魔法少女まどか☆マギカ Remember You Will Die 作:y=ー( ゚д゚ )・∵.ターン
一発ネタです
「………ん」
無意識的と言うべきか、必定と言うべきか、意識の覚醒に伴い味わった感覚は「不快感」だった。
視線を埋め尽くすのは画材をパレットに撒き散らしたような極彩色、そこに形作られた巨大で歪に捻じ曲がった菓子の山、酷く甘ったるい臭いが鼻腔を満たす
少なくとも、番人受けは有り得ないデザイン
そんな異界の中で「彼」は目を覚ました。
「くっ…」
酷く頭が痛い、まるで鉛を脳みそに詰められた様な重さが彼を苛んでいた。
「ここ…は…?」
何故か彼は、そんな番人受けには程遠い異界に既知感を感じていた。
かつてその頂を目指し、歩み続けたあの魔塔――――タルタロス
この異界にはあの魔塔と同じ「空気」が満ちていた。
ならばこの場所は…タルタロスの幾百層の内の一つなのだろうか?
無言の内に瞳を閉じ、暫しの思考に浸る
「…違う」
解答は否
言葉には出来ないが、この異界の「空気」はタルタロスの「それ」とは大きく違う
似てはいるが性質が違うと言うべきか
形容のつかぬ違和感が、両者を隔てる確かな違和感となり彼にこの場所がタルタロスではないという事を自覚させた。
そうなると発生するのは新たな疑問
ここはどこで、何故自分はここに居るのか?
『ーーーおやすみなさい』
目を覚ます直前の記憶、そこには金髪碧眼の少女「アイギス」の顔と、彼女が自分にかけてくれた言葉が確かに存在した。
『ーーー私が…貴方を守るから…』
そこで仲間達の声が聞こえて…それから………それから?
ダメだ。思い出せない
「なんだろ…ここ…」
何かが欠落した様な違和感と、既知感を訴えかける本能とが鬩ぎ合い、正常とは言い難い現実を見据えることを妨害する
あぁ、これは良くない、良くないことだ。
彼はそれを感じると、胸元に提げてあるポータブルMP3プレイヤーを手に取った。
耳にイヤホンのフックをかけると、迷うこと無くスタートボタンを押した。
~~~♪
聞きなれた音楽の音、テンポ、響き
それらが積み重なり「正常」の感覚を思い出させてくれる
タルタロスの外では、毎日の様に繰り返して来た行為
それが最も自分に「正常」を与えてくれる行為であると、彼自身が一番良く理解している
「…とにかく…出口…探そうかな…」
ジッとしていても始まらない、そう導き出してからの動きは早かった。
ポケットに手を突っ込んだまま、彼はゆっくりと歩を進め始めた。
どれ程歩いただろうか
遠くから響く微かなが振動が身体を揺すった。
急いでMP3プレイヤーの電源を落とす
それから次いで微かな音が聞こえた。
爆音、何かが爆ぜる音だろうか?
それが聞こえると、毎度のように床が若干震え、耳の奥がほんの少し揺られた気がした。
「…音?」
この空間で初めて耳にする音
日常で耳にする事の無い類の音であるのは残念だが
「…なにか…居る?」
全く無意識の内に、彼は太ももの付け根の「ホルスター」に手を伸ばしていた。
パチリという音と共にボタンを外し、拳銃の形をした「それ」を引き抜いていた。
ーーー銀の拳銃、「召喚機」
S.E.E.S.と刻印された銀のスライドが、再び握られる事に歓喜する様に輝いた。
だが、再びそこで彼は違和感を感じた。
「召喚機…?」
何故「召喚機」がここにある?
記憶が途切れる直前までは持っていなかった筈だが…?
全くの無意識の内に求めた唯一無二の武器の存在、その存在が再び彼を悩ませる
「…んー…」
悩むが…答えは出ない
「…どうでもいい…」
無理に答えを作ろうとする時、めんどくさい時には彼はこの一言に逃避する癖があった。
溜息を気だるそうに吐くと、彼は「召喚機」のグリップを強く握りしめて歩みを再開した。
迷っている暇は無い
何れにせよこの最奥には「何かが確かにいる」のだから
ドアを潜ると耳に音が届いた。
先程の小さな音ではない、より大きな音だ。
どうやらこの部屋で間違いはないらしい
しかし、その事実よりも視界に映る光景が歪だった。
「…なんだこれ」
フリルのついたミニスカートの少女がマスケット銃を振り回しながら「何か」を撃ち舞っていた。
甘ったるい臭いに混ざり、火薬の独特の香りが混ざってきた。
非日常的…絵本の様なファンシーな世界観を保ってきたこの異界に洋画の様なハードボイルドな異物が混ざったような感覚に苛まれる
硝煙などとは程遠いこの世界に一番の対極に位置する香りが確かに存在した事に対する疑問か
何れにせよ、彼女はこの世界にとっての「異物」に違いない…彼と同様の存在だ。
少女の銃舞を眺めていると、小さな声が聞こえた。
『やっちゃえ!マミさん!』
『頑張ってください!』
桃色の髪の毛の少女と青い髪の毛の少女
が、大きなケーキの後ろから銃舞の少女に歓声を送っていた。
『悪いけど、これで決めさせて…貰うわよ!』
銃舞の少女ーーー『マミ』が声を上げると、巨大なリボンがいつの間にか小さな人形のような物体を締め上げていた。
ギチリと音を立てて締め上げられた人形風の物体は、その躰を歪に歪ませた。
『ティロ…!!』
マミが手をかざし、マスケット銃の先端を対象に向けた。
マスケット銃が突如として変形し、大砲のような大筒へ形を変えた。
とどめを刺すつもりだ。
『フィナーレ!!!!』
爆音、閃光、土煙
この世全ての混乱を詰め込んだ様な喧騒が、一瞬で彼の感覚を蹂躙した。
「…っ!」
思わず目を細める、何が起こっているのかまるで理解がつかない
だが
「…」
何故か彼は『目をそらしてはならない』と感じた。
勝利を確信した時にそれが零れ落ちていく感覚を、彼は嫌と言うほど実感しているから、何度もそれに挑み続けて来たから
『えっ…?』
マミが声を上げたのが、変化の現れだった。
次の瞬間にソレはやはり現実と化す
砲弾を叩き込まれた人形風の物体の口から、丸く長い物体…否、生物が流れ出た。
蛇をイメージさせる異形、確かな畏怖を感じさせる悪形
「あっ…!」
しまった。と言うマミの表情
もう遅い
襲いかかる影が、獰猛な顎をその首めがけてーーー
「ーーーペルソナ」
彼は迷うこと無く『召喚機』の銃口を自らに向け、引き金を引いた。
『ーーーペルソナ』
凛と透き通る声を鹿目まどかは確かに聞いた。
「何…?」
まるで時間が止まってしまったような錯覚、マミさんが死のイメージに飲まれてしまうその瞬間の事だった。
視界の隅に小さく、鹿目まどかはソレを見た。
こめかみに拳銃を当て、引き金を引く男の姿を
その背後から現れる、死神を彷彿とさせる棺の使者の姿を
硝子の破片のようなものが飛び散る幻覚と、青の燐光が男の足元から立ち上がる
『ーーータナトス』
咆哮、絶閃
光とも思える速度で、マミさんに噛み付こうとする影に『男が呼び出したと思われる怪物が、その手に持った刃で影を絶った。』
まるで、映画の中の怪獣…いや、死神…
『ガァアア!!!!!!!!』
一閃では終わらぬ、そう訴えかけるように死神は影に『喰らいついた。』
噛み付き、引きちぎり、咀嚼し、また噛み付く
どれほどの再生を繰り返そうと、永遠と死神の蹂躙は続いた。
まるで…『逃がさぬ』と言うように
鹿目まどかは…否、この場の全員が意識した。
その死神を通し、全員が認識した。
『死』は、思っていたよりもずっと近くにあると
影の最期の一片が消え失せた時、死神がより一層と大きな咆哮を上げたのを鹿目まどかはその網膜に焼き付けていた。
時は待たない。
すべてを等しく、終わりへと運んでゆく。
…では、終りを迎えた『時』はどこに向かうのだろうか?
『これはこれは…またお会いしましたな…「客人」よ…』
青を基調とした部屋
常に上昇を続けるエレベーターの様な一室
その中央に鎮座する草臥れた風体の老人がギョロリと目をギラつかせた。
『まさか…貴方に今一度試練が訪れるなど…私は夢にも思っておりませんでした。』
老人がタロットを捲り、笑う
奇妙な老人の語りは終わることを知らない
『「命の答え」のその先…ここからは私も、完全なる未知の領域となる…』
果てに辿りついた命のその先
その先にあるのは、一体何なのだろうか
『客人よ、どうかその道に幸がありますように… 』
老人が最後に捲ったカードには、『搭』のイラストが描かれていた。
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