IS‐のんびり屋な天才‐   作:石っこ

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今回はラウラが登場します。
ラウラ好きの人にはお待たせしました! といっても出番はあまりありませんが……


第11話

「あふ………」

 

 ボクは眠たげな瞳を薄く開きながら、あくびをしていつも通りシャワーを浴びに向かう。

 

 ザー

 

「ふぅ……」

 

 思えば昨日も1騒動あった――

 

 

 

 

 新たな転校生。ラウラさんの登場。

 

「ラウラ・ボーデヴィッヒだ」

「い、以上ですか?」

「以上だ」

 

 …なんとも自分の紹介が少ない人だなぁと思いながらボクは薄目でそちらを見る。

 真耶先生が少し困ってるよ? そんな様子に気づくこともなく、ラウラさんは一夏くんに憎しみのこもった瞳をぶつけながら近づいていく。ボクはそれを見ると咄嗟に一夏くんに声をかけていた。

 

「一夏くん!」

「ん? なんだ?」

 

 一夏くんがボクの方を振り向く。――その時、ちょうどラウラさんが振った手の平が、一夏くんが振りむいたことによって外れる。

 

「―――ッ! 貴様……ッ!」

 

 そういうとラウラさんはボクの方へと憎しみをこめた瞳を移動させる。

 

「……………」

 

 ボクはその瞳を無言でまっすぐ見返す。

 どうしてラウラさんは一夏くんを叩こうとしたのだろう? 理由はわからないけれど、そんなことは絶対にいいことじゃない。だからボクは感じた予感に従い一夏くんに声をかけたし、ボク自身がしたことを悪いことだとは思っていない。

 

 

 ――と、そんな風な騒動が昨日はあったんだ。

 そして、今日。こんな回想が終わったころにはボクはアリーナにいた。当然ボクも学年トーナメントに参加するわけで、その練習もあるのだけれど今回は主に一夏くんの見学かな。

 

 今、一夏くんはシャルルさんと戦っている。シャルルさんは『ラファール・リヴァイヴ』のカスタム機が専用機らしい。機体色はオレンジ色でシャルルさんに似合ってるね~。

 あ、一夏くんが負けた。でも仕方ないね。傍からみてもシャルルさんの実力はバランスが良くて、さらに高い水準にあった。そうやって遠距離武器を使われて徐々に一夏くんのSEは削られていき負けた、というわけだ。

 

「一夏は射撃武器の特性を理解できてないんだよ」

「う~ん。わかってるつもりなんだけどなぁ」

 

 そんなやりとりを一夏くんとシャルルさんがしている。

 

「お前の説明わかりやすいな!」

 

 一夏くんが得心がいったような顔をして続けて笑顔でシャルルさんにそう返すと、ボクの近くに黒いオーラがたちのぼった……ような錯覚がした。気になってチラリとそちらを見ると――

 

「「「私たちが教えた時はわからなかったくせに…」」」

 

 いや、あの……3人とも? しかたないと思うよ。セシリアさんはあまりにも理論的すぎで、鈴音さんの説明は主に勘ばかりの説明だったし、箒さんに至っては擬音しか使ってなかったよね……? さすがにボクでもあれを理解するのは無理だと思うよ……。

 

「見て! ドイツの第3世代機よ!」

 

 誰かの声が聞こえ、ボクたちはそちらを見る。そこには黒いISを纏ったラウラさんが立っていた。

 

「織斑一夏」

「……なんだよ」

「貴様も専用機持ちだそうだな」

「ああ、だからなんだ」

「なら私と戦え」

「嫌だ。理由がねえよ」

「貴様になくても私にはある」

 

 ――という風に会話が続きラウラさんが射撃をして、シャルルさんがそれを弾いた。結局放送がかかったことで事態は収束したんだけど……。ラウラさんって随分と好戦的な性格なんだねぇ……。

 

 

 

 

 そしてその日の夜ボクは一夏くんとシャルルさんの部屋に遊びにいった。

 

「やっほー! 一夏くーん。シャルルさーん。いるぅ~?」

 

 あれ? 返事がない。しっかりと中を見ると一夏くんとシャルルさんはそれぞれのベッドに座っていた。ボクが近付くと一夏くんは慌て始めて……ははぁ。

 ボクはシャルルさんに目配せをする。シャルルさんもその意味を理解したようでこくりと頷く。これで合点がいった。

 

「一夏くん。大丈夫だよ落ちついて。ボクもシャルルさんが女の子だっていうのは知ってるから」

「へ?」

 

 一夏くんは慌てていた体を止め、硬直してしまった。まあ無理もないね。自分が初めて知った衝撃の事実をボクはもう知っていたっていうんだから。

 

「ちょ、ちょっと待て彩花。知っていたってどういうことだ?」

「ボクもちょっと知る機会があってね。……というか一夏くんはどうやってわかったの?」

 

「いや…それは……」

 

 一夏くんはシャルルさんの方をちらりと見て顔を赤くする。シャルルさんの方も何を思い出したのかわからないけど頬を赤く染めていた。風呂上がりの女の子がそんな風にしていると色っぽいなぁ。一夏くんに襲われちゃうよ?

 

「お、襲わねぇよ!」

「わっ! びっくりしたぁ。……一夏くんボクの心を読まないでよ」

「別に読んだわけじゃないんだが……。お前の悪戯を思いついた子供のような顔が、そう考えてるとしか思えなかったんでな」

 

 あ、あらそう……。一夏くんは微妙なところで鋭い洞察力を発揮するね。

 

「彩花も知ってるんなら別に問題ないか。で。シャルル。話してくれるか?」

「……うん。いいよ……」

 

 

 

 そうしてシャルルさんは自分の身の上話から語り始めた――

 

 

 その話が終わるころにはボクは蚊帳の外って感じが凄いしてたんだよね。なんかシャルルさんの意識が一夏くんに向いていたっぽかったし。

 一夏くんがシャルルさんに顔を近づけて「大丈夫だ」といってIS学園の特記事項の1つを読み上げた。それはIS学園に所属するものはどの国家にも帰属しないというものだった。

 

「一夏って優しいね……」

 

 あの。ボク……お邪魔虫ですかね? 今の一夏くん本当に格好いいし。

 すると2人はようやく気づいたようで、一夏くんは悪いなといった風に、シャルルさんはあたふたとして謝ってきた。いや、別にいいんだけどね?

 

「――シャルルさんが国に愛着をもっていないと言うなら……ボクが何か手段を考える」

 

 ボクからは珍しく黒い感情が漏れていた。同時に頭にうずきを感じる。まるで何かを思い出そうとしているような……。2人もいつものボクと違った様子に狼狽しているようだ。

 

「いや、さすがにそこまでは思ってないよ」

「そう……? ならいいんだけど……」

 

 ボクは流れていた黒い感情を押しとどめる。そんなボクを見て2人はようやくいつものテンションを取り戻したようだ。すると、コンコンと部屋の扉がノックされる。

 

「一夏さーん? いますか?」

 

 この声は……セシリアさんだね。

 一夏くんとシャルルさんは見るからに慌てていて、一夏くんがシャルルさんをベッドに押し込んでいる。もう! 一夏くんてば強引だなぁ。もっと優しく扱ってあげないと。

 

 そんな事を考えていたら扉が開く音がして、セシリアさんが中に入ってきたようだ。

 

「一夏さーん? 開けますわよー? ……どうしましたの?」

 

 セシリアさんはこの光景を見て率直な疑問を呟く。

 

「あ、ああ。シャルルが風邪っぽいって言うんでな」

「そ、そうでしたの……一夏さんを借りていっても構いませんか?」

 

 明らかに苦しい言い訳に見えたけど、あえてセシリアさんも突っ込みはしなかったようだ。

 

「ご、ごゆっくり」

「どうぞどうぞ、シャルルさんはボクが見てるよ~」

「あら? 彩花さんいましたの? ……じゃ、じゃあ一夏さんは借りていきますわね」

「さ、彩花、頼んだぞ」

 

 一夏くんはセシリアさんに連れられて部屋から出ていった。

 

 

「さて、と……。シャルルさん、悪いんだけどボクも寝ていいかな? 一夏くんが帰ってくるまで、さ」

「う、うん……いいけど……」

「じゃあお言葉に甘えてっ! おやすみなさい~」

 

 ボクはシャルルさんの太もも辺りに頭を預け眠りにつく。一夏くんのベッドを使おうかとも考えたけど、一応シャルルさんのこと任されたし。寝るのはいいのかって? そこは突っ込んではいけないところなんだよ。

 

「あ、あの…?」

「すぅ……すぅ……」

 

(ほ、ほんとに寝ちゃった……それにしても彩花ちゃ…君はかわいいよね…。ちょ、ちょっとくらい抱きしめてもいいよね? うん。いいはずだよ)

 

 寝ているボクは頭の辺りに仄かな体温と柔らかさを感じながら眠りについた……。

 

 

~シャルル・デュノア~

 

 一夏君や彩花君は不思議な人だ。僕を守ろうとしてくれてる。 

 そ、それにしても……

 

「ぼ、僕はなんてことしちゃってるんだろうね!」

 

 どうして彩花君はこんなに抱き心地がいいのだろう。なんとなく抱いていると温かな気持ちになるというか……こっちも気持ち良くなるというか……

 

「この子は男の子なのにね……僕ってば……」

 

 僕は彩花君を抱きしめながら頭をなでる。

 

「ふにゅ……うにゅ……」

「あははっ。やっぱりかわいいなぁ」

 

 僕が彩花君を撫で続けていて一夏君が帰ってきた時、それを見られて赤面したのは余談だ。

 彩花君に気づかれなかったのはよかったけど。

 

 

 

~緋桜宮 彩花~

 

「じゃあボクは自分の部屋に帰るね~。一夏くんはシャルルさんをしっかり見てあげてね」

「おう。もちろんだ」

 

 そう言い残すとボクは部屋から出ていって、自分の部屋に戻る。頭にわずかに残ったなにかの暖かみを感じながら――

 

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