fate/GO カスタマイズ   作:章介

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第15話

Side エミヤ

 

信じられなかった。古く、色褪せたはずの悪夢を全て招きよせたかのような光景だ。

見覚えのある術式、かつて見たことのある銀細工、忌まわしき妄執の残滓。自身にとって最悪以外の何物でもないそれらが縁深い彼の騎士王の臣下を飲み込み、別の何かへと組み換えていく。

 

誰もが言葉を発さない、否、発せないまま立ち尽くす。あるものは眼科の惨たらしさ故に、ある者はその規格外の魔術故に、ある者は憤怒を抑えているが故に。

 

嘗ての罪を見せつけられているようだ。最も、私は感傷に浸るような生やかな精神など持ち合わせていないがね。英霊の座について唯一良かったと思える点だな。今私がすべきは自虐ではなく、己の主を守ること。あとは、まあそうだな。戯れに父親ごっこでもしてやるくらいだな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

始まりは敵の襲撃だった。魔弾の射手は大層悪辣な罠を仕掛けたのだろう。敵が辿り着いた頃には、先陣を切ったであろう全身黒鎧のサーヴァントはかなり損傷していた。続いて現れたのは中世を思わせる、品はあるが喪服染みた黒ずくめの青年と、以前対峙した女吸血鬼。

 

数に劣る連中は能力が最も高い黒鎧と連携を組んで当たるつもりだったようだが、飼い犬の手綱が緩すぎたな。声にならない叫びをあげながら突然ジャンヌに切りかかる狂戦士。後ろの連中は面食らったのか全く反応できていない。カーミラは当然だが、青年の方もどうやら生粋の戦人ではないようだな。クランの猛犬や規格外の航海士なら反射で合わせてきただろうに。後衛を無視した突出した兵など、実に狩りやすい獲物でしかない。

 

すでに仕込みは済んでいる。待機させて置いた投影宝具を一斉掃射する。接近速度からかなりの敏捷ステータスであることは把握している。マスターからの魔力供給も十分。出し惜しみなしで面攻撃をお見舞いする。

 

今更援護に動こうとした2騎はメディアに釘づけにされている。魔術で歯が立たず、そもそも空中高く飛翔しているせいで剣も届かない。かといって余所を向けば、女神ヘカテ―直伝の大魔術によって一瞬で灰にされる。さすがは神代の魔術師なだけはある。かつては相当手を焼かされたが、味方だと実に頼もしい。おかげで各個撃破に集中できる。

 

しかしここで予想外のことが起きた。今まで剣の雨を捌ききられたり、避けられた経験はあるが、まさか第一射を掴み取り、そのまま後続を切り払われたのは初めてだ。会話も制御もままならないほどの狂化を施されておきながら、技量だけ衰えないとは恐れ入る。だが生憎だがそれは私に対しては悪手だぞ?

 

―――〈壊れた幻想(ブロークン・ファンタズム)〉。英霊の象徴ともいうべき宝具の内包する魔力を暴走させ爆破する捨て身の業。威力はともかく、それだけの神秘はたやすく治せないため、まず再取得は絶望的と、およそリスクと実利が破綻している手段だが、ほぼ無数に投影できる私にとってはランクの下がる贋作の威力を底上げする生命線だ。私の投影宝具を掴むということは、自爆寸前のダイナマイトを拾い上げるに等しいわけだ。戦士の勘で咄嗟に手放したようだが、ゼロ距離での爆発だ、無傷には程遠い。

 

さらに地面に突き立たせたままの宝剣も合わせて爆破させる。前後左右からの爆風に曝され身動き取れない黒鎧に一線の弾丸が突き刺さり、さらに一際デカい爆発が起こる。おいおい、大火力は母親譲りか。

 

 

「やるじゃないか、マスター。ずいぶん手の込んだ仕掛けのようだが?」

 

妙だな。マシュから聞いた話では剣術に明るいと聞いていたが、手に持っているのは身の丈以上の大砲、いやあれはレールガンか? 

魔術の秘匿故に答えは期待していなかったが、当の本人は目を輝かせて口を滑らせている。しっぽがあれば振り切れているな、あれは。

 

「そうかな!これは俺が夜も寝ないで昼寝して作り上げた『宝石魔術搭載型携行電磁砲 ハーキュリー』! とにかく軽く、一発撃てて暴発しなけりゃそれでいいって構想で作り上げて、弾丸にもしっかり細工してあるんだ!反動は強化と弱体魔術で軽減してあるから負担は軽いよ。弾頭はトリックダイヤに内部の光を魔力に還元する刻印を刻んだものを、銃身にはとある依頼の報酬でもらった『理想の人体図』のガルバリズム機関を組み込んでさらに魔力を注入してぶち込む仕様になっております!!」

 

・・・・・なんだ、そのバカと冗談を総動員した兵器は。いくら何でもやりすぎだ。というか、一から作ったのか、それ。

 

だが発想は悪くない。遠坂の宝石魔術は宝石そのものを投擲して攻撃に用いていたはずだ。だが、サーヴァントや死徒を相手にそんな悠長にしていては回避されるか距離を詰められて殺されるだけだ。その欠点を投擲から射撃に転化することで克服した訳だ。しかもレールガンときた。これなら不意打ちで打てばサーヴァントでも避けられまい。威力に関してはそもそも心配していない。彼の母親はまだ未熟な学生の身空でギリシャ屈指の大英雄を殺って見せた。修行中とはいえあれだけ工夫を凝らした弾丸なら同等以上の火力はあるだろう。

 

「まあ、代償に耐久が紙だから一発でまず壊れるし、丹精込めて作った弾丸も消耗品だから費用対効果は最悪なんだけど、そこは、ほら」

 

「・・・ふむ。我々なら、『それがどうした』というわけか」

 

やれやれ、あれもまたずいぶん面倒な物を継がせたのだな。聖剣に塗り替えられる前の、アレ本来の固有結界が遺伝したか。神造兵器は無論、宝具の投影も不可能だが、英霊が使っていた無銘の武具くらいは作り出せる、といった所だな。だがそれ以上に汎用性の高さと、それすべてにその道具が経た経験まで投影できることが最大の強みか。

 

いくら宝石を作り出せても、遠坂お家芸の魔力の循環が十分になされた状態で出せなければ唯の石ころに等しい。トリックダイヤにしても十分に光を貯め込んだそれを投影しなければ効果は薄い。しかし彼は、自信が記録したものを、その状態まで合わせて引っ張り出せるのか。

 

・・・これはこれで知られるといろいろ周りが騒ぎ出しかねんな。少量の魔力で、十分に魔力が込められた宝石を呼び出すなど収支があべこべで破綻した、まさしく常識破りだ。それにすぐ爆破してしまうから、維持に莫大な魔力を食う投影魔術とうまく噛み合っている。

 

 

 

 

「お・・王よ、お許しを。わが身に裁きを、あなた自身の御手で断罪を・・」

 

む?マスターと騒いでいる間に話が進んでいたようだな。勿論ちゃんと聞いてはいたが、思いっきり注意が逸れてしまっていたな。

 

しかし相手はあの湖の騎士、サー・ランスロットだったとは。つくづく世界は狭いと思わされるな。聖杯戦争とはいえ、時代も人種も違うのに知り合いの知り合いに会うなど、私くらいだろうか?

 

 

 

「あぁ・・私は・・わt 『お終い?じゃあ、殺しちゃうね。』 !!?が、があああああぁぁAAaaaaaaa!!!!!?」

 

 

「 「 「 「 「 「 !? 」 」 」 」 」 」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――瞬間、どこかで見た『黒』と『銀』が騎士を飲み込んだ。

 

 

黒―――あの黒鎧よりもドス黒くまるで泥か影かのようなそれは騎士を隅々まで染め上げ、侵食し、彼を彼でないものへと造り替えていく。暗い、増殖したそれは傷つき欠損した部位を補填し、簒奪し、異形の存在へと変化させる。

 

 

銀―――まるで煙のようにも見えるそれは、まず騎士の右腕へと集まり、それを黒が貪り、黒銀の矛となり腕と一体化した。次に騎士の腰あたりから、鎧の隙間を抜けて飛び出した、二本の硬質な触手の先端へと集り、まるで機関銃、いやガトリングガンへと姿を変えた。残りは奴を守護するように、周りをヴェールのように漂っている。

 

 

『Gruaaaaa!!!!?』

 

突然飛びのいたかと思えば、奴はカーミラが呼び寄せたと思わしき翼竜に飛びついた。そして触れている部分から黒が一斉に抑留へと押し寄せ、緑の鱗は瞬く間に濁った黒へと染まり、騎士の足が埋め込まれるように沈み丁度跨るような状態で融合した。

 

もはやどこにも並びなき騎士の面影はなかった。今目の前にいるのは人が作り出した、規格外の怪物に他ならない。

 

「気をつけろ、マスター。あれはバーサーカーであって、バーサーカーではない。外装、能力をそのままに、肉体を別の何かで補ったのだろう。もはやランスロットとしての意識はあるまい。一切の躊躇なく仕留めるぞ!」

 

「ハッ、珍しく意見が合うじゃねえか、弓兵!ありゃ相当イカレてる。いろんなモンが振り切れてなきゃああはならねぇよ。残しておいても百害あって一利なしだ。とっとと片付けようぜ!」

 

「あー。ありゃ厳しいっすわ。毒効くのか、アレ?ま、やるだけはやってみますけど、正直手に負えないんで、邪魔になんないよう控えときますわ。ないだろうが使い手探してるほうがナンボかましだ」

 

「む?そっちは良いのか?連中にはこの上ない好機だろう。全員で当たるわけにはいくまい」

 

「あー何か知らねぇが、尻尾巻いて逃げてったよ。俺らに背を向けてでも全力で引いていきやがった。こりゃあいつらにとっても不測の事態らしい。」

 

「・・それでも漁夫の利を得ようとうかがっていても不思議じゃない。ロビンは二次被害が出ないよう、隠れながら周囲を索敵。残る皆であいつを叩く。マシュ、敵の戦力が分からない以上、君の守備が生命線だ。どんな状況にも対応できるよう注意して!」

 

「はい、センパイ!私の後ろから離れないでください。絶対にあなたに近寄らせるわけにはいきません」

 

「同感だ。実力はともかく、君の体は英霊の暴威には耐えられん。だが安心したまえ、君のサーヴァントが優秀でないはずがない。いつも通り、我々を勝たせることだけ考えていてくれ」

 

良し。顔つきが大分落ち着いてきたな。この戦い、全霊を賭して挑まなければ早々に敗北する。感情で動きを鈍らせるわけにはいかん。

 

 

 

「作戦会議は終わった?なら遊ぼう!怖い顔のお兄ちゃんには途中で逃げられちゃったから、お兄ちゃん達は最後まで付き合ってね。それじゃあ―――――殺っちゃえ、バーサーカー」

 




はい、今回と次回は少しオリジナル戦闘が入ります。戦闘描写は苦手ですが、頑張って書いていきます。

ここまでご覧いただきありがとうございました!
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