ファントムオブキルSS   作:水無 亘里

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月神の憂鬱~Side:アルテミス

「マスター! 聞いているんですか!?」

 

 そんなふうに僕を怒鳴りつけてくる黒髪の麗人、アルテミス。絹のような髪を短めに切り揃えたその女性は、女性的なラインを描く胸元で腕を組み、月のように美しい瞳で僕を睨めつけていた。そのあまりの迫力に、思わず尻込みしてしまったとしても、それは仕方ないことだろう。

 

「……えっと、何かな……? アルテミス」

「何かな? ……では、ありませんッ!」

 

 と、言いながら僕の胸倉を掴んできた。どうしたんだろ、怖いな……。

 

「私は見ていたんですよ? ロンギヌスさんに、不埒なことをしていましたね!?」

 

 不埒なこと……? 何かしただろうか。僕はロンギヌスの修行に協力するため、弱点をつついていただけなのに……。

 

「何か勘違いしてないかな? 僕は不埒なことなんてしてないってば。ただ、ロンギヌスの修行のため、弱点を攻めようと……」

「弱点を攻める……ッ!? そ、そんな、ロンギヌスさんの苦手なところを執拗に攻め立てるだなんて、なんて不埒な……ッ!」

「え……、いや、執拗にって……。そんな……」

 

 だが、僕の話を聞く様子もなく、アルテミスは弓を構えた。

 

「今日という今日は許しませんッ! 覚悟してもらいますよ!!」

 

 えぇー……、という僕の声を無視して、アルテミスは僕の手を引いた。

 弓使いらしいごわごわした手の感触の中にも、柔らかい女性的な感触も感じられて、僕は空気も読まずに少しドキドキしてしまっていた。

 アルテミスの髪から香る爽やかな匂いもまた、僕の思考を奪おうとしていた。

 

――

 

 これはなんと言っただろうか。ウィリアム・テル?

 僕は頭の上に鞠みたいなボールを乗っけて、立ち尽くす。そこへ矢を番えて身構えるアルテミス。

 その双眸は美しく開かれていて、なんなら彼女が矢を射る前に、僕は視線に射られているまである。

 ……ともかく、そんな二重の意味で背筋を振るわせながら、僕は彼女の威姿をその目に収めていたのだった。

 そして……。

 

 カッ! ……と。

 

 月を思わす瞳が見開かれた瞬間には、矢が僕の頭上を掠めており、すっと、鞠の重みだけが僕の頭上から消え去っていた。

 ふぅ……。僕の吐息と重なるように、アルテミスが胸を撫で下ろしていた。それだけ緊張感を持ってもらえるのは少しばかりありがたい気分だった。

 本当に何かの腹いせに当ててもいいやー、くらいの気持ちで僕を使っているのかと思っていたけれど、僕以上に緊張感を持ってくれているのなら、それはどこか嬉しくすら感じてしまう。

 ホントは怖くて、ガクブルだけれど、少しだけ胸が温かい。どこか倒錯めいた不思議な感覚だった。

 俗に言う、吊り橋効果にも近いものなのかもしれないけれども。

 それから、何度も頭上に鞠を乗っけるが、アルテミスはそれを全て的中させてゆく。

 

「すごいな……、アルテミス。はぁ……、まるで美しい女神でも見てるみたいだよ……」

「え……?」

 

 その瞬間、顔を赤らめたアルテミスの、狙いがズレてしまう。

 危なげなく的に吸い込まれていたはずの矢が、寸分違わず僕の顔へ……。

 って、死ぬわッ!?

 

 尻餅をついた僕の元へ、アルテミスが駆け寄る。

 

「だ、だいじょうぶですか!? マスター!」

「うん。だ、だいじょうぶ……。……死ぬかと思ったけど」

 

 彼女に支えられ、どうにか立ち上がる僕の顔をまじまじと検分し始めたアルテミス。……なんか、顔が近い。緊張するな……。

 ぺたぺたと僕の顔に触れて傷がないか見たり、僕の首をくいと回してみたり、まぶたを引っ張られ瞳孔までチェックされた。

 

「……だいじょうぶ……、みたいですが……」

「あの、アルテミスさん……?」

「……? なんでしょう?」

 

 きょとんと首を傾げるアルテミス。って、いやいやアンタ、そんな可愛らしく顔を上げると尚更……。

 顔が近い。アルテミスの黒い髪がさやさやと流れ、彼女から放たれる清涼な芳香に、僕の心臓は早鐘を刻み出す。

 やがて、アルテミスもそれに気づいたのか、顔を真っ赤に染めながら距離を取る。

 

「も、申し訳ありません。マスター。怪我させていないかと心配で……」

「ううん。だいじょうぶだよ。咄嗟に躱したみたいだから」

「……ですが」

 

 アルテミスは、それでも僕に気遣わしげに視線を送ってくる。

 そんなアルテミスの顔を見ていたら、どこか悪戯心が刺激されてしまう。同じ謝るなら、もっと……。ねぇ……?

 

「あ、あの……マスター?」

「アルテミス。キミは僕を怪我させそうになったよね?」

「は、はい……。申し訳ありません……」

「反省が必要だよね?」

「はい……。私にできることであれば、なんでもやりますのでどうか……」

 

 ふふ……、そう……。なんでも、ねぇ……。

 

「ねぇ、もう一回言ってみて。なんでも……?」

「ええ。私にできることは、なんでもやらせていただきますので……、どうかご容赦を……」

 

 僕はその言葉にゆっくりと頷いてみせた。

 

「アルテミス。僕の心は寛大だからね。キミを許してあげるよ。……ただし、お願いをひとつだけ聞いてくれたら、……ね?」

 

――

 

「ふぅ……、ん……。ど、どうですか……? マスター?」

「うん、良い感じだよ……。そのまま、うぅ……続けて……」

 

 僕は快感にその身を震わせながらも、アルテミスに続きをせがんだ。

 アルテミスは静かに、コクリ……とそのしなやかな首を縦に動かした。

 再びアルテミスの身体が上下運動を始める。その丁寧かつ執拗なまでの愛撫に僕は身も心も蕩けそうなほどだった。

 思わず愉悦に浸るような声が漏れてしまう。

 

「もう少し上の方もお願い……。ああっ、そこ! そこ、すごいよ……」

「ふふ、分かりました……。ここですね……」

「ふぁっ! すごいな、アルテミスは、……まるで僕の思ってること全部分かってるみたいだ」

「いえ、そんな……。全部は分かりませんよ、さすがに……。ですが、なんとなくは分かることもあります。……きっとこうして欲しいんだろうな、とか」

 

 するとアルテミスの細い指の感触が、よりはっきりと実感できる。艶めかしい手の動きが、滾るような深い快感をもたらしてくる。

 

「ああ、アルテミス。僕もう我慢できないよ。そのままもう一回ギュッてしてくれないかな」

「……もう、甘えん坊さんですね。今回だけですよ?」

 

 アルテミスが全体重を預けてきた。僕はそのまま快楽に溺れるようにして意識を手放してしまう。

 

 ……そんな素晴らしいマッサージをしてもらったのだった。

 しかし、背中に乗っかったアルテミスの感触や温もりに、違う意味でも興奮してしまっていたのは、本人には絶対に内緒だ。殺されちゃうからね。




どうもこんにちは初めまして。ランク144の亘里です。普段は余所で一次創作してますが、欲望が抑えきれなかったので二次始めました。二次をやるうえで、ガチエロを書こうと思ったんですが、なんかキャラ的に合わない気がしたのでちょいエロ路線に変更。度胸がなかったとも言います。
アルテミスさんはテンプレ的なツンデレなのでネタが一瞬でできました。むしろちょいエロに路線変更するまでのが長かった。なんかしっくりこなくて……。
今後も思いついたら何か書きます。お楽しみいただけたら嬉しいです。ではでは。
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