東方縁伝   作:OFF豚骨

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八雲家のお話。
タイトルから分かるようにあの娘が登場します。


新たな家族

今日は珍しく藍に付き添い幻想郷中を歩いてる。何でも紫から式を持つ許可を得たそうなので探しに行くとか。多分(ちぇん)を式にするんだろうがあえて何も言わない。ただ付いてくだけにする。

 

「やはり中々私の式に合うような強い妖怪は居ないな」

 

藍はそこら辺から漂う妖気を片っ端から探り見にいく。目に止まった者には藍が戦って強さを確かめている。だが未だに藍のお眼鏡に叶う妖怪は出ないらしい。

 

「適当にそこら辺の猫とかで良いんじゃないのかなー?」

 

私は近くに居た黒猫を指差して言った。これで橙が見つかれば、即式にして幻想郷巡りは終了だ。

 

「ふざけてるのか?八雲の名を持つ私が低級の妖怪どころか普通の猫を式にするなど笑い者だろう」

 

まぁそうだろうね。でも原作では橙を式にしてるしなぁ。一体何があったら低級妖怪の化け猫を式にしようと思うのか。

 

「誰かー!その猫捕まえておくれ!」

 

私達が式を探す為に妖怪の森に入ろうとしていた所に奥から山姥(やまんば)の妖怪が二股の尻尾の化け猫を追っかけてこちらに向かって来ていた。藍はその猫をヒョイッと捕まえ、私達の前まで来た山姥に渡した。

 

「これは九尾のお狐様。ありがとうごぜぇます」

 

山姥は藍にお礼を言って猫と魚を連れて行こうとしたが、その時に藍が声を掛けた。まさかあれが橙か?確かに毛並みも茶色にちょっと白が混ざっている。

 

「ここら辺で私の式に見合いそうな妖怪は居ないか?」

 

「九尾のお狐様にでごぜぇますか?それなら白狼天狗の方や烏天狗の方が良いんじゃごぜぇませんかね?あとは河童くらいでしょうかねぇ」

 

「そうか。呼び止めてすまなかったな」

 

山姥はこちらに一度頭を下げ去って行こうとする。猫助けないの藍!?橙かもしれないのに!なら私が!

 

「その化け猫はどうするんですか?」

 

「これでごぜぇますか?こいつは魚を盗もうとしましたから捌いてから煮て食おうかと」

 

それを聞いた猫が一生懸命抜け出そうと暴れ始める。

 

「その猫助けてもらえませんか?」

 

山姥は少し考え、ニヤリ笑い私に提案を出して来た。

 

「まぁ構いませんがねぇ、条件として天狗の集落にある酒を1つ取ってきてもらえませんかねぇ。ダメと言うのならこの話は無かったことにしましょう」

 

私が『わかりました』と返事をしようとすると藍に止められた。

 

「こちらに得が無い。それに天狗の集落に許可無く入れば敵と見做され天狗達の総攻撃を受ける」

 

た、確かに。でもあの猫は橙かもしれないし・・・

 

「必ず持ってきます!」

 

私はそう山姥に言い放ち、山を駆け上り始めた。山姥がこちらに向かって『期限は日没まででおねげぇしますよー!』と叫んでいる。私は短く返事をしてどんどん登る。

 

「縁、止めろ!たかが化け猫一匹の為に無茶をするな」

 

そう言うと藍は私の隣まで来て私を止めようと回り込んできた。これは藍の為にやってることなのにぃ。屁理屈を言って無理矢理押し通すしかないか。

 

「藍は化け猫一匹救えない者が式を持てると思ってるんですか?」

 

藍は『何!』とこちらに少し怒りを向けてきた。ここで怯んではいけない。私は勇気を出して言葉を続ける。

 

「紫様は私の様な半妖を式にしていますよね?でも私が死にそうになった時はいつも助けてくれる。藍は自分の従者が強くないと守れないほど弱いのですか?」

 

その言葉に藍は少し考え『戦闘になりそうならすぐに帰るぞ?』と言って天狗の集落に行くのを許可してくれた。まあ前にも天狗の集落行ったし顔パスで何とかなるかも?

 

 

とか考えてた自分が憎い。天狗の集落の近くまで来たところで白狼天狗達に止められた。酒を買いたいから入れて欲しいと頼んだが頑なに拒否。これは無理そう。藍には悪いが強行突破しかないかな?

 

「あれれぇ?珍しい人達が来てますね〜」

 

集落の方から烏天狗が一匹やって来たと思ったら射命丸だった。ラッキー、これで通れるかもしれない。

 

「というわけです。射命丸さんの口添えで何とか入れてもらえませんか?」

 

射命丸はわざとらしく『うーん』唸りながら考え込んでからダメだと言ってきた。酒買うだけだし良いじゃん!入れてよ!

 

「残念ながら天狗は縦社会ですからねぇ、私なんか諜報部の下っ端ですから何とも」

 

そう言いながらふと閃いたように射命丸が提案を出して来た。

 

「1つ方法がありますが、私のお願いを聞いてくれませんか?」

 

またか。だがもう何でも来い!全て叶えてやる。

 

「噂の縁さんのメイド姿を今度撮らせてもらえればお通し出来るようにしましょう」

 

な・・ん・だと?

 

私にとって一番恥ずかしい格好をこのゴシップ記者に撮らせろだと?そんなことしたら文々。新聞から週刊文々。に格上げされちゃう!絶対やだ。と言いたいところだが、これは藍の為であり橙の為でもある。ここは大人になろう。

 

「い、いいですよ?」

 

それを聞いた射命丸が満面の笑みになり『ちょっと待ってて下さい』と言って集落の方に飛んで行った。そして何分かたったか?と思ったくらいに酒を持って戻ってきた。

 

「これが天狗秘蔵の酒の1つその名も『微風(そよかぜ)』です」

 

射命丸はどうぞと渡して来た。そして私はそれを受け取ると藍と共に駆け下り始めた。

 

「早く戻らなきゃ!」

 

藍は少し微笑み『お前は凄いな』と褒めて来た。別に運が良かっただけだ。全然凄くない。

 

私達が山姥と会った場所に戻るとそこには誰も居なかった。

 

「ど、どういうこと!?」

 

藍が少し考え、納得したように頷き私に説明し始める。

 

「奴は最初からお前が酒を持って来ることなど期待していなかったんだ。だから自分の巣に帰ったのだろう。」

 

「そんな、じゃあ猫は!橙は!」

 

「落ち着け、お前は良く頑張った。見ず知らずの下級妖怪の為に全力を尽くしたんだ。」

 

私はこんな事では諦めない!全力を尽くしたとか頑張ったって言葉は結果を出した者しか口にしちゃいけない!だって失敗した時のその言葉は自分に対する言い訳でしかないからだ。

 

私は必死に山姥の妖気を探る。今日初めて会ったから朧げにしか憶えてないけど。まだ日が落ちるまでには猶予がある。

 

「見つけた!藍、こっちです」

 

私は山の中を必死に走り抜けた。身体が枝に引っかかり傷ついても無視して私は突き進む。

 

少し開けた場所に出た。そこには山姥が魚と何かの肉を煮ているのが見えた。まだだ、あれは猪の肉かもしれない。

 

「・・・酒持って来ましたよ」

 

山姥はギョッと目を見開いて申し訳なさそうに『すいません。猫はもう煮てしもうて無いんです』と言って私に謝ってきた。

 

「代わりと言っちゃあ何ですがこの鍋を一緒に食べま」

 

私は山姥の言葉を聞き終える前に殴り飛ばしていた。藍が後ろから『殺されんうちに失せろ。目障りだ』と威圧をかける。すると山姥はヒィっと声を上げて山の中へ逃げていった。

 

その日私は大切なモノを無くす感情を思い出した。昔にもあった気がするが憶えていない。

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 

数日後、藍に呼ばれてマヨヒガに向かった。修業でもするのかな?だが今の私はそんな気分じゃない。

 

私がマヨヒガに着き、藍を見つけると珍しく明るい声で『こっちだ』と呼んでいる。気を遣ってくれてるのかな?

 

藍に目を瞑れと言われたので目を閉じ待つ。そして何かゴソゴソと音がした後に『もう開けていいぞ』と言われたので開ける。すると目の前には人の姿をした橙がいた。

 

「橙!?死んだはずじゃ・・」

 

私は喜びと安堵で涙が出始めた。藍がそれを見てハンカチを渡してくれる。

 

「実はこの娘はあの化け猫の子供でな、あの猫を救おうとしてくれたお礼が言いたくて私とお前を探してたらしい」

 

「あ、あの私のお母さん死んじゃいましたけど、助けようとしてくれてありがとうございました」

 

ぺこり、と可愛らしく頭を下げてお礼を言ってくれた。私は彼女に頭を下げ『助けれなくてごめんね』と謝った。その娘は私が謝ると首を横に振り泣きながら私に橙の最後の言葉を伝えてきた。

 

「お母さん言ってました。あんなお人好しの妖怪には会った事がなかったって。最後にあんな人達に出会えて嬉しかったって」

 

私は泣き崩れる。助けれなかったこともそうだが、あの時は橙だと思ったから助けようとしたんだ。決して人助けなんかの為じゃなかったんだ。

 

藍はそっと私を抱きしめてくれた。でもこの優しさが今の私にはツライ。

 

「お前があの猫を橙と呼んでいたが本名は違うそうだ。どこかの野良猫と似ていたのか?それだけで助けようとしてもだ。彼女や彼女の親はお前に感謝しているよ」

 

その日私は泣く事を止められなかった。

 

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「こうですか、藍様?」

 

「違うもっと妖力を高めて術式を作るんだ」

 

藍様が私にお手本を見せてくれる。私はそれを真似てみるが上手く出来ない。

 

「藍、そんな教え方じゃダメですよ」

 

私の隣で適当に縁様が修業してる。この人は基本的に自分が考えた事しか真面目に修業しない。だがそれを実用出来るまで仕上げるのである意味天才だと思う。

 

「じゃあどうやれと言うんだ縁?」

 

縁様はお手本を見せる為に私の前に立つ。そして縁様が腰を低くして妖力を高める。

 

「八卦掌、回天!」

 

縁様は妖力を放出しながらぐるっと回って見せた。結界術じゃない・・・・

 

気合いを見せた時ちょっとカッコイイとか思ったのに残念だ。その技を見た藍様がお前の技は非効率的だって縁様に怒ってる。私はこっそり真似してみる事にした。

 

身体を低くして妖力を放出しながら回る。

 

「八卦掌、回天!」

 

私は一回転で止めた。これ目が回る。

 

「ちぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇん!!」

 

藍様が私の名前を叫びながら走って来るのがぐらつく視界で見えた。

 

「さすが橙、私の技をもう盗むとは・・・」

 

縁様は感心したように頷き自分の修業に戻って行った。

 

今の私にはマヨヒガという家があり、この人達からもらった名前がある。お母さんは失ったけど、今の私はとても幸せです。

 




ついに藍様が子煩悩に目覚める。
そろそろ博麗の巫女の話でもするかな
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