ブラッドロード~紅き雪が積もる道~   作:橘田 露草

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ぶらばんわ~!(^◇^)
くーさんこと露草です。

報告です!(*^^*)
第1話の獣・半獣の説明部分に追加修正しました。
活動報告のキャラプロにも書いてあるので読んでいただけたら~と思います。

では、「ブラロー」5話どうぞ!(≧ω≦)


第5話  めんどくさがりの少年

東京の中心部にある最新式の建物。

そこがガルディオス出現時の兵力のために作られた「国家中央警備局」だった。

警備局の役目は、獣・半獣に関連した犯罪を取り締まることだった。

そして、半分以上が学生というのが特徴だった。

 

その建物の3階廊下を1人の少年が歩いていた。

彼の名前は神薙壱夜(かんなぎ いちや)、19歳。

長い銀髪を後ろに1つに縛り、小さなヘアピンをつけている。

薄い緑色の目はだるそうに半眼に閉じられ、服もだらしなく着崩している。

もうそれなりに暖かいにも関わらず羽織っているコートからは、真っ白な刀が見え隠れしていた。

 

すれ違う局員も訝しげな顔で彼を見る。

制服でもスーツでもない以上、警備隊でもどっかのお偉いさんでもないだろう。

犯罪者であれば誰かついているだからそれも違う。

そんな彼がここを歩いているのは異様な光景だった。

 

そして彼は、1つのドアの前で立ち止まる。

『情報統括室』―――――彼の目的地だった。

ノックもすることもなくドアを開ける。

彼を見て中にいた1人の男が立ち上がった。

 

「か、神薙さん!?」

「久し振りだな、深谷。」

 

深谷と言われた少年が立ち上がる。

深谷恭平、22歳。

4年前、情報統括室に配属された若き局員だった。

壱夜は彼に小さく手を振る。

 

「霧雨……椎崎室長に呼ばれたんだけど、アイツは?」

 

奥にある鏡張りになった室長室をちらっと見るが、本来その席の持ち主はいなかった。

 

「室長ならさっき……。」

 

と、恭平が何か言おうとしたその時。

 

「いっく~ん!!」

 

壱夜の背中に柔らかい衝撃が響いた。

 

「うがっ!?」

 

衝撃に突き飛ばされ、半開きになっていたドアに強か顔を打ち付ける。

壱夜は後ろを向き、自分に一撃を加えた彼女に怒鳴る。

 

「てめぇ、霧雨!?僕を殺す気か!?」

「うわぁ、元気だねぇ、いっくんは。」

 

壱夜の怒鳴り声も意に介さず笑顔を浮かべる少女。

長い茶髪に薄い赤い目。

スカート状の女子制服をひらひらとさせている。

そして目立つのは上の制服を押し返す大きな胸。

彼女こそこの情報統括室の室長の椎崎霧雨(しいさき きりさめ)だった。

 

「いっくんはやめろ!僕とお前はもうガキじゃないんだぞ!?」

「ガキだよ~。私はまだ16歳だし。」

 

そう、彼女はまだ16歳なのだ。

史上最年少・史上最短室長就任記録を大幅に塗り替え、さらに中学、高校を飛び級して卒業した彼女は見た目に反してかなり有能だ。

そのくせ、受験勉強を嫌がり大学進学はしなかった変わり者でもある。

 

「……胸は16歳とは思えねえのにな。」

「もうそれはセクハラだよ~。」

 

壱夜と霧雨は生まれた頃からの幼なじみだ。

最も、大出世している彼女に対し、壱夜は何でも屋という実質無職なのだが。

 

「で、用はなんだよ。僕を呼び出したってことは何かあるんだろ?」

「う~ん、暇だったから呼び出したっていうのは?」

「よし、帰る。」

「うわあ、うそうそっ!用があるから呼んだの!はい、こっち来て!」

 

本気で帰ろうとした壱夜を慌てて引き止め、奥にある室長室に引っ張る。

この部屋は防音になるのだ。

 

「で、何?僕忙しいんだけど。」

「暇なくせに~。」

 

勝手にお菓子を食べる壱夜に、苦笑しながら霧雨は1枚の紙を差し出す。

それを受け取った壱夜は怪訝そうな顔を浮かべる。

 

「これ警備局の資料だろ?部外者に見せていいのかよ。」

「幼なじみだからいいのっ!」

 

よくわからない理由を言う霧雨。

相変わらず適当なやつだ。

仕方なくその資料を見る。

 

「『死神事件』……?」

「知ってる?」

「今朝からニュースでやっているやつだろ。久し振りの登場だってネットでも騒然だぞ。」

 

そう言いながら資料をめくる。

間に挟まれていた写真を見て顔をしかめる。

 

「ひでぇな……。」

「これで8人目だよ。どれも見る影もないほど惨殺されている。」

 

発見された時には、鳥につつかれひどい状態だったようだが、それでなくても遺体はボロボロだっただろう。

 

「殺されているのが半獣(ハーフガルディオス)ばかりだから、ネットじゃ”半獣狩り”って正義扱いされているよ。」

 

眉を顰める霧雨。

半獣はガルディオスとは違い、生きる権利を得ている。

当然、殺害したら犯罪だ。

だが、世間はガルディオスへの恐怖から、半獣を見下し、人間扱いしていない。

半獣は殺されたところで『殺人罪』ではなく、『動物虐待』で裁かれるあたりその闇は深い。

 

「で、私たちが死神事件の担当になったっていうわけ。」

「は?なんで情報統括室が?これ対策室の仕事だろ。」

 

対策室ことガルディオス犯罪対策室は、ガルディオスに関する事件を取り扱う課だ。

情報統括室とは違い、武術に長けた人が揃っている。

普通ならそこで取り扱うべき事件だろう。

と、その時ドアを叩く音がした。

 

「はーい。」

 

霧雨が答えると、2人の少女が入ってくる。

紫の髪をした少女と白髪の少女だ。

どちらもまだ若く、白髪の少女に至ってはまだ小学生ぐらいだろう。

紫の少女も霧雨と同じぐらいに見える。

 

「失礼します、椎崎室……申し訳ありませんお話し中でしたか?」

 

紫髪の少女が壱夜を見て霧雨に謝る。

白髪の少女もそれに倣った。

そんな2人に霧雨は手を振る。

 

「大丈夫だよ、黒川さん。資料の返却?」

「はい、お借りしていた資料とをお返しに来ました。後、報告書のサインをお願いします。」

 

黒川と呼ばれた少女は、手に持っていたファイルと一枚の書類を霧雨に渡す。

 

「はーい、受け取りました。2人とも怪我しなかった?」

 

書類を読みながら2人に話しかける。

 

「大した敵ではありませんでしたから。私も稲村もそれなりに強いですし。」

「あはは、そうだね~。」

 

黒川の軽口に笑顔で返す霧雨。

と、さっきから喋らない白髪の少女に顔を向ける。

 

「稲村さんは?」

「ふぇ!?あ、えっと、ボク……じゃなくて私も大丈夫です!」

 

慣れないことに緊張しているのか稲村は慌てて答えた。

と、黒川は黙って資料を読んでいる壱夜の方を見る。

 

「ところで、椎崎室長。あの方は?」

 

資料を読んでいるということは霧雨の関係者だろうか。

壱夜が部外者だと知らない黒川はそう思った。

 

「うん?ああ、あの子は神薙壱夜くんだよ。私の友達!」

「と、友達ですか?」

 

思ってもいない言葉に面食らうも、いつもの霧雨の冗談だろうと壱夜に向き直る。

 

「対策室所属の黒川咲です。……ほら雪希。」

「あっ!えっと、ボクは稲村雪希です!」

 

2人はしっかりと挨拶したが、壱夜は無視した。

その態度に黒川咲はイラっとする。

怒気を孕んで、壱夜に一歩踏み出す。

 

「あの……!」

「あーはい!書けたよ黒川さん!」

 

一触触発な雰囲気に慌ててサインを終えた書類を渡す。

 

「……ありがとうございます。失礼します。」

「あっ、咲さん!し、失礼します!」

 

書類を受け取り、不機嫌そうに室長室を出ていく黒川咲。

置いてけぼりになった稲村雪希も慌てて追う。

2人が出て行った後、霧雨はため息をついて壱夜を睨んだ。

 

「もう、いっくん!」

「……あんなガキも対策室か。」

 

怒ろうとした霧雨だが、壱夜の言葉を聞いてため息をついた。

 

「……仕方ないよ。”力あるものはガルディオスと戦え”それが政府の決めたことなんだから。それがどんな子供であっても。」

 

半世紀前、ガルディオスが人類を大量殺戮した時、日本政府は政府は少しでも腕の立つものを徴兵し戦った。

家族のいる大人も未来ある少年少女も武器を持ち、その結果たくさん死んだ。

今でこそ、核の使用と一般人が武器を持つことは禁止されたが、ガルディオスに家族を殺された恨みで警備局に入った子供も少なくないのだ。

そして、彼らもまた武器を手に取る。

彼らが死んだらまた復讐の連鎖が生まれると気づかないのだ。

 

「……ごめん暗くなっちゃったね。どこまで話したっけ?」

「情報統括室が担当になったってところまでだろ。」

「ああ、そうだったね。」

 

さっきまでの暗い雰囲気を打ち消すように霧雨はいつもの笑顔に戻る。

 

「正確には半獣の発見、警護かな。対策室はウチと違ってそこまで把握してないし。」

「……ったく、対策室の名が泣くな。」

 

頭を抱える壱夜。

要は、犯人の確保は対策課がやるから、情報統括室はこれ以上事件が起きないようにしろというわけだ。

もしもこれ以上事件が起きれば間違いなく情報統括室に押し付けるだろう。

若くして出世した霧雨には身内にも敵も多い。

最も、彼女はそんなことには興味がないようだが。

 

「で、とりあえず半獣をピックアップしていたんだけど、それで気になる名前を見つけてね……。」

 

新たに霧雨の渡した2枚の書類を渡す。

受け取った壱夜が見ると、両方とも戸籍のようだった。

鈴音という少女と、珠という女性だ。

 

「いい女だな。」

「えっ、いっくんロリコンだったの……?」

 

壱夜の言葉に本気でドン引きする霧雨。

 

「ガキじゃねぇよ!こっちの女だよ!」

 

壱夜はどちらかというと年上好きだ。

若干年下はともかく、幼女に興味はない。

 

「もうっ、そっちじゃなくて保護者の欄だってば。」

「あぁ?ったく。」

 

霧雨に促され保護者の欄を見る。

そして。

 

「……は?」

 

思わず間抜けな声が出た。

霧雨の方を見ると、彼女はすでに外出の準備をしていた。

そしていたずらっぽく笑った。

 

「久し振りに会いに行ってみない?」

 

そこに書かれていたのは、歩積初雪―――――。

壱夜と霧雨の小学校時代の同級生の名前だった。




明日も同じ時間に更新しますよ~(^◇^)
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