Muv-Luv 〜赤き翼を持つ者は悲劇を回避せんがため〜 作:すのうぃ
引き続きアルゴス小隊ブリーフィングルームの中。
俺こと黒田 冬夜は現在、アルゴス小隊の面々と親睦を深めている。
今は自己紹介タイムだ。
「ほんじゃあさ、取り敢えずあんたらの名前教えてくれないか?あ、女性の場合は一緒に好きな異性のタイプも言ってくれると尚良し。」
「はぁ?そんなの聞いてどうすんだよ?」
俺の要求(女性限定)の意味が分からないかったようで、俺に怪訝そうな表情を浮かべる輸送機爆破犯もといタリサ・マナンダル少尉。
こいつのお陰で俺たちはとってもエキサイティングな体験を出来たからな。真っ先に覚えることができた。
「………やれやれ何を言うかタリサ・マナンダル。決まってるだろう………?」
「な、何だよ?」
一息。
「「「その娘の1番になるために決まってんだろ!!」」」
「うぉ!?何でお前ら会ったばっかなのにそんな息ピッタリなんだよ!?」
ちなみに俺とハモったのはヴィンセントとロン毛の男だ。
「いや、何か俺と波長が合いそうだったからな〜クロダ大尉。……おっと、自己紹介がまだだったな。俺はヴァレリオ・ジアコーザ。階級は少尉でイタリア人。皆にはVGって呼ばれてる。好みのタイプは俺みてーに髪の長い色白な男だ。」
「そうか。なら安心だな。聞く所によるとイタリア人男性にはナイスガイが多いそうじゃないか。そっち方面では不自由ないだろう?」
隣では「な、男同士だと!?」とかタリサが赤くなってるけど、冗談に決まってるだろうが。俺よりはるかに付き合い長いのに、何で分からない。
「ハハハッ!良いねぇその返し!!何か俺の姉ちゃんみたいだわ!!」
「ほう。姉が居るのか。ちなみに美人?」
「あぁ。身内の贔屓目なしでも、かなりの美人だと思うぜ。」
成る程成る程。
…………………ん?ジアコーザ?それに姉?もしやこれは………。
「なぁVG。もしかしてお前の姉って、モニカ・ジアコーザだったりする?祖父はトーナードの設計技師だったり。」
「あれ?そうだけど、何で知ってんの?」
やっぱりか!!こいつの姉さんって【レインダンサーズ】の主人公のモニカじゃん!!確かに3つ下の弟が居るってヒューに言ってる場面があったけど、まさかこいつだったとは………。
「……いや、各国の戦術機の歴史を調べてた時に、一回タイフーンの資料を見たん事があんだよ。その資料にEF-2000.タイフーンの概念実証試験部隊のデータがあってさ。隊員リストの突撃前衛にモニカ・ジアコーザってあったんだよ。祖父さんに関しても同じ。」
「へぇ!!あんた性格変な割に勤勉なんだなぁ!!」
「性格変は余計だ!!」
俺の性格は変じゃない…………筈。そうだよね?
同意を求めて唯依の方に視線を向けると気まずそうに逸らされた。
え、マジで?割とヘコむ。
「ねぇ。あなたさっきタカムラ中尉の方を見てたけど、知り合い?あ、私の名前はステラ・ブレーメル。少尉で、出身はスウェーデンよ。ステラで良いわよ?好きなタイプは逞しい人ね。」
若干落ち込んでいると、アルゴス隊の女性衛士ーーステラが話し掛けてくる。
「あぁ。そこの唯依とは3年前から付き合いがある。今も同じ斯衛軍に所属してるしな。………んで、ステラの好みは逞しい男か。なら完全に俺が当てはまってるな。」
「あら。そうなの?」
ニヤリと笑いながら言う俺に、ステラもまた魅惑的な笑みを浮かべる。
「あぁ。何なら今夜どうだ?俺の逞しさを嫌でも朝まで見れるぜ?」
そのセリフを聞いた唯依が「な!?」とか声出しながら頬を赤く染めていて、他のメンバーは「おぉ!?殆ど喋った事ないのに、あの難航不落と言われたステラを口説いているだと!?」やら「いけ!!落とせ!!」とか言って冷やかしてくる。
「素敵なお誘いだけど、今夜はダ・メ。書類整理があるのよ。」
「そうか。残念だ。ならまた次の機会に誘うとしよう。」
そう言ってわざとらしく肩をすくめる俺に、ステラはクスクスと笑う。他の面々も冗談と分かっていたらしく、「あー、やっぱりダメだったかぁ」って言いながら笑っていた。
「こ、今夜!?会って間もないのにもう!?は、破廉恥な!!」
1人本気にしてる奴も居たが。唯依……。そこら辺に免疫なさそうなタリサでさえ見抜いてたんだぞ………。
さて、クネクネしてる唯依は一旦放置しといて。
次はここのリーダーだな。
「自分は、イブラヒム・ドゥール中尉です。大尉と共にこの計画に参加できる事を誇りに思います。ちなみに好きなタイプは、優しい女性です。」
お、おぉ!!
イブラヒム中尉の声、小山 ○也さんじゃん!!
しかもノリが良い!!
「え、えぇ………。ですがキリツ……いや、イブラヒム中尉。俺の方が年下なんですから、別に敬語なんか無理に使わなくても………」
年上の人に敬語を使わせるのは何か気が引けるんだよな。目上の人は敬えって教えられてきたせいなのかね?
「いえ。自分は大尉の経歴を見た上で、敬語を使わせて頂いているのです。ですので無理をしている訳ではありませんから大丈夫です。」
「そ、そうですか………」
あぁ!!超むず痒い!!目上の人に敬語使われるとか初めてなんだけど。どうすりゃ良いのさ!?
「ハハハッ。そんなに嫌なら普通に喋る事も出来ますよ?」
「あ、いいえ!!中尉のお好きな様にして下さい!!」
「はい、ありがとうございます大尉。」
あ、危ない危ない。危うく気を遣われることろだった。そんな事されたら俺が困る。どう反応していいか分からくなるとこだった。
最終的には敬語だけにして貰うことで手を打った。………あれ?結局何も変わってなくねこれ。
………さて、気を取り直してと。後は…………。
「な、なぁVG。これ、あたしも好きなタイプ言わないとダメか?」
「おいおいおい?逆にこの流れで言わないつもりなのか?イブラヒムの旦那までノってんだぞ?」
「ウググ…………そ、そうだよな。あたしだけ言わないなんてそんな空気の読めない事したらダメだよな………。うしっ!!お、おいそこのたい」
「後は誰も居ないな。さて、全員と親睦が深まった所でブリーフィングを再開するとしようじゃないか諸君。えー、今日の予定だが」
「おい!!何であたしだけスルーするんだよ!?」
あ、タリサ居たんだ。気付かなかったわ。嘘だけど。
「えー?べつにお前のタイプなんざ聞いてもどうもしねぇし。」
「んだとぉぉお!?」
わー怖いわー、ククリナイフマジ抜き身過ぎてヤバイわー。
「ほら、お遊びはもう終わりだ。つかお前に関しては第一印象が強すぎて嫌でも忘れられねぇよ。」
「ぐぬぬ………」
ぐぬぬ、じゃねえ。こちとら死にかけてんだぞ。それに俺は執念深いからな。覚悟しとけよチョビ。
「今度は本当にブリーフィング再開するぞ。」
こら唯依。「わ、私は!?聞かなくて良いのか!?」とか言うな。代理人だろお前は。切り替えろ。
………これは、俺がしっかりしないとな。
「さて。今諸君達と私は親睦が深まったが、肝心の主席衛士とは中々距離が縮まっていないだろう。よって今から、じっくり語り合ってもらおうと思う。ただし、言葉を用いてではない。」
突然雰囲気を上官のそれに切り替えた俺に困惑するアルゴス小隊の面々。
その表情を見て俺は唇の端を吊り上げながら言い放った。
「ケース47。対人類戦術機戦闘だ。衛士なら衛士らしく、その技をぶつけ合ってお互いを理解するとしようじゃないか。」
やっと戦闘回。
追記。2月23日0:52
これまで主人公の所属部隊を【赤い狼】としていましたが、感想です違和感があるとの指摘を頂きましたのでこれを期に中隊名を【赤鷹中隊】とします。読み方は「ブラッドファルコン」です。