遂にスペルカードルールが幻想郷に広まります。
そして次の話から紅魔郷です。
「そろそろかしら?」
私は今後の幻想郷が血生臭い争いではなく、美しさを競うスポーツのような遊びで全てが解決する方法を考えついていた。
しかしそれを実行するには幻想郷のパワーバランスを保っている者達が全て同意しなければならない。現在私の提案に乗ってくれると約束しているのは幽々子と地底に住む友人だ。地底の友人は顔が広く、地底の支配者にも伝えておくと言ってくれていたから心配は無いだろう。彼女は嘘を吐かない。そういう種族だからだ。
問題なのは昨日手紙を送った2人、レミリアと天魔だ。天魔はわざわざ自分達が得しない話には乗らないし、レミリアは人間に合わせるなんてしようとしないだろう。考えただけで憂鬱になるわ。冥界と地底は良くても、肝心の幻想郷が認めねば意味が無い。
今日はレミリアと天魔に直接会い、話をつける。その為に3人で会えるように手配をした。この無名の丘の頂上で会談する。全てが今日決まる。私は緊張を隠すように扇子を広げて口元を隠す。
目を閉じ、深く息を吸い込み吐く、徐々に近づいてくる大きな妖気が二つある。それが丘の麓辺りに来た時に目を開け、出迎える準備をする。
「来てやったぞ。八雲」
「こんな所に私を呼び出すとは良い度胸だな」
私の目の前に大きな皺くちゃな天狗と三日月に照らされて妖艶さを纏う吸血鬼がいた。私は言葉遣いを変えて幻想郷の賢者として振る舞う。
「お二人共良く来てくれましたわ。さて、お手紙でもお伝えした通り幻想郷に新たなルールを敷こうと思います。お二人にもそれぞれの部下や周りの者達にそのルールを適用させていって欲しいのです」
私が伝え終わると天魔は予想通り『ワシらに何の得がある?』と聞いて来た。逆にレミリアは不敵な笑みを浮かべて了承してくれた。何か企んでるだろうが、先ずはルールを敷く事が大事。ここはレミリアの企みは黙認し、天魔の説得に回ろう。
「天狗は人妖問わずに新聞配りをしているらしいですわね?」
「それがなにか?」
「このルールを敷けば天狗の新聞もより多くの人間に見てもらえる様になるでしょう。さらに貴方達の強さもそこに載せればいい。天狗の強さもより多くの人々に伝わる。悪い話では無いと思いますわ」
私の話に少し顎に手を当て考える天魔。天狗にとって情報操作がしやすくなるのはこの上なく得になるはず。人間も妖怪の恐ろしさを再認識しつつ、博麗の巫女という人間の希望の活躍に胸躍らせる。自殺するほどの絶望でもなく、かと言って敵の居ない平和な世界でもない、そのバランスが次の幻想郷の世代になる。
「八雲よ。一つ聞きたい事があるんじゃが」
「何でしょう?」
「あの小娘、確か縁とか言ったか、先日ウチの天狗が彼奴の写真を新聞に載せよった。その時に気付いたんじゃが・・・博麗の巫女とはどんな関係じゃ?」
それを横で聞いていたレミリアも『何!?それは初耳だ。詳しく聞かせろ』とせがんで来た。私は心の中で舌打ちをした。
あれはあの娘が勝手に写真を撮らせた物で、私が気付くより早く幻想郷にばら撒かれた。それ故に回収出来なかった何枚かが市場に出回っている。これを他人の空似とか言っても天魔は納得しないだろう。
「博麗の巫女と縁に関係はありません。ですが容姿が似ていたので博麗の巫女すら私のモノであるという自己顕示欲に駆られ、私は縁を従者にしました」
苦しい言い訳だ。これなら他人の空似にの方がまだ説得力がある。天魔は少し笑い『まあ、お主がわざわざ泥を被ってまで隠す秘密があると分かっただけで満足じゃ』と言い、引いてくれた。
レミリアは『ほう』とだけ言って喋ろうとはしない。私はとりあえず話を戻すことにした。
「それで話は受けてくれますわね?」
天魔が『新しい風に任せるもまた一興じゃ』と言い残し帰って行く。恐らく話に乗るのだろう。レミリアは『これは来年から楽しみだな』と言って帰る。スペルカードルールが始まり出す来年からは紅魔館への仕事を減らさせよう。
『嘘は良くないな〜、紫』
どこからともなく声が聞こえて来た。これは私の地底に住む友人だ。
「あら?私がいつ嘘をついたのかしら?」
私がおどけると友人の声がまたする。
『紫は嘘つきさ。あの娘に対してもね』
「
私の友人萃香が私の言葉を聞いてそれに続くように言葉を続ける。
『全てを受け入れるからこそ残酷なのさ。人間にも、妖怪にもね』
それが幻想郷だもの。そしてその残酷さを私や萃香は良く知っている。
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「来年の夏だな」
私は異変を起こす計画を自室で練っていた。正直人間に解決しやすい様なルールは気に入らないが、逆に言えば解決させなければ異変を公認するということ。縁を私のモノにする為の計画第二段階に移行だ。
第一段階はメイドとして働き、私達に慣れ、そして徐々に私を慕う様になる様にする。というのが第一段階。計画が少し狂って、私ではなくパチェに信頼が行ってしまったがまあいい。
問題は第二段階。これは少し予定変更して、博麗の巫女とやらを拝んでやろう。縁に似てるという事なので、さぞ愛らしいのだろう。気に入ればその巫女も我が手元に置こうじゃないか。まあ話が逸れたが大事なのは異変を起こすこと。そして今度こそ幻想郷を支配する。八雲を殺し、縁を完全に私のモノにする為に・・・
「ふふふ、フハハハハ!」
「うるさいし気持ち悪いわよ。レミィ」
私が慌てて振り返るとパチェが居た。いつの間に入って来たのだろう?ともかくノックもせずに失礼な奴だと思い、批難の目を向けると『ノックしたし、声も掛けたわよ』と軽く返された。我が紅魔館の大図書館に弱点は無いのか!と言いたくなるほど隙が無い。腹が立つ。昔はそうでも無かったのだが、縁と仲良くしてるのを見ると羨ま・・腹が立つのだ。
大体小悪魔のせいで縁との好感度が下がるのが気に入らない。最近では美鈴と組手をやってるとか、私に一言言ってくれれば組手くらいいつでもやってやるのに。
「はあ、縁が可哀想ね。こんな変態吸血鬼に好かれちゃって」
パチェが余計なことを言う。
「パチェにとっては縁との談笑は当たり前かもしれないが、私にとってはそれは至福の時なのだ!それをクソ小悪魔が邪魔をするから」
「貴女には咲夜がいるでしょ?」
私は『それとこれとは別だー!』と叫ぶ。パチェは呆れた顔をして耳を塞いでいる。これ以上思考を邪魔されたくない!パチェを追い出す。問答無用で吸血鬼の怪力で追い出そうとした時に用事を伝えてきた。
「フランも何か企んでるみたいだから気を付けなさい」
それだけ言い残しそそくさと図書館へ帰って行った。
「フラン・・か」
私は未だ理性を持たぬ妹を思い浮かべる。いや、理性は持っていた。ずっとずっと昔に。それを失ったのは能力のせいではなく、破壊を止めてあげられなかった家族のせい。
「あの娘の運命もそろそろ変わる頃のはず」
だってあの日からずっとそれを願い続け能力を使って来たんだもの、報われても良いでしょ?この地ならあの娘も受け入れてもらえるはず。あの娘の運命の糸がこの幻想郷に繋がってるのが見える。きっと近いうちに良い友達が出来るわ。
私はそっとあの娘の運命の糸を撫で、微笑む。どうかあの娘が幸せになれますように、そして縁が私のモノになりますように。
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「スペルカードルールってなんだ?」
私は今、博麗神社に来ている。ただ単に遊びに来ただけなんだが珍しく霊夢が修業していたので、私が聞くとスペルカードルールとやらがこれから主流の遊び兼妖怪との真剣勝負になるらしい。
これの勝ち負けによる命のやり取りは無いらしい。どこまでも人間の為に作られたルールだ。
「しかし、よくこんなの主流にしようなんて考える奴居るなー」
その言葉を聞いて、霊夢が『会った事は無いけど幻想郷の賢者とやらの考えなんでしょ。多分だけど』と言って、弾幕を作る。
その弾幕を見て、私は見惚れてしまった。こんな綺麗な弾幕で勝負するのか・・・
ただ当てるだけではなく、追い込むものでも無い、クリアする方法は絶対ある。一見無駄に見えるけど元来遊びとはこういうものだ。私も覚えてみるか。
人間に有利なルールになるなら私もいつか異変解決出来るかもしれないな。そう思い魔法の開発を始める。
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遂に来た!スペルカードルール。これで私の考えたスペルが無駄にならずに済んだ。
「という訳だから、今後の修業の基本はスペルカードルールに適応出来るようにする事」
紫が長々と私と藍に説明しているが、私は我慢出来ずにウズウズしてしまう。待ちきれない。そんな様子を見て紫が微笑み、スキマを開いて私にタライを食らわせる。
「人の話はちゃんと聞きなさい」
「はい」
怒られてしまった。さて、落ち着いたところで紫の話を真面目に聞く。どうやら正式にスペルカードルールが導入されるのは来年かららしい。
来年の夏辺りに紅霧異変が起きるのかな?ワクワクするなぁ。紅魔館のメイドだし、最前席で霊夢や魔理沙の活躍にレミリアのカリスマも見れるなんて、楽しみ過ぎる。
「喜んでるのはいいけど、来年から紅魔館には一時行ってはダメよ」
へ?なんで?私は当然の疑問を紫にぶつけたら、レミリアが何か企んでるから行くのが危険だとか。そんなの別に気にしないし、今までだって危ない事沢山あったのに今更な気がするけどなぁ。
「紫様、そのルールだと妖精達もスペルカードルールで戦う事になりますが、大丈夫なのでしょうか?妖精が異変を解決する可能性や異変を起こす可能性もあると思うのですが」
藍が尋ねる。
「妖精の強さなんて人間にすら及ばないものよ。それにスペルカードルールをちゃんと理解して戦う妖精なんて2〜3匹居れば良い方よ」
藍は納得し『なるほど』と呟いている。確かに妖精はこの私でも簡単に倒せるから強いとは言えないね。
「二人共八雲の式として恥じる戦いはしないように。今のうちに修業して慣れて置きなさい」
私と藍は返事をして頷いた。紫はスペルカードルールを広める為に地底の友人に手伝ってもらって人里などに広めるらしい。地底の友人とは恐らく萃香の事なんだろうね。萃香とは、て言うか鬼族とは会いたくないなぁ。
会ったら『おめぇつえーな!オラワクワクすっぞ』とか言い出しそう・・・
鬼族は戦闘民族と変わらんくらいバトルマニアだから下手したらスペルカードルール無視して戦いを挑んで来るかも。八雲の式って結構ネームバリューあるからなぁ。あの天狗でさえ、八雲の式である私には基本敬語だしな。上位に君臨する天狗達はタメ口だけどね。
とにかくスペルカードルールに向けて修業だ!
「ほう、縁にしては珍しく気合が入っているな」
私の表情を見て藍が意外そうな顔をする。
「珍しくは余計です。まあそれ用の新しい技を開発するのは楽しそうなのでかなりやる気はありますよ」
「やる気があるのは良いけれど、八雲の式として無様な敗北は許さないわよ?」
紫が微笑みながら脅して来る。プレッシャーを掛けるのはやめて!楽しく弾幕ごっこで遊びましょ?
私にとって弾幕ごっこは遊びだから、だから全力で修業とかしちゃうんだけどね。まあいずれ異変が起きるまでは修業の毎日かなぁ。
私は来たる紅霧異変に想いを馳せて修業を始める事にした。
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「もうすぐ三年か」
三年間、この地下でひたすら力を溜めてきた。そろそろ溜めた力を解放してお姉様達に復讐しようかな?
「問題はあの女をどうやってここまで来させるかだよね」
お姉様が大事にしてる半妖を手に入れる算段を始める。お姉様の目の前で私の従順な下僕となったお気に入りメイドを見せなくちゃね。復讐だもの。そのくらいするよね?寧ろ足りないくらいかな?
「ここから飛び出して紅魔館を支配するのは来年の夏くらいにしよう」
私は決意を固め、狂った様に笑い出す。私を狂わせた全てのものを壊す為に、私は動き出す計画を一つずつ立てていく。
原作通りの紅魔郷になると思うなよ?
先に言っておきます。これから起きる原作異変は殆ど原作通りにはならないです。結果や過程が違う可能性大。
ついでに萃香は縁の過去について深く知りません。ただ紫とは古い付き合いなのでそれとなくは聞いている。そして紫という妖怪の性格から裏があるのを直感で理解してます。