機動戦士ガンダムSEED 技術試験隊の受難<一時凍結> 作:アゼル
C.E.71 11月 デトロイトの国防連合企業体工場の隣に出来た巨大なビルの前に50人前後の人だかりがいた。
「ふぅ、ここが俺達の新しい職場か」
そう言ったのは元地球連合軍大尉のアラン・マクレガーだ。マクレガーを含む数十名は『クルス』への異動とともに軍籍から外された。ただし、一階級昇進したうえでだ。
彼らがこれから働く職場を外から眺めている。大型のビルは横に長い直方体で10階建てほどであろうか。ビルを眺める背後の道路では車が引っ切りなしに動きまわっていた。そのほとんどが大型トラックで、超大型のものはMSを運び、施設内に進んでいく。マクレガー含む一行が建物を眺めていると中から事務スタッフと思われる人物が現れ、その人物の案内でビル内を見て回っていく。とはいえ、回るのは主にパイロットと開発関係者やメカニック、エンジニアしかいないのでMSやMAに関係する設備を重点的にであったが。
そうして回っていく中、彼らはMSの工廠にて予想外の人物から声をかけられた。
「お~い、皆さんちゃんと来ているようですな。早い限りで」
そこにいたのはキメラ隊整備士達のトップであるゴッサムだった。第二次ヤキンドゥーエ攻防戦から基地に戻り、大多数の機体が損傷していたため基地内は慌ただしかった。というよりも損傷していない機体こそ皆無であったがために、世界樹跡地基地の工廠や整備用格納庫は大忙しであった。
マクレガーはヤキン戦の出撃以来ゴッサムに会っていない。MSパイロットと整備班では働く部署は違うため、あまり違和感を感じなかった。むしろテストも兼ねた新型パック搭載機を大破させたためにあまり格納庫に行きにくかったのも理由の内だが。
ゴッサムも地球軍を形式上抜けたことになっているためか普段のように地球軍の整備士の服ではなく、年相応のおっさん臭さをだす服装だ。もう季節は冬。デトロイトがアメリカ大陸の北部よりにあるため、ジャケットを羽織っている。MS格納庫の二階にある一室で雑誌を片手に座っているが部屋の反対側がセント・クレア湖に通じているため寒そうだ。
「来ていたのか、班長。そちらのここでの役割は何だ?」
「部隊と同じで整備班班長ですね。なにか注文あったら言ってください。出来る限り融通しますよ。とはいえ、ここはそういう部署ではないみたいですが…」
そういってゴッサムは頬をかきながら視線を移した。移した視線の先には何とも懐かしい機体等が並んでいる。足はキャタピラ。体はストライクダガー。地球連合軍に機体を卸す各社の出向社員とパイロット、整備士の前で欠陥機の烙印を押されたダガータンクが鎮座している。
さらにその隣にはアストレイとストライクダガーに似ているが、どこか簡素な機体が二機。さらには左側の腕や武装を喪失したソードカラミティ。そして撃墜されたはずのフォビドゥンがいる。他にもダガーLといった最新機もわずかに存在している。
「班長、これらはなんだ?」
「ここにあるのは改修と保管のための機体群らしいです。奥にあるアストレイとストライクダガー似の二機は完成機でもう販売中です。フォビドゥンも完成機ですが乗り手がいなかったせいで隣の工場に保管されてたのを引っ張ってきたものです。『クルス』でやるのは既存機の改修と強化、研究といったところですね」
そういってゴッサムは近くの受話器を取りどこかに連絡を取った。寒かったのだろう。会話はすぐに終わり、反対側の湖側の扉が閉まっていった。そして窓を閉めながら言ってくる。
「あぁ、あとは巡洋艦を造るらしいですぜ。部署が違うからどこで造るかはわかりませんが、MS搭載を前提にした艦艇だそうです。あとは案内役に聞いてください」
そう言い、窓を閉めた。改め、鎮座する機体を眺める。欠陥機のダガータンクはこれから不要になっていく戦時量産機のストライクダガー対策だろう。ワークスダガーとレイスタも同様だ。
少なからず同盟国や属国に払い下げられる運命だが、改修による強化は捨てたものではない。そして次なる戦いをめざして後期GATシリーズの研究もここで行われるのだろう。
MAのメビウスすら置いてあるというの何とも言えぬものであったが。
案内は続く。次は施設外だ。外にはまるで空港のような巨大滑走路が整備されており、また一機着陸した。着陸した輸送機の背部ハッチからダガーLが二機降りてくる。オーブ解放作戦で使われた輸送機の他、さらに大型の輸送機もおりそれらを含めれば五機。最低でも十機のMSがは輸送されたのだろう。
案内人の説明ではここはいざという時、基地としても用いられるという。さらに隣の湖を利用して鹵獲したザフト機などの試験稼動もするという。連合軍の水中用機で有名なのはフォビドゥンブルーやディープフォビドゥンだ。これらはザフトの水中用機を圧倒した。
隣の湖でダガーの水中用機、それも特殊装備ゲシュマイディッヒ・パンツアーなしの機体を造る予定もあるそうだ。特殊装備は値段がはる。かつての試作機という名のゲテモノが回るという事態は解消されたが予算は有限だ。
特殊装備なしである程度使える機体を開発する予定だという。そしてそういった改良機や改修機のテストパイロットが自分達。最終的には『クルス』内のパイロットだけでなく大西洋連邦軍が使うようになるため色々重大だ。
そのためなのか、何らかの思惑でこうなっているのか施設の敷地は広い。隣の湖がつかえるだけでなく、空港設備までそろっている。さらに演習場まで備えている基地などここ以外にあるのだろうか。しかも民用で。既存機の改修や強化と言えど、それは表向きだろう。
戦時下に入れば基地の一つとして会社ごと大西洋連邦軍内に入れられることだろう。隣に国防連合企業体の工場が存在しているのはあからさまだ。だが、パイロットに過ぎない身で何かいえるわけもない。なにより表向き軍事会社であるということが大西洋連邦にとって有利に働く可能性もあるのだ。
そう考え、マクレガーは案内された寄宿舎で私物を乱雑に置くと眠りにつくのだった。
「守備隊のMSはストライクダガーのみか。宇宙から来た機体は本国送りとは…」
そう言ったのはパナマ基地の司令官だ。ザフトにより破壊されたうえにかろうじて逃げ延びれた兵を除き、生き残りの兵も虐殺されたパナマ基地はマスドライバーを最優先に再建されている。
マスドライバーは数が少ない。地球連合内でも保有数は僅かだ。東アジアはザフトに奪われたがカオシュン基地に。ユーラシアと南アフリカ統一機構はビクトリア基地を。そしてここ、大西洋連邦と南アメリカ合衆国のパナマ基地が、それぞれ一基。あとはオーブのカグヤがあったが自爆によりオーブの立て直しを図るセイラン家と大西洋連邦の共同で再建中だ。
地球連合軍という視点で見ればビクトリアはザフトから奪取に成功し、パナマも再建しつつあるが土を掘り返せば地球連合の兵士の骨が見つかる始末だ。遺族のためにも遺骨を発掘せねばならず、マスドライバーを除き復興は遅れている。
表向き大西洋連邦と南アメリカ合衆国の共有とされていたパナマ基地だが実際は違う。マスドライバー施設は大西洋連邦によって掌握されていた。その上、南アメリカ合衆国自体も大西洋連邦に吸収されたため、実質大西洋連邦の施設だ。
今は宇宙軍の再建が優先され、仮初めとはいえ停戦のために本国が優先されている。そのためにこの基地の守備隊も戦時量産機のストライクダガーのみだ。ストライクダガー以外では他の機体同様に本国に送られるはずだったソードカラミティのみ。機体不良のため、パイロットのエドワード・ハレルソン共々基地にいる。
本国は二級線の機体ですらデュエルダガーやバスターダガー。それに対してこちらは払い下げ同前のストライクダガー。愚痴の一つも漏れてしまうという現状だ。
そのように不満とともに溜息をついていると、司令室は急に騒がしくなる。何事かとオペレーターに尋ねる。
「何事だ?」
「基地周辺部において火災が発生した模様です。周辺部隊と消防隊を向かわせています」
「早めに鎮火させろ。アマゾンに比べ少ないとはいえ、貴重な森林があるんだ」
「了解」
オペレーターの指示の下、近隣に配置されている部隊が消火活動に向かう。だが、消火を終える前にさらなる情報が舞い込む。
「さらに二カ所で火災が発生した模様。始めの場所とは正反対の場所です」
「なに!?鎮火を急がせ・・・」
「さらに、基地内でも火災が発生!今度は同時に五ヶ所以上です!」
司令官の言葉を遮り、オペレーターの声が響く。不審火にしては数が多すぎる。そのために、司令官はあることを考えた。
「これでは破壊工作か戦闘ではないか!直ちに基地内に第二次戦闘配備を勧告せよ。陸戦隊ならびにMS隊の準備も急がせろ!」
だが、その命令は遅かった。いや、相手側が早過ぎた。相手側の手は命令を出したばかり場所にまで伸びていたのだ。
「MS格納庫よりストライクダガーならびにソードカラミティが発進。こちらに向かい、急速に接近中!」
「馬鹿な!発進を命じてはいないはずだ!」
「各方面に配備中の部隊の一部からの応答がありません。陸戦隊の一部も反応が・・・」
「なんだ、これは…?これではまるで反乱ではないか…」
司令官がその言葉を言い終えるか終えないかというところで司令室の扉が開く。次々て銃で武装した兵が入り込み、司令室で事態の対処に当たっていた者達に銃を向ける。
「我々は南アメリカ合衆国軍である。すでに当基地は我々が占拠した。無駄な抵抗はやめ、投降せよ!」
事態の収拾のために第二次戦闘配備を命じたはずの陸戦隊が司令室に突入し、司令官を含む大西洋連邦兵全てを拘束して回った。
この日、大西洋連邦内旧南アメリカ合衆国地区において同様の出来事は各地で生じた。事態に気が付いた一部の部隊や艦艇は完全に制圧される前に南米を脱出した。あるいは大西洋連邦軍が大規模に掌握している地域ではダガーLを筆頭にした兵が集結し、立て籠もった。
かつて僅か一日で呆気なく大西洋連邦の属国と化したのが屈辱であったのだろう。元より大西洋連邦の支配下を嫌う兵は多かったために、南米各所での反乱は成功した。この各所で生じた電撃作戦により南米はその日から停戦協定―ユニウス条約終結―まで戦乱の地へと変わるのであった。
南アメリカ合衆国が分離独立を宣言したとの情報は次の日には大西洋連邦に知れ渡っていた。新興の民間軍事会社『クルス』の記念すべき最初の標的は南アメリカの戦力かと職員に思われた。なにせデトロイトの本社に集められた機体は改修用の一部の機体を除けば新型機だ。
しかもアズラエルが率いていたブルーコスモスとは違い、コーディネーターをも使っているがために扱えない機体はまずない。戦力は同規模の大西洋連邦正規軍と同等か、それ以上といった集団だ。ここで使わずしていつ使うのか?そのような思いが関係者内を駆け巡ったが、彼らの予想に反し南アメリカに行くのは正規軍だという。
マクレガーも肩透かしを食らい、ヤレヤレといった思いを抱いたの一人だ。だが起業自体は停戦宣言直前に行われ、MSの販売もしていたとはいえど、整理が済んでいないのも確かだ。なにより、以前までの105ダガーの代わりとなる機体も受領していない。
大西洋連邦自体が南米の宣言によりドタバタしているためか、今日は隣の空港設備に輸送機はなかなか降りてこない。本来は今日も昨日のうちに聞けなかった設備を聞くはずであったが、南米の宣言により機体の受領などの軍事系の事柄に変更された。
マクレガーと共に来たパイロットたちはそれぞれの機体か、改め受領する機体のある格納庫に集結している。マクレガーは軍用車で格納庫へ向かっている。軍用車内はマクレガーの他にパイロットが一人と案内役の運転手が一人。道中最もパイロットが集まっている格納庫があった。それはつまり量産機か、という思いを抱いていると開いている扉から除く機体はダガーLだ。
ダガーLを使ったのは大西洋連邦軍内でもキメラ隊が最初だろう。なにせプラント制圧のために就役したはずなのに、参戦すらままならなかった不遇の機体だ。キメラ隊は最前線にいたこともあり突っぱねたが、ジェネシスに恐れをなした上層部がキメラ隊に存在した機体を除き、全て地球に強制帰還させられていたのだから。
大多数のパイロットがダガーLの格納庫で説明を受けているのを眺めつつ、マクレガーは目的の格納庫に到着した。そして格納庫におさめられていた機体に目をやるとなかなかに良い機体であった。その機体は量産機と言えど性能は高くTP装甲まで採用されている可変機。GAT-333。レイダー制式仕様であった。
オーブ解放作戦においてマスドライバーを得るべくともに出撃した黒いレイダーのの制式仕様機。機体色は水色に代わり、武装も実体弾武装をメインに変えられているが性能の高い機体だ。何よりこの機体は大気圏内を飛べるのだ
先程見たダガーLもエールストライカーを装備すれば重力化でのハイジャンプや飛翔ができる。だが本来が宇宙用の装備だ。短時間の飛翔しか出来ない。
だがこのレイダーは大気圏内運用を元から考慮されている。それもサブアームが保持する大型の副翼により航続距離の戦闘能力を上昇している。しかも大気圏外離脱後に専用ポッドで目標へ降下・攻撃ができる。現時点のMS・MAの中で最も強襲能力の高い機体だろう。
「ここに格納されているレイダーは世界樹跡地基地に置かれている機体の後期型です。前期型と違いビームライフルとアフラマスダを装備しています」
整備士による話が始まった。宇宙でアクタイオン班が独自に武装を強化したように後期型のレイダーは強化されているようだ。あるいは、キメラ隊のデータにより後期型が生まれた可能性もあるが。マクレガーはレイダーを含め可変機に乗ったことはない。それ故に慣熟訓練が必要だろう。
「今ここにある機体は宇宙にある基地のことも配慮され二機ですが、現在作戦の決行が決定しているとある作戦で使用される予定です。ですのでマクレガー大尉たちには慣熟訓練をお願いします」
「既に何か作戦が行われる予定なのか?初耳だが」
「南米の反乱以前から決定されていた事柄です。太平洋側に新設中の当社施設の港や軍基地からその作戦のためにいくつかの部隊がすでに出港しています。目標が予定ポイントに到達次第、作戦を決行する予定ですが発見ならびに予定ポイントまでの移動に時間がかかると推測されています。そのため我々は既定の作戦を実施するまでは本社内の方々には作戦のための訓練をお願いします」
そういうと整備士は格納庫に入る。そのあとをマクレガーともう一人は追って中に入るが、会話の中のいくつかが引っ掛かる。太平洋側の軍港から軍艦が出港し、捜索しているという情報から目標は太平洋のどこかにいる。そして移動も可能であり、以前から欲していたもの。
マクレガーの脳裏に目標が漠然だが思いついた。以前より厄介であり邪魔な存在が占領しているものだろう。そしてレイダーなどという量産機の中でも高級機が運用される理由も思いつく。それに恐らくその作戦には宇宙に未だにいる人員をも使うだろう。地上と宇宙の共同作戦。
『クルス』は宇宙用基地として世界樹跡地基地を使用する予定だ。連合軍から借り、アドバイザーとして連合軍の軍人が出向している共同基地とする予定らしい。仮に推測が正しければ、恐らく太平洋側にも新しく他の支部を作ることになるだろう。
そうすれば、オーブ解放作戦で用いられたタラワ級などを運用する海上戦力をも保有することになる。ここデトロイトの本社横にセント・クレア湖があるのは作戦で獲得する予定の目標で水中用機を用いるための布石だろう。まず間違いなく、その目標を得る際にも得た後にも水中用機が必要になる。
そしてその目標を保有するのは確実に大西洋連邦本国だ。だが、かつてプラント理事国が非理事国との間で格差を生じさせ不満が高まったようにならないために『クルス』に貸し出すだろう。表向き、建前といった言葉を使い、停戦という温存期に着実に勢力を高める気でいるのが透けて見えるようだ。なまじ、地球連合とプラントという視点で見ても両勢力ともにビーム兵器を保有しているからこそ警戒も相当なものなのだろう。そう思いつつ彼はレイダー後期型の詳しい説明を聞きに行った。
「よう、あんたのとこの船はいいもんだな」
そう言ったのはでっぷりと肥えた腹をした男だ。作業着に黄色い工事用ヘルメットを被った男は出港作業をしていた若い男に話しかけた。
「ええ、まぁよく言われますよ。我ながら仲間とこんなに立派な艦を見つけられるとは思っていませんでした」
「まったくうらやましいかぎりだぜ。タラワ級なんてどこで拾ったんだ?中にMS付きなんて運良すぎだぞ」
ある島の港に停泊する船は艦種だけでなく、サイズも製造元も多種多様だ。二人の前にある地球軍製の艦船の一つ、タラワ級に限らず様々な艦艇が停泊中だ。オーブ製のイージス艦やザフトの陸上艦のレセップス級などがいるが、全てにある共通点がある。それは艦の目立つところにジャンク屋を示すマークがあることだ。
全ての艦に言えることだが所々修復された箇所が目立つが製造元の専門的な修復がなされていないがためだろう。個人の技術がまちまちだからだろう。出身だけでなくジャンク屋になった時期ですらバラバラであるが故か。
男の言うタラワ級も艦のサイズこそ大きいが改造が施され正規軍が使うような代物には到底見えない。だが、中に格納されている代物は別だ。
「いえいえ、あそこのレセップス級の持ち主には負けますよ。他にもピートリー級やボズゴロフ級までいますし。なんであんなに立派な艦がいるんですか?」
「ああ、あれか。ボズゴロフ級は知らねえが、ピートリー級はアフリカの明けの砂漠とかいうレジスタンスから手に入れたらしい。レジスタンスが持っても整備どころか運用すらできやしねぇ。宝の持ち腐れってとこだから代価払って手に入れたんだとよ」
アフリカにおけるアークエンジェルと砂漠の虎の異名を持つアンドリュー・バルトフェルドの死闘で大破、あるいは傷ついた艦をレジスタンスが撃破なり鹵獲し、それをジャンク屋に売ったことでここにあるという。戦場で出る多数の戦争廃棄物の修復を生業とするジャンク屋だからこそできる代物だろう。
作業用に改修されたレセップスや改造が施されているピートリー級、その他の艦艇の武装を眺めていると作業着の男は続けて言ってくる。
「モノは相談なんだがよ。あんたらのところにある機体、俺らに譲ってはくれねぇか?そりゃもちろん金は払うぜ。完全な状態のストライクダガーが五機もあるんだろう。一機でも構わねえからさ。そっちにはジンもあるんだから頼むぜ」
そういって手を合わせて拝んでくる。別に自分は神仏になった覚えがないので、その拝みを無視し答える。
「残念だけれど、それは無理かな。決定権は僕にはないですが」
「でもそんなに持ってたところで宝の持ち腐れだろ?地球軍は新型量産機に変えているっていうんだからあっという間に旧式機になって、価値も下がっちまうぜ。なぁ、考え直してくれよ」
「そうは言われましてもね。宝の持ち腐れとは言いますが、艦長はそこにあるだけで他の仲間達からの羨望のまなざしがたまらないらしいです。だからたぶん他の人に言っても無理だと思います」
そう言い、拒絶の意思を伝えるも何度もせがんでくる。そのたびに拒絶の意志を伝えるが、聞いてはくれない。これでは本来の任務が全うできない。内心殺るか?という思いも来るがこらえて対処してると母艦から出港のための汽笛が鳴り響く。
「それでは僕はこれで。話なら僕みたいな下っ端じゃなくて他の方たちに頼むとよいと思いますよ」
そう言いタラップに駆け込み艦へ行く。男はあきらめきれずに叫んでいるが彼はそれを無視して突き進んだ。
港を一隻のタラワ級が出港していく。港に停泊している艦の中で巨大なほうに入る艦の出港に複数のジャンク屋は羨ましそうに眺めている。大型の艦は数隻存在するがそれらの艦の持ち主は皆、運に恵まれ成功したジャンク屋だ。小型艦艇で精いっぱいというものも多い。
タラワ級が出港する直前までタラワ級の関係者と話をしていた男は首をかしげつつ呟いた。
「下っ端って言っても、他の連中に指示を出してたように見えたんだがなぁ…。あいつが下っ端ならあの艦には何人乗ってやがるんだ?」
その呟きは波飛沫の音に紛れ誰にも聞かれずに消えていった。
タラワ級の航海は順調そのものだった。なにしろ邪魔をするのは天候くらいなものだからだ。タラワ級は地球連合軍内では強襲揚陸艦にカテゴライズされる艦だ。護衛もつけずに航海をしていれば敵対しているザフトに襲ってくださいと言っているも同然だ。
だが今は停戦協定のために会談をしている最中だ。なにより地球上のザフトは全盛期と比べるのも烏滸がましく感じるほど消耗している。そのため、襲い掛かる相手もおらず航海は順調であった。
タラワ級は順調に目的地に向け進んでいく。ある目的地に入港するためわざわざ目的地を中心にぐるぐると渦を巻くようにして進んでいる。わざと時間をかけ進んだ果てに到着した目的地から入港しようとするタラワ級へ通信が入る。
(こちら大西洋連邦軍ハワイ基地。貴艦の所属を述べよ)
それに対し、ジャンク屋であるはずの艦から返信が述べられた。
「こちら大西洋連邦軍内民間軍事会社『クルス』所属艦。ハワイ基地、入港を許可されたし。入港に関するデータはそちらに送られているはずだ。それを確認してもらえば我々の所属の証明ができるはずだ」
(……、データの確認を完了した。入港を許可する。停戦期のためテロに注意が行われている。念のため臨検に入るが構わないか?)
「構わない。こちらはそちらの基地に用がある。急ぎの用だ。上陸をする必要があるから早めに頼む」
(了解した。貴艦はこちらが指示する位置へ入港せよ)
そう言い、通信は終わった。そしてタラワ級は指示された位置へ入港していく。一隻だけ他の艦と違いクレーンなど作業に特化した姿をする艦のため非常に目立つが仕方がない。目標の情報を手に入れるための潜入捜査としてのカモフラージュなのだから。
入港後の臨検を終え、船から複数の人々が降りてくる。スーツ姿の男性一人を守るようにベレー帽をかぶっ屈強な男達が自動小銃を構え、車に乗り込む。車が進んだ先はハワイ基地の一角にある通信設備が最も整っている場所であった。複数の護衛に守られた男はつい数日前まで船の出港作業を行っていた若い男性だ。
彼はおもむろに装置を起動させると電文を送る。内容は至極簡単だ。目標の予定される日時と緯度などの位置情報、そして保有戦力に関して暗号を使い送信していく。
彼の狙う目標は動く。大西洋連邦の金をも用いて作られながらも製作者によって奪われ、簡単に位置を探ることができなかった故に放置された代物。急いでザフトをたたくために無視された存在は今、密かに狙われようとしている。
とある日時に目標のいる場所はオーブ連合首長国とハワイ基地の中間地点の海域。北から南米に向けて南下する大西洋連邦軍艦隊を避けるためにアメリカ大陸側に寄れず、かといってマスドライバー施設を失っている東アジアに近寄れない苦肉の策。
それが今、身内(ジャンク屋)に偽装した諜報員たちの手により居場所を暴かれた。マスドライバー設備を有し全長数十キロからなる浮遊構造を持つ人工島は様々な思惑を持つ勢力の一角により襲われようとしていた。
キメラ隊が狙うはギガフロート。独自に集めたジャンク品により武装したジャンク屋や雇われた傭兵により幾度となく各勢力の襲撃を防いできたジャンク屋所有人工島。
ジャンク屋が相対するのはザフトの艦隊三つを突破し、ジェネシスを破壊したキメラ隊。練度の高さ故に量産機の中でも上位の性能を持つ機体や試作機といった機体を有し、仮初の姿として民間軍事会社『クルス』として表舞台にたった。彼らはジョセフ・コープランドの大統領選の手土産にすべく、動き出す。
感想・批評よろしくお願いします。
活動報告に載せていますが現在入院してますのであまり書けない状態ですので、投稿のペースが落ちるかもしれないです。その他、ペースなどに関する情報を活動報告に挙げますのであまり更新がなかったら申し訳ないのですが確認してみてください。