魔法少女まどか☆マギカ Remember You Will Die 作:y=ー( ゚д゚ )・∵.ターン
2012.April.8(1)
彼は孤独だった。
幼き日に両親を失い、なんの因果か『世界を滅ぼすモノ』を封じる為の器として利用された。
彼は無気力だった。
他者との繋がりを持たず、何一つとしての『答え』を得ることは無かった。
だが、少年は出会った。
かけがえの無い絆と、答えを与えてくれる仲間達に
彼は別れを知った。
逃れられぬ『死』、それは誰にでも訪れると言う事を
彼は意味を知った。
その1年の意味を、自らが『生きる』事を始めれたと言う事を
彼は答えを得た。
『命の答え』…自らの生の意味を
そして…彼の物語は終わりを迎えた。
少なくとも、その時は
#1
2012.April.8
『Spring of Birth』
「あ、ぅ…」
眼前で起こったことが理解出来ない
巴マミは、極度の緊張と恐怖からか、正常な判断能力を失っていた。
倒したと確信した魔女、だがそれはフェイクであり、次の瞬間には本体が流れ出てきていた。
圧倒的な『死』のイメージがその首をもたげ、獰猛な牙を剥く
このまま終わるのだろうか?このまま死ぬのだろうか?
指先が震え、舌が震える
数瞬にも満たぬ刹那ではあるが、その魂は確かな確信を得るに至る
『自分は恐らく死ぬだろう』と言う、絶望に満ちた確信へ
「あ、あぁ…」
牙が向かってくる、近づいてくる、速い、避けれない、動け、動いてよ、駄目、足が、震え、牙、来、あ、あ、あ、
「いや…」
死ぬ
「いや…!」
死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ
「いやぁあ!!!!!」
死が、喰らいつく
その白い首筋に、牙を突き立てようとーーー
『ペルソナ』
その瞬間であった。
絶望の一瞬、時が止まってしまったような錯覚が巴マミに走った。
男の声、落ち着き払った声音
ただの男の声、だが巴マミにはそれが何より心強く、それが最期に垂らされた蜘蛛の糸の様な錯覚を覚えた。
『タナトス』
次いで聞こえる銃声、硝子が砕ける様な音だった。
そして次の瞬間、それは起きた。
首筋に近づいていた牙が、吹き飛んだ。
「え…!?」
目の前に現れたのは『死神』だった。
多数の棺を翼のように展開し、その手に握られているのは長大な刃
先程の『死』のイメージを覆した『死神』は、巴マミに一瞥をくれることも無くただ眼下の敵を滅ぼす為に刃を振るう
出鱈目な太刀筋、『死神』が力任せに刃を振るう
上から下から右から左から…何という速さだろう
再生を繰り返す魔女に対し、『死神』は恐ろしい程の力を叩き付けることで止めを刺そうとする
『逃がさぬ』と『お前は終わりだ』と
その兜の奥の虚無の双眸が、魔女の終わりを告げるようにギラついた。
『ガァァアアア!!!!!!!』
咆哮…魂の底から『恐怖』を呼び起こすような絶叫
次の瞬間、『死神』の牙が魔女の首筋に突き立てられいた。
そのまま肉を引きちぎり、咀嚼を繰り返した後、再び喰らいつく
なんという事だろうか、この『死神』は魔女を喰らい尽くすらしい
喰らう、引き裂く、また喰らう
やがて魔女の表情が苦悶に満ちたその瞬間、遂にその瞬間が訪れる
絶命の瞬間だ。
大きく身体を震わせた魔女の顔面、その額に『死神』の刃が乱雑に突き立てられた。
びくりと身体を一度だけ跳ねさせた魔女は、やがて動かなくなった。
今ここに、巴マミは確かに生存した。
定められた死は、ここに覆された。
役目を果たしたタナトスが、一度大きな咆哮を上げた後、透過して消えた。
タナトスが消えるのと、異界に変化が生じたのは同時のことだった。
全てが歪んだ世界が、消えていく
まるで油絵具を専用の薬品で溶かしたように、泥のように歪み、消えた。
気がつけば、彼は大きな建物の駐輪場と思しき場所に立っていた。
理解は及ばないが、先程倒したシャドウがあの異界を創り出していたのだろうか?
それに何らかの理由で引きずり込まれ、その主を撃破したことにより異界が崩れ落ちた…と言うことだろうか
「…そもそも、なんで俺がここに…」
彼の疑問は最もだ。
彼は確かに、全てを死に至らしめる厄災『ニュクス』を『大いなる封印』により文字通り『生命を賭して』封印した筈だ。
つまり…死んだ筈なのだ。
では、何故彼はここに居る?
死した筈の者が、何故ここに?
『封印』が解けたのだろうか?
そこまで考えて、彼は頭を振った。
「いや、有り得ない、おかしい」
『封印』が解けたとしたら、世界の生命は全て等しく『ニュクス』に滅ぼされている筈だ。
桐条の力で分散された12体の大型シャドウ…それを撃破することが『ニュクス』を目覚めさせる条件であった。
だが、12体の大型シャドウを撃破したのは他ならぬ彼、いや、『彼ら』なのだ。
『封印』が解けているというのなら、12の大型シャドウが居ないこの現状では、即座に『ニュクス』が目覚めるという事になる
だが、見たところ…少なくともこの街は滅んでいない
調べてみないことには何も言えないが、滅んでいない…流れる空気が、滅びの空気を知る彼に『この世界は生きている』という事を確信させた。
万が一『封印』が解けたとしても…そもそもここに自分が居ると言う事実に辻褄が合わない
死んだ。確かに自分は死んだのだ。
謎が謎を呼び、自己を支える基盤が揺らいでいくのを感じる
自分が存在するという事実に、酷く不安を覚えた。
『あ、あの…』
彼が深い思考に耽っているその時、背後から声がかけられた。
チラリとそちらを見ると、3人の少女が居た。
桃色の髪の毛の少女、青い髪の毛の少女、黄色い髪の毛の少女
成程、この街の少女達は色という『個性』には事を欠かないらしい
「…何かな?」
『ありがとうございます…その…私たちを、助けてもらって…』
黄色の少女が、呆然とした様にそう言った。
先程の恐怖が抜けきっていないのだろうか、微かに身体が震えている
「…いいよ、別に」
素っ気なく答えた彼は、握ったままの『召喚機』をホルスターに戻しつつ問う
「…それよりさ、今日の日付とこの街の名前を教えて貰えるかな…出来れば、何年かも教えて欲しい」
『えっ』
現状の確認を冷静に優先した彼の問いが、黄色の少女に投げかけられた。
少女は何やら困惑しつつもそれに答える
『…えっと…今日は…2012年の4月8日です…街の名前は、見滝原です。』
「…2012年…」
彼が最期を迎えた日は2010年3月5日である
つまり…2年の時が経過した世界に彼は居るという事になる
それに見滝原といえば、辰巳ポートアイランドの対岸に位置する街だ。
「…辰巳ポートアイランドって、分かる?」
『はい、ここのすぐ近くの人口島ですよね?』
当たりだ。
つまり彼は『二年の時が経過した世界の、辰巳ポートアイランドの極めて近くの街にいる』ということが確定した。
「…ありがとう、じゃあ、これで」
調べなくてはならない
調べねばならぬことが多すぎる
内心の焦りを隠しつつ、彼はゆっくりと歩みを進めようとした。
『あ、ま、待ってください!』
そんな彼の背中を、黄色の少女が呼び止めた。
「…何?」
『あ、貴方は…何者なんですか?』
当然の問いかけが投げかけられる
『さっきの怪物は…一体なんなんですか…?』
青の少女は訝しむように、桃の少女は恐れるように、黄の少女は未知を見るように
それぞれの目線が彼を射抜いた。
「…結城理、『元』月光館学園2年生」
彼はただそう答えた。
『ここが見滝原か』
『学園生活は長かった筈なのにな、近くにある筈のこの街を訪れるのは始めてだ。』
『そうっすねぇ、俺も来るのは初めてっすよ!』
『アンタの場合は観光気分でしょ?…ホント、真面目にやりなさいよね…』
『ゆ、ゆかりちゃん…そこまで言わなくても…』
『桐条先輩、本当にこの街にシャドウが?』
『そうだ天田…ここ数ヶ月、影時間が再び発生している…この街だけ、限定的にだ。』
『何かが起こってる…それに間違いは無い』
『もーー、重いっすよ!真田先輩に桐条先輩!気楽に行きましょうよ!』
『アンタが気楽すぎるのよ…』
『あ、はははは…』
『ワン!』
見滝原に、6人のペルソナ使いと1匹のペルソナ使いが到着した。
辰巳ポートアイランドが見滝原の近くにあるって設定は独自設定です。
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