白玉楼に来てそれなりに時間が経ったと思う。庭師というか家政婦のような仕事を毎日こなし最近では慣れてきた。今日もそんな1日だと思ってたんだけど・・・・・
「縁、今日は稽古ではなく真剣を使って本気で手合わせして」
「いやいやいや、さすがにそれは危ないし怪我じゃ済まないかもしれないからやめとこう?」
妖夢の楼観剣で斬られたら死ぬのは間違いない。だって妖刀だよ?妖怪が鍛えた楼観剣に斬られて耐えられるほど私は頑丈ではない。きっとナメック星人でも再生出来ない程に粉々になるに違いない。
「私と縁にどれくらい差があるか確認したいの、お願い」
「えっと、あの、まぁ別にそれなら真剣じゃなくてもいつもの木刀で良いんじゃ?」
「木刀だと縁はふざけ出すでしょ?それに死ぬかもしれないという危機感が抜けて100%の力なんて出せないと思うから」
「出せる!出せるよ!出すから真剣だけはどうか!」
「問答無用!魂魄妖夢参る!」
「待って待って待って!?」
妖夢の目がマジだ!楼観剣で私を容赦なく殺しに来てる。
「避けるばかりじゃ私は倒せない!早く本気を出さないと縁が死ぬだけだよ」
「死ぬだけって、うぉっ、危な!?」
素手だと危険すぎて戦えない。これが弾幕ごっこなら殺そうとしないから剣でも全然大丈夫だけど真剣勝負はマズイ。素手と剣でかなりの差が出る。妖夢の心をへし折るかもしれないから使わなかったけどこうなったらやるしかないか。
私は避けながら妖夢の練習用の刀を手に取る。
「素手でなければ勝てると思った?でも剣を使ったことない者が剣を持ってもたかが知れてる」
私は妖夢から距離を取り目を閉じる。深く長い深呼吸をして耳を研ぎ澄ます。
妖夢が走ってくる音が聞こえ自分の攻撃範囲に入るまで待つ。
あと10歩・・9・8・7・6・5・4・3・2・1・・・・0!
「一刀流居合・・・
「なっ!?」
鉄と鉄がぶつかり合う音と同時に火花が飛び散りその瞬間に妖夢の楼観剣を弾き飛ばす。私はすかさず妖夢の首に剣を当てる。
「妖夢、詰みだ」
「・・・・負け・・ました」
あ、やばっ、妖夢の目が涙目になってる!何とかしないと。
「じ、実は剣も使えたんだよね〜!今まで黙ってたけど切り札ってのは普段は見せない物っていうかなんていうか・・ハハハ」
「・・・・そう」
「あの、妖夢?」
妖夢は私の言葉が聞こえているのかいないのかそのまま立ち上がり走って行ってしまった。
白玉楼の方じゃないな。妖夢は真面目だから夕飯作る前には戻ってくると思うけど幽々子になんて言おうか。
こんな時どうしたらいいか分かんないんだよね。漫画とかなら追いかけたり放っておいたらいいんだろうけど現実だとそう簡単に事は片付かないもんだ。
「はぁ、相手を傷付けずに上手く負ける戦い方の修業でもしようかな」
そんなことを呟きながら白玉楼に帰る。
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負けた。しかも剣の勝負で負けた。
私は今まで一生懸命修業して縁に届かないまでもあと少しで追いつくと思ってた。でも違った。
縁は強い、私が想像してるより遥かに、私は妖刀である楼観剣を使ったのに対し縁は私が練習で使ってるなまくら刀で私の楼観剣を弾き飛ばした。普通なら妖力の籠った刀になまくら刀が耐えられずへし折れるか粉々に砕ける。でも縁が使った刀は傷一つ付いていなかった。
今回のは負けたのが悔しいと思えるレベルの負け方じゃない。負けた事が必然であり抗いようの無い実力差を見せ付けられた。
「何が本気で戦ってだ。実力も測れずただ自分の力を過信し過ぎた馬鹿者じゃないか。縁は私の心が折れないように気を遣って手加減してくれてたのに」
自分の中の負の感情が込み上げてくるのを走る事で忘れようとがむしゃらに走っているといつの間にか人里にまで来てしまった。
「早く冥界に戻らないと・・・でも」
でも縁にどんな顔して会えばいいんだろう。それに縁を見たらまた辛い気持ちになりそう。今は楽しい事でも考えて全て忘れよう。気持ちを切り替えるのが大事だって幽々子様も言ってたし。
「何か手頃な娯楽は無いものか・・ん?あれは」
ふと空き地の方を見ると人形劇をやっていた。子供が多いが中には大人も少し混じって魅入ってる。
「子供騙しだけど何もしないよりはマシか」
そう呟き私は人形劇のやってる空き地に入り適当な場所に位置取りし眺める。
人形劇にしては良く出来てる。まるで人形が生きてるみたいに動くし物語も子供に理解出来て尚且つ大人も楽しめる内容だ。この人形使いは凄いな。ここまで人を引き込める劇を作れるのだから、私ならきっと単調な物語と人形の動きがカクカクしてしまうだろう。これが職人の技というやつか。
そうこうして魅入ってるとあっという間に劇は終わり大人も子供も人形使いの広げたカバンにお金を入れて帰って行く。入れてない者や額がバラバラなのを見るところどうやら強制ではないらしい。こちらの気持ちで入れても良いし入れなくても良いという事だろう。
私は人形劇に満足していたので少ないながらお金を入れる。
他の人が全員帰るなか、私は人形使いの片付けを眺めていた。
「・・・今日はもう終わり。また見たいなら次は来月よ」
「あ、いえ、そうじゃなくて」
「?」
帰ろうにも帰りづらいからどうしようかと悩んでたら動けなくなっただけなんだけど、この人は私がまだ満足してないと思ったらしい。
「仕方ないわね。今日初めて来てくれたし貴女だけに特別サービス」
「特別サービス?」
一体何をしてくれるんだろう?
そう思っていると二体の人形を残しあとは全てカバンの中にしまってしまった。
「特別サービス人形劇の始まり始まり〜」
抑揚のない声とは裏腹に人形達は物凄くコミカルな動きをしている。
「あるところに何の才能もない魔法使いがいました。魔法使いには友達が居て神社の巫女さんをしていました。巫女さんは頭も良く運動も出来るいわゆる天才というやつでした。魔法使いは巫女さんの事を大切な友達であり常に自分は巫女さんの隣に立っていたいと思っていました」
何だか私と縁の関係に似てるな。私は何の才能もない魔法使いで縁が天才の巫女さん・・・
「魔法使いはある日言いました。『いつまでも自分に並ぶ奴が居ないと思ったら大間違いだぜ!』それを聞いた巫女さんはいつものような軽い口調で返しました。『あっそう』怒った魔法使いは巫女さんに勝負を挑みました。しかしながら何の才能もない魔法使いは天才の巫女さんには勝てませんでした」
当然よね。だって縁も元から色んな才能を持ってるもの、努力で追いつけるほど甘くない。
「魔法使いはその才能の差に絶望しました。そして泣きながら何故自分には才能が無いのかと天に叫びました。けれどもどんなに叫んでも天からは何も返っては来ませんでした。そして全てにやる気を無くした魔法使いはフラフラとあてもなく家から出掛けました。気付くとそこは巫女さんの神社に来ていました。すると神社の裏から音が聞こえて来たので見に行きました。なんとそこには天才の巫女さんが修業していました。自分がやってる修業とは違い、とっても辛そうな修業です」
辛い修業。そうだよね縁も見えないところで修業してるんだよね。いくら天才でも初めて触った刀をあんなに上手く使えるはずない。
「魔法使いは今まで自分がしてきた修業の何倍も辛い修業をしてる巫女さんを見てこう思いました。『巫女さんは私以上に努力してるんだから勝てなくて当然か。なら巫女さんよりもっと修業して強くなる。そしていつか隣に立てる日が来るはず』それからの魔法使いはふて腐れず辛い修業を毎日毎日しましたとさ。めでたし、めでたし」
「私は・・・いえ、魔法使いは巫女さんに追い付けたのでしょうか?」
私は最後2人がどうなったか気になりつい聞いてしまった。
「さあ?これは人形劇。その先を求めるのはお門違いよ。」
確かに。物語としては終わっているんだ。この先を作る意味はない。でも分かった事が一つある。
「無粋な質問すみません。私は用事が出来たのでこれで、あっ、あと次の人形劇も楽しみにしてます!ではさようなら」
そう言って私は走り出した。目的地は当然白玉楼。人形劇を見ていたせいですっかり陽が暮れて夜になってしまっている。きっと幽々子様がお腹空かせてるはず。それに縁だってきっと私のこと心配してると思う。だから急ぐ。
私は息を切らしながら白玉楼に着いた。謝る為に居間の襖を開ける。
「あら〜、お帰りなさい妖夢。縁ちゃんがご飯作ってくれたから一緒に食べましょう?」
「え、あっはい」
幽々子様のご飯は縁が作ってくれたんだ。しかも私の分まで。1人で作るの大変なのは私が一番知ってる。謝らなきゃ縁に・・・
「お待たせしました幽々子様ー☆縁特製炭火焼き鳥でございまーす」
そんな素っ頓狂な声と共に台所に繋がる襖が開いた。その瞬間私と縁の目が合った。
「縁ごめんなさい!」
「ふぁっ!?えっ、何が?」
「昼間怒って勝手にどっか行ったのと私無しで食事作ってくれた事」
私は頭を下げたままあげない。それが私の今出来る誠意だ。
「別にいいよ、気にして無いし。それよりご飯冷めちゃう前に一緒に食べよう」
「う、うん」
縁は怒っても無ければ気まずい感じでもなかった。意外と心配されてなかった?
そう思っていると幽々子様が私の耳元で囁いて来た。
「縁ちゃん妖夢が夕方になっても帰って来ないから冥界中走り回ってたのよ〜」
そうだったんだ。
「ふふ、流石巫女さんね。見えないところで努力してる」
「ん?なんの話」
「何でも」
「???」
その日私は新たに決意した。絶対に縁に追い付くと、もうふて腐れないし追い付く為に今までの何倍もの修業にも耐えてみせる。だから縁、いつか私が貴女の隣に立ってもいいよね?
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今日は変な客が来たわね。でもまあ私の人形劇で元気になってくれたみたいだったから嬉しかったわ。
「人を幸せに出来て私の魔法の試しも出来る。正に一石二鳥だと思わない上海?」
「シャンハーイ!」
「うふふふ、上海もそう思うのね」
次はどんな魔法を考えようかしら?
花咲か爺さんのお話をやる為に花を咲かせる魔法でも覚えてみる?
色んなアイデアが浮かんでは消え浮かんでは消えと脳内で繰り返す。
「まずは材料集めかしらね。これは春にしか取れないものだから他の素材を先に集めときましょう」
「シャンハーイ!」
「そうね。早く次の人形劇の新作を作りたいわね」
妖夢と縁の好感度が上がって行く〜!
人形劇の方は当然あの方ですね。シャンハーイって出てるからもう間違えようがないな。