幕間2
side 蘇芳
「「新戦力(ですか)?」」
はい、こんにちは。蘇芳です。カルデアに帰還して早1週間。あともう数日でサポート側の準備が整うとのことなので我々肉体労働側は束の間の余暇を楽しんでいる。ちょうどデミサーヴァントが差し入れにクッキーを持ってきたのでコミュニケーションをとっていたところ、現存戦力についての話題が上がった。
此方はほぼ陣営が完成している。切り込み隊長兼盾役のヘラクレス(シャドウ版)、超理不尽な初見殺し持ちの癖に三騎士相手に普通にゴリ押し出来る万能チートスペックの言峰神父、大魔術を第一工程でしかも弾幕張れるわ陣地作成で神殿作れるわの歩く後方支援要塞のメディア。攻防共にバランスが取れた理想的なパーティだ。欲を言えばヘラクレスの一撃を必中に出来たり、言峰への注意を無理矢理逸らせられるような、数で攻められるサーヴァントがあれば尚良い。竜牙兵でも十分だが、サーヴァントの宝具ならより強い敵でも押し留められるからな。
それに引き換え、禅城の陣営はデミとクーフーリンの2騎。シールドで敵を足止めしてからのルーン魔術による爆撃。相性は良いが、如何せん火力不足だ。強力な対魔力持ちには途端に打てる手が無くなり、攻防一体で相手を留めるクラスでは無いので、数や俊敏に物を言わせて来られればかなり厳しい。
マスターを戦力に数えるのは論外だ。禅城がかなりの実力者なのは周知の事実だが、所詮人間。火力がいくらあっても耐久が絶望的だ。それに全サーヴァントの生命線たるマスターを前線出すのはリスクがデカ過ぎる。彼に実力を奮ってもらうのは、サーヴァントだけではあと一歩届かないという時だけだ。初見殺しの切り札は多い方が良い。
「うーん、戦力拡充は願っても無いことだから大賛成だけど、どうやって召喚するんだ?それに、母さんから触りだけ聞いたけど、サーヴァントを複数召喚したり使役したりは魔力的にもルール的にも無理じゃないか?」
ああ、彼は色々と馬鹿らしい理由でこの方面の知識は皆無だったな。それなら問題ない。
確かにカルデアの英霊召喚のシステムは冬木の聖杯を元にしている。しかしどちらかというとシステムそのものは『遥か遠くにある方の聖杯』に近いな。デミサーヴァントの盾を触媒に、カルデア全体の召喚装置を依代として現界させマスターに契約を譲渡する。本来ならそれを何十にも重ねて無敵の軍勢を作って人理定礎の復元を試みるはずだったんだがな。魔力の方もカルデアの動力で賄われているから問題ない。
「へー。カルデアにもびっくりだけど、冬木の他にも聖杯ってあるんだな。そっちにびっくりだな」
まあな。冬木のアレすら人の手で生み出されたものだ。他に誰かが作れても不思議じゃない。現に聖堂協会に数多くの聖杯認定された神秘がこの世には数百も存在している。尤も万能の願望機、英霊召喚の器として機能し得るだけの物なんてそうそう作れやしないがな。冬木の聖杯は確か第三魔法、そしてその担い手の魔術基盤を材料にしていた筈だ。そんな超弩級の神秘をそうそう用意は出来まい。
「・・・あれ?それではミスター蘇芳。カルデアでは無限にサーヴァントを用意出来るのでは?それならセンパイに沢山召喚して貰えば今後の闘いを万全の備えで挑む事が出来ます!」
・・・ほう?なかなか良い着眼点だなデミサーヴァント。だが残念ながらそれは無理だ。サーヴァントを召喚するためには相応の縁と材料が必要だ。等価交換を無視した魔術は抑止が即効でカチ込んで来るからな。だが其れだけのリソースをカルデアから捻出してしまうと通信やら電力やらに支障が出る。私の様に他にアテがあるなら兎も角な。
「・・・へ?じゃあ、どうやって戦力を増やすんだ?英霊の材料って、もしや死体とか生贄とか?」
・・・はあ。持ってるだろうが。それともまさか回収せずに放ってきたのか?この虹色の無駄に四方八方尖ってる石を。
「あ、そういえば拾ったな。確かサーヴァントを倒したら何か出てきたような。もしやこれが?」
そうだ。この石そのものが英霊の材料、受肉するための器の欠片のような物だ。記録には聖杯戦争でこの様な物質が検知されてはいない。大方、後天的でかなり無茶な事象改変による影響か若しくは抑止の助成か何かだろう。4つもあれば召喚には充分だな。幾つある?
「え、えーっと。1.2.3.4.5・・・マシュ、今何時かな?」
「え!?今の時間は・・6時です。センパイ」
「7、と。全部で7個あるぞ」
・・・・6つだな。俺は2つ持ってるからこれで2騎召喚してこい。上手く需要のあるサーヴァントを引ければ良いがな。
「おぉ!!ありがとう!・・・借りがどんど増えて取立てが怖いけど。需要のあるってどんな奴が良いかな?」
そうだな。取り敢えず優先したいのは範囲攻撃出来る奴、それからアサシン若しくはランサーだな。前者は先程言った数の暴力対策兼デミのサポートだな。多少耐久に難があってもスキルでカバー出来てより一層前衛が手厚なる。クーフーリンや君の魔術を十全の状態で通せる。後者は其処から俊敏や気配遮断による伏兵だな。英霊による魔術や白兵戦は確実に相手の注意を惹きつける。其処から最速の一撃まで迫られて無傷で居られる奴はそういない。仮に倒しきれなくても此方のアドバンテージは計り知れない。
「なるほど。まあどっちも確実に引ける方法なんてないし。善は急げだ。早速召喚してみよう!」
〜〜〜数分後〜〜〜
「さて、言われた場所まで来てマシュの盾もセットしたけど、これからどうやって召喚するんだ?」
後は大したことはない。機械が作動したら石を放り込んで魔力を注いだら終いだ。色々と小細工をするなら他にも手間が掛かるが、初心者マスターがあれこれ考えても失敗の元だ。一番簡単な方法で良いだろう。
「分かった。でも、英霊召喚ってこんなに簡単なものなんだな。少し意外かな」
そうだな。だがオリジナルも簡単な魔法陣と詠唱、後は英霊を繋ぎ止めるだけの魔力があれば完成だったからな。魔法陣も詠唱も機械と盾がやってくれる。文明の利器様々だ。
そんな感じで雑談しているとシステムが作動し本格的に部屋中の機械が唸りを上げる。盾を中心に雷が迸りその勢いは加速度的に強まっていく。其処に石を8つ放り込む。どうやら2回に分けなくても一回で2騎ちゃんと召喚してくれるらしい。無駄に親切設計だな。上位世界では心折設計だが。
なんて下らないことを考えている内に光が最高潮に膨れ上がり視界を白で埋め尽くす。それも徐々に収まり、クリアになっていく。座に立ち尽くしているのは・・・。
「・・・・・・・・・あ」
「サーヴァント・アーチャー。召喚に応じ・・・なん・・だと・・・?」
出て来たのは紅い外套に身を包んだ浅黒い白髪の男。だが、様子がおかしい?
「え、いや、でもまさか・・嘘だろ?」
禅城の方も見たことも無いくらい動揺している。上手く言葉に出来ない、と言わんばかりの状態だな。デミも訳が分からずオロオロしている。
「そんな・・・どんな夫婦喧嘩したら皮膚が黒人みたいになっちゃうの!?」
・・・・・・・・・はぁ?
「何でその発想に着地するんだ、戯け!!?」
うん。訳が分からん。暫く考えるのを止めよう。
「はぁ。どうやら私は随分と残念なマスターを引いたらしい。恐らく父親の教育の所為だな。きっとそうに違い無い。だが安心したまえ。初心者マスターの相手は慣れたものだ。何処ぞの三流似非ヒーローではなく、私が指導をs「とうっ!」アダッ!?いきなり何をする!!?」
「一体どうなってるんだ。あのほんわか主夫を地で行ってたのがこんな微妙にイラっとくる喋り方になるなんて、何をしていたんだ未来の俺!!!?」
「ええい、少しは落ち着け!そして五体投地で打ち拉がれるな!謎の罪悪感を植え付けるな!!」
「そうだ!そんなことより、何だって英霊召喚からとう「その呼び方は止めたまえ。私にそう呼ばれる資格は無い。」・・・なんで!?」
「私は君が良く知っている男と同じ名と躰を持っていても別の存在なんだ。それどころか、八つ当たりした挙句に返り討ちに遭った情け無い男だ。非常に遺憾だが、泣かせることしか出来なかった私では、幸せにしてやれたアイツと同じ呼び名は相応しくない。アーチャーと呼んでくれれば・・・いや、それでは他の弓兵が来た時に不便だな。では、エミヤ、と呼んでくれ。あいつはもうこの名を名乗ってはいないだろうからな」
「・・・・・・・・・わかった。でもその代わり、マスターとしてガンガン命令だすし、無茶振りしまくるから覚悟しとけよ!!」
「ふっ、では期待に応えるとしよう」
おーい、良い感じに話進めてる所悪いが、もう一人のサーヴァントの方にも返事してやってくれ。
「「あ、しまった!!?」」
忘れてたな、こいつ。ほら、そっちの伊達男も何か言ってやって。
「いや別に、そっちの紅いのと違って俺地味ですし?忘れられたってどうもないですけどね」
そうはいっているが、かなり不貞腐れているのが丸わかりな男。服装は全体が緑一色。獲物が見えないが、戦士や魔術師ではないな。修羅場を経験した独特の緊張感を持っているが、騎士というより狩人だな
「そいじゃまあ、改めて自己紹介と行きますか。俺の名はロビンフッド。いや本当は違うんすけど、そういう事にしといてくんな。旦那がそう呼んでくれたからには、ハッタリでもそう名乗らなくちゃな。あ、二心を働くつもりは無いんで、よろしく」
ここまで読んでいただきありがとうございました。