IS‐のんびり屋な天才‐   作:石っこ

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第9話

 結局蘭ちゃんとも結構仲良くなれた。「IS学園の話とかできたら聞かせてくださいね!」と言われたのでボクは、柄でもないのにまっかせなさい! とか言って請け負ってしまった。後になって思い返してみると恥ずかしい。なんなんだよぉまっかせなさい! って……。あうあう……せめて任せて! って感じでしょ……。なんかもやもやするぅ~!

 

「お、おい? 大丈夫か彩花?」

「んぐ……。あぁごめんね一夏くん……。ちょっと自己嫌悪に浸ってただけなんだ」

「はぁ? なんで自己嫌悪なんてしてるんだ?」

「いや、その……もう! 一夏くんは鬼だよ! 鬼ぃ!」

「え? ちょっ……」

 

 ボクはそれだけ言うと若干涙目になりながらIS学園に向かって走る。

 

 

 

~織斑 一夏~

 

「…いっちまったよ……なんだったんだ?」

 

 それはそうと彩花が残していった空気がやばいんだが……

 

「おい、アンちゃん。あんなまだ幼くてかわいい嬢ちゃんを泣かせるたぁ感心しねえなぁ」

「はっ? いや、あいつは男ですよ?」

「馬鹿いっちゃあいけねぇ! あの子が男なはずがねぇだろう! 「「そうだそうだ!」」どうみても少女って感じだっただろうが」

 

 周りの人もそれに同調するかのように頷いている。というかあいつどんだけ初めての人にも好かれてるんだよ! これは異常だろ!

 

「くっそおぉぉぉ! 彩花めぇぇぇ!」

 

 道端で一夏の声がこだましたという……

 

 

 

 

 

 

 休み明けです。はふぅ……。昨日はゲームをして散々眠っちゃったなぁ…まだ結構眠いや。

 どうやら今日はまた転入生が紹介されるみたいだ。今度こそボクの懸念通り各国が送りこんできたってところかなぁ……。

 

 教室では騒ぎが広がっていた。なんでも次の学年対抗戦で勝った人に一夏くんと付き合う権利が与えられるだとか……。それで一夏くん本人に許可はとってないらしいけど……それってどう考えても無効じゃないかな?

 

「あんたまたてきとーな広め方したんじゃないでしょうね?」

 

「あ、あぇ? そ、そんなことないと思うけどな~」

 

 本音さんが頭の方へと手をやり、えへへといった感じにはにかんでいる。はうぅ。本音さんののんびり具合がボクを癒してくれるよぉ~。ってちょっと待ってよ! その噂を広めたのは本音さんたちなの!? 人数を多くして既成事実みたいにしてしまおうって魂胆…なのかな?

 それとボクはこの会話を聞いていていいんだろうか?

 

「あ、あのっ! 彩花くん!」

「ほぇ? な、なぁに?」

 

 思考の波に浸っていたのでその範囲外からの声にボクは驚いてしまう。

 

「も、もし私が対抗戦で優勝したら…」

「…うん? どうしたの?」

「あ、あなたのこと…愛でさせてもらえないかな!?」

 

 …………………

 教室内を一瞬の沈黙が支配し、包み込む。だけど、それはそう長くは続かず一呼吸おいたかと思うと、

 

「えっ!? 彩花君もありなの!? じゃあ私彩花君の方にいく!」

「ちょっとずるーい! 私もぉー」

「え? あの…ボク了承してないんだけど……」

 

 ボクの声はさらに大きくなったクラスの喧騒に掻き消されて届くことはない。一夏くんの方に回ってた人も少しきたけど、無所属の位置にいた人がこぞってボクの位置にきている。

 というかボクの場合本人に隠れて話とかはしないんだね……。それにボクの場合は付き合ってじゃなくて、愛でさせてなんだね……。いや、優しくしてもらえるのは嬉しいからいいんだけどね? でも男としては複雑な気分になったり……

 

「おーう。みんななに話してんだ?」

「おっ、織斑君! な、なんでもないよ?」

 

 あぁ、一夏くん。ボクにはこの愛でさせて発言で集まった人たちから、すでに愛でられ始めたボクを救ってくれた君が救世主様にみえるよぉ……。ちょっと苦しかったんだ。女性のとある部分をボクの顔に押し付けられて~。

 

「一夏くーん!」

「うわっ!? 彩花!?」

 

 ボクは一夏くんに飛びついた。一夏くんは一瞬ボクを止めそうな素振りをみせたけど、結局実行することなくボクに抱きつかれていた。

 

「ね、ねぇ…あの2人ってもしかして……」

「彩×一…はぁはぁ。創作意欲が湧いてきたわ!」

「……いいか? 彩花…俺達、もう少し離れた方がいいと思うんだ。俺にも理由はわからないが悪寒がする」

「ほぇ? どうして?」

「いや、どうしてもなにも…えぇい、とにかくちょっと離れてくれ」

 

 ボクは一夏くんに引き離され、そして教室内が変な空気になっているのを感じ取った。

 クラスメートの視線はボク達を色っぽい目でとらえている。な、なんで?

 

「えっと…一体何があったの?」

「俺に聞くな…」

 

 一夏くんがげんなりとした様子を見せる。大丈夫? 栄養ドリンク飲む?

 

「どこからそんなものだしたんだ!?」

 

 え……? ……? どこだろう? ぱっと出てきたんだけどどこから出したのかボクにもわからないや。

 

「ま、まぁありがたく受け取っておくよ」

 

 そういうと一夏くんはカキッと蓋を外し栄養ドリンクを飲んだ。

 

「あ、それボクの手作りね~。一応だけど~」

「彩花君の手作りドリンク……? 一夏君がそれを……?」

 

 再び変な空気に包まれそうになるけど、一夏くんの爽やかな笑顔がそれを両断する。

 

「ありがとな、彩花。……まぁ疲れてたわけじゃないんだけどな……」

 

「うん。どういたしましてなんだよっ!」

 

 最後の方はちょっと聞き取れなかったです。もう一回言ってくれる?

 独り言だから気にしないでいいって? そう? それならいいんだけど。

 

 

 

 真耶先生が教室にきたのでみんな席につく。……可哀想なことだけどみんなが別に真耶先生を敬っているわけじゃないんだ。むしろほとんどの人はその後ろに控える千冬先生に目をつけられないようにと動いている結果だ。一部には自ら進んで受けにいく猛者もいるけど、その人を千冬先生は相手にしないし。

 

「えーっと。それでは転入生を紹介しますね」

 

 みんなが歩いている転入生を見て息をのむのが伝わってくる

 

「シャルル・デュノアです。みなさん、よろしくお願いします」

 

 ん? デュノアって確か……。それとあの人は……

 

「お、男?」

 

 クラスの誰かがデュノアさんに問う。…あれ?

 

「はい。こちらに僕と同じ境遇の方がいると聞いて本国から転入…」

 

 キャァァァァァ!!

 

「えっ!?」

 

 教室内を喧騒が満たす。ま、まあ驚くのも無理ないよね。この突然の騒ぎの大きくなり方は。

 

「3人目(2人目?)の男子! それも織斑君とは違い、愛でたくなる彩ちゃんとはまた違ったタイプで守ってあげたくなる系の!」

 

 ちょっと待ってください。さっきの学年対抗戦で勝ったら…という話から予想はしてたけど、やっぱりボクは愛でる対象なんですね。

 

「騒ぐな、静かにしろ!」

 

 千冬先生の一言であれだけざわついていたクラスがしーんとなる。

 よく訓練されてると思わない? ボクは凄く思う。

 

「今日は2組と合同でIS実習を行う! 各人はすぐに着替えて第2グラウンドへ集合! それから織斑「はい」、緋桜宮「なぁにぃ~?」……」

 

 ビュッ! スコーン!

 

 さすりさすり……

 

「……緋桜宮「……はい」同じ男子としてデュノアの面倒を見てやれ。解散!」

 

 

 

「あの……君が織斑君? そして……えっと、もう1人の男の子はどこにいるのかな?」

 

「ああ、もう1人なら……」

 

 そういって一夏くんがボクを指さそうとする。けどその前にボクはっ……! 例の準備を進める。その名もS計画! Sは彩花のさです。深く考えたわけじゃないのであしからず。

 

 ボクが今回したことは――一夏くんと同じ顔をボクの顔の表面に投影して全く同じように見せる。というものだった。

 

「……え!?」

 

 案の定シャルルさんは驚いたようだ。はっはっは。どうです? ボクのこの無駄な才能は! なんせシャルルさんが一夏くんに近付いてボクを指さすまでに、ボクも一夏くんの方へ近寄りつつこの作業したんだからねっ! 誰か褒めて褒めて~!

 

「これが彩花っていうんだけど……ってなんだこれ? ……。毎度毎度思うけどお前は一体何を目指してそんなことしてるんだ?」

 

「ボクの目指すことかぁ……それはねぇ……」

 

「ああ、いや。別に返答を求めたわけじゃない」

 

「酷いよ一夏くん……」

 

 しょぼーん。ボクががっくりきた拍子に投影していた映像がずれてボクの顔が見える。

 

「シャルル・デュノアです。よろしくね彩花(さいか)君」

(この子が本国のデータにもあった彩花君…? 実際に見ると本当に女の子にしか見えないよ……。本国では日本がしかけた男というのは嘘の、餌かもしれないってあったけど…どうなんだろう?)

 

「おっと、それはいいから早く着替えに向かうぞ」

 

 と言って一夏くんがシャルルさんの手を掴む。駄目だよ一夏くん! もっと女性(・・)は優しく扱わないと! ほら、シャルルさんの顔もちょっと赤くなってるし。ってあ~! 待って待ってー。ボクを置いて行かないでよぉ~。ボクだってシャルルさんの面倒任されてるんだからね!

 あわててボクは2人をとてとてと追いかけて教室を出る。そんなボクを見送って教室の人たちはピンク色の花のような雰囲気を作っていた。

 

 

 

 

 

移動中だよっ…少し待っててねっ……

 

 

 

 

 

 はい。ボクと一夏くんのような男たちが着替える場所に到着ぅ! ここにくるまで色々あったなぁ。なんか追いかけられたり、追いかけられたり。ボクが捕まってちょっとなでられて遅れそうになったから、 ボクを抱きかかえて走ってこの場所の前までおくってくれたり。送ってくれた人は鼻から血が出そうになってたけど大丈夫かな?

 

「うわっ! 時間やばいなぁ早く着替えちまおうぜ!」

「そうだね~」

「…………うわぁ!」

 

 ボクと一夏くんが上半身裸になり着替え始めた姿を見てシャルルさんは目をそむける。……あれ? ボクの方はあまり気にしてない? むしろ若干観察して、得心がいったような顔だったね。

 

「どうした?」

「あぁ一夏くん。ここはボクに任せといて。一夏くんはこっちむかないでね~」

「そうか? まあわかった。早くしろよ? うちの担任はそりゃあ時間にうるさい人で…」

「いいからいいから」

 

 ボクは一夏くんに後ろを向かせてシャルルさんの方へ向き直る。

 

「……ボクも後ろ向いてるから着替えていいよ。……シャルルさんは女の子……なんでしょ?」

 

「ありがとう…って………ッ!!」

(ッ!? どうして…! 僕に向けられるこの妖艶な顔…。これは本気で言ってる…?)

 

 シャルルさんは見事に狼狽したような感じになるけど、ボクには簡単だ。なんせ日頃間違えられるボク自身の顔をみてすごしてきたんだからね。造作もないです、えっへん。

 

「……。ちょっと後で付き合ってくれるかな」

「ん。いいよ」

 

 そんなこんなで着替えが終わってボクたちは実習に向かった。

 

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