ひかりのキミ・・・  (陽だまりのキミ・・・3)   作:月雲 花風

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第1話

「おはようございます。今日は寒いですね。」

「おはようございます。ねぇ~。

 一番の冷えだそうよ。今週は冷えるそうだから、東雲さんも気をつけてね。今からご出勤?」

「辛い週になりそうだ。そうです。行ってきます。」

 

俺の名は、東雲秀司。このアパートに友人と住んで2年目になる。もちろん、友人の名は北山達也。キタは、建設屋なので、出勤は早い。ゴミだしや洗濯干しを済ませてから俺は、仕事に向かう。買い物メモを残して家をでる。

俺の勤め先は、印刷屋で従業員100人程度の小さな会社だ。そこで新しい取引会社をめぐるのが、俺の仕事。セールスだな。最近は一般の人の作品なんかも取り扱い始めてる。

 

「・・・すみません。席外してるだけなのですか?瀬上さん」

「瀬上、今日は休み。腹が悪いとかで、昨日から病院。書類だったら、そこ置いといて。どのくら

 いか知らないけど・・。病院は千種病院だよ。」

「はい。ありがとうございます。」

書類袋を置いて戻ろうとしたとき、また声がかかった。

「東雲君だったよね。結婚したんだ。おめでとう。」

「ありがとうございます。」

 

思いもよらず笑顔になってしまう。左手の指輪、見てる人は見てるんだと気づく。週末に無く、週明けの指輪なんて、気がついた人は訳ありだってすぐわかっちまう。隠すつもりが無いとはいえ、緊張感は持つべきなんだ。

二日前の土曜日。キタに誘われて散歩がてら神社にいった。お参り済ませて、参道に・・・左手請求されてはめられたものだ。

「俺はずっと考えてたものだから・・・シンプルなのが好きと聞いたのを覚えてた。はめていてほ

 しい・・けど、独占欲だな。」

「うれしい。キタ・・・ホテル行こ。」

俺は舞い上がってた。北山を抱きしめたくて、キスしたくて・・・抱かれて思いっきりなきたかった。

週末のホテルは約束ごと。生活音が筒抜けのアパートでセックスなんて、H宣言してるようなものだ。翌日どんな噂が立つのか、近所のおばさんたちの想像力は半端無いから怖すぎる。男同士ならなおさらだ。

ただ、昼前からのホテルは・・初めてだ。着いたとき、日曜の昼帰宅の約束を誓わせてINする。腰の痛さと、太陽の黄色さを痛感して帰宅した。

買ったケーキでお祝いをする願いはかなった。

 

「秀司、お前のすべてが俺の物だっていいたい。」

「鈍珍(にぶちん)な俺をこれからもよろしく、達也。」

 

午後は得意先との約束が1件。他予定はなかったが、入院した瀬上さんの病院によることも考えていた。

「お先に失礼します。得意先回って直帰しますね。お疲れ様でしたぁー。」

打ち合わせ時間がどのくらいか、病院に何もっていこうか考えながら会社をでる。瀬上さんは、今会社の野球同好会でがんばっている。中学からの経験で、体つきもバランスがいい。健康検診は優秀なほうだ。病気とは無縁に思えた。案内で部屋番号を聞き向かう。病院は好きになれない。この雰囲気はなれない。

 

「瀬上さん。いかがですか?」

驚きで答えは返らない。まじまじ顔を見られてしまった。

「こんばんは。

 本当にびっくりだよ、東雲くん。ありがとう。明日検査報告があって、予定では水曜日に退院だ。」

時計を確かめる。こんばんはと返されて、初めて時間を知る。あわてて見舞いをおき、うろたえた俺だった。

「時間が・・・。すみません意識しなくて。じゃ水曜日の退院は予定として会社に報告しておきま

 すが・・いいでしょうか?」

「うん。大丈夫だと思うよ。悪いねせっかく来てくれてのに・・・入り口まで送るよ。」

「返って申し訳ないです。」

上着を羽織って同室者たちに声を掛けて部屋を出る。空気の動く廊下は少し気温が低く感じた。

「退院、早そうでよかったです。」

「原因は神経的なものってだけで解ってないからなんともな・・・ただ調子はいいのだからだいじ

 ょうぶだろ。

 そうですよね、西須先生。同僚が見舞いに来てくれてので、何か会社に報告できればって思うん

 ですがね・・」

 

私服なので先生には見えなかった。頭を下げて挨拶をした。先生は身長のある若い顔見知りだった。驚いた・・・

「明日ですから・・・そう申し上げましたよね?瀬上さん。報告と言えども予定は予定です。・・

 ・あ」

「西須・さん・・・。お久しぶりです。」

「東雲くんだったか・・・元気そうだね。本当に久しぶりだ。買い物に出るんだが、そこまで一緒

 しよう。」

「お知り合いでしたか。じゃ、俺は部屋の戻るから・・・ありがとうな。」

足取り軽く瀬上さんはエレベーター前に向かう。確認して挨拶してから西須先生と病院をでる。西須さんとは、高校を2年過ごしただけだが、俺には忘れられない人だった。

 

「時間大丈夫かな?珈琲でもどうだい?」

OKの返事を返してついていく。

 

「何年ぶりになるのかな・・?キミは結婚したんだね。おめでとう」

「ありがとうございます。

 西須さんもご存知だと思いますが、北山と一緒です。南雲さんはおげんきですか?。」

西須さんの珈琲が止まった。驚きと、苦悶が顔を覆う。

「北山くん・・?男だよね。はっきりと言うね、キミ。」

「俺たちを知ってる方にまで隠そうとは思いません。あなたと南雲さんにはお伝えしたかったです

 俺は家族にもいいましたので、勘当されて一人身です。南雲さんはどうしてるんですか?西須さ

 んは、ちがうのですか?」

配慮がないと思われても仕方ない。あれから6年以上たっているのだ。高校時代、西須さんと南雲さんは噂の中心でもあり、その中で一緒の大学進学を果たしたのだ。俺は噂を目撃までしているのだから、今も一緒と疑う余地すらない。

 

「別れたんだ。1年になるかな。海広がどうしているか、俺も知らない。」

信じられなかった。南雲さんは西須さんにぞっこんだった。とても優しい雰囲気を持っている人で、医者と言う職業は思いもつかない。男と言うより中性的な人で、共にいると癒される人は多いだろう。

「南雲さんの職場、ご存知ですか?」

「会いに行く気なのか?・・・やめてなければホストクラブにいるはずだ。」

開いた口がふさがらない。西須さんは、ホストという職業の職場を知っていていってるんだろうか?ってか、一番不似合いだろう、南雲さんに・・・。

 

「西須さん。それ・・・冗談じゃなくてですか?」

西須さんはバッグから名詞を取り出して、俺によこした。店の名前は『アンジェロ』、名前は『ミヒロ』となっていた。店ネームじゃなくて本名を使っている。想像がつかない。どうすれば南雲さんに、夜の客商売ができるんだ。西須さんは、何も言わなかったのか・・・?

「時間だからいくよ。もし、海広にあったらどんななのか俺にもおしえてほしいんだ。お願いでき

 るかな?」

「だったら、西須さんが行くべきでしょう?

 なぜ、こんな所で働いているんです西須さん反対・・・しなかったんですか?」

「時間だから・・・。これ俺のTEL番号。また日を改めてはなすよ。じゃ・・・」

 

苦々しい顔したまま、西須さんは店を出て行った。胸が痛い。

どうしてあなたが・・・何があったんですか、海広さん!

意識しないまま,北山にTELしていた。涙がこぼれそうだ。すべてが自分と同じとは思わない。不幸な道を歩いている同性者もいるだろうし、反対な人もいるだろう。彼は、幸福な類に属する人だ。俺の中では・・・。

 

「はい・・・もしもし・・・」

「・・・達也」

「秀司。どこにいるんだ?・・迎えに行く。」

もしかして北山と歩いている俺は、とんでもなく幸せなのか・・?

時間の割りによくない給料。安っぽくはないけど、そこそこのアパート。同居人も男だ。でも、好きな仕事で、面倒見がいいご近所で、生涯を共にと言ってくれてた男が一緒の生活。他に何が欲しいと言うのか・・?

病院の前に立ち尽くしていると車が止まった。出入り口からは離れているが、人の気配は・・・ぽつぽつとある。降りてきた北山に抱きしめられる。いつもならひと悶着だ。いまは、肩に顔をかくし泣き声をかくす。襲い来る寒さに身を凝らせる。

 

駐車場から北山が戻るのを、珈琲を入れながら待つ。キッチンでドリップをぼんやり見ていた。戻ってきた・・・玄関の音がして、そう、思った。後ろから抱きしめられてキスされる。

「・・・抱いて・・・」

「悪いな。今日は無理だ、秀司」

言われて、顔面に朱が指す。カップを持って、TV前のソファー座る北山。隣を叩いて俺を呼ぶ。

「見舞いにでもいったのか?なにがあったんだ?」

腰を落して珈琲をすする。

 

「西須さんっておぼえてるか?」

「・・・高校のときの噂の主人公?南雲・・さんと一緒の人?あー医大だったね?父親が医者や

 ってるんだよね。後は、シノの好きな人の思い人?ってことぐらい・・・?」

ちょっと面白い。俺にとってこんなことってのは、北山はよく覚えてることが多い。笑いが漏れる。北山の顔が優しくなった。

「今日、千種病院であったんだ。内科の担当みたいだ。1年前にわかれたんだって。・・南雲さん

 は、ホストクラブで働いてるって。」

北山が派手に噴出す。驚いて身を離す俺。タオルをわたす。

「わりぃい。

 南雲さんは、そんな感じじゃないだろ・・・なに、がんばってるんだ?」

「だよな。でも、西須さんと別れるときはそこで働いていたって・・・」

「で?・・・一人じゃいかせんぞ!」

 

驚いて達也を見る。珈琲を几帳面に拭きながら、俺を見ていた。

「来てくれるんだ。ありがとう。」

「・・・南雲さん。・・・忘れられない?心に残ってる?」

「俺は、達也しかしらない。いい声でなくって・・おじさんになっても、虐めるっていっただろ?

 俺はそれを望んだんだ。」

「ノン気って・・・素面でそんなに大胆に言えるのが怖い。シノに勝てない所だな。」

北山に真顔で言われて、自分の言葉に血が上って真っ赤になって、汗が吹き出た。

「えっと・・・今週の金曜日にどうだろう?水曜日木曜日は無理そうだから・・・」

「金曜日だな。しっかり空けて置く・・・シノ、やっぱ抱きたい。」

 

カップをテーブルに置かれ、自分の部屋に連れ込まれた。キスしたままベッドに倒される。

「待てない・・・こんなんだ、俺・・・」

もう、流れのままだ。達也の唇が、首すじを胸をたどって、股間に・・・乳首をいじられ優しく達也が俺を捉える。息をつめ、息が上がり、指噛んで誤魔化す。そこに達也が入ってくるまでは耐えたのに・・・

「あ・・・・んぁ・・あ・あ・・・」

達也が慌ててタオルを口に突っ込んだ。

「・・今日はもったいないけど・・・ごめん。シノ」

苦しい息でタオルを出しそうになるから、達也は腕まで縛った。あとは・・・思うまま流れのままに、達也に愛されまくって、声なくいきまくって・・おもう。

 

愛してる・・・

南雲さんは、どうだったのだろうか・・・西須さんとのsexや暮らしは・・幸せだったろうか?幸せだったと思いたい・・・。

 

 

水曜日に瀬上さんはしっかり退院できました。検査数値からも、原因はつかめなかったようです。木曜日は瀬上さんのおめでとう会で飲み屋に・・。楽しい時間を過ごせて、金曜を迎える。

飲み屋街から2本裏。北山と、問題なく店を見つけた。バーのような店。内装は黒と、シルバーがすこし。気を利かして北山がそういう店を知ってる同僚を連れてきてくれた。そして、驚いたのは・・・女性相手ではなく男性メインのようだった。ホモ・バーってところですね。

「とりあえず、彼を呼んでもらおう。注文は好きなものを・・。ぼくさ、悪いけど、これで帰るね

 申し訳ない。」

「ありがとう。お礼はまた今度。」

北山の横からこっちを見て、声を掛けてくれた。

「いや。東雲さん、こんど飲みに付き合ってよ。北山誘うからさ・・またね。」

 

ありがとうとお辞儀して席に腰掛けた。北山は、入り口まで送っていった。ミヒロさんじゃない方が、しばらくミヒロさんがこれないと挨拶してくれて、そのまま席に着いた。

「はじめまして。いらっしゃいませ。ミヒロ、今声がかかっていてすぐにこれないんで俺がつき

 ますね。よろしくです。」

「あ・・・別に、気になさらず。連れもいますので・・・。って、お仕事ですね。」

「優しい感じが素敵な方ですね。失礼でなければ、お名前をいただけますか?」

「北山だ。こいつは教えないから・・・。」

早速、北山がもどってガードしまくっている。

「大変立派な方ね。いいですよ、内緒でも・・・。ミヒロが明日でやめるんですよ。声のかかりが

 多いので、これるかどうか・・・」

「ミヒロさんやめられるんですか?じゃぜひ、お会いしないとですね。友達の間で人気があってよ

 く話しを聞かされてたので・・・10分でもいいけどなぁ」

聞いたこともないでっち上げだったがサービルしてくれる方は気にしてくれたようだった。30分も立っただろうか。

 

「お待たせしました。お声掛けをありがとうございます。ミヒロです。」

穏やかな声が疲れを漂わせている。優しげな笑顔にも影が落されている。

「いらっしゃい。じゃ、よろしくね。おわったらまた、俺がつくから。」

「はい。おねがいします。」

立ち上がった俺を見て、驚いたようだった。

「ひさしぶりですね。東雲君ですよね。えっと、そちらは北山君。ここに僕がいるって、よく解り

 ましたね。」

「西須さんに、お伺いしてきました。名詞をいただいて・・・」

「西須ですか。じゃ僕らのことは聞いてると言うことですね。」

困ったような、辛いような、もっと何かを含んだ複雑な表情を南雲さんは見せた。まだ驚きがあった。結構堂に入っている。似合っているのだ、その気配りも細やかさも・・・。

 

「どうされました?おどろいてますね。僕がホストなんてやってるなんて・・ですか?ははは・。

 明日までですが・・・。いきなりですけど、東雲君おねがいがあるのです。昼にあえないでしょ

 うか。次の日曜にでも時間ください。え!?キミたち・・・一緒になったんですね。おめでとう

 ございます。」

俺たちの指輪に気がついたようだった。華やかで優しい南雲さんの笑顔だ。優しく暖かな、人柄そのままの雰囲気だった。

「ありがとうございます。俺たちはもう出ます。あなたに会えたので・・・。」

「東雲君。これ・・・ぼくのTEL番号書いたから、連絡ください。ありがとう。幸せになって

 くださいね。北山君、東雲君を大切にしてあげてくださいね。」

北山はうなずいた。会計を指示して、綺麗な礼をして南雲さんは席を移っていった。

 

「海広さん。疲れてるみたいだ。」

会計をキャッシュですませて、店を出た。北山は一応現金を多めに持って行ったようだが・・微妙に足りなくて、俺も出す羽目に。ため息が出るほど高い。時刻は最終までには、後数本。裏道を行くので、俺が北山に腕をからませた。

「気が進まなくなってしまった・・・でも、西須さんの番号もあるし・・。」

「・・・かまわないが、できれば秀司が入らないほうがいい。」

「そうだよな。ごちゃごちゃにしちまうからな。俺・・・」

「うん。・・・その上で、お前が傷ついて終わることって多いじゃん。」

 

北山をみる。

「騒ぎにならないと終わることはできないだろ。割り切ったって、どこかに必ず抱え込んでるんだ

 から・・。だったら、大騒ぎしてケジメつけたほうが言いと俺は思う。歩き出しやすいと考える

 けどね。でも、お前が傷つくのは別だ。騒げるんだったら何も、秀司をまきこまなくてもいいだ

 ろう。秀司のせいにして・・

 お前も素直に抱きこんで終わるから・・・俺は腹が立つんだよ。」

指輪もらったからなのか・・・俺は、やけに涙もろくなった気がする。絡めた手に力がこもる。身長は変わらないのに、北山が頭撫でるのがうれしぃ。駅前通りだ、繋いでた手を離して駅に向かう。

 

 

いい天気の日曜。

掃除機掛けて布団干して、洗濯して・・・。昼ごろ時間ができて腰を落ち着けた。

「あ~~あ!終わった。」

「主夫だね。お疲れでした。・・・ほい。」

一段落した頃、達也が珈琲をいれてくれた。約束のせいだろうか、へんな緊張がまとわりついている。

「今日は何時?どこ?」

「池のある公園。2時ごろ。家族が多いだろうね。天気がいいし風がない。そんなところでよかっ

 たのかな・・・」

「南雲さんが指定したんだろ?秀司が気にしなくても大丈夫だよ。」

 

陽の中であの人に会うのは、本当に久しぶりだ。小さな生き物が好きな人が夜の職業に、本当に何を思いつめたのか・・・キスを残して公園にやってきた。

「ねぇねぇ・・ちょっと見てみて・・・ファンタジー見たいよね。」

なれぬ言葉が耳に入る。若い女性の声。

「ねぇ。私、写メとっちゃったよ。」

はしゃぎ模様ですれ違った女性たちの来た方向をみる。

 

南雲さん・・・陽の当たるベンチに腰掛けて、小鳥の餌を撒いてあったのかハトが群れていた。優しく話しかけている。知り合った頃となにも変わらないあの人がいた。柔らかな多少疲れた黒髪がさらさらと風に舞う。だが、肌の色が異様に白い。夜の職業だからだろうか・・。陽のひかりの似合う人だ。

「こんにちわ。好きですね、鳥。」

ハトが一斉に飛び立つ。驚いたように南雲さんが立ち上がった。

「こんにちわ。

 うん。久しぶりだけどね。ここでいいかな。隣座って・・」

しばらく俺を見ていた。くすっと笑う。

「本当に久しぶりだね。出会いもこんなんだったよね。」

視線が足元に落ちる。柔らかな雰囲気は変わらないのに、悲しさが増えた気がする。

「あの時、同じ大学に進学が決まって、僕、ただうれしかったんだ。一徳と一緒に暮らすことしか

 考えなかった。まだ、彼がスタートラインにも立ってなかったのに・・・。大学は一緒でも彼は

 医者志望だからね。デートすらかなわなかった。大学に入って半年した頃、俺が強引に一徳を引

 っ張り出して、同居したんだけど・・・大学も進んでいくと金ばっかっかかって・・・彼は家に

 戻って、僕は大学をやめて仕事を始めたんだ。なぜここにきたんだって、一徳に言われてしまっ

 た。」

彼の手の餌にハトがやってくる。

「僕は一徳のそばにいたかっただけなんだ。僕らの仲は初めからずれていたことに、別れる時が来

 るまで気づけなかった。一徳は、何度も僕に話したんだ。僕が聞かなかっただけ・・・初めから

 ちがうんだから結果はみえてるよね。」

「南雲・・・海広さん。どうしてクラブに・・・あなたならもっと別にあったでしょう?」

「手っ取り早くお金がほしかっただけだよ。彼に何かしてやりたっかた。・・おかしいかい?」

「でも、西須さんは止めたんじゃないんですか?反対したでしょう?」

「一徳が僕の夢だった。女みたいだろ?だから、一徳にも言えなかった。」

「・・別れの原因がクラブ・・・?海広さん、もしかして・・・あなた」

ハトが飛び立つ。海広さんの態度がこわばる。俺の思いつきはまちがってない。白いセーターの腕を掴み、海広さんは、体を小さくした感じがした。

「1年前、一徳に気づかれた。

 忙しいし、会話も無くて抱きにくるだけだった。その時も、そんなんだと思ったんだ。酔いも有

 って帰宅してすぐに寝てしまった。一徳が来た事さえ気がつかなかった。・・・ごめん。こんな

 話、聞きたくないよね。お願いって言うのはね・・?!」

海広さんを抱きしめてしまった。肩が震えて、声も涙声になっている。

「海広さんは、泣けてないんですか?誰にも言ってないんですか?」

俺の手は振りほどかれた。

「誰にも話せない。誰が聞いてくれるっていうんだ。・・そんな友達、僕は作ってない。泣いて・

 ・・泣いてすべてが戻るんなら、僕はこの目と交換に一徳を取り戻したい。」

膝の上に腕を重ね腰をおって海広さんは、声なく肩震わせて泣き始めた。俺は海広さんの頭をなでていた。しばらくして気が済んだのだろうか、海広さんはバッグから茶封筒をだして僕に手渡した。これを預けたかったのだろうか・・?

「恥ずかしいな。もう30前だってのに。昼からこんな公衆の中で・・・ありがとう。東雲君だか

 ら、話せたんだと思うよ。一徳も言ったんだけど、僕ね、お酒強くないんだ。気をつけてはいた

 んだけど、結局気がつけなくて。そのときにはキスマークがね・・・。一徳に渡してもらえない

 だろうか?これなんだけど・・」

封筒を覗くと・・・

「これって、通帳と印鑑。どうして・・・西須さんのですか?」

「うん。一徳にTELしても僕じゃでてくれないんだ。嫌われてしまってるから・・・返してくれる

 かな、東雲君。北山君をだいじにね。僕ね実は引っ越すんだ。どこかでまた、会えるといいね。

 よろしく頼むね。」

バッグを肩に、海広さんは、ベンチを後に歩き始めた。この人・・こんなに小さかったかな。そう思えるほど、海広さんは、か細く見えた。

「待って、海広さん。

 これだけは聞きたい。誰かとねたの?」

「キスマークだけだよ。一徳以外と、僕は寝れない。体を信じるなら・・・僕は寝てない。東雲君

 ありがとう。」

 

西須さんへの大事な物を預かってしまった。ベンチが見える入り口付近で、海広さんは振り返って俺にお辞儀をして公園を出て行った。反対側に俺は帰る。

西須さんは、海広さんと何も話してないんだろうか?そんなに、信じられないんだろうか・・。

悶々と家に戻る。声かけて、入っていく。

あれ?お客さん・・・

「ただいま。」

ダイニングのテーブルに西須さんがいた。

「おかえり。彼、来てもらったから・・・南雲さん、どうだった?」

 

北山~~~!!!心の準備がーーーーー!!!

「あ・・ああ。時間に正確な人ですよね。海広さんって・・」

「え・・ですね。よっぽどのことがないと遅れることない人ですね。海広は・・・」

「秀司は俺の隣だから・・・座れ」

北山!!!!

明るい陽の中で、改めてみる西須さんって、体格ががっしりしてると思った。先ほど別れた、海広さんとは正反対だ。早速、バッグから預かった物を机に置いた。

「これお返ししたかったそうです、海広さん。TELがつながらないって言ってましたよ。遅くなっ

 てすみませんって・・。」

「通帳と印鑑・・ですか?誰のです?見てもいいのかな・・?」

「西須さんのでしょう?」

言われてようやく気づく。普通考えたって、金銭に関係するものって、真っ先に自分で管理するよな。北山が頭を抱えていた。なんとなくいやな予感に、寒気が走る。

「これ・・・あいつ・・・・これ、俺は受け取れない。」

西須さんの動揺に、通帳を覗き込む。

「この金額って・・・どうして?なんなんですか、これ?!」

狼狽しきって、俺が叫ぶ。

「落ち着け!

 西須さん。秀司は南雲さんの話を聞いてきたようですから、今度は、あなたの話を聞かせてくだ

 さい。」

北山が落ち着いて場を仕切る。俺は、もうパニックだ。大きく息をして西須さんも、覚悟したようだ。

「聞きたいことをお話しましょう。」

「西須さんは、海広さんが裏切ったって思ってるんですか?クラブって・・お金ためるためだった

 んですか?TELにもでないって、そんなに海広さんを憎んでるんですか?」

腕をひっぱられて俺は席に着く。もう、動揺しまくりで・・・笑われまくりだった。西須さんにも、北山にも

「海広は裏切ってないっていいました。俺もそう思っています。ただ、キスマークがあるあいつを

 見て居たくなかったんです。クラブで、働くのも反対したんです。でもやめない。なぜかは解っ

 ていました。俺の学費です。家は知ってると思いますが、医者です。個人医になるとさすがに後

 半の学費はきついです。大学を辞めるって言い出した海広にも、驚いて腹が立って、そんなに自

 由にやめれるほど考えなしならこんな所来る必要もないだろう!って言ってしまったんです。海

 広ですからだまってしまって・・・。」

西須さんの顔がゆがむ。

「でも、俺はずるいんです。仕事をし始めた海広を、抱きに着てたんです。」

俺は反発的に立ち上がった。そこに居たくなくて、玄関にむかった。北山はそれを許さなかった。腕を掴み席に戻した。

「夜の仕事で昼は寝ていたいだろうあいつを・・・時間を合わせては抱きに通ったんです。話す言

 葉もなかった。海広は・・・本当に俺を愛してくれていた。だからこそ・・1年前、太もものキ

 スマークを見つけたとき俺は、切れてあいつを殴った。甘えてばかりの俺に、あいつは必死にな

 って、寝てない。裏切ってないって・・・泣きながら訴えた。素直になればよかった。」

腕を引き離して、おれはトイレに駆け込んだ。気持ち悪い。背筋を走る寒気が・・消えない。海広さん。海広さん

吐いてしまってもすっきりしない。

「西須さん。まってください」

遠くで聞こえる・・・北山のそんな感じの声だった。このままここから消えたい。

「大丈夫か?

 でも、お前は聞かなくちゃいけないと思う。南雲さんのためにも・。俺を頼っていいから・・」

北山の言葉にうなずく。必死だった。意気地のない俺は、そこで意識を飛ばしてしまった。

「秀司!」

 

陽の光の中で、鳥たちに囲まれて海広さんが微笑んでいる。笑えなかったのかもしれない・・・微笑むしかできなかったのかも・・・

気がつくとTV部屋のソファーに寝ねかされていた。TV前の机に珈琲が運んである。毛布が掛けてあった。

「大丈夫なのか?

 がんばれそうか。日を変えたほうがいいかな?」

足元のほうに西須さんが掛けていた。

「もう大丈夫。すみませんでした。西須さん。時間・・かかってしまいましたね。ごめんなさい」

「いや

 君が倒れるのみて、俺がどんなに海広にきつい仕打ちをしてたか、はっきりと解った。あいつに

 甘えすぎてたんだな。倒れたかったのはあいつだろう。1年前だって本当は俺があいつに許し請

 わねばならなかったんだ。自分の意地汚さを、意気地のなさを・・・海広は俺を映す鏡だったの

 に・・・。東雲君、本当にすまない。」

伸びてきた指に、おれの涙がぬぐわれる。初めて泣いてることに気がつく。

「よかったな。秀司」

「西須さん。時間まだ大丈夫ですか?達也、海広さん呼ぼう。これTEL番号。連絡つけて呼んで」

西須さんは複雑な表情をした。時間は有るとのこと、北山は海広さんに、連絡をつけていた。俺は、今日あって気になったことを、西須さんに聞いてみた。

「夜の仕事って皮膚が白くなりますかね?」

「日に当たる時間が少ない分多少は変わると思いますが、そんなに変化はないとおもいますよ。

 どうしました?」

上着を引っ掛けた北山が会話に割り込む。

「迎えに言ってくる。西須さんがいること言ってないから・・」

「車の中で、海広さんにちゃんと話して。西須さんがいること、頼むよ達也。」

いやな感じがする。ものすごく不気味な感じだ。北山だけじゃなく、西須さんも訝った。そのまま北山は出かけた。時間にして1時間もかからないだろう。

「海広さん、引っ越すっていってました。通帳には先月分まで記載がありましたから、今月分は引

 越しに回すのかもしれませんね。それと、病気・・・何か抱えてるんじゃにでしょうか、海広さ

 ん。肌が・・抜ける白さでしたよ。」

「そうでしたか・・・。健康診断にはいってなかったようです。注意はしたんですが・・・俺たち

 お二人にいろいろ迷惑ばかり掛けてますね。」

「北山がなんていうか解らないですが。

 俺は、お二人がいないと、今現在の俺たちもいないと思っていますから。時間がかかればこの結

 果でしょうけど。いま・・ではないです。」

にっこりと俺は応えた。でも、俺にとってそれはうそじゃない。この悪寒も・・・

 

コンビニで弁当を買ってきた。味噌汁は作って、酒もあるし・・・。準備はOKだった。

「ただいま。どうぞ、南雲さん。」

「こんばんは。お邪魔します。」

元気な北山の声。細い柔らかな海広さんの声もした。

返事を返して、二人を迎え入れる。TVの部屋に西須さんは待っていた。海広さんと西須さんが部屋で二人向き合った。

「海広。すまなかった。

 俺の意気地のなさがこの結果を迎えたんだ。海広に負担だけ掛けて・・本当にすまなかった。」

西須さんは土下座していた。床に頭擦り付けてた。海広さんがあわてて西須さんを起こす。

「やめて。そうじゃない。一徳はちゃんと話したじゃないか。僕が聞かなかっただけ・・・こんな

 ことさせるつもりじゃなかったんだ」

海広さんを西須さんが抱きしめる。

「海広・・・許してもらえるだろうか?君と過ごすことを・・暮らしたい。」

「・・ごめんね。それはできない。僕ね引っ越すんだ。」

海広さんの笑顔はきれいだった。肌が抜ける白さで・・・女神ってこんな感じだろうか・・・

「海広さん。理由が何かわからないけど・・・西須さんの思いは受け止めたらどうだろう。」

味噌汁を温めながら、口を挟む。

「東雲君、ありがとう。

 一徳。本当にうれしい。もう、愛されないと思ったから・・・でもね。ごめん。時間がなくて・

 ごめん。こんなになるなんて考えなかったから・・・」

「何を抱えてるんだ?・・・ガン?・・・なのか」

御椀を落としてしまった。西須さんに抱かれて、声無く海広さんが泣いていた。海広さんは西須さんの腕の中にすっぽり入ってしまっている。俺と、北山は汁拭きにいそがしだったが耳は立てたまんましだ。

「明日・・・療養所に引っ越すんだ。転移が思ったより早かったんだよ。一徳、今晩は家にこれな

 い?僕を抱いて、おねがいだから。」

「食事だけでも済ませていってくれ。秀司の味噌汁、うまいから・・・。」

「ありがとう。いただいていくね。」

四人座っての食事も、静かなもだった。さっきの告白で話なんか出てこなかった。

「おいしい。こうやって東雲君や北山くんと、四人で食べるのって・・学生以来かな?」

「そうですね・・・1度ありましたね。あれは、ファミレス?」

「喫茶じゃなかったか?俺、頼めるもの無くて・・苦労したきがしてる。」

「あーー

 そうそう。喫茶だよ。俺も北山君見ていて、俺と同じ部類の人間だわって思ったからな。海広に

 合わせるのって結構苦労する。」

「ひどーい。そういう事いうかなぁ。・・言ってほしくないこと結構言うよねぇ。一徳って・・」

「薮蛇だ・・・」

あっはははは・・・俺は声あげて笑ってしまった。

「この落ち。初めてのときもですよね。薮蛇・・・」

「だったかな。カズって・・ボギャブラリないからなぁ~」

「突込みがひどすぎるんだろうが・・・」

思っていたより時間は楽しかった。帰りは西須さんが車で、海広さんを送っていった。うれしそうな海広さんを見れたのはうれしい。

「ありがとう。素直になれたのは二人のおかげ。本当にありがとう。・・じゃ、ね。」

「俺からも・・・。たすかった。本当にありがとう。また連絡するから・・・」

 

アパートから見えなくなるまで、俺は見送っていた。二人がもっと話せたらいい。一緒になれたらいいのに・・・そう思いながら部屋にもどる。

キッチンで北山が片づけをしていた。背後から背にべったりと張り付く。

「どうした?」

食器を乾燥機に入れて作動させる。

「疲れたか?そこ座ってろ。」

抱きしめられ、ソファに促される。いつもの席に、膝を抱えて腰をおちつける。

「達也がいたからかな・・・すんなり収まったね。

 海広さん、癌、どうして放置したかな・・・。西須さんが夢だっていってた。女みたいで誰にも

 言えないって・・。おかしいかな?達也もそう思うかい?・・」

お茶だった。珍しく日本茶を入れてきた。

「秀司が西須さんとであって事が進んだんだ。もし、それが無かったらこんなにはならなかったこ

 と南雲さんは気がついてたんじゃないか?西須さんが南雲さんを訪ねるなんてありえないと思っ

 ていた感じだな。だから、もう手に入れることは無い西須さんを遠目に見てればいいと思ったん

 だと思う。だから・・すべてが遠目でしかないんだったら、がんばらなくてもよかったんじゃな

 いかな。」

「だったらあのお金はなんだよ?2年ぐらいであんなに貯めれないだろ。それこそ、命掛けてがん

 ばったんじゃないか」

「手に入らなくても、思い出として覚えていてほしかったんじゃないのか?・・記憶の隅にでも」

「わっかんないよ!!!はっきりいえばいいだろうが!」

「答えになってないだろうが!その時だって西須さんは南雲さんを抱いていたんだ。」

そうだった。抱かれることもすべて見せることも自分の証にならない。あの人は・・・どうしてそんな苦しい立場に自分を追いやったんだ。ボンボンみたいな西須さんが、そんなに好きだったのか。

 

「俺・・・俺、海広さんが好きじゃないんだ。俺・・・ごめん。ずるいのは俺も同じだ。」

騒動にことかけて、南雲さんばかり話していた。卑怯なのかもしれない。

「秀司を遠目にして俺は、生きてはいけないと思う。手に入れる手段を尽くしてだめなら、友人に

 甘んじるかも・・・あーやっぱ無いなそれも。だめなら俺は、秀司をさらって監禁して暮らして

 いく。絶対お前が居ないとやって気ないと思う。」

達也の唇をうばう。離したくない。誰にも遣りたくない。俺だけの達也だ。頭は達也の肩に掛けたままだった。

「南雲さんたちと知り合わなかったら、俺・・達也は幼馴染のままだった。達也がどんなにがんば

 ってそこに居てくれたのか・・たぶん、こんなに早く気がつけなかったと思う。こんな俺が、今

の気持ちをもって達也と暮らすなんて・・達也を愛するなんて、海広さんたちのおかげだから。」

「南雲さんって・・女とか男とかって言うより母親の愛情に似てる。すべてを受け入れて、すべて

を愛せたんだろうな。」

「達也。そんなに愛せるかわからない。

 俺は俺だから。これからもおれ自身で達也と歩いていくことを努力するから・・・それを愛って

 よべるなら・・。」

 

唇を重ねたまま、ベッドにいく。掟破りの二日目。大きな声はキスで塞いで、達也を思いっきり愛した。

翌日から仕事に励んで相変わらずの日々を過ごしていく。

 

二ヶ月ちょっとしたとき、南雲さんの葬式の葉書が届いた。差出人は西須さんだった。

葬儀に参加したその夜、俺は海広さんの夢をみて、翌朝は涙の目覚めだった。

小鳥たちの中で、海広さんは、うれしそうに笑っていた。

『綺麗だね、君・・・・・会えてよかった。ありがとう・・・』

出会いの言葉。・・・海広さん・・・

 

それは、寒い日々の中に、春を花々が呼び込み始めた頃だった。

 

 

 

 

 

 

 

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