機動戦士ガンダムSEED 技術試験隊の受難<一時凍結>   作:アゼル

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視点がコロコロ変わります。しばらくはオリキャラオンリーですが、次話以降くらいからは原作キャラを出していこうと思います。


基地周辺宙域戦

世界樹跡地基地。廃棄コロニーに偽装された基地は秘密性の高い基地でありながら広大な面積を持つ。ボアズのような巨大さはないものの、偽装のために利用された廃棄コロニーの外装を丸ごと利用しているためなのだが、戦艦などのための港だけでなく基地内には実証試験のためのエリアやMS工廠まである。

 

 

その基地内のMS工廠では新型機製造のためにMSパイロットと開発者達の間でやりとりがなされている。そのやり取りは、基地内ですでに作られたMSやMAだけでなくペーパープランの機体まで様々だ。だが、この場は実戦を味わったパイロットたちの生の声が聞ける貴重な場所のため、時間の空いたパイロットや戦艦の乗組員とやり取りがなされる。

 

その日、MS工廠には多くの人々が存在している。宙域警戒のために活動している人員を除き、休息をとれるものなどが集まり、技術支援隊"コカトリス隊"の各開発陣が製造、あるいは設計したMS等について説明を受けている。

 

 

マクレガーは休息の合間に司令部より通達を受け、この場にいた。工廠内にはゴッサムなどの整備員も多数おり、将来自分たちが整備するかもしれない機体の説明を聞きに来ている。そして開発陣による説明が始まった。まずはアクタイオン・インダストリーから出向している技術者により説明だ。

 

 

固定された機体はストライクダガーの下半身を戦車に変えており、ひどく機動性の悪そうなできだ。開発陣の一人、ジェリックという男が説明し始める。

 

「この機体は戦闘において脚部マニピュレーターを損傷した機体を回収後、再利用して製造された機体です。正式名称は決まっていませんが仮称、【ダガータンク】と言います」

 

 

マクレガーは付近にて説明を聞いていたゴッサムを捕まえて話をしだした。

 

 

「班長、あれは正直言ってどうだ?自分からは装甲のないザウートにしか見えないんだが……」

「そうですなぁ、まさしくその通りといったところでしょう。走行系に致命的な損害が起きたら終わりだろうに、現場を知らないってもんはここまで影響を及ぼすんですかねぇ」

 

ゴッサムは頭をかきながら苦笑する。それを見て同感だな、と心の中でつぶやき話しながら説明を聞くことにした。

 

「走行・駆動系に関してはリニアガン・タンク同様に動輪が破損しても走破を続けられる高性能モーターを内蔵しています。そしてストライクダガーの装備ですが従来の機体よりも全高が低いので小型化したシールドと我が社が誇るMS、CAT1-X1 ハイペリオンの武装の、RFW-99 ビームサブマシンガン【ザスタバ・スティグマト】をザスタバ班との協力の下で使用できるようになっています」

 

 

その後も改良が施された面や機動力などに関しても説明がなされているが正直言って論外だろう。リニアガン・タンクがバクゥの機動力にも格闘戦でも負けているのに、この機体はリニアガン・タンク部隊が圧倒できるザウートの廉価版といったところだろうか。そのような機体を前線の兵士は使わないな、という思いとともにアクタイオンの兵器が両軍であまり採用されていない理由もわかった気がした。

 

 

「班長、あれは駄目だろう。せめて、車高というか機体をうつぶせ上にするなりして戦車形態になれるようにして、格闘戦対策もしなければ実戦で使われないぞ。今のところの説明を聞く限り、アンカーが車両の前後左右から射出される点や、ダガー自体にはパイロットを必要としていないみたいだが、アレではなぁ」

「全くですな。あれは却下ということで。後程参加者の任意でアンケートがとられますからそれで記載するとよいと思いますよ。戦車乗りがそのまま運用できる機体になるとよいのですがね」

 

 

二人の会話の最中、すでに周囲の人々もあまり良い印象を持たなかったようであった。中には元戦車乗りのパイロットが文句を言い、問題点が大量に噴出してしまい、仮称【ダガータンク】は失敗作の烙印を得て終わった。

 

 

続いて、ほかの班の説明が続く。元オーブ連合首長国の技術者班などは既存MSを回収して設計されたMSのデータを提示してきた。元オーブ所属の技術者たちはユン・セファンのようにオーブ解放作戦後に比較的友好的な者から、ヘリオポリス崩壊で肉親や友人、恋人を失ったものたちにより構成されている。

 

 

彼らは機体の実機の製造は行っていないようで、巨大スクリーンに設計図と予定されている機体完成図を映す。映っている機体は2機種。2機ともに作業用に改修された機体のようだ。1機はストライクダガーを改修し作業用に再設計されている。従来、イーゲルシュテルンや背部アタッチメントを装備していた箇所は排気ダクトを増設されたり、エネルギー用に発電機などを装備して稼働力を高めているようだ。

 

もう1機はオーブの量産MSのMBF-M1 アストレイが原型機のようだ。こちらはアストレイからの流用パーツが4割ほどであり、基本装備は持たずダガーのような頭部ユニットにすることが可能で、両機ともに共食い整備が可能となっているとの説明だ。

 

 

いざとなれば武装を持たせて戦わせることができることから、アクタイオンの【ダガータンク】よりもまともだろう。そしてこれら2機はともに正式名称は決まっておらず、ダガータイプを【ワークスダガー】、アストレイタイプを【レイスタ】という呼び名となっているようだ。

 

 

開発陣と文字を出す量子コンピューター曰く、戦闘用に改修すればジンやシグーを相手に十分戦闘が可能だそうでいざという時の予備戦力としても見ることができそうだ。この点から旧式化している【ワークスジン】よりも良い機体だろう。こちらは【ダガータンク】のような文句などではなく、戦闘用改修に関する質問などが飛び交っている。先ほどの機体と打って変わり良い機体であり、戦時量産機を戦後も扱えるようになっている点で、非常に好感触を持てる。

 

 

そしてその後も各開発班から発表が続いた。ある班ではストライカーパックに関して、工廠内にあるザフト性のMSをバラバラに解体して構造を理解し、機動力を高めるためにシグーのようなスラスターをさらにシャープにした装備を提案する班や、以前哨戒中に獲得した哨戒仕様のジンのライフルやライトニングストライカーなるストライカーパックの復元と、復元の中で得た技術などを応用したスナイパー用装備を開発した班もいた。

 

 

 

そうして各班がMSなどの新兵装や実験機を一通り説明した後、基地内に突如として警報が鳴り響く。そして基地内に放送が入る。

 

 

『第一種戦闘用意、第一種戦闘用意。所属不明機ならびに所属不明艦が接近中。戦闘員はただちに持ち場につけ。繰り返す、第一種戦闘用意、第一種戦闘用意・・・』

 

緊急放送と同時に工廠内の人々が各持ち場へ急ぐ。ゴッサムはピネラペへ、マクレガーはMSハンガーに行く。ごった返した状態だった工廠内の人員は即座に各持ち場へと人々が動き、開発者と警備担当者を残して元の静かな場所になっていった。移動中も放送は続く。

 

 

『不明艦は数1、MS1。アメノミハシラ方面に向かったパトロール艦隊が後方より追撃中の模様。不明艦などはここを通過しようとする可能性もありえる。MS隊は急ぎ準備せよ』

 

 

パイロットスーツを着用したマクレガーは急ぎMSハンガーへ。すでにそこでは発進準備をしている多数のMSがある。ストライクダガーはもちろんデュエルダガーやブリッツなどがパイロットを待ち、あるいはパイロットが乗り込み司令部からの連絡を待っている。

 

『現在、こちらに向かっている不明機を固定狙撃レーザー銃座に常駐している部隊が捕捉した、との連絡が入っている。不明機はアストレイ1機、コーネリアス級1隻。尚、コーネリアス級は改造が施されているとのこと。第一から第四独立艦隊搭載MS部隊の即応可能な機体は発進し、現在戦闘を監視している狙撃部隊と合流せよ!』

 

 

司令部からの命令に従いハンガー内のMSの一部が動きだす。マクレガーのブリッツも発進口に移動され、オペレーターから出撃の合図を待つ。

 

『マクレガー機、発進どうぞ!』

「ブリッツ、アラン・マクレガー中尉だ!出るぞ!!」

 

カタパルトデッキ脇のGO!というサインが光った瞬間、急速に加速されたブリッツが射出される。向かうは不明機及び不明艦を観測したスナイパー部隊近く。ほぼ同時に出撃したMS部隊、20機以上のMS隊は陣形を組み作戦宙域へ向け前進した。無数のデブリに隠された世界樹跡地基地。正規のルート以外は機雷などで封鎖されている。黒に近い緑色、ハンターグリーンに塗装された高機動型ジンやシグーといったザフト系MSやストライクダガーやデュエルダガー、ブリッツなどの多種多様なMS部隊は慣れた様子で進み、万が一のための先制攻撃を狙い基地を旅立って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

不明艦、もとい改造の施されたコーネリアス級を追撃するネルソン級戦艦2隻とアガメムノン級宇宙空母1隻は世界樹基地方面に逃げ込もうとしている敵艦にミサイルとビーム砲による攻撃で、デブリ帯への進路を変えようとしていた。アガメムノン級宇宙空母フィロンの艦橋で艦長のアレクセイ中佐は厄介なことになった、と思いつつ敵艦に停止を呼びかけつつ砲撃するよう命じていた。

 

 

事の始まりはオーブに残存した宇宙ステーション、アメノミハシラ方面へのパトロールという名の恫喝を含んだ行動だ。アメノミハシラはオーブ本国を仕切っていたアスハ家ではなく、同じ五大氏族のサハク家により仕切られている。そして現在そこを仕切っているサハク家の双子は連合軍に友好的だ。そのためか、ザフトの戦艦やMSを襲撃するという話が連絡されていたため、その連合軍の艦隊を見せることによる恫喝とオーブの宇宙での力を見るため、パトロールという名目で出撃したのだ。

 

だが、その場で起きたことは予想外のものであった。オーブのMSに襲撃され満身創痍といった状態のザフト艦隊を発見し、これを撃破し戦闘があったと思わしき宙域に艦隊を進めると黒いオーブ軍を示すIFFを出す機体がジャンク屋のマークを付けたMSと最強の傭兵サーペントテールに襲われていたのだ。

 

 

そこで緊急事態と判断したアレクセイは艦に搭載していたコスモグラスパーを先行させ、援護しようとしたが黒いオーブ軍MSのコクピットにアーマーシュナイダーが刺さるところを目撃し、こちらに気が付いたサーペントテールのMSとジャンク屋のMSとコーネリアス級は離脱を始めたところであった。様子から言って連合軍に友好的に接していたオーブ軍と戦闘したジャンク屋などから事情を聴く必要があると考えたが友軍機救助のため艦隊を停止させ、急速離脱を行ったサーペントテールとジャンク屋の特徴を記録してその場に留まった。

 

そこまでは、良かった。そう、そこまでは良かったのだ。アレクセイはそう思いつつ砲撃を避け続ける敵艦を見る。その後やってきたオーブ軍イズモ級戦艦とやり取りを経て基地へ帰還し、もう間もなく基地だと考え始めた矢先、件のジャンク屋の輸送艦に遭遇してしまったのだ。そこで改めて話を聞こうとしたのだがコーネリアス級は元が輸送艦とは思えない速度で逃げまくる。しかも変則的な動きをしつつ、巧みにこちらの攻撃をかわしながら。

 

 

たまらずアレクセイはコスモグラスパー隊によって強制的に停船させようとしたが、これがジャンク屋の専守防衛の義務を守ったこととなったためか、あの場にいた赤いアストレイが出撃しコスモグラスパーの翼をたたききって再び遁走したのだ。回収作業に時間をとられたこともあるが、もともとデブリ帯でジャンクを拾う予定でもあったのだろうか敵艦はデブリ帯に向かおうとする。

 

 

このままではただでさえ左遷されているのに、栄転どころか汚点が降りかかる!そう考えたアレクセイは停戦を呼びかけつつ敵艦に当たらないように砲撃しつつ猛追していた。まれに直撃弾もありそうであったが船体後部両舷から巨大シールドを展開して防いでいる。ともかく今はデブリ帯に向かわせないことを優先せねば、その思いからできる限り的に近寄り停船か付近から追い出す必要がある。そしてなにより腹立たしいのは先行するネルソン級戦艦2隻だ。デブリ帯に向け放てばいいものをまれに反対方向にも放ち逃走進路をふさいでいる。多少の被弾を我慢すれば輸送艦でも逃げられなくはないだろうがジャンク屋を理解していない無能めが、と内心で僚艦の艦長を罵る。

 

 

だが、彼は焦りの中で気づいてしまった。仮にここで停船することに失敗したとしよう。そうすれば戦艦2隻と宇宙母艦1隻で追撃しても輸送艦1隻止められない無能の烙印と、オーブからの冷たい視線がくることを。そして仮にデブリ帯への侵入を許せば潜んでいるであろう友軍部隊の手を借り、あまつさえ基地の存在を知らしてしまうことになる。それにハタと気づいた彼は撃沈させることを決意した。

 

 

「砲撃手、あの艦を落とせ!何としてもだ!僚艦に打電、『停船せずオーブ軍や友軍部隊に攻撃してきた不明艦はザフトを支援する敵である。故に撃沈せよ』とな」

 

 

焦りのためにオーブ軍はともかく自分が先にMAを差し向けたことも忘れ指示を出す。軍内での人材の墓場と言われるキメラ隊。そこの艦隊群に入れられた自分は不幸だ。優秀であるはずの自分がこんなバカどもが集まる基地に配属され、安全な後方にもいけないとは何らかの謀略に違いない!必ず返り咲いてやるわ!

 

 

 

そう勝手な思いを抱き撃沈命令をだし、彼は攻撃を激しくさせた。だがキメラ隊に所属してわずかな期間しかたっていないがゆえに知らなかった。キメラ隊がなぜ人材の墓場と言われ、無能なものは死んでいくのかを。

 

 

 

 

 

 

 

固定狙撃レーザー銃座常駐部隊は戦闘を行っている基地周辺のデブリ付近でなされる戦闘を銃座に設置された長距離スコープを通じて眺めていた。状況は必死に逃げる輸送艦に対しデブリ帯に侵入させないようミサイルをばらまきつつ逃げる方角を、特定の方向に仕向けるようにしていることがわかった。特に艦隊後方のアガメムノン級はデブリ帯に向けミサイルとビームをはなちまくっている。あれでは、デブリ帯に何かがあるといっているようなものだし、後片付けが大変だ。それに対し、先行する戦艦2隻は多少の被弾を我慢すれば逃げられる程度に逃走可能な経路を意図的に作りながら砲撃を行い、速度も全速力でないことがわかった。

 

デブリに先端がアームでできた三脚のレーザー砲にMSがセットで固定されている。固定されている機体はハンターグリーンのジンや、シグーといった実弾兵器をメイン武装とした機体からバスターダガーのようなビームも放てる遠距離戦を重視された機体まで5機以上の機体がいる。

 

 

バスターダガーに乗ったフーバー少尉はその光景を見つつため息をつく。

 

 

「全く、無能が指揮官とはあの部隊も可哀そうに」

 

 

眼下に広がるデブリ帯から見える幼稚な争いを眺めつつ鼻で笑った。

 

(少尉、不謹慎ですぞ)

(気持ちはわかるけどよ、アレの後始末どうするかわかっているんでしょう、少尉は)

 

 

同様に固定銃座にセットされた僚機から通信が入ってくる。知らず知らずに声に出していたようだ。まれに本当の無能が入ってくるのが傷の部隊だが、あそこまでの無能はあまり見たことがない、と今度は口に出さずに思う。そして通信を入れてきた彼らにこの後起きるであろう展開を言ってやった。

 

 

「そうだな、戦艦はともかく母艦はいらないな。戦闘状況は司令部に流しているのだから、時期にどうなるかわかるさ。友軍機到着まであとどれくらいだ?」

 

(臨時編成の第一から第四独立艦隊搭載MSによるペルシャ隊は急行中です。到着まで……、あと12分のようです)

「……12分か、長いな」

 

 

戦闘において12分という長さは長いだろう。一瞬一瞬が命取りの戦場で、しかも宇宙服がなければ死ぬ宇宙空間では非常に長い。今は追われている輸送艦が被弾を覚悟で去ってくれることを祈るばかりだ。

 

 

(12分経って命令があったらあの輸送艦も喰っちゃっていいんだよなぁ、少尉さんよぉ。たまには海賊やジャンク屋のMSじゃなくて船ごといってみたいものだぜ)

「口を慎め、フランツ軍曹。人を撃たないで済めばそれでいいんだ。それにどうせ艦を撃つのは確定だろう。お前はそれを撃てばいい。いいな?」

(了解っと。しかし無能が乗る艦の乗組員も可哀そうに)

 

確かにそう言えるが、ここでは任官と同時に艦にも振り分けが独自にされるシステムのはずだ。自分がこの部隊にいるのも基地に任官してから言い渡されたのだから。つまり、あの船に乗っている奴らは恐らく……。

 

 

「安心しろ、軍曹。ここの任官システムを思い出せ。そうすればお前の思いは晴れるぞ」

 

 

言って、思う。おそらく艦載機のパイロットやメカニックたちのような死んだら補充の利かない奴らだけは無事に済むだろうと。

 

 

 

 

 

世界樹跡地基地司令部では固定狙撃レーザー銃座常駐部隊から送られてくる情報から、戦闘状況を確認していた。司令部は基地内のMSや戦艦などの発艦などのほかに周辺に配備された部隊や監視装置からの情報を駆使して異変が起きた際に即座に対処できるよう最新機器が揃えられられている。今もアレクセイ中佐による戦闘を望遠カメラや固定狙撃レーザー銃座常駐部隊などから送られてきた映像を巨大スクリーンに流すことでどのように対処するかが決められようとしている。

 

 

 

 

「これはいかんだろう、アーノルド君」

「はい、まずいですね。司令」

 

 

立派な髭のある60過ぎほどの、もうお年寄りと言ってもよいぐらいの男性が隣に立つ40過ぎほどの男性に声をかける。彼らの目の前に映る映像には砲撃を続けるネルソン級戦艦とアガメムノン級母艦がいる。この映像で問題なのは3隻のうち後方で指揮をとっているアガメムノン級だ。先行する2隻は逃げるコーネリアス級にわざと両舷のシールドなどで防御しつつ被弾を覚悟すれば逃げられる程度の砲撃をしているようだが、アガメムノン級の砲撃は直撃ねらいの弾ばかりだ。いっそのこと、直撃弾のみであれば戦闘も長引かずよかったのだが砲撃手の腕が悪いのかデブリにミサイルやビームが直撃しデブリが量産されている。さらに今の映像の少し前まではデブリに向けて砲撃を繰り返していたので非常に迷惑な存在であった。

 

 

「たまにの人員補充と思ったが、まさかこれほどの無能が来るのは珍しいのう。ベテランが序盤で多く戦死したことも原因かと思ったのじゃが、これを見ると違うかもしれんなぁ」

 

 

司令と呼ばれた男はつぶやく。そして彼は前回の補充人員に関して思い出す。前回の補充はパナマが落ちるまえであったが、その多くは何らかの理由で連合軍内主流派から弾かれたものたちであった。有能な者から平凡な者、そして無能な者までいたがその多くは周りのサポートもあり生き延びることができた。

 

 

たとえどんなに無能でも、平均以上の才能がある者たちに囲まれるためにじきに戦闘になれ多少は良くなっていったはずだ、と思っていた。だが、目の前に移る戦闘はダメだ。アメノミハシラ方面に向かった際にはこの廃棄コロニーに偽装した基地以外の小惑星などでできた基地から出撃した艦が同伴したはずなのに、わずか3隻しかいない。報告によると戦闘映像が映る前はもっといたようだが、損傷したMAの収容で数隻が離脱したということであった。

 

 

致し方ないか、と立派な髭を生やした司令官は諦めの境地に至り内心はあまり好ましくない指令を出す。

 

 

「最早致し方なかろう。あまり無能を放置していてもろくな目には合わんしの。あやつらはもとよりこの部隊を嫌っておったようじゃし、やめてもらうとするかね」

 

その言葉を聞いたアーノルドという副官は頷き、指示を出す。

 

 

「狙撃部隊並びに発進したMS部隊に打電。合流後速やかに邪魔者を排除せよ。目標はこれより指定する対象宙域にいる一番の大型艦だ。狙撃部隊には目立たせるなと言っておけよっ!」

 

 

指示の後、司令部の機会に何事かを入力する物音が続いた。これより始まるのはこの部隊ならではの行い。通常の部隊なら決して起こらない行い。連合構成国から無用な人材がおくられ、死すら望まれているといわれる掃溜め部隊の特徴が表れた場面でもあった。

 

 

 

 

 

 

 

「全く何をやっているのだ!早くあの艦を墜とさんか!」

 

 

先行する友軍に命令したものの、友軍はさほど攻撃をせずにコーネリアス級は被弾を覚悟したのかデブリとは逆方向へと舵を切り、宙域を撤退し始める。それに対しアレクセイはフィロンの主砲を敵艦に向け放つが、戦艦は一向に命令を聞かない。攻撃したとしても、それは敵艦への直撃コースをとっておらずこのままでは逃げられてしまうのは明白である。これも自分を更なる苦境に陥れるために何らかの策略だと考えたアレクセイは友軍の行動に痺れを切らし、操舵手に指示を出す。

 

 

「機関最大、敵艦を追うぞ。早くせんか!」

「了解。僚艦へ通信開きます」

「満足に働かん奴らなど、放っておけ。急げ、逃げられるぞ!」

 

 

でっぷりと超えた肉体から怒声が発せられ艦橋内に響きわたる。命令を受けた操舵手は機関を最大にし、フィロンを先行する僚艦のネルソン級戦艦を追い越させ、追撃に入る。だが、操舵手もまたあまり良い腕を持っているとは言い難く、進路上にいた僚艦を追い抜くのに時間をかけてしまいコーネリアス級との距離は非常に開いてしまった。だがそれでもアレクセイは追撃をやめさせない。そして僚艦からも距離がある程度離れ、コーネリアス級にすら追いつくのが難しくなり始めた次の瞬間、フィロンに激震が走った。

 

 

「な、何事だ!?」

 

 

アレクセイはあわてて声を発する。それに対し通信士が状況を報告する。

 

 

「機関部被弾!出力低下!スラスターの大多数が損傷した模様!」

「な、なんだとぉ!敵はどこだ!早くせい!」

 

 

直前まで敵の様子はなかったはずだ。だが機関部に被弾した。つまり敵襲だと思ったアレクセイはあわてて聞くが芳しい返事はなく、最悪の回答が返ってくる。

 

 

「直上方面よりMS接近。数は6。ジン4、シグー2。IFF反応なし、敵機です!」

「げ、迎撃しろ!」

 

 

だが、そんな彼を嘲笑うようにさらなる衝撃が艦を襲った。直上方面から来た光線が主砲であるゴットフリートに直撃し、使用が不可能になってしまったのだ。迎撃機を出そうにも艦載機であるコスモグラスパーは先ほどのコーネリアス級を襲撃した際に赤いMSに傷つけられ、後方にいた輸送艦に着艦させてしまったため、出すことはできない。絶望が彼を襲うがその思いはすぐに消え去ることになった。なぜなら直上方面から来たMSが艦に向け銃弾をばらまき、被弾の衝撃で必死に座席にしがみつくアレクセイ達のいる艦橋前に黒に近い緑色のザフト系MSが猛スピードで接近すると銃弾を放ち、艦橋は火に包まれたのだから…。無論、銃弾を受けた艦橋員は跡形もなく吹き飛んで行ったのであった。

 

 

 

 

 

スラスターを強化されたハンターグリーンのシグーに乗るミュラー准尉はたった今、銃弾を放ち艦橋から火を出すアガメムノン級を眺めた。アガメムノン級は主砲だけでなく艦の上部を傷つけられ、機関部も破壊されたため無残の一言に尽きる有り様だ。狙撃部隊により攻撃でスラスターを破壊され、IFFを切っていた自分たちに慌てたために急いで姿勢を変えようとしたために減速し方向を転換しようとしていたのはわかっていたがそれがうまい具合に艦の機能と動きを止めることに繋がっていた。

 

 

ふと、思い出したように彼はIFFを起動させる。そして自分が来た方向にカメラアイを向けると友軍のMSが次々と現れる。ついで逃げたコーネリアス級の方角を見るがもうセンサーにすら反応しないくらい離れたためスラスターの発光すらみえない。そしてコーネリアス級の行った方角とは反対の、アガメムノン級が来た方角から2隻のネルソン級戦艦が現れる。彼は後続のMSが持ってきた牽引用ロープをアガメムノン級に装着させるとアガメムノン級を少し追い越して止まったネルソン級にロープのもう一方を友軍機などと共につけ、これから書類仕事に奔走する司令部や関係部署の連中の苦労と冥福を祈った。

 

 

 

彼は中破したアガメムノン級の乗組員に対してそうは思わなかった。それは彼がこの部隊に染まっている証しともいえるのだが、そのことに気が付く者はその場に一人もいなかった。

 

 

 

 

 

 

その後、世界樹跡地基地から月基地へ海賊に襲われアガメムノン級が1隻中破したことと、艦橋などの被弾箇所にいた人員が死亡したとが報告されたが、戦闘の詳細は不明であったという。無能で部隊に仇名す存在は同部隊でも消す。秘匿性の高い世界樹跡地基地の特性と、同基地所属のキメラ隊の容赦のなさが露見する出来事だがこのことを知るのは連合内でも一握りであるという…。

 

 

もとより無用な存在の集団。故に少し消えたところで問題ないと思われていると基地所属部隊は考えているが真偽は定かでないという……。




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