fate/GO カスタマイズ   作:章介

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第17話

 

Side 蘇芳

 

 

「・・・なんだ、もうカタはついていたのか。余計な世話だったか」

 

 

はい、こんにちは。そう言えばこれがフランス勢との初顔合わせの蘇芳です。メディアとの感覚共有で見た感じだと随分押され気味だったから令呪を切ってバーサーカーを突っ込ませた。そのあとは爆風やらなんやらで見えなくなったので急行したが、取り越し苦労だったようだな。

 

 

「いやいや、本当に助かった!危うく大切な仲間を失うところだった。後、こうして誰も欠けることなく再会できて嬉しいよ!ただ、その姿は・・ちょっと・・・。」

 

 

・・・うん。まあ確かに絵的にきついだろうな。身長190以上の大男が、痩せ身とはいえ大の男を背負って現れるというのは。しかもその神父が不満げでも不快そうでもなく、ただ真顔で淡々と背負い続けているのがまたシュールだ。これが少女とかなら違和感ないだろうが。あとそこの元槍兵。笑いすぎだぞ・・・。

 

 

「・・・おい其処の駄犬。お前への絶対命令権、だれが握っているか忘れたか?」

 

「ぎゃはははは・・・・・・ハッ!!?」

 

「まあ、帰還した後楽しみにしていろ。優秀な(愉悦の)助手も今回はさぞ腕を振るってくれるだろうさ」

 

「すいませんでしたああああぁぁ!!!!」

 

 

おお、凄まじいまでの躍動感溢れるDO・GE・THE!!だな。だが却下だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして時は流れて、現在聖人求めて三千里。おっと、掻い摘みすぎたか。奴らのこの物量戦法の要である飛龍を束ねているのが、神話に名高い『邪竜ファフニール』とのこと。あまり詳しくは知らないが、確か西洋版桃太郎(大人の醜い欲望添え)?に登場する、見た目は巨竜中身は老人のやられ役だったはずだ。そいつを倒せる戦力が複数の呪いに侵されて役立たずと化している。

 

こちらの手持ちに代役がいないのが痛い。メディアは竜使役のスキルを持っていないし、幻想種最強の竜種では魔術は無効化されてしまう。

 

神父も無理だ。存在の規模がまるで桁違いの竜の『氣を呑むこと』など不可能だ。中華拳法も、対門宝具クラスにまで昇華させた絶技ではあるが、アレ相手では心許ない。対城宝具とかあれば話は別だが。

 

ヘラクレス・・・もし彼が本来の姿であれば、ヒュドラ殺しの宝具やら何やらを用いて倒すことが出来たかもしれない。しかし、私が使役しているのは冬木の地で頂戴してきたシャドウ・サーヴァント。実力も一回り落ちており、当然宝具も使えない。

 

よって、非常に面倒なのだが死にかけの竜殺しを何とかするために、戦力を分散させてでも聖人のサーヴァントを探すことになった。王女様の気まぐれでくじ引きなどという計画性皆無な組み分けで、だが特に反対はしなかった。エミヤやメディアは私が何も言わなかったことに不思議そうにしていたが、もちろん理由はある。

 

政治家や貴族なんかは魑魅魍魎が跋扈する魔窟が戦場だ。そんな地獄で生き残れるような奴は嗅覚や勘働きが尋常じゃない。その中でもマリー・アントワネットは一流の部類だろう。何せショワズール公やデュ・バリ夫人といった曲者揃いの、失脚暗躍何でも御座れのパリで頂点に立てたのだからな。そんな人物の思い付きは意外と良い方向に向かいやすい。もちろんそれが滅んだ原因でもあるから過信は禁物だが。

 

そういう訳で、厳正なるくじ引きにより決定されたフランス西廻り組(仮)は4名。私にメディア、それからジャンヌとアントワネットだ。戦力が向こうに偏りすぎに感じるかもしれないが、向こうにはこちらの生命線にしてアキレス腱であるジークフリートがいる。あれを殺られたらこっちは詰む。それに禅城の面子は中・後衛が中心だ。数の暴力を押し返せる神父とヘラクレスを張り付けておいたら万全だ。

 

 

「―――うん、やっぱりジャンヌは綺麗よね。すごく、すごく、すごく―――美しいわ。ねえ、そちらの殿方もそう思わない?」

 

「ちょ、ちょっとマリー!?からかわないでください」

 

ん?二人で仲良く相合傘をして話しているかと思えば、私にも振ってきたか?前振りを全く聞いてなかったが、真正面から口説かれる状況っていったい・・・。

 

「からかってなんていないわ。だってもし、わたしがジャンヌの立場だったら・・・“竜の魔女”の話を、たぶん受け入れているもの」

 

 

ああ、そういう話か。てっきり彼女はそういう趣味の方かと思った。色事や見た目ではなく、その精神性について、か。

 

 

「わたしはわたしを処刑した民を憎んでいません。それは九割の確証を持って言える事実です。けれど、わたしはわたしの子供を殺した人たちを――少しだけ、憎んでいる。ほんの少しだけれど、確実に」

 

・・・私の時代でも、彼女の人物像は最悪だった。世界三大悪女、だなんて学校で教わることもあるくらいだ、つい最近までは。それくらい当時の反マリー派の人間は人心操作を徹底して行っていた。それ故に、市民の扇動は止まることを知らず、ギロチン刑を叫ぶ声は遂には王家皆殺しにまで突き進んでいった。ただ―――。

 

 

「けれどジャンヌはそうじゃないでしょう?それはとても凄いことで、とても綺麗なこと。そしてそれは怯えでも拒絶でも、欠落してるからでもない。ジャンヌは――人間が好きなのよね?」

 

 

彼女は気づいていないのだろう。肉親がこの世の地獄を味あわされ、散々甘い汁を啜った連中は文字通り蟲のごとく四散していって尚、フランスを愛し続けられることが、どれだけ凄いことなのかを。

 

 

「はい。次に相対するときには、彼女にきちんと伝えられると思います。あ、そういえばそろそろ連絡をしなくては」

 

「あら、つい話すのに夢中で忘れていたわ。それにしてもわたし、晴れているのに雨が降っているなんて光景初めて見たわ。確か東洋では狐の嫁入り、とか言ったかしら」

 

「そうですね。私も初めてです。しかし急に振り出しましたね。向こうは大丈夫でしょうか」

 

 

心配無用だ。振らせているのはここら辺りだけだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・ええ、大丈夫です。こちらもサーヴァントを探知できました。これからコンタクトします」

 

「ふう。丁度雨も上がったわね。なんだったのかしら」

 

 

さらに十時は進み、目的地へと辿り着いた。通信から察するにこちらが本命のようだな。面倒臭い。聖人君子の相手はあの主人公気質のほうがよほど適任だろうに。

 

 

「・・・では、私たちと共に来て戴けませんか?あの複雑に絡み合った呪いを退散させるには、貴方の協力が不可欠なのです」

 

「事情はわかりました。町の避難もじき終わります。そちらの御仁のおかげで既に8割方済んでいます。終わり次第出発しましょう」

 

 

おい、こっちに振るな!話をややこしくするな!ほら、女性人二人がさっさと説明しろと目で語りだしたぞ。

 

 

「先程までの雨は貴方の魔術ですね?どういう絡繰りかは分かりかねますが、周囲を徘徊していた魔物の反応が突然消失しました。お陰で早い内から避難を進めることが出来ました。彼らの分も礼を申し上げます。本当にありがとうございます」

 

 

「ウソ!?あの雨は貴方だったの!でも、雨は出発してからすぐに振り出したわ」

 

「もしあの雨がなければ、魔物を避ける道程探しなどで避難がずっと遅れていました。まさか、あの時からこの状況を?」

 

「・・・もしそうなったら、避難が優先だとか言って動こうとしなかっただろう、アンタは。どうせ人理の修復でなかったことになるというのに、だ。綺麗事と目の前のことばかりで、後の責任を放棄するのが聖人という人種だからな」

 

「な、ムッシュ蘇芳、それはいくらなんでも――」

 

「いえ、彼の言っていることは正しい。もしその状況になったなら私は決して逃げることは無かったでしょう。私が聖人でありたい、という願いのために。もし私が倒れれば、彼の竜殺しが再起不能となり、その結果私が助けた市民諸共世界が焼却される、というのにです」

 

「あっ・・・・」

 

そうだ。今現在最優先保護対象は竜殺しと聖人の2人だ。それ以外も勿論重要だが、この面子だけは代用の仕様がない。さっきも言ったが、後で死そのものが無かった事になる連中とは、言い方は悪いが比べるまでもない。だがこいつはそれを言っても決して首を縦には振らん。生き方に人生を食われた奴に何を言っても無駄だ。なら無駄にならないことをするのは当然だろう。

 

 

 

 

―――だが、結局無駄になったようだがな。

 

 

 

 

 

 

「―――っ!?敵襲です!!この感覚は・・・“竜の魔女”・・・!!」

 

「何ですと・・・!」

 

「撤退しましょう!避難はもう終わっています。この距離なら十分逃げられます!」

 

「・・・確かに我々ならば逃げ切れましょう。しかし、その時には竜の魔女は、その矛先を道中の民に向けることでしょう。最後まで残っていたのは老人や病人でした。彼らが竜の魔女が此処に着くより早くにフランス軍と合流できているとは思えません」

 

「でも――「それなら、そいつ等が逃げ込めるまでの間、黒いのの相手をしてやれば良いんだな?」――え?」

 

「・・・やはり貴方ならそう言うのでしょうね」

 

「勝手に買い被るな。さっきも言っただろう、優先順位の話だ。竜殺しさえ動かせれば、もう小細工に出る必要はない。総力戦に必要なのはサーヴァントであって人間じゃない。それだけの話さ」

 

「しかし・・・」

 

「いけません!貴方を犠牲にして逃げるなど私にはできません!」

 

「勝手に殺すな。なに、町を守れとか、一歩も引くなという訳じゃない。それにあの連中には散々嫌がらせをしてやったからな。隠れているだけでもかってに釣れてくれる。いざという時の策もある。生き残る算段はつけてあるさ」

 

「・・・あなたがそこまで仰るならば、もう私には何も言えませんな」

 

「スオウさん、貴方を見誤っていましたわ。その細身の体からは想像もつかないほどの魂のイケメン度。わたし、感動してしまったみたい」

 

「・・・大体何を言い出すのかは予想がつくが、邪魔になるようなら切り捨てるぞ」

 

「! はい!マリー・アントワネットの名に懸けて。」

 

「え・・?まさか、マリー!」

 

「ええ、私はきっと、こういう時のために召喚されたの。憎しみや打倒ではなく、人々の命の守り手として。あ、でもアマデウスには謝っておいてくださいね。演奏会には遅れそうだって。それと、素敵な殿方と一緒に向かいますって」

 

「うん。・・待ってますから。ムッシュ蘇芳、彼女をよろしくお願いします」

 

「さっき切り捨てるといったんだがな・・・。まあいい、さっさと行け」

 

「ええ、すぐに追いついてくださいね。・・・御武運を」

 




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