インフィニット・ストラトス~紡いだ想い、再び~   作:サウス零

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EP6 天真爛漫・百合と鈴

Main view

 

時期は四月の下旬、桜の季節感は終わりを告げた学園の外にて授業中。

「では、これよりISの基本的な飛行操縦を実践してもらう。織斑、オルコット、ついでに綾月。試し飛んでみろ」

織斑先生が飛行操縦の見本をしろと、一夏とセシリアを呼ぶ。

なんで俺はついで扱い?

「わかりましたわ」

セシリアが目を瞑ると彼女の周りに光の粒子が集まってISが装着される。

続いて一夏も念じるが何も起きない。

「ええと……あれ?」

「早くしろ。熟練したIS操縦者は展開まで一秒とかからないぞ」

せかされる中、一夏は意識を集中する。

ISは一度フィッティングを完了していれば、ずっと操縦者の体にアクセサリーの形状に待機しており、いつでも起動出来る。

セシリアは左耳に青いイヤーカフス、一夏は右腕の小型ガントレット。

因みに俺も小型のリングガントレットを身に付けているが、これだけではISは起動出来ない。

「来い、白式!」

おっと、一夏も白式の装着完了した。

 

「準備はいいな、ロボまる」

「うん!」

 

俺の前に一体の赤いロボットが立つ、これが俺の相棒の通常の姿『ロボまる』である。

決定戦の数日後、織斑先生に呼び出しをくらい、ロボまるの説明を求められた。

無論、俺は在りのままの事を説明するが、容易くは信じてくれない。

だが決め手は、ロボまるが『リヴァイブの姿でのIS学園の倉庫の奥深くに眠っていた予備訓練機』という山田先生の情報だった。

それからしばらく保留にされていたが、学園から正式に専用機体として変更したとの事。

ようやく行動できるようになったロボまると登校した日にはもうクラスは大騒ぎ、

ウサギの耳の様なアンテナを持つ容姿故か、クラスのマスコットとして熱烈な大歓迎を受けるのだった。

 

「「トランスコード、ロボマルス!!」」

 

ガントレットにカードチップ装填後、自分の周囲に光の粒子が浮かび俺を包む。

光が消え現れたのは俺のIS『ロボマルス・R』である。セシリアの『ブルー・ティアーズ』と一夏の『白式』は地面から数センチ浮いている。

対して、俺のロボマルス・Rは地面に立つ。

「よし、飛べ」

言われて、最初に動くはセシリア、あっという間に遥か頭上で静止する。

俺と一夏も続く、でも一夏は大きく軌道を反らしたが、何とか合流。

「遅い。スペック上の出力は白式が一番上だぞ」

通信回線から織斑先生のお叱りを受ける一夏、ちなみに急上昇、急降下は昨日習ったばかりで一夏はまだその感覚が掴めていない様子。

となると彼女の出番かな?

「イメージは所詮イメージ。自分がやりやすい方法を模索する方が建設的でしてよ」

「大体、空を飛ぶ感覚自体がまだあやふやなんだよ。なんで浮いてるんだ、これ」

「その、よろしければ、放課後に指導して差し上げますわよ」

「は?」

「その時は二人きりで…。」

 

おやおや、早速のアプローチ。

さあどうする。イッチー?

「織斑、オルコット、綾月。急降下と完全停止をやってみせろ」

 

織斑先生の通信が入る。う~ん

「り、了解です。ではお先に」

セシリアのブルー・ティアーズは一気に急降下。そして、脚部のブースターを噴かせ着地する。

「上手いもんだな…」

「そだな」

「よし、俺も!」

一夏も白式を急降下させるが……。

 

「!?……あ、ああぁ~!」

 

 

ドカーン!

 

 

 

一夏は見事地面に激突、大きなクレーターを作る。

 

『落ちたね、おもいっきり…』

やれやれ…。

 

俺とロボまるはどさくさ紛れにゆっくりと降下して着地する。

「一夏!」

「織斑君!」

箒、山田先生と織斑先生が近くに駆け寄る。

「大丈夫ですか?」

煙が晴れたその先には地面に頭を突っ込んでる一夏の姿、

すぐに顔を起こす。墜落のショックか白式は強制解除されている。

「いって~死ぬかと思った」

一夏の無事に安堵のため息をつく山田先生と箒。

「馬鹿者、グラウンドに穴をあけてどうする……。」

「あぁ……すみません」

「情けないぞ一夏!私が教えてやった事をまだ覚えて……うわっ」

箒を押し退けて、セシリアが一夏の元に向かう。

「大丈夫ですか、一夏さん。お怪我はなくて?」

「あ、あぁ、大丈夫だけど……って、一夏さん!?」

「そう、それは何よりですわ」

うふふ、と楽しそうに微笑むセシリア。

自分の名前を呼ばれて驚く一夏。

そりゃそうだろな、この間まで敵対していたはずの彼女にどういう心境の変化が起きたのか。

「お前が言うか。この猫かぶりめ」

「鬼の皮をかぶっているよりマシですわ」

バチバチッ!

 

二人の視線から火花が散らす、その横にいる一夏に近づいてみる俺。

「やれやれ、また始まったか…」

「なあ将。あの二人、日増しに仲が悪くなっていくように見えるんだが、なぜだ?」

「やれやれ、イッチーも相変わらずか…」

『そうだね…』

一夏の鈍さに俺達は深いため息をつくしかなかった。

そして、授業終了後。俺達は一夏と共にグラウンドの穴埋めをさせられた。

チクショウ、バレてたのかよ!

 

Other view

 

 

夕方。IS学園の正面ゲート前に、小柄な体に不釣り合いのボストンバックを持った少女がそこに立っていた。

「ふうん、ここがIS学園なのね……」

四月の風になびく髪は、左右それぞれ高い位置に結んでいる。

肩にかからないかくらいの髪は、金色の止め金によく似合う艶やかな茶色をしていた。

 

「えーと、受付ってどこにあるんだっけ」

 

上着のポケットから一枚の紙切れを取り出す。くしゃくしゃになったそれは、少女の大雑把な性格と活発さを表している。

「本校舎一階総合事務受付……って、だからそれどこにあんのよ」

「受付を探しているの?」

「そうよ、場所の名前だけわかっても具体的な地図さえも無いんだから……って、誰!?」

不意に聞こえた声に振り向くと、少女と同じく学園の制服を着た少女が立っていた。

「よかったら、案内しようか?私もその場所に行くから」

腰まで伸びるストレートな髪の先端には黄色のリボンを結んでおり風でなびいている。

 

 

「ええと、それじゃあ手続きは以上で終わりです。IS学園へようこそ、凰鈴音(ファン・リンイン)さん」

愛想のいい事務員の言葉にほっと安堵のため息をつく少女――鈴音。

隣には先程の少女が微笑む。

 

ふと、ある事を思い出した鈴音は事務員に聞いてみる。

「織斑一夏って、何組ですか?」

「ああ、噂の子? 一組よ。凰さんは二組だから、お隣ね。そうそう、あの子一組のクラス代表になったんですって。やっぱり織斑先生の弟さんだけはあるわね」

噂好きは女性の性。それを体現するような事務員に鈴音は少し呆れた視線でみるが質問を続ける。

「二組のクラス代表は決まってますか?」

「決まってるわよ」

「名前は?」

「そこに本人いるけど…聞いてないの?」

事務員の示す先にはいっしょにいる少女――

「そう言えば、まだ自己紹介してなかったわね。私はユリ、月彩百合(つきあや・ゆり)って言うの、一応二組のクラス代表。よろしくね、鈴音」

 

 

 

Main view

 

 

「というわけでっ! 織斑くんクラス代表決定おめでとう!」

「おめでとう~!!」

パン!パッパーン!!

クラッカーの音が一斉に乱射する。

飛んだ紙テープの一部が一夏の頭に乗っかっていたのが少し笑えた。

 

「なんで俺がクラス代表なんだよ……?」

「それはわたくしが辞退したからですわ!」

がたんと立ち上がって、セシリアは手を腰に当てるポーズ。

もう見慣れたな、これ……

「まあ、勝負はあなたの負けでしたが、しかし考えて見れば当然のこと。なにせわたくしセシリア・オルコットが相手だったのですから。それは仕方ないことですわ」

セシリアの『負け』という言葉に一夏は顔をしかめるがふと思い出したのか俺を見る。

「だったら、引き分けた将はどうなるんだよ…?」

「俺も辞退だ。俺の場合はちょっと問題があってな」

「問題?」

「あぁ、俺の機体は他のISより特殊だらけだからな」

「特殊?」

「そ、今時珍しい全身装甲。なにより……」

将の視線の先には一組の生徒たちに囲まれているロボまるは苦笑しつつも質問に答えている様子。

 

「世界初の『自分の意思を持ったIS』こんなのが世界に知れたら大騒ぎどころじゃない」

「確かに、ISには意識みたいなものがあるって授業で言ってたな」

「学園の訓練機を特別貸出で登録しているが何処でボロが出るかわからん。その点を織斑先生から辞退のお達しが出て今に至るってことさ」

納得したのか一夏はここで引き下げる。

織斑先生のお達しは本当であるが、半分はセシリアと結託して決めたことである。

なにせこの子、初恋したんですわよ!

いかんいかん、口調が移ってしまった。

そして、新聞部の先輩が登場。

一夏、セシリア、俺と並び写真を撮るが一組のクラス写真となったこのパーティーは十時過ぎまで続いた。

 

 

翌日…

「転校生? 今の時期に?」

朝、席に着くとクラスメイト達がなにやら話し中、その中には一夏、箒、セシリアもいる。

大まかな流れを聞くと……。

転校生は中国の代表候補生。そして、来月のクラス対抗があるとの事。

 

何故、女子のみなさんが燃えるのは優勝商品が学食デザートの半年フリーパスが配られるからだった。

がんばれイッチー、明日は明日の風が吹くさ……。

 

「今のところ専用機を持ってるクラス代表って一組と四組だけだから、余裕だよ」

「――その情報、古いよ」

教室の入り口からふと声が聞こえた。全員がその方向を見るとツインテールの女子生徒が腕を組み、肩膝を立ててドアに持たれていた。

「二組も専用機持ちがクラス代表になったの。そう簡単には優勝できないから」

俺も含むクラス全員が呆然としていたが、一夏は別の意味で驚いていた。

「鈴……? お前、鈴か?」

「そうよ。中国代表候補生、凰鈴音。今日は宣戦布告に来たってわけ」

「何格好付けてるんだ? すげえ似合わないぞ」

「んなっ……!? なんてこと言うのよ、アンタは!」

こいつは驚いた。噂の転校生さんは一夏の知り合いか…これはなかなか…………?

「リンちゃん…」

「なによ!?」

スパーン!

聞き返した鈴って子に痛烈な打撃音が入る。

大きなハリセンを持った女子生徒がそこにいる。

「リンちゃん…朝来たら職員室で待ち合わせって言ったのにここで何を油売っているのかな~?」

「ゆ、ユリ、アンタそのハリセンどこから出したのよ…?」

ユリと呼ばれた女子生徒は微笑みを浮かばせてはいるが凄い威圧を感じる。

「気にしたら負け。さあ先生が待っているから行くわよ」

「あててて~耳を引っ張るのはやめなさいよ! またあとで来るからね!逃げないでよ、一夏~!」

「さっさと来る!」

「だから耳を引っ張らないでぇぇー!」

「どうも、お騒がせしました 失礼しま~す (ニコッ)」

「!?」

二人が去り、教室のドアがゆっくりと閉まる。

しばらく一夏に質問集中放火、織斑先生の登場により鎮圧、今日も一日が始まる。

(あいつ…まさか!?)

だが、俺はユリと呼ばれた少女の見せた笑みに一抹の不安を感じるのだった。

 

 

昼休み、一夏らクラスメイト数名と共に学食へ向かうと

 

「待ってたわよ、一夏!」

 

どーん、入口で待ち構えた噂の転校生、凰鈴音がいた。その隣にはユリと呼ばれた少女――

朝からの会話からクラスメイトなのだろうか一緒にいる。

それから各々頼んだ昼食を持ち、テーブル席に着く。

因みに俺は一夏の右隣、反対側には鈴とユリが続き座る。

「鈴、いつ日本に帰って来たんだ? おばさん元気か? いつ代表候補生になったんだ?」

「質問ばっかりしないでよ。アンタこそ、なにIS使っているのよ。ニュースで見たときびっくりしたじゃない」

「まあ、色々あったんだよ。 所でそっちにいる子は?」

と改めて彼女の姿を見て確信した……ここで再会するとな…

「私は月彩百合。よろしく♪」

 

月彩百合、本当の名は「綾月百合」俺の妹だ…

 

月彩という苗字はもともと俺が偽名用に考えた名称である。単純に「あや」「つき」を入れ替えただけだ。

 

だが、こいつが名乗るとどこかのプリティなキュアな一人っぽくなるのは気のせいか?

 

「リンちゃんとは転入の受付場所を案内した時に知り合い、後にクラスメイトだって事がきっかけで友達になったんだ」

「へぇ~鈴にとってはIS学園での友達第一号って訳か?」

「まあ、そんなとこね……。」

 

ユリ――もとい百合を見る一夏に鈴は唇を尖らせて答えるが、一夏には気付いてない。

「それと一年二組の初代クラス代表と追記でよろ~♪」

「んなっ、何余計な事言うのよ、百合!? 一夏も変な目で見ないの!! 誤解しないでよ、私は『クラス代表譲って』ってお願いしただけ、それに百合はちゃんと承諾したわ」

 

「本当か…?」

一夏の若干冷たい視線に鈴が慌てて否定する。

「ISのアームをかざすあれがお願いなんてひどい、ひどすぎるわ!あんまりよ!」

その様子に百合はヨヨヨと嘘泣きをしてさらに追記。

「ア・ン・タ・ねぇ!!」

「一夏、そろそろどういう関係か説明してほしいのだが」

「そうですわ! 一夏さん、ま、まさかこちらの方と付き合ってらっしゃるの!?」

そこへ疎外感を感じたのか、箒とセシリアが多少刺のある声で訊いてくる。

他のクラスメイトも、興味津々とばかりに頷いていた。

 

まあ、答えはあっさりと『ノー』

一夏の説明から、小学校四年生の時に箒が引っ越し、五年生の時に鈴が転校、中学二年に帰国と合うのは一年ぶりだという……

さしずめ、箒はファースト幼なじみ、鈴はセカンド幼なじみとのこと。

箒と鈴が火花を散らすなか、セシリアが割り込むが『興味ないし』と一言。

あぁ、セシィ……不憫な子

あ、ようやく言えたよ、セシリアの心のあだ名。

それから、火花は激しくなる。

クラス代表となった一夏のIS操縦を教える事に、関係あるかないかと揉めている。

 

 

「やっと話せるわね…将」

いつの間にか食事を終えたのか百合が後ろから声が掛かる。

 

「……正直驚いている。お前がこの世界にいるなんてな」

「探すのに苦労したわよ……お蔭で頭下げてまでお父様の力を借りて来たんだから」

「よく協力してくれたな、『ゼウス』のとっつあんも……」

「将には『いろいろと苦労させてしまった』って、言ってた」

 

「そうか…」

 

「詳しい話をしたいんだけど放課後どう?」

 

「今日はイッチー達の訓練に参加するつもりだ」

 

実は前々から一夏に放課後の訓練に参加してほしいと何度も頼まれていた。

 

しかし、ロボマルス・Rの調子がどうも芳しくなく、一度戦闘してはメンテをする羽目になっている。

 

先生からあの格納庫で見つかったジャンクパーツを全部もらって、機体の強化を図っていたが

 

ISの知識がまともにない俺には悪戦苦闘の毎日だった。

 

だが、メカ知識豊富なうちの妹がいるなら、状況は良くなりそうだ。

 

「じゃあ、私も訓練に混ざらせて、それに噂のウサギロボくんにも会ってみたいしね♪」

 

「わかった放課後にな」

 

話を終えても、まだ喧騒を止めない一夏達を見守る俺達なのだった

 

一夏は助けを求めていたが……しらん。

 

 

 

 

放課後

予告通りに百合が出迎え移動、途中で受付に寄り道をした後、第三アリーナに立っている俺とロボまる。

少し離れた所で、一夏がセシリアからIS操縦を教わっているが、ここに予想外のニューカマーに驚いた。

「な、なんだその顔は……。おかしいか?」

「いや、その、おかしいっていうか――」

「篠ノ之さん!? ど、どうしてここにいますの!?」

一夏とセシリアの前にいるのはなんと箒。しかも、日本の量産型IS『打鉄』を装着展開している。

「どうしても何も、一夏に頼まれたからだ」

確かにあったが、それはいつの話だっけ?

「前々から申請していたのが、ようやく許可が下りた。それに、近接格闘戦の訓練は足りていないだろう。私の出番だな」

これも確かに、格闘戦が得意ではないセシリアより箒の方が効果的だ。

「くっ……。まさかこんなにあっさりと訓練機の使用許可が下りるだなんて……」

悔しそうな顔をするセシリア。

まあ、ちょっと落ち着いて……

「では一夏、はじめるとしよう。刀を抜け」

「お、おう」

やる気満々だな~!

すらりと抜かれた実体剣を箒。対して、一夏は雪片弐式を構えた。

「では、参るっ!」

しかし、ここでつんざく声が割り込む。

「お待ちなさい! 一夏さんのお相手をするのはこのわたくし、セシリア・オルコットでしてよ!?」

ブルー・ティアーズを展開する否や箒に真っ向から対峙するセシリア。

どうしようか迷う一夏に二人はどちらが先にするか聞いたがどっちでもいいと答えたお陰で二人とも同時に相手する事となった……。

 

「お待たせ~」

一夏達の騒ぎを見守っていると後ろから声が掛かり、振り向くと百合がそこにいる。

それに彼女もまた、打鉄を装着展開していた。

「何かあったの?」

「毎度のゴタツキだ……」

示した先では一夏対箒&セシリアの変則マッチが繰り広げられていた。

あららと言った表情になり、しばし、

 

考えるとこっちに向いてこう聞いてきた。

「これで止める?」

と、彼女が唐突に取り出したのはなんと『しゃもじ』……。

ご飯とかをすくうあのしゃもじ、しかも木製……。

俺の知らない時に何があった?

「いや、今日はほっとこ、俺達は俺達でやることあるだろ?」

「そうね。じゃ、始めようか?」

ニッっと笑みを見せる俺達は互いに距離をとって構えた。

 

「君がロボまるだね。うちの将にいが面倒かけてごめんね」

 

「い、いえ。むしろお世話になってるのはボクの方です。百合さん」

 

「うん…ホント、いい子だわ。誰かさんとは大違い…くすん」

 

「口にしていう事かそれは!? 行くぞ、トランスコード…ロボマルス!」

 

ロボマルス・Rを装着した俺は腕部に内蔵されているビームソードを展開する。

百合も先程の箒が展開した同じ近接ブレードを握られている。

「カウント三秒前、スリー!」

「ツー!」

「ワン!レディー……」

「ゴォォォ―!!」

 

お互いのブースターが点火。距離は一秒と掛からずに近づく。

百合の袈裟斬りに俺はビームソードで受け流す。

この動きは予測していたのだろう、右にステップして、横斬り。斬り上げ、肘打ちに蹴りと頑丈な打鉄の活かした連続攻撃を仕掛ける。

 

頑丈の良さはこちらに分があるが、あいつの方が相当手馴れている。

俺よりISを使いこなしているんじゃないのか?

何にしても、このままじゃエネルギー切れになるのは時間の問題、射撃武装が使えれば手の打ちようがあるが……。

「どうしたの?まさかそれで全力とは言わないでよね?」

考えてる中、百合の判りやすい挑発、受ける気は無いがこのままやられっぱなしなのも気に入らない。

それに、向こうでエキサイトしていた一夏達がこちらを見ているしな……。

「当然だろ、ここからが本番だ!!」

ロボマルス・Rの持つ全てのブースターノズルを一点に収束。

溢れ上がったエネルギーで空に舞い、百合に突撃

 

今の俺に放てる最大の決め技はこれしかない!

 

『フォース&フォース、セット!!』

「竜・神・掌!!」

ビームソードを解除し、グワッっと俺の右腕から竜を型どった光が百合に炸裂、アリーナの端に弾き飛ばす。

かろうじて起き上がるがシールドエネルギーが限界を越えて機能停止。

急いで彼女の元に俺は向かった。

「ふぅ~ここまでみたいだね…」

「攻撃をした俺がなんだけど、大丈夫か?」

「あはは、打鉄はちょっとダメージを受けすぎちゃったけど…」

苦笑いを浮かばせて答える百合。

そうだった…彼女のISは借り物、俺が放った決め技《竜神掌》で装甲にかなりの凹みが多々あった。

「将にい…お願いがあるんだけど…」

「あ~だいたい察した。それにイッチー達とこに戻らないとな」

「そうだね、さっきから私達を見てるし……」

百合の示した方向には一夏達三人がこちらを見ている。

「戻るか?」

「うん」

そして、俺達は一夏達の元へ向かうのだった……。

 

百合と共に一夏達の所へ戻ると、案の定質問ラッシュ、

特に竜神掌の存在に驚いていた。

対セシィ戦では、エネルギー不足で使用不可だったと言って納得してもらい、一夏のトレーニングが続行する。

時間一杯となり、今日は解散した今。

俺とロボまるに一夏は、アリーナの更衣室にいる。

「じゃ、イッチー俺はヤボ用があるから、先に行くぜ?」

「ああっ、またな」

 

「お疲れ様です」

と、更衣室を後にし歩いていると見覚えのあるツインテールが歩いてきた。

「あっ、アンタ確か百合の言っていた。綾月……だっけ」

「そう、綾月将。将でいいよ。それに相棒のロボまる」

 

「ロボまるです、初めまして。よろしくお願いします、鈴さん。」

 

「鈴さんって、ちょっとこそばゆいわね、あんた見た目派手なのに随分礼儀正しいのね?」

 

「そうですか?」

 

「因みに俺も鈴と呼ばせてもらうけど、いい?」

「別にいいわよ、あたしも『将』に『ロボまる』って呼ぶからよろしく♪」

「OK、で…何か用事……というのは愚問だったかな…?」

ちょっと意地悪に聞くと鈴は手に持っていたタオルとスポーツドリンクの容器を後ろに隠す。

「な、なによ!あたしがどうしようとアンタには関係無いでしょ!?」

「確かに俺には関係ない話。イッチーならまだ更衣室で休んでるから早く行ってあげなよ~」

「そ、そう…」

「じゃ、俺達は急ぐからじゃね!」

そのまま俺達は入り口に向かうが……。

振り向いて…

「いい結果だったら、お兄さんに報告してくれると嬉しいな~♪」

 

ボッ!

「な、何で会ったばかりのアンタに報告しないといけないのよ!?」

 

見事な赤とツッコミを見せる鈴に俺は笑いながらアリーナを後にするのだった。

 

寮の部屋、時刻は八時前。

俺は百合を部屋に招き入れる。

「わ~結構いい部屋じゃない」

百合が部屋に入り、はしゃぎながら辺りを見渡す。

部屋に呼んだのは無論、これからの事を話すためである

「そこのソファで楽にしてくれ、お茶淹れるから」

「お構いなく~♪あっ、デザートがあったらちょうだい」

ちゃっかり要求してるじゃあねえか!

とツッコミは置いておき、俺はお茶の用意をする。

さらに今日はあるものがお茶請けに出来る。

数分後、ロボまるがお茶を淹れた湯呑みを、俺は小皿を置く、皿にはあるお菓子が乗っている。

「あっ、ごま団子だ」

「苦手だったか…?」

「まっさか~ また将にい印の手製が食べれるって、ひそかに歓喜してただけ」

「なんだよ、ひそかにって…」

 

「いっただきま~す♪」

と、竹のつまようじで一つ刺して食べようとすると……

ガンッ!

何か鈍い音が聞こえた。

「どうかした?」

ごま団子を一つ食べて聞いてくる百合。

これからの話を考えるとちょっと気になるな……

「ちょっとスマン…」

「うん、いってら~」

トイレと勘違いしたようだが、まあいいか。

廊下を出て、辺りを観察するが特に変な感覚はない。

部屋に戻ろうと振り向いた瞬間……。

ドッスン!!

「どわっ!?」

「きゃ!?」

 

俺の背中に誰がぶつかり互いに倒れる。一体何が?……と相手を見てみると、そこには鈴がいたのだった。

「鈴じゃないか、どうしたのそんなに慌てて?」

「べ、別になんでも無いわよ……!」

起き上がる彼女は強がった態度で答えるがどこか元気がない。

「俺にはなんでもない顔に見えないけど、一体何があったのさ…?」

「アンタには関係ない話よ、放っておいて!」

そう言って、床にあったボストンバックを掴み、立ち去っていく

だったが……。

 

ビュン!

 

スコーン!!

「にゃ!?」

 

何かが俺の頬を横切り、鈴の頭に命中する。

そして、跳ね返って落ちたのは……。

 

『なんでやねん!!』

 

 

 

と書かれたしゃもじでした。

 

オウッ!シャモ~ジ

 

 

 

 

「どう?少しは落ち着いた?」

「う、うん……」

と、場所は俺の部屋に戻り、今ソファには百合と鈴が座る。

因みに俺はキッチンで追加のごま団子を加熱中、察しのいい人は気付いているかもしれないけど…あのしゃもじを投げたのはうちの妹、百合だ……。

アリーナで『止めます?』と聞いて取り出したしゃもじをああ使うとはたまげた~

 

 

そう言えば、鈴が転校した日にハリセン持ってたしな~。

ツッコミキャラ・ユリさん…?

ツッコミユリちゃん?

ゆりっユリにして……

 

「将、今失礼な事考えてない?」(スチャ『いてまうでぇ~!!』)

「い、いやいやいやいやいや、考えてないよ気のせいアルヨ~!」

そして、鈴は俺と百合にさっきの事でいきさつを話す……。

発端は鈴が一夏と箒の部屋に押し掛けて、自分と代われと言い出したのだ。

突然の行動に箒は当然の異論をする。

だが、こんな話に泣いてまで怒る理由がわからない、それは次に話した内容だった。

昔、一夏とある約束を交わしていたらしい。

『鈴の料理の腕が上がったら毎日、酢豚を食べてくれる』

との事……つまりこれって?

 

「それを、あのバカ一夏は『おごってあげる』よ!? 意味が違うのよ意味が!! くぅ~!今でも思い出したらむかついてくるわ!」

 

まあ、確かに非は一夏にあるかもしれないけどさ…。

酢豚でそんな約束されたら複雑過ぎだぞ……。

ほら、百合も苦笑しているじゃないか…

「で!これからどうしたいの?」

「もちろん謝らせるに決まってるじゃない!!」

「それで、全て解決出来るの…?」

「それは……」

百合の真剣な眼差しに鈴は視線を下に落とす。

「織斑君が恋愛に鈍いのはどうしようもないけど…リンちゃんも意固地になっていたら、いつまでたっても幼なじみ以上の関係になれないよ…それが嫌だから、ここにいるんでしょ?」

その言葉に鈴はコクリと頷いた。

「だったら、まずは仲直りしないと……ね♪」

「そうそう、俺達も手伝うからさ。これでも食べて明日、頑張ろう」

そう言って、鈴の前に温め直したごま団子を差し出す。

 

「そうですよ、『諦め』と『ハチナ・ノビオ』は悪い方がいいんです!」

ロボまる、それはどこから出てきた話だ?

「百合、将、ロボまる……ごめん」

「謝る必要なんてない、私達親友でしょ?」

「うんうん、困った時は助ける理由には十分」

「あれ。将達はそうだったっけ?」

「ちょ…!?ここまで話しておいて俺達だけ仲間外れ!?」

「それはあんまりですよ~!」

「リンちゃんどうする?」

「う~ん。どうしようっかな?」

「そ、そんな~!あんまりだ…」

がっくりとうなだれる俺達を二人は笑う、女の子のパワフルさには参ったね。

それから、三人でごま団子を平らげ、それぞれの部屋に戻る。

それと、百合の話はまたの機会にすると約束した。

翌日、生徒玄関前にある掲示板に表示された。

表題は『クラス対抗戦日程表』。

一回戦の対戦カードは一組と二組、つまり……一夏と鈴である。

 

Next…




一夏と鈴の約束の誤解は一向に良くならずに

クラス対抗戦の日を迎えた。

だが、思いもよらぬ流れとなった

次回 EP7 再動・時の旅人

立ちはだかる脅威に、旅人は鎧を身に着ける

「俺はシオン、『ファルシオン・エデンシス』……時の旅人だ!!」

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