中、金ですよね」

 言い淀む事の無い物言いにリッテンハイムは納得する。人にはそれぞれの価値観がある。否定はしない。

 装備を手早く回収した。目立たない様、武器を携行する。

 深呼吸して部下に指示を出す。

「始めよう」

 リッテンハイムの指示で部下は動き出す。

「あ、そこの貴方。コースから離れないで下さい」

 森から出ると警備の兵がやって来る。

 護衛が手荷物の鞄からブラスターを取り出して、躊躇する素振りさえ見せずに射殺する。他の観光客から悲鳴とどよめきの声が上がった。

「騒ぐな!」

 部下たちが結束バンドで拘束して行く。これからは時間との勝負だ。

「すぐに追っ手が来るぞ。急げ!」

 自分達の手の内が読まれていた。普通なら戦場になる帝都から皇帝は避難させられているだろう。だが皇帝は居城にいる。それは確信していた。

(逃げるようでは君主ではない。そしてその様な人物ではない)

 害すべき相手をこの段階になっても信頼していた。

 

 

 

 

36.2-2

 

“大将軍の城”(グロスアドミラルスブルク)に向けてロイエンタール艦隊は向かって後退していた。敵の拠点を目前にしながら、新手の増援が到着した事で後退を余儀なくされた。要塞の司令部には打電したが返信は無い。ロイエンタールと幕僚は、帝国領内に侵攻した敵がばらまいた妨害電波を放つ衛星が残っているのだろうと判断した。

 引き上げの先頭は、進撃の先頭を勤めたファーレンハイト艦隊だ。連日の戦闘で将兵を疲労感が覆っている。年末年始の休暇は期待できないが、これぐらいの特典は当然だ。

 駆逐艦「ミステル」でルパート・ケッセルリンクも穏やかな時間を過ごしていた。蜜柑の皮を剥きながら口に掘り込む。芳醇な甘味が口に広がり頬を緩ませる。

(冬は蜜柑だよな)

 こたつが欲しいなと考えていると報告が届いた。

「6光秒先に不明艦多数、敵艦隊と思われます」

 方位は味方勢力圏である帝国側出口。だがレーダー見張員の声は緊張していた。緩んだ意識を切り替えるには十分だ。

「あ~あ、またか」

 伏兵は考えられない。一部の敵艦隊の味方戦線を突破したと言う話は聞いていた。おそらくその艦隊だと判断できた。

 うんざりした気分になるが、警報を発し僚艦に報告する。

 

 

 

 ファーレンハイトに前衛として敵の相手を押し付けて、戦艦「トリスタン」の私室でロイエンタールはミッターマイヤーと通信回線を開いて会話をしていた。

 ミッターマイヤーは現在、“大将軍の城”(グロスアドミラルスブルク)に於いて、

動員された諸侯の警備隊から使えそうな艦艇を抽出し、有機的に動かせる様に訓練指導を行っていた。

「此方の応援にはいつ来れるんだ」

『数だけは多かったが雑多な混成だ。使い物に成るにはまだ時間がかかりそうだ』

 警備隊と言っても、惑星軌道上での運用を想定した哨戒艇、魚雷艇と言った小艦艇ばかりで星間移動の航宙能力のある艦艇は限られる。

「そいつは楽しそうだな」

『まあ駆逐艦の数だけは揃えられそうだ』

 航宙能力の低い旧式な機関や装備。まともに戦えるのはブラウンシュヴァイク公の私兵ぐらいしかない。

「疾風ウォルフに鍛えられたら、旧式艦でも乗員は精兵になるさ」

『だと良いがな』

 ミッターマイヤーはフェザーンでの戦況を問う。それに対してロイエンタールは表情を僅かに歪める。

「今一歩だったが、欲を出して全てを失うわけにもいかん」

 無念の思いが表情に滲み出ている。

『引き際が肝心だな』

 本当ならフェザーン攻略の報告を酒の肴に盛り上がりたかった。機会は先に延びたがまだある。

「俺が慰められるとはな」

 自嘲気味に唇を歪めてロイエンタールは呟いた。警備隊の教育などと閉職に回されてミッターマイヤーが腐っていると心配しての連絡だ。

 ミッターマイヤーはロイエンタールの心遣いが嬉しかった。

『俺に関わっていると卿まで閉職に回されるぞ』

 冗談混じりに言ったミッターマイヤーの言葉にロイエンタールは呼吸音だけで笑った。

「俺が勝手にやることだ」

 敵艦隊発見の報告が届いたのは、ミッターマイヤーが返事を返そうとした瞬間だった。

「邪魔が入った。また連絡する」

 艦橋に駆けつけると、幕僚は戸惑いを隠せない様子でいた。

「一戦交えざるを得ないか」

 彼我の距離が詰められてスクリーンに艦影が拡大される。同盟軍は戦闘による損傷を受けている艦が多い。

「後退している?」

 艦隊司令部では戸惑いの声が上がる。

「友軍に撃退されたのだろう」

 ロイエンタールの声に艦隊司令部の面々は納得する。

 一方のヤン艦隊では、索敵の網に引っかからず見つからなければ問題ない。だが現実には、後退していても前方監視を疎かにしていないファーレンハイト艦隊の索敵に見つかった。

 ロイエンタール艦隊を抜けなければフェザーンの友軍と合流できない。だからこそ策を考えた。敵旗艦を制圧して人質に敵中を突破する。これが出来るのは薔薇の騎士連隊だけだ。

「我々は敵艦隊から旗艦を孤立させ拿捕する」

 シェーンコップも理解はしていいる。かなりの数が沈むだろう。全てを失うか、それとも僅かな生存に賭けるか。あれもこれも全てを望むなど不可能だ。助けられる者は助けるが、不可能な時は切り捨てる選択をする。偽善でもなく、当然の帰結だ。

「無理はせずに、適当な所で切り上げてくれ」

「了解」

 シェーンコップの反応の薄さに少し寂しい物を感じながらも、そのまま見送る。

 強襲揚陸艦「ノソローク」で薔薇の騎士連隊と陸戦隊の混成部隊は待機する。薔薇の騎士連隊は、アンラックの戦いで数こそ減らしたが精強さは衰えてなど居ない。

「ノソローク」艦長のアレクサンドル・ニコラーエフ大佐は赤毛の女性で、シェーンコップに言わせると中々良い女だ。

 軍と言う特殊な社会で、女性扱いは難しい。定時に帰れる職場なら良いが、戦闘航行中の駆逐艦で妊娠してしまうと洒落にならない。

 その辺りを考えれば同盟軍は帝国軍と比較して大胆な採用を行っている。国力で帝国に劣り人的資源が限られた同盟だから女性の社会進出も目覚しい。

「必ず敵旗艦までお届けします!」

 ニコラーエフ大佐の決意を込めた言葉にシェーンコップは明るく応対する。

「よろしくな」

 同盟軍に於いて伝説と言っても良い武勲をあげてきた薔薇の騎士連隊と任務を遂行できる。その栄誉に頬を高揚させていた。

「ノソローク」の護衛には、駆逐艦「ブイストルイ」と「ボエヴォイ」がついている。護衛にあたる2隻の艦長達も、若く暑苦しいほどやる気に満ちていた。

 尊敬と羨望の眼差しを向けられながらも、彼らの運命を考えると不機嫌になる。

 駆逐艦は盾になってこその護衛。戦艦や巡航艦みたいな大出力のビームや大口径の火砲で華々しく戦果をあげることはできないが、量産性の高さで代わりが利く。そう言う意味でも、水上艦艇の時代で役割は完成している。

(おそらく、こいつらは全員死ぬな)

 目標にたどり着くまで護衛が生き残れるとは考えられなかった。元からシェーンコップの部下だった者たちは、女性艦長を口説かない元連隊長姿に作戦を前に緊張しているのだろうと気を引きしめる。

 

 

 

 ファーレンハイトは便利屋としてこき使われる我が身の不運を内心で腹立たしく思っていた。

 敵戦力は2000隻にも満たない寡兵。だが手を抜くつもりはない。戦いは常に本気でやる。

「最後の詰でミスをする様な事は無しで頼むぞ」

 幕僚の間に流れていた鎧袖一触と浮わついていた空気が引き締まる。

 ファーレンハイトは戦場の厳しさ知っている。

 先手を打ったのはヤン艦隊から放たれたスパルタニアンの編隊だ。

 レーダーを見るまでも無く、視界に帝国軍の艦艇が眩い光となって現れる。同盟軍空戦隊を指揮するオリビエ・ポプラン中佐はスパルタニアンのコックピットで表情を歪める。

 CSPのワルキューレが周囲を固めている。それだけでも、自分達の攻撃隊よりも数がいた。

(圧倒的戦力の物量。贅沢な艦隊だ)

「攻撃開始」の指示を出し、各中隊事、攻撃目標に向かう。

 少しでも大物を沈め様と、防空陣を構成する駆逐艦には目もくれない。

 最初の警戒線を超えれても、パイ生地の様に帝国軍は待ち受けている。誘導弾にチャフやフレアで欺瞞行動をとりながら回避機動をする。その間にも実体弾やビームが機体の傍らをかすめる。中和磁場など無い為、当たったら即座に昇天する。

「糞!」

 次々とレーダーの表示から消えていく僚機の表示。ポプランは熟練した飛行技術で回避行する物の、部下の多くは防空砲火の餌食となって撃墜されて行く。

(駄目だ。駄目だ! このままでは落とされるだけだ)

 アンラックから生き残り祖国を目前にして、こんな所で死んでいく。その不条理に怒りを感じる。

 ルパート・ケッセルリンクは「ミステル」をかすめる様に通り過ぎていった敵を見て意図する所を悟った。

 戦力の少ない敵は、最初の一撃で戦艦を叩くつもりだ。

(悪くは無いが、簡単には抜けさせないさ)

 防空陣は薄くは無い。後続する他の宙雷戦隊や巡航艦が戦列を組んで、砲火を打ち上げている。生き残ってもCSPが叩きに向かう。

 レーダーから通り抜けた敵編隊の表示が消えるのを確認して、すぐに自分の仕事へと専念し始めた。

「撃て!」

 艦隊が砲撃の射程に入り、帝国軍から攻撃の砲火が放たれる。同盟軍も砲火で応対しながら後退して行く。その様子を見てファーレンハイトは考える。

「さて、どう出るかな」

 麾下の宙雷戦隊は、フェザーンを目前にして撤退した鬱憤をぶつけようと戦意を燃やしていた。

「ミステル」にも宙雷戦隊旗艦の「キュアノア」から指示が入る。

「『キュアノア』より入電。我に続け」

 攻撃の矢が放たれる。

「開店だ。お客さんを歓迎してやろう」

 休む暇など与えない。苛烈な攻撃で同盟軍をかき乱す。

 

 

 

 皇帝の居城。その防衛を司るのは皇宮警察と近衛師団の役目だ。近衛師団の配置に関しては下調べする時間もなくて、警備にぶつかってしまった。

「侵入者を発見。応援を頼む」

 相手は廊下に設置されたTV電話で直接、連絡を取っている。このままでは奇襲の効果が失われ、捕捉撃滅されるだけだ。

(通信の遮断は失敗したか)

 別班に基通を抑えておくよう命じていたが連絡が取れない。返り討ちにあったと判断する。

(このまま自分達だけで始めるしかないか)

 リッテンハイム侯は傍らの部下を見た。ラウディッツ中佐は生粋の装甲擲弾兵で大隊を指揮していた男だ。

「行けるか?」

 リッテンハイムの発した質問の意味を良く理解しており、ラウディッツは力強く頷く。

「大丈夫です」

 単に皇帝の命を奪うだけなら、手っとり早く皇帝の居城に核攻撃するなり艦砲射撃を浴びせるなり幾らでも手段はある。それでも討ち漏らして万が一、生存していた場合を考えるならば、今以上の手段は存在しない。

 外では逮捕の為に急行する部隊があった。

 ハルオの中隊が車列を列ねて皇帝の居城に到着した時、銃声と爆発の戦場騒音が響いていた。

「止まれ。誰か!」

「第146装甲擲弾兵連隊……」

 リッテンハイム侯爵を追跡してやってきたと説明する。

(見たところ、正門で警備に当たるには兵の数が少ない。全員駆り出されている様だ)

 確認の為、警衛所に連絡している。その間、油断なく銃口が向けられている。

「確認した。通ってくれ」

 第一に皇帝の安全を確保。次にリッテンハイムの身柄を確保する。

 移動中に各小隊へ任務付与をしておいた。

 装甲車から降り立つと薔薇の香りを打ち消す死臭がした。殺害された観光客と警備の近衛兵の遺体が路肩に転がっている。顔をしかめて指示を出す。

「玉座に急げ!」

 装具を鳴らして部下と共に駆けていきながら、ハルオは侍従や女官の姿が少ない事に気付いた。

 それは決起したリッテンハイム同様だった。

 謁見の間に通じる廊下でリッテンハイム達は、守備側の抵抗に遭遇しなかった。

(罠か)

 動物的本能が危険を知らせていた。

(だが退くわけには行かない)

 罠があれば食い破るとリッテンハイムたちは扉を押し開き中に踏み込んだ。

 皇帝は悠然と玉座に腰かけていた。

 声を荒らげるでもなく、皇帝はいつもの謁見を行うように気だるい表情で言った。

「覚悟があるならば撃てば良い」

 その心は抑制されており、氷のような瞳だった。

(さすがは、帝国を統治する皇帝だな)

 引金にかかった指に力を入れれば皇帝の命は容易く奪える。

 だが、近衛兵が実戦さながらの完全装備で周囲を固めている。すぐに蜂の巣になってしまうだろう。その光景を見て敗北を悟った。

 視線の端に、ベーネミュンデ侯爵夫人シュザンナの姿を捉えた。皇帝の背後に控えているがリッテンハイム侯を睨んでいた。

 皇帝と一対一でわざわざ過ごしたい人間は限られている。常に傍に居たのは、シュザンナただ一人だ。

 彼女に政治的野心があるのかと疑った時期もある。その事を今では否定できる。

(あれは、ただの女だ)

 政治的野心を持って彼女の知己を得ようと贈り物をした貴族もいたが、彼女はいかに高価な物を贈られようと受け取りはしなかった。

(真の意味で陛下に忠誠と情愛を注いでいる)

 男とは違い、ただ信じて無垢な情愛を注げる女を羨ましいとさえ思った。

「武器を捨てろ!」

 鋭い言葉が叩き付けられ、リッテンハイムの思考を中断する。

 勧告をして来たのは、交通事故で入院中と報告を受けていた近衛師団長だ。

「リッテンハイム。卿の企ては全て明るみに出ている。大人しく縛につけ」

 向けられる銃口の数を考えるならば、抵抗は無駄だ。リッテンハイムに随ってこの場に居るのは、忠誠心が高い直参の部下ばかりだ。家族との訣別を済ませ主人の命令で命を投げ出す覚悟が出来ている。

「閣下……」

 命令を求めてラウディッツが囁いてくる。戦えと言う命令を待ちかねている。

「これまでだな」

 この場所で待ち伏せされている可能性はあった。

 その事には気付いていたが、万が一に賭けてここまで来た。だが、勝利の女神が微笑んだのは自分ではなかった。

 自嘲気味な笑みを浮かべると、部下に武装解除に応じるよう告げる。

(負け戦に付き合わせる必要は無い)

 部下の間から嗚咽の声が洩れる。

 ふいに娘が、一緒に行ってみたい遊楽地があると言っていた事を思い出す。

(サビーネ、約束は守れそうに無い)

 妻のクリスティーネにも黙って来た。自分の行動を知った時、家族が悲しむのは明白だ。

(全ては終わった……)

 連行される時、俯いたリッテンハイムに近衛兵が囁いた。

「すぐに家族も後を追わせてやる」

 表情を強張らせ立ち止まろうとしたリッテンハイムを小突く。

「立ち止まるな!」

「くっ……」

 敗者に情けがかけられる事は無い。大逆罪は一族三代に渡るまで極刑と定められている。

 

 

 

 後退していた同盟軍が突如として攻勢に出た。戦力で劣る側が巴戦になれば自滅の道を進むだけだが、敢えてその道を選んで混戦状態となった。

 CSPのワルキューレが殺到する同盟軍宙雷戦隊の突進を食い止めようと向かうが、そうはさせまいとスパルタニアンが向かっていく。

 空戦隊がぶつかり合っている頃、突撃の切っ先に帝国軍の砲火が集中する。周囲から降り注ぐ豪雨の様な熱量と質量の嵐に、突出部の外側に位置する艦艇は光球へと姿を変える。

 隣を航行していた巡航艦が、機関室に灼熱した砲弾を受けて爆発した。損害が激しく操舵不能で漂流している艦もある。すぐに射点につきたいが、それまでに沈められる艦の方が多い。

 時間ばかり過ぎていき、距離は中々詰まらない。永遠に思える時間が過ぎて射撃位置に到達した時、スクリーンを見ると戦力は半分以下に減っていた。

 弱い所を容赦無く叩かれる。

「魚雷発射!」

 圧縮された空気が魚雷と共に射出され振動が響いてくる。

 防空駆逐艦「カネゴン・ブースカ」は、その名の通り元々が防空駆逐艦であるため対艦戦闘に慣れていない。それが本職の駆逐艦相手にまともにやりあっている。

「中々やるじゃないか」

 巡航艦「ガチンコ・ヤラセ」を初め帝国軍に巡航艦3隻、駆逐艦5隻に被害を与えている。

 同盟軍は奮闘しているが、自ら砲火の網が広げられた袋に入っている。すぐに「カネゴン・ブースカ」も沈められる。

「前衛の宙雷戦隊に損害が出ております」

 ファーレンハイトは気が付いた。

「混戦を狙っているな」

(だが数で劣る敵が混戦に持ち込んでどうするつもりだ?)

 戦力的にはロイエンタール艦隊が優っており、このまま行けば包囲撃滅できる。

 従卒からコーヒーを受け取り喉を潤す。気分は落ち着かない。

 スクリーンに、帝国軍の砲火に捉えられて痩せ細る敵艦隊の姿が映し出されている。

(敵の狙いが分からない。このまま突き抜けられると考えているのか)

 戦力差から考えて、正面からぶつかり合うなど愚の骨頂。

 ファーレンハイトは敵の強硬な攻撃を避け、側背に回り込もうとした。代わってロイエンタールの本隊が正面に出て戦闘に参加する。

 ファーレンハイト艦隊が退いた様に見えて、同盟軍は勢い付いて進んで行く。ロイエンタールに被害が及ぶ恐れはあった。

(敵の弾が旗艦に当たるかどうかは俺の考える事ではない)

 結果が全てであり、勝利に寄与できれば問題にはならない。それに旗艦は艦隊の中枢に位置する。有力な戦力で囲まれているのに、その艦隊を後方で遊兵化させておくのはもったいない。

(ロイエンタール提督にも苦労をして頂こう)

 ファーレンハイト艦隊に間隙が出来た。

『状況開始します』

 シェーンコップからヤンに敵旗艦突入前の最終報告が届いた。フレデリカは憂いに満ちた表情でヤンの背後に立ち、その報告を聞いていた。

(あ……)

 スクリーン越しにシェーンコップが不適な笑みを浮かべた。

 視線が絡んだ。シェーンコップがヤンの肩越しに自分を見ていたのは勘違いではない。

 視線を受け止めたフレデリカは、シェーンコップとの情事を思い出して頬を染める。

 そんな二人の様子を見てヤンも口元に笑みを浮かべた。

「どうしたの?」

 マグダレーナ・フォン・ヴェストパーレ男爵夫人は小首をかしげてヤンに尋ねてくる。

「あの二人の事さ」

 ヤンが視線を向けた先。シェーンコップとフレデリカ。気が付けば、いつも居る組合わせで二人は付き合っている物だと思っていた。

「あの二人はお付き合いしているのじゃなくて?」

「ああ。シェーンコップはね……」

 ヤンは説明する。同盟で一番浮気な男と言われているが、シェーンコップを射止めるだけならともかく自分の下に留め置けた女性はいない。そのシェーンコップがフレデリカとは相性が良いようだ。

「最高の見世物だと思わないか?」

 ヤンの言葉はマグダレーナにしか聞き取れない程度だったが、息を飲ませるには十分な内容だ。

 恋人たちの別れ。そしてスクリーンに映る戦場の光景。

 一つ一つの光球は、燃焼する時に兵の命も燃やし尽くして行く。だから輝く光は人の生命のかき消える瞬間であり、最も美しい。

 それをヤンは史劇の様だと言う。狂った理論だが、当然だとも思える。

「悪くはないわね」

 微笑みを浮かべながらマグダレーナは答えた。高揚してくる気持ちは本心だった。自分達も舞台の登場人物になった気分だ。

「ただ、あまり大っぴらには言わない方が良いわよ。普通の人には刺激が強すぎる内容かも知れないから」

「そうだね」

 口元に微かな笑みを浮かべながらヤンは、マグダレーナの言葉に同意を示す。

 ヤンは自分の信条や意見を発言する上でTPOをわきまえていた。

 シェーンコップ達を乗せた艦が敵に向かって行く。その様子を確認してヤンは暗い笑みを浮かべた。

(何かしら。また悪い事を考えているのね)

 傍らのマグダレーナはその事に思い当たり、自分を驚かすような何かをやってくれるのかと期待する。

 

 

 

 強襲揚陸艦「ノソローク」が「トリスタン」に接舷した。

「おっと……」

 衝撃が強襲に備えていた陸戦隊の面々を襲う。シェーンコップは身動ぎ一つせず待機している。

 戦争は何でもありだ。最低限度の約束事を双方で決めていないため、卑怯だと叩かれる。

(普段から正義なんて言葉を軽々しく使う人間は信用できない)

 シェーンコップは卑怯と言わせない。ねじ伏せるだけの実力を持っている。正義感だけでは生き残れないし、出世はできない。

 クロロベンザルマロノニトリル、CSガスが最初に流し込まれた。本来は暴徒鎮圧用の物だが効果は高い。

「前へ!」

 艦内の配置は叩き込まれていた。各班事に制圧目標に向かって駆けていく。

 爆発の衝撃で壁に打ち付けられた乗員が気絶して床に倒れている。一瞥すると、シェーンコップは延髄に戦斧を叩き込んで止めを刺す。敵に情けは無用だ。それ、に敵の司令官以外の捕虜は必要ない。

 敵に口を開く暇も与えず、薔薇の騎士連隊は艦内になだれ込んだ。

 アルバート・チェグウィデン大尉は帝国からの亡命貴族でも、その子弟でもない。陸戦隊の一員として要塞攻略に参加していた。その後の撤退で、ヤン達と合流してからは暇をもて余していた。

 今回任せられた使命の重要性を考えると、恋の瞬間のように心を浮き立たせる。

 元から薔薇の騎士連隊に所属していた者は数を減らしており、今では定員の半数以下だ。その為、自分達が補充として加わる。アンラックで数を減らした薔薇の騎士連隊を支援して敵旗艦に突っ込む。同盟軍陸戦隊の精鋭として名高い薔薇の騎士連隊と肩を並べて戦える得難い機会だ。

 後は突っ走り戦果を上げれば良い。そんな言葉に踊らされた自分の決断を、今では後悔している。

 艦隊の旗艦ともなれば、保安中隊や陸戦隊に相当する者も乗艦している。ガス攻撃で乗員が右往左往している横で適切な反撃をしてきた。部下に死傷者が出る。

 ゼッフル粒子の発生装置を投げようとして、自分自身も腋を撃ち抜かれた。

(馬鹿が……!)

 迂闊に身を晒した自分を内心で罵倒する。

「小隊長!」

 喉頭に込み上げてくる自分の血の臭い。致命傷で助からないと理解している。

「行け……」

 アルバートは何とか言葉を振り絞りその事を伝える。先任は頷き、部下を促す。

 本作戦は時間との勝負であり、負傷兵は切り捨てられる。

 ヘルメットの視界は、吐き出した血で赤く汚れている。班員は一瞥をすると駆けていく。

「最後ぐらい、格好をつけて死ぬさ……」

 アルバートの呟きを気に止める者はいない。

 シェーンコップは準備運動として体を暖めるには十分な戦果をあげた。

 一人で既に2個分隊に相当する敵に損害を与えている。陸戦隊員でもない船乗り相手なら楽勝だった。

 殺人の技術が洗練されていると言うのも妙だが、シェーンコップの戦斧を振るう姿は女性の子宮を疼かせる物があった。

(まったく、あの人らしい)

 ブルームハルトは一人、独走するシェーンコップの姿に苦笑しながら声をかける。

「シェーンコップ准将! 一人で進まないで下さいよ」

 ライナー・ブルームハルトは、シェーンコップの部下で数少ない生き残りの一人だ。カスパー・リンツがアンラックで戦死してからは連隊長代理に就任している。無事帰還すれば15代目の連隊長は彼だと思われている。

「遅れる方が悪い」

 そう言ってシェーンコップは片目をつぶってウィンクを送ってきた。

 走って後を追いかけるブルームハルト。装甲服の中は汗をかいてびっしょりと下着まで濡れている。

(何てタフな中年なんだ)

 自分が同い年になっても、同様の体力を維持できているかは疑問だ。

 途中で立ち塞がる敵の抵抗を軽くいなしながら進む。

(旗艦とは言え乗員の数は知れている。千人切りをするわけでもない)

 司令官の首を狙う。指揮機能を一撃で破壊できる手だ。

(ただの腰巾着ではないと言うことを証明しないとな!)

 自らを奮い立たせながら、引き離されないよう後に続く。

 シェーンコップが倒した敵の血で床がぬるぬると滑る。

 角を曲がるとシェーンコップが扉の前で待っていた。艦橋だ。

「全員深呼吸をしろ」

 息を整えると、疲れ切った頭に酸素が回ったのか少し落ち着いた。

「行くぞ!」

 戦艦「トリスタン」に通信士としては配属されたヲチ・スレ伍長は、「トリスタン」に配属される前は戦艦「ベオウルフ」にいた。ミッターマイヤーの解任に伴い「トリスタン」に移動してきたばかりだ。

 どの職場にいようと緊張感を持って勤務に当たるの当然だ。 しかし敵の襲撃を受けて死線をくぐるような緊張感は願い下げたい。

(俺は装甲擲弾兵じゃない)

 思考に浸っていると艦長から指示が飛んできた。

「スレ! 頭を低くしろ!」

 ビクッと体を震わせて首を下げた。その瞬間、頭上を鋼材の破片が通過していった。

「え……」

 壁にめり込んだ鋼材に視線を向ける。

(艦長の指示が遅ければ、頭と胴体がおさらばしていた……)

 ぞっとしながらも、雄叫びを上げて突撃して来る敵を前にして持ち場につく。

「叛徒の奴等を近付けるな!」

 航行したくても周囲を敵に囲まれ船足を止められていた。侵入して来た敵は艦橋を狙っている。

「帰還したら隊員クラブで全員に奢ってやるぞ」

「じゃあ、酒も飲み放題ですか?」

 敵と戦いながら軽口を叩く猛者もいた。

「ああ。好きなだけ飲め」

 艦長のシルクド・ソレイユ大佐は部下を鼓舞して防衛を指揮している。しかし士気がいつまで持つかは疑問だった。敵に勢いを感じた。

 

 

 

 ミューゼル艦隊はヤン艦隊の後方に迫っていた。ロイエンタール艦隊がヤン艦隊と交戦に入った様子は、無人偵察機から中継される映像でわかった。

「俺達の追跡していた敵かな」

「だと思います」

 自分達の追撃から逃れようとした時のような繊細さは感じられず、強引な攻め方に見えた。

 自分達が迫っている事に気付いているだろうが、阻止できる状況ではない。ラインハルトに挟撃の機会が訪れた。

(散々、嫌がらせのように自動砲台や機雷をばらまいてくれたが、これで終わりだ)

 ロイエンタールと連絡を取りたいが、「トリスタン」との連絡が繋がらない。映像から見て、「トリスタン」に敵艦が取り付いていた。

「それで旗艦に敵兵が斬り込んでいるのか」

 艦隊の数で優っているが動きに俊敏性が欠けている。ロイエンタールの指示を仰げないため、仕方がない事なのかもしれない。

『敵は薔薇の騎士連隊。叛徒の精兵です』

 報告を受けてざわめきが起こった。帝国軍にもその武名は知られている。

 ラインハルトは表情を歪める。思い出したのだ。

 キルヒアイスも「ああ、奴等か」と納得できた。ロイエンタールもみすみす討ち取られはしないだろうとも思っていた。

 帝国領から追撃していたミューゼル艦隊と、フェザーンから後退するロイエンタール艦隊。両者は包囲網を構築しようと動いている。

 だがロイエンタール艦隊は旗艦が襲撃を受けており動きに乱れが生じていた。

 ファーレンハイトは意外な状況に舌打ちをした。

「ロイエンタール提督をお救いしなくては!」

「それには、まずは目障りな敵の護衛艦艇を排除する」

 

 

 

 旗艦が襲われて艦内では乗員が抵抗を続けているという。

 ロイエンタール提督も災難だな。

 急報を受けて「トリスタン」の舷側に駆逐艦「ミステル」は取り付いた。

「先任、後お願い」

「はい、艦長」

 敵の駆逐艦を始末したら、そのまま艦内に侵入した敵を排除しろとの命令を受けたのだった。

(これって駆逐艦乗りの仕事じゃないな)

 そう思いながらも装甲服に身を包み僕は「トリスタン」に乗り移った。

 通信室、CIC、機関室。最初にどこの応援に向かうべきか。

 艦の運行よりも、艦隊の指揮回復の方が優先だ。

「急げ! ロイエンタール提督を敵に討たせるな」

 この場で正規の装甲敵弾兵として地上戦を経験した事があるのは僕ぐらいだ。必然的に指揮は委ねられる。

(くそ!)

 隔壁が閉じる前に体を滑り込ませたのは、僕と部下の3名。なんとか間に合ったと思ったが、武器を構えて敵が待ち構えていた。

(有りがちな状況だな)

 苦笑いを浮かべると敵兵が襲いかかって来た。

「帝国軍の奴らを合流させるな!」

 正規の陸戦隊と艦艇の乗員では戦技の練度も異なる。味方は押されていた。

(舐めるな!)

 戦斧で相対した敵の足を払うと、滑って倒れた顔面に柄の部分を叩き込む。

 ヘルメットを突き抜け床に脳漿をぶちまける。

 味方を倒されて敵が向かって来る。敵の斬撃を戦斧で受け止める。

「くっ……」

 少し動いていないだけで体が鈍った。息が切れる。

 どっと汗が噴き出て来る。自分の足で駆け抜け戦うの久しぶりだ。

(帰ったら運動をしないといけないな)

 駆逐艦が小さいとは言え艦長としての仕事は幾らでもある。体力練成をしている暇が無かった。

(暇は作る物か)

 考え事をしている余裕がまだある。

 力を抜いて相手を誘い込み、そのまま薙ぎ払う様に一撃を入れて倒す。

 

 

 

 ルパート達が艦橋へ向かっている頃、シェーンコップは敵の抵抗を排除してロイエンタールと対峙していた。

「卿は何者だ?」

「ワルター・フォン・シェーンコップ。お見知り置き願おう」

 お互いに相手の力量が只者で無いと見て取った。

(この男の前では時間稼ぎは無駄か)

 艦橋はほぼ制圧され、ロイエンタールは捕虜になるか、抵抗するかの選択を求められていた。

 ヤンは敵の増援が旗艦に取り付いたのをスクリーンで確認した。

(十分に敵の注意を引きつけてくれたな)

 ただ、最初に一戦を交えたファーレンハイトの艦隊は、包囲の構築を優先している。混乱は見られない。旗艦に依存しない判断で動いている。

「艦長、前進一杯だ。この宙域から離脱する」

 突然の言葉に反応できなかった。

(味方が敵の旗艦に突入した。目的は敵の旗艦を人質にとって味方勢力圏へ脱出すると言う作戦だったはずだ)

 この宙域から脱出する。その命令が意味する事に気付いて艦長が批難の声を上げようとした。

「それでは、他の者達は……!」

 ヤンは先を言わせない。

「私の頭は同盟にとって必要な物だ」

 この意味分かるねとヤンは微笑んだ。

「心配しなくて良い。貴官は私の命令に従っただけだ」

 ヤンを生き残らせる事は、必然的に自分達を生き残らせる事になる。迷う事も無い。人はいざとなれば自分が可愛い。飢饉の時に、親が愛する我が子を食べる事すらあるのだから、奇麗事など言っても仕方が無い。

「ねぇヤン」

 マグダレーナが耳元に囁く。

「なんだい?」

「貴方、初めから突入した者を囮にする予定だったの?」

 フレデリカがヤンを睨んでいるが、声は聴こえないだろう。

「シェーンコップは生きていたら、いつか障害になると思ったんだ」

 シェーンコップ瞳の奥には憎悪が感じられた。

(非戦闘員を巻き添えにした事が奴には納得できていなかった)

「切り札は最後まで取っておくものだ。それに自己犠牲の騎士なんて時代遅れな物だろ? 」

「悪い人ね」

 くすくすとマグダレーナは声を殺して笑い出した。

 戦艦「ヒューベリオン」と周囲の艦艇が、混沌とした戦場の脇を通り抜けて離脱していく。

 

「敵艦隊の一部が、我が艦隊の後背に向かっています」

 ファーレンハイトは自分の艦隊を迂回するように通り過ぎていく艦隊を見た。数は100隻あるかどうかの小規模な戦隊だ。

「後方遮断か。違うな……戦線から離脱している?」

 ファーレンハイトにヤンの意図は読めなかった。見えているものだけが真実とは限らない。だから敵の、何らかの欺瞞行動かと疑った。深読みのし過ぎで手を出さなかった。

“大将軍の城”(グロスアドミラルスブルク)に帰還後、ヤンの行動を知ったファーレンハイトは破廉恥な恥知らずと罵った。

「トリスタン」の艦内に残されたシェーンコップ達の命は消えかけていた。

「司令部からの応答がありません」

 ブルームハルトの言葉にシェーンコップは、視線を「トリスタン」のスクリーンに向けた。

 世界は残酷だ。目を疑う光景が広がっていた。戦艦「ヒューベリオン」が司令部付隊の艦艇と共に戦場から離脱していく。ヤンのほくそ笑む姿が脳裏に移った。

(糞っ、彼奴の尻馬に乗って首を突っ込むんじゃなかった)

 自分の甘さに潰される奴はよく見てきた。

(だが俺もとは……)

 一瞬でも信じた事は間違いだった。

(自分達は帝国軍の注意を引き付ける囮だった)

 ヤンは味方を犠牲にして逃げ出した。

(畜生。あの野郎、地獄を見せてやる!)

 使い潰されるとは屈辱だった。 

 次にあったときは遠慮なく捻り潰すと決意した。

(だがどうする。どうやってこの危機を切り抜ける)

 興味深そうにシェーンコップ達を見ていたロイエンタールは口を開いた。数分前まで、捕虜になるのはロイエンタールの立場だったが状況は逆転した。

「どうする卿達を置いて司令官は逃げ出したようだぞ」

 ロイエンタールの言葉には嘲る物はなかった。

「これまでの勇戦に敬意を表して投降を薦めるぞ」

「降伏は好みではない」

 黒に銀の映える制服も、血と硝煙で薄汚れている。

 まだ死の河を通り過ぎるには早すぎる。

「ならば、そうだな……」

 ロイエンタールは悪戯を思い付いたような表情を浮かべた。

「卿ら、亡命しないか? 俺の食客として保護してやるぞ」

 静寂とした空気が艦橋に満ちる。シェーンコップは不敵な笑みを浮かべると戦斧を床に立てた。

「……それならかまわん」

 亡命をする事自体が珍しい事ではない。同盟の移民局はフェザーンからの移民以外にも、帝国からの亡命者を取り扱っている。帝国にも受け入れる機関や体制はある。出世頭ではリューネブルクが上げられる。

(ヤン・ウェンリー。奴をこの手で始末する機会が与えられるなら構わん)

 シェーンコップと薔薇の騎士連隊が投降した後、ロイエンタール艦隊は残る艦艇にも投降勧告を送った。

「返事は無いか」

「はい。旗艦が逃走して指揮系統がまとまっていないという事では無いでしょうか」

 統率を執るべき責任者の不在。その為、同盟軍は個々の艦長が判断して動いている。

「だからと言って砲撃が止まない以上、手を抜く訳にも行かない」

 自分達に砲火が向かって来る以上、その脅威を排除するしかない。

「はい」

「勝ちは六分をもってよしとす」と古代の偉人は言っている。実際の所、それを言った王の国は滅んだ。後事を託す後継者育成に失敗したのも、その様な中途半端な心構えだったからだ。

 これで良いだろうと言う物は無い。勝てるときに勝つのは当然だ。そこで手を抜く事こそ慢心なのだから。

 ロイエンタールの傍らに武装解除されたシェーンコップが並んで立ち、スクリ-ンを見詰めている。ロイエンタールは気にする事無く指示を出す。

「止めを刺してやれ」

 完全に包囲され切り捨てられた艦隊の残りを、帝国軍から放たれた砲火で光の渦が覆う。

 返す刀で「ミステル」に戻ったルパートは、休む暇も無く残存艦隊への攻撃に加わっていた。

「突撃!」

 雷撃を加えようと宙雷戦隊が増速する。その針路上で青白い光球が発生して、飲み込まれていく艦影。

 その様子を見て僕は指示を出す。

「あ、後進一杯!」

「ミステル」が回避の為、急停止する。この瞬間にも駆逐隊が丸ごと消滅していた。レーザー水爆による攻撃だ。

「『スマイレージ』『ハロヲタ』『カズチィ』沈没!」

 帰ったら焼肉を食べに行こうと誘って来た同僚の顔を思い出す。

(あいつの奢りだったのに……)

 この至近距離で使ったのだ。敵にも損害が出ている。包囲の外縁部と接していた駆逐隊が余波を食らって爆発した。

「破れかぶれか」

 その時、敵の後方に光球が次々と現れた。遠距離からの艦砲射撃だ。

 

 

 

「ミューゼル艦隊ですね」

 ロイエンタール艦隊はミューゼル艦隊とすれ違った。レンネンカンプ艦隊が代わって前衛に出ると言う事だ。

『後は小官にお任せ下さい』

 ラインハルトは自信と覇気に満ちた表情で挨拶を送ってきた。

(美味しい所だけ持ち去られるか……)

 ロイエンンタールは自嘲気味な笑みを浮かべる。

“大将軍の城”(グロスアドミラルスブルク)に帰還すると、同盟軍の帝国領での殺戮行為や帝都での騒乱の情報が入ってきた。

「フェザーン本星を目前にしながら、撤退せざるを得なかった事を我が身の不徳と恥じ入ります」

「いや、卿は良くやってくれたよ」

 フレーゲルから労いの言葉をかけられ、艦隊は休養と再編成の為、帝都に帰還する事となった。

「次の作戦がある。短い期間だが、ゆっくり英気を養ってくれ」

「御意……」

 

 

 

 

“大将軍の城”(グロスアドミラルスブルク)に帰還すると、オフレッサーに呼びつけられてルパートは酒の供をする事になった。

 薔薇の騎士連隊の投降でロイエンタールは面目を保った。

「首の皮一枚だがな」

 オフレッサーの言葉に一瞬、表情を強張らせながらも僕は努めて明るい口調で言う。

「同盟からの亡命者が、名だたる薔薇の騎士連隊。どう言う扱いをするか大変ですね」

 帝国では悪名の方が大きい。何と言ってもテロ攻撃の実行犯捕らえれた戦果は大きい。

「正道に戻ってきた。縛り首にする訳にもいかないだろう」

 少しふざけた口調で言うと不敵な笑みを浮かべた。

「シェーンコップだが、奴は復讐の機会を求めているそうだ」

「部下ともども囮にされれば仕方ないでね」

 敵艦隊の指揮官はヤン・ウェンリー。イゼルローン要塞後略の立案者。それだけではなく帝国領内での破壊活動を立案したとして、ヤン・ウェンリーの悪名が知られている。

「内務省の手入れで逮捕されたと聞いていましたが……」

「男爵夫人の手引きで脱獄したそうだ」

 女一人をたらしこんだ女衒に思えた。

「まるで魔術師だな」

 オフレッサーは皮肉を込めてヤンを評価した。

「ええ。出来る事ならこの手で殺してやりたいです」

 友人の家族も、薔薇の騎士連隊による破壊活動で犠牲者になっていた。

 内務省警察局から弟夫婦の射殺死体が発見されたと連絡が入り身元確認に行ってきたそうだ。

『御丁寧に妻子は犯されて殺害されており弟の死体はバラバラだったよ』

 そう報告して来た友人の表情は一生忘れられない物だった。

 弟夫婦はピクニックの途中で襲撃されて、乗ってきた私有車を奪われたと言う。

 作戦を実行したのは薔薇の騎士連隊だ。だが作戦を立案したヤンを許せない。

 枝豆に手を伸ばすと、横からオフレッサーの手が伸びてきて小鉢事持って行かれる。

「貴様も、そろそろ駆逐艦から降りてもらうぞ」

 枝豆を追っていた視線をオフレッサーの口元から外す。

「え」

 フェザーンの討伐。その仕置きが終われば、人事異動が発令される。

「陸が恋しくなっただろう。地に足を付けて戦えるぞ」

 

 

 

「うん。旨いな」

 噂の渦中の人物であるシェーンコップは、山盛りの大根サラダを口に頬張っている。

(よく食えるな。この人は)

 シェーンコップとブルームハルトは食堂に通された。要塞と言う事もあり規模は大きい。今は人影も疎らだ。

「どうかしたか?」

(些細で何でもないと言う事か)

 ゆったりとお茶を飲んで怪訝そうな表情を浮かべる上官を見て、ブルームハルトは真面目に考えていると頭が痛くなりそうだった。

「……いえ」

 出された食事に手を出さないブルームハルトに、世話を命じられたホフマイスターが口を開いた。

「お口に合いませんか?」

「そう言うわけではない」

(毒殺を疑っているとも言えない)

 何しろ、少し前まで自分達は彼らの仲間を殺戮していたのだ。

「毒は入っておりませんよ」

 図星を突かれてどきっとした。二人の間を緊張した空気が漂う。

「ん。喰わんのなら俺が貰おう」

 そう言うとシェーンコップはブルームハルトのトレイを取る。

 シェーンコップによって、空気はうやむやにされた。 最後はデザートまでお代わりしていた。

 トイレに行くとシェーンコップがさりげなく呟いた。

「あの場で出された食事に手を出さないのは非礼だ」

 はっとして顔を向けると、シェーンコップは疑うのは解るがなと付け加える。

(初めから気付いていたんだ)

「申し訳ありません」

 シェーンコップの度胸に感嘆として、自分の軽率な態度を謝罪した。

 

 

 

 このままフェザーンを潰すのは容易い。様々な利害関係の思惑が絡み合う事によって、帝国から最後の勧告が行われる事になった。

 メックリンガーが使者としてフェザーンに訪れた。再会の挨拶を交わすことも無く、冷徹に用件だけを述べた。さすがにルビンスキーも憮然とした表情で受け応えした。

「断れば帝国はどうするつもりですか」

 降伏するか、滅ぼされるか。答えは決まり切っているが尋ねずにはいられなかった。

「叛徒を叩き潰す前に、フェザーンが歴史の1ページになるだけです」

 反乱鎮圧後のアンラックは、帝国の新たな市場となっている。フェザーンと規模こそ異なるが、今後の進展が望める。フェザーンだけが全てではない。

「同じ支配されるなら楽な方を選びませんか」

 勝者の余裕か、遠慮の無い物言いだ。

「ゆっくり相談をなさって下さいと申し上げたい所ですが、時間は限られております」

「特使殿がお戻りの時間までに返事は決めさせて頂きます」

 壁にかかった時計を見ながらメックリンガーは答える。

「お互いの為に、良い返事を期待しております」

 礼をするルビンスキーの横を通り退室しながらそう囁いた。

 帝国からの使者を宿泊施設として宛がったホテルに待たせて、ルビンスキーは長老会議を召集した。

 ルビンスキーからの報告を受けて突きつけられた選択に、長老会議の議事進行は紛糾する。要約すると「降伏した場合、我々の既得権益はどうなるのだ」と言う事だった。

 怒りと屈辱の混じった視線がルビンスキーに集中する。

(ざまあ見ろ。俺が悪いと責める事も出来ないからな)

 老人達は商人として利益を失う事を看過出来ない。帝国との手切れを決めたのは長老会議だ。

 足掻けば足掻くほどに袋小路にはまって行く。

「フェザーンの代表者である私達の処罰は避けられないでしょう」

 最悪、極刑もありえるが、ルビンスキーには傀儡であったと言い逃れる選択もあった。

 戦うも亡国、戦わざるも亡国。フェザーンの歴史が終わる。

「これ以外の選択肢など無いと言うのか」

 誇りを捨て降伏するか、意地を張り同盟と共に滅びるしかない。

 

 

ルート選択分岐

 

a)提案の受け入れ。諦めて降伏する→3-1

b)提案の拒否。ナンセンスだ! お情け主義など冗談ではない、最後まで戦う→4-1

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