ブラッドロード~紅き雪が積もる道~   作:橘田 露草

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ぶらばんわ~!(^◇^)
くーさんこと露草です。

挿絵をやってみたいなぁと思うのですが、僕ってなかなかの画伯なんですよね~(^^;
中学生の時、あまりに絵が酷過ぎるからクラス唯一の赤点という(笑)
この前、某テレビで絵心のやつをやってたのですが、明らかにその人たちより僕の方が下手だと思います(>ω<)

そんな思い出話でした(笑)

では、「ブラロー」9話スタートです(*^^*)



第9話   涙も痛みも星へと変わる

霧雨から連絡があったのは、観光を終え家に帰った時のことだった。

電話に出た初雪は明日の集合時間と場所を聞き電話を切る。

 

「はぁ……。」

 

待ち受けに戻ったスマホを見つめ、ため息をつく。

顔を上げると目の前には、さっき買ってあげたアンズ飴をなめる透葉と眠そうな壱夜がいた。

何かを察したような壱夜に対し、透葉は不思議そうに初雪を見る。

初雪は透葉に伝えるのを躊躇った。

電話の内容は少女にはあまりに残酷過ぎたからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

音越町の西側。

長年住んでいる初雪ですらあまり来ないここは比較的貧しい人が多いところである。

公園には、ホームレスが段ボールやブルーシートで作った家を建てている。

そんなところにある共同墓地。

墓参りの季節でないためか、ほとんど人はいない。

そんな共同墓地の一角、身寄りのない人用の墓が連なる場所。

初雪たちは1つの墓の前に立っていた。

 

『姫乃楠葉、ここに眠る』

 

墓に刻まれていたのは手紙にあった透葉の兄と思われる名前だった。

うっかりすれば見逃してしまいそうなほど小さな墓だ。

だが周りの墓とは違い、お菓子や花が飾られていた。

 

透葉はそんな墓の前に無言で突っ立っていた。

いつもの無表情は感情を示さない。

 

「4年前……だね。生まれから逆算すると享年は26歳だったみたい。」

 

墓の横の生没年を読んでいた初雪が言う。

さすがにいつもの白衣は脱ぎ、腕にかけている。

少し離れたところでは、木に寄り掛かった壱夜がいる。

彼は、いつものコートを着たままだ。

 

「……ハツ、イチ。」

「うん?どした透葉ちゃん?」

「……何だ?」

 

ぼそっと呟く透葉に、初雪と壱夜は答える。

 

「わたし、兄さんのこと何にも知らなかった。」

 

今度は何も返さない。

透葉は返事を求めていない。

 

「何も知らないから他人と変わらないのに。」

 

わずかに震える肩。

そしてその時が来た。

 

「なのに……なんで悲しいの?」

 

こちらを振り向く透葉。

その両目からは、大粒の涙が零れていた。

初雪が少女の頭を撫でる。

 

「ごめんね。僕にもわからないよ。」

 

初雪はその答えを持ち合わせていない。

なぜなら初雪もまた家族はいないから。

母親が亡くなった時は生まれてすぐだった。

5年前父親も病死した時には、不思議と悲しくは感じなかった。

初雪と透葉は同じ立場のようで全く違ったのだ。

 

「悲しい……悲しいよハツ。」

 

初雪に抱き着く透葉。

初雪は何も答えない。

ただただ彼女を抱きしめる。

 

「兄さん……!お兄ちゃ……!」

 

壱夜はそんな2人を黙って見ていた。

彼もまた彼女を救うことはできない。

顔を見上げ、雲1つない空を見つめる。

 

 

「うわぁぁぁぁぁ!!」

 

堪えきれずあげた透葉の慟哭は、真っ青な空に吸い込まれていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

透葉の涙が落ち着いた頃、墓地の入り口から霧雨が入ってきた。

後ろには、初老の男性が1人いる。

初雪が軽く手を振ると、霧雨も返してきた。

 

「ごめん遅くなっちゃった。透葉ちゃん大丈夫?」

「……うん。」

 

初雪が答えるよりも先に嗚咽交じりで答える透葉。

お礼を言い、初雪から離れる。

そんな様子を見て、霧雨は後ろの男を見た。

 

「こちらは楠葉さんと仲が良かったという。」

 

男が軽く礼をする。

彼は透葉を見て驚いた顔をする。

 

「こりゃあ……楠葉くんとそっくりだ。」

 

そして、ニコッと笑った。

男は物腰が柔らかく優し気だ。

 

「……兄さんはどんな人だったんですか?」

「そうだねぇ、とにかく優しい人だったよ。前に私が病気になった時には、徹夜で看病をしたくれて日雇いにも代わりに行ってくれたんだ。そしてもらった給料は全部僕にくれてね。」

 

それから彼による楠葉の話は続いた。

姫乃の家を出た楠葉はこの街に住むことにした。

だが、着の身着のまま来た彼は男たちとともにホームレスとして公園で暮らしていた。

彼が半獣だと知った時にはとても驚いたが、それでも彼の善行を曇らすことにはならなかった。

半獣とは思えないほど人のために生きた楠葉は死んだ今となってもみんなから愛されている。

墓にあったお菓子や花は、近所の人や楠葉に世話になったホームレスたちが置いていったのだ。

 

「楠葉さんは死神に殺されたのですか?」

 

男の話がひと段落した頃、初雪が尋ねた。

男は一瞬顔をこわばらせた後、静かに頷いた。

 

「4年前、私と楠葉くんは病気の子供に付き添って東京の病院まで行ってたんだ。退院祝いのためにケーキを買いに出かけた彼……それが生きている楠葉くんを見た最後だった。」

 

男は顔をしかめて話す。

当時のことを悔やんでいるのか。

 

「国家警備局の連絡を受けたのは明け方だった。慌てて警備局に行くと無残に切り刻まれた彼がいた。」

 

話を聞き、また泣きそうになる透葉。

だが、涙は堪えた。

男の話は続く。

 

「彼を発見した警備局の人が言うには、彼は写真を握りしめていたらしい。」

 

男は、胸ポケットから1枚の写真を取り出す。

そこに写っていたのは。

 

「わたしの……写真。」

 

写真には、少年と赤ん坊が映っていた。

透葉の祖母が撮ったのだろう。

少年は赤ん坊の手を握り、にっこり笑っていた。

 

「暇さえあればこの写真を見ていたよ。」

 

男も顔をほころばせる。

 

「彼が言っていたよ。『俺の大事な妹です。できればもう一度会いたいな。』って。」

 

懐かしいことを思い出し、笑顔になる男。

結局、楠葉の夢は叶わなかった。

せっかく会えたのに、彼は墓の下だ。

でも。

 

「よかったね、楠葉さん。透葉ちゃんに会えたよ。」

 

初雪がそう言うと、墓地にはまた小さな嗚咽が響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夜中の歩積邸。

墓地から帰った初雪はリビングでお茶を飲んでいた。

壱夜は昨日とは違い日本酒を呷っている。

 

「そうだったんですか……。透葉さんのお兄様とてもいい方だったんですね。」

 

初雪から墓地での話を聞いた鈴音がそう呟く。

紅茶のポットを胸で抱きしめ、悲しそうな顔を浮かべる。

 

「うん。生きていたら一度話してみたかったね。」

「あはは、初雪さまにそっくりですもんね。」

 

悲しみを吹き飛ばすように笑う鈴音。

リビングは落ち着いた雰囲気が流れていた。

透葉はこの場にはいない。

移動に加え、あれだけ泣いたからか熱を出してしまった。

珠も看病で透葉についている。

 

「透葉さん帰るって言ってました。」

「帰るってどこにだよ?ばあさんも死んで1人なんだろ。」

 

鈴音の呟きに壱夜がぶっきらぼうに返す。

恐い壱夜が苦手な鈴音だが、わざとそういう態度をしていると気づき、思わずくすっと笑ってしまった。

 

「遠い親戚が引き取ってくれるそうです。会ったことはないみたいですが、半獣にもそれなりに理解がある人みたいです。」

「どうだか。奴隷として扱われるんじゃないか。」

「神薙さま!!」

 

壱夜の軽口に注意する鈴音。

そんな2人に対し、初雪は黙ってお茶をすすっていた。

壱夜が初雪の方を向く。

 

「とりあえずこれで兄貴探しは終わりだよな?」

「ん?ああ、そうだね。壱夜くんにはお世話になったね。」

「まったくだ。礼に今日は部屋を貸してもらうぞ。」

「構わないよ。鈴ちゃんお願い。」

「あっ、はい!」

 

部屋を出ようとする壱夜を慌てて追う鈴音。

 

「客室の用意を」

「気を付けろ。」

「……え?」

 

急に立ち止まった壱夜は小声でそう言った。

 

「あいつはまだ何かする気だ。」

「な、何かって……?」

 

壱夜の言葉に鈴音は戸惑う。

壱夜の言っている意味がわからない。

 

「あいつは昔から無茶をするやつだ。自分が傷つくだけなら自己責任だが。」

 

そこで言葉を切り、後ろを一瞥する。

ふん、と鼻を鳴らす。

 

「迷惑を被るやつのことを考えない。少なくとも僕は巻き込まれたくないな。」

 

そう言って歩き出す壱夜。

鈴音は後ろを向き、ドアの小窓からリビングを見る。

 

さっきと変わらずお茶をすする初雪。

だが、その目は違った。

数年前、鈴音も見たことがある鋭い目。

初雪が何をするつもりなのか、それは長年一緒にいる鈴音にもわからなかった。

 

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