Muv-Luv 〜赤き翼を持つ者は悲劇を回避せんがため〜   作:すのうぃ

14 / 17
二ヶ月振りですね。投稿が遅れてしまい申し訳ございません。


13話 感謝を

 

 

あったかい

 

あったかいけど、ときどき もえるほのお みたいにあかいいろがみえる。

 

でも、そのほのおの ねっこにあるのは、さみしがりの あお。

 

おとしちゃわないように、しっかりと りょうてで だきかかえる。

 

なくしたくないから。こわれたら、ついないちゃうから。

 

このいろが2ついっしょにあるなんて。

 

だからなのかな。なんだか、わたし、いっしょにいて、むねが ぽわっとして あったかくなるの。

 

だってそのいろは、クリスカとおんなじいろだから。

 

 

 

 

 

アルゴス01の目標地点への到達を確認。不知火・弐型 機動試験プログラムを終了。

 

今日も、予定されていたスケジュールである【ハイヴ内に於ける不知火・弐型の機動試験】を終了。

ユウヤ・ブリッジス少尉の搭乗する不知火・弐型は理想値のプラスコンマ5秒を叩き出すという、中々の高成績を修めた…………の、だが。

 

その途中、少々見過ごせない所があった。

そこをスルーしてしまうと問題が発生するので、業務外ながらもちょっと説教してやろうと、作戦指揮室から野外格納庫へと続く廊下を歩いていた。

 

 

 

「ブリッジス少尉、搭乗員保護機能を最小に設定していたわね」

 

ん?

 

取り敢えず最初の一言は何て言おうかと思考していると、前方から聞き覚えのある声。

少し歩調を速めてみると、三人の女性の姿が視界に入った。

あれは、うちのオペレーター達だ。一通りの仕事は終わらせたらしく、その態度に堅さは無いように見える。

 

 

「えぇー、それ本当? 確かに途中から動きが激しいなぁとは思ってたけどさぁ」

 

管制ブロック内の様子を記録していたモニターを見ていたらしいラワヌナンド曹長の言葉に、テオドラキス伍長は呆れを含む声で返した。

 

その反応は至って当然。なにしろ、見てた(黒田 冬夜)だって同じ心境なのだから。

 

「あの、何がいけないんですか?

理想値のプラス コンマ5秒って、かなりいい成績なんじゃ?」

 

「あー、リダ。リダ・カナレス。あんた勉強不足にも程があるわよ。よくオペレーターになれたわね。まぁ、私は先輩だから? 教えてやらん事もないわ」

 

お願いします先輩、と頼み込むカナレス伍長に優越感でも得たのか。ふふんと薄い げふんげふん可愛らしい胸を張るテオドラキス伍長。いや、年相応でいいと思うんだけどね、俺は。

 

「いい? 搭乗員保護機能ってのはその名の通り、戦術機の機動で乗ってる衛士が怪我しちゃわない為のリミッターみたいなモンよ」

 

「え? 戦術機の機動で怪我するって、そんな自爆めいた事あるんですか?」

 

「あったりまえっしょ。考えてみなさい。時速720kmで飛ぶ飛行機が急停止したり進行方向の逆に突然ぶっ飛んだり、その場でサーカスのピエロ顔負けの大回転繰り出すのよ? 強化装備が有るとはいえ、ある程度出力抑えなきゃ 乗ってる衛士がミックスジュースになるわよ」

 

「棺桶って言うよりミキサーですね、ソレ」

 

うへぇ、と嫌な顔のカナレス伍長。俺もシェイクされた自分の姿を想像して気分が悪くなった。

なんか、喰われるより酷い死に方だ。

死因: 戦術機の三次元機動時に起きた管制ブロック内の衝撃による外傷

とか報告書に書かれるんだろ、嫌すぎるわ。

 

「でも、それと今回の成績とどんな関係があるんですか?」

 

「これだけ言って何で解んないのよ…………」

 

頭痛いと言わんばかりに額に手をやるテオドラキス伍長。

丁度いい。なんとなく、オペレーター達と話した事少ないなと考えた俺は、ちょっとばかり会話に加わる事にした。…………あくまでプライベートタイムだからな。仕事タイムは終わったんだからな。

 

「確かに、戦闘中に搭乗員保護機能を最小に設定する時も稀にある。でもソレは本当に本当の非常時にであって、通常機動を試験する時にする事ではない。常時限界機動して関節パーツの摩耗が早くなったり衛士の体が壊れたりしたら堪らんからな」

 

「あ、大尉」

 

ビシリと敬礼して来た彼女らに返礼してから、今は仕事タイムじゃないからそんな堅くならなくていいと告げる。いやまぁ、伍長が大尉相手にそれは厳しいかも知れんけど。そこら辺、軍は厳しいからな。

 

「あー、そうなんですかー? なら良かったです。私、なんか堅いのダメで」

 

あ、割とそうでもなかったみたい。

リダ・カナレス伍長は口調こそ敬語であるものの、そこに堅っ苦しい感じは無い。敬語がデフォなのか。

 

「インペリアルって、何だか堅そうなイメージあったんですけどね。タカムラ中尉がそうですから。あ、別に中尉がダメって訳じゃないですよ? 日々職務を忠実にこなす中尉のお姿はかっこいいと思いますし…………」

 

「リダ。幾ら堅くならなくていいと言われたからと言って、モノには限度ってモノがあるのよ?」

 

「いや、ラワヌナンド曹長。別に俺は構わないぞ? つかそうして貰えると助かる。変にガチガチになられるの嫌だし」

 

「ほら、大尉だってこう言ってますし」

 

何よりも俺の肯定があったのが理由なのか、カナレス伍長の駄目押しを受けたラワヌナンド曹長は そうですか、と頷く。そして、

 

「では、大尉。取り敢えずタカムラ中尉とのご関係を。この前の痴話喧嘩に始まり、格納庫での告白と、これは単純に『仲が良い』なだけでは無いと、私は推測します。ストレートに言いますと貴方方交際しているのですか?」

 

…………。

 

………………。

 

……………………うん。

 

なんか、アレは形だけの制止だったらしい。

 

次々繰り出される馴れ初めは、やら 既にご家族の承認は頂いているので 、やらの 意味不明な質問を躱しつつ、先程からテオドラキス伍長が沈黙している事に気付く。

 

直立したまま、その姿勢を崩さない彼女の表情は堅い。

ラワヌナンド伍長やカナレス伍長がフランクに接してくれてるのに、一人だけお堅いのはいかん。

唯依に続き、貴重な年下職員なんだ。是非ともトークしたかった俺は取り敢えず話し掛ける事にした。

 

「テオドラキス伍長」

 

「は、はいっ」

 

見よ、この反応。カチンコチンである。

 

「先輩、何をそんなに堅くなってるんですか? 折角大尉がフランクに接しろって言ってくれてるんですよ? こんな事 滅多に無いのに、勿体ない」

 

「いや、勿体ないとかそんなんじゃなくて……」

 

難しそうな顔で、こちらをチラリと見るテオドラキス伍長。

今分かったんだが、彼女。身体が半歩くらい下がってる。

さっきから俺に対する態度といい、もしかしなくても俺、警戒されてる? だとしたらショック。

自分でも知らない内に 何かしてしまったのだろうか。

 

「んー。まぁ、別に無理はしなくてもいいからさ。大体、こんな事言う上官なんて接し方分からんだろうし」

 

「も、申し訳ございません……」

 

テオドラキス伍長はシュン、とうな垂れる。

……なんか、かわいそうになってきた。俺が居たら萎縮しちゃうだろうし、ここは撤退しますかね。

 

「んじゃあ、俺はちょっと主席衛士さんにお小言言って来るから。今度またPXで飯でも一緒に」

 

「了解です。その時には是非先ほどの続きを」

 

「大尉、お仕事頑張って下さいね」

 

「…………」

 

オペレーター達の声を背中に、格納庫へ続く廊下を進む。

今度はテオドラキス伍長とも普通に喋れたら良いんだけどなぁ、なんて考えながら。

 

 

 

 

………………あ、搭乗員保護機能の説明すんの忘れてた。

 

 

 

 

 

 

 

「先輩、何であんなカチコチだったんですか? 氷漬けにされたマンモスだってビックリですよ」

 

「うっさいわね。例えが訳わかんないわよ」

 

「……ねぇ、テオ。あなた、年上の男性が苦手なの?」

 

「うっ」

 

「えー? そうなんですか? 意外と照れ屋さん なんですねぇ」

 

「え、だ、だってさぁ。普段同性とばっか喋ってるから、男の人とどう接すればいいのか分かんないのよ」

 

「いや、そこは別に普通でいいんじゃ」

 

「その『普通』が出来れば苦労してないのよ。私にしたら、何で上官相手にあんな軽く接せるのか分かんないわ」

 

「いえ、さっきも言いましたけど、やっぱり大尉が楽にしろって言ったからですって。これがドーゥル中尉とかだったら私だって自重しますけど、大尉は普段、どんな階級の人にだってあんな感じですからね」

 

「確かにそうね。この前も整備兵と楽しく喋ってる所を見た事があるわ」

 

「ふーん。そうなんだ」

 

「男の人に緊張する気持ちも分かるけど、コミュニケーションを取る事も大事よ。特に日本のインペリアル、それも あんな階級の人が海外に来る事も滅多に無いんだから」

 

「うん。それは分かってるけどさぁ…………」

 

「これは、時間かかりそうですねぇ…………」

 

 

 

 

 

 

 

結論から言うと、一足遅かった。

 

「もう無理はしなくていい」

 

「……おい、そりゃどういう意味で言ってんだ……?」

 

俺が現場に着いた時には既に唯依とユウヤの口論が繰り広げられていて、格納庫内にはピリピリとした雰囲気が漂っていた。しかも、いつもよりも深刻っぽい。気まずげに眉を寄せる整備兵達が気の毒過ぎる。

 

「XFJ計画の要求仕様は、我が国が置かれた状況から導き出された物であって、貴様の個人的な感情如きで変更出来る物ではない」

 

「だからそうじゃねぇ。違ぇってんだろ。俺は『こんなピーキー過ぎる機体を実戦に出しても、乗ってる衛士が扱い切れずに無駄死にするだけだから、この仕様は変更すべきである』って意見を開発衛士としての立場から言ってんだよ!」

 

かく言う俺も、普段とは違う二人の様子に対して違和感を覚える。

確かに、こんな風に二人が衝突する事は多々あった。が、前の告白騒動の時を例外として、基本的に唯依が小言を言い、それに苛立ったユウヤが皮肉を織り交ぜた返しをして チャンチャン、というのが普段の流れ。

しかし今回は、唯依の物言いが輪にかけてキツイ。ご立腹でらっしゃるのだ。

 

と。

 

「……アイツなに言ってんだ、理想値のコンマ5秒なんて記録出せたんだからいいじゃねえかよ!」

 

「………ん?」

 

何か、二人の口論とは別に、聞き覚えのある声が耳に入った。

具体的に言うと、とある褐色少女によく似た声が唯依に対して文句を言ってるのを。

取り敢えず、その声のした方向に行ってみる。いや、声の主に関しては ほぼ確信に近いモノを持ってるけど。

 

目的の人物が居る場に辿り着くのに、一分と掛からなかった。ぶっちゃけ予想とかしなくても姿が見えてたんだけどね。

 

「何なんだ、もしかして嫉妬でもしてんのかぁ? はんっ、お姫様には到底出せねぇもんな。戦術機を嗜み程度に乗ってる奴には!」

 

「タリサ、言い過ぎよ」

 

うっせぇ! と 褐色少女。タリサ・マナンダル。

 

「はぁ、タリサったら…………あら?」

 

その隣に居た金髪の美女は、ため息を吐いて目を逸らした拍子に、近くに来ていた俺と目が合った。

……いっつも思うけど、何であんなに胸を大胆に開けてるんだろうか。目のやり場に困る。

 

「トウヤ、来てたのね」

 

「あぁ、つってもさっき来たばっかだけどな」

 

何であんな風になったのか、ここに来る前の様子を聞こうとステラに近づいていこうとした俺の前に、タリサが立ちはだかった。

え、何事?

 

「おいトウヤ! お前 あいつの上官だろ! 部下の横暴を許していいのかよ!?」

 

「え、あぁ。何だ、そういう事か」

 

「そういう事か、じゃねぇよ! あれは明らかにおかしいだろ!?

あんなの認めちまっていいのかよ!!」

 

こんなのおかしいよ、とでも言いたげに、てか言ってるのだが、タリサはユウヤを擁護する発言を俺にして来る。

 

確かに、タリサの言うことは間違っていない。唯依の物言いが行き過ぎている事も理解しているし、それに関しては後でちょっと注意するつもりだった。

 

でもまぁ、ここで俺が間に入らないのは他に理由が有るんだけど、なぁ。当人が居ない場で話しちゃうのもアレかなぁと。

 

「んー。そうだな、アレだ。唯依は17歳で、俺も他人の事は言えないが、 人生経験が豊富とは言えない。そこに生来の堅さも加わってしまって、あんな言い方になってるんだ。要するに不器用なんだよ、唯依はさ」

 

by 巌谷中佐 、とは言わなかった。色々台無しになるから。

 

「別に、さっきみたいに不満があるなら言ってくれて構わない。アイツがやり過ぎた時は、俺も間に入って注意の一つもする。だからさ」

 

ちらりと、ユウヤと言い争う唯依を横目で見る。

不器用ながらも、しかし懸命に職務を全う(まっとう)しようとする17歳の生真面目少女。

今だって、決して悪気があってユウヤを責めて居るのではないのだ。

 

「どうか唯依の事、嫌わないでやってくれないか?」

 

視線をタリサ、ステラに合わせる。

 

この気持ちを伝えるのだ。

 

これは紛れもない、俺の本心だと。

 

 

「…………それはさぁ」

 

沈黙は、そう長くは続かなかった。

 

腕を頭の後ろで組んだタリサが、俺に問い掛けて来る。

 

「アイツを嫌うなってのは、クロダ大尉からの命令か?」

 

「いや、これは俺からの個人的な"お願い"だ。強制するつもりは一切無い」

 

ふーん、と呟いたタリサの視線は、一通り言い終わった為か格納庫を後にする唯依の背中に注がれる。

 

「…………」

 

その視線に、一体何が込められているのか。前世の経験を含めてもまだ未熟な俺には分からない。

 

けれど。

 

「──── まぁ、私は心が広いし、お前には輸送機のコトもあるしな。いいぜ、聞いてやるよ。お前の頼み。」

 

この言葉に、偽りが無い事くらいは、分かるつもりだ。

 

「……そうか。ありがとう、タリサ。」

 

「やめろよ、お前が素直に礼言うとか気持ち悪ぃ。そこは『頼んだぞ』とかで十分なんだよ」

 

「あらあら、タリサったら。照れる顔も可愛いわよ?」

 

うっせぇ、と顔を明後日の方へ向けるタリサ。しかし、その顔がほんのり赤く染まっているのを、俺は見逃さなかった。

いつもだったら『小さい体に大きな器(笑)』とか言ってからかうんだが、俺個人のお願いを聞いてくれたのでここは自重しておく。ここではな。

 

「ふふ。タリサったら。これじゃあ何処ぞの中尉と同じね」

 

「あぁ。まったくな」

 

「えぇ。やっぱり素直になれない娘は、暖かく見守るべきね。そうだと思わない、トウヤ?」

 

「…………そうだな。ありがとう、ステラ」

 

本当、この小隊の奴らは。

 

「いいのよ。同じ仲間なんだから。これ位、当然よ。…………所でトウヤ。この後 傷心のトップガンを連れてリルフォートに繰り出そうと思っているのだけど?」

 

「あー、すまん。ちょっとこの後 本国の人と話しなきゃいけないからさ。また次の機会に」

 

それじゃあな、と言って二人に別れを告げて格納庫を後にする。

感謝の言葉を表すのも忘れずに。

 

……本当、一ヶ月前は原作開始何ヶ月前とか焦っていたが、アラスカに来れて良かったと思う。




アルペジオが今秋アニメ化ですって。ツンデレ重巡が動く姿、私、気になります!
後ゴッドイーター2。体験版薄くねって言う。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。