IS‐のんびり屋な天才‐   作:石っこ

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第12話

 ざわざわ。

 

 教室内を喧騒が包む。どうやら学年別トーナメントが近付くにつれて、噂が白熱してきているようだね。

 

「それは本当ですの!?」

 

 あぁ……。どうやらセシリアさんと鈴音さんの耳にもあの噂が入ったみたいだ。正直この2人のテンションの上がりようは他の人と比べるべくもないと思う。なぜかはわからないんだけど。もしかして一夏くんとそこまで付き合いたいとか? まさかね……

 

「で、彩ちゃんの方もなんだけど…」

 

 ボクも……ねぇ……。考えても仕方ない。どうせボクに止める気はないし、止まる気もしない。それが嫌ならボク自身が勝ちぬけばそれで構わないのだし。といってもボクの専用機は学年別トーナメントが終わってから、到着するからちょっと厳しいかな?

 

「まぁ、別に問題ないよね……」

 

 とりあえずボクは授業が始まるまで眠りにつくことにした。

 

 

 

 そして、ボクはアリーナへと向かう。ちょっと寝過ごして向かうのが遅れ気味だ。

 

「一夏くんもシャルルさんも起こしてくれたっていいのになぁ」

 

 ボクを置いて行かないでもいいじゃないかー。 

 ――彩花の寝顔を見ていたら起こすのが忍びなくなっただけなのだが――

 歩きながら少しだけぶつぶつと呟いていたら、ふとひとりの生徒の声が聞こえた。

 

「第3アリーナで専用機持ちの3人が戦ってるって!」

 

 ん? 第3アリーナ……? 折りしもボクが向かってるところだね。『打鉄』も手続きして用意したし。こっ、これは乱入しろというフラグ!?

 

 だからといってボクは急ぐこともなくのんびりと向かうのだった。

 

 

 

 そんなボクを迎えたのは、鈴音さんとセシリアさんが首にワイヤーをかけられ、殴られている場面だった。

 

「……! 生命維持警告が出てる……? ラウラさんに止める気は……ない……だって……?」

 

 ボクの中で何かが弾けるような気がした。視界が真紅に染まるような感覚と共に。

 ――気がつけばボクは打鉄に乗りラウラさんに飛びかかっていた。

 高速で接近し、驚いたようなラウラさんの顔が瞳にうつる。それは一瞬だったけれど、ボクがひとつの動作を終えるまでには充分な時間だった。

 

「……邪魔!」

 

 ワイヤーを剣で切り裂き、鈴音さんとセシリアさんを降ろす。ちょうどその時アリーナの遮断シールドが割られ、白式を纏った一夏くんが飛び出してきた。

 

「一夏くん! この2人をお願い!」

「ほう……たかが訓練機で私とやりあおうというのか」

「君の攻撃を防ぐくらいこれで充分だ」

「貴様っ!」

 

 挑発に乗ったラウラさんがすぐさまボクに向かってワイヤーを射出する。高速で動き回るワイヤーをとらえるのは普通なら難しいだろう。けど今のボクなら……。ワイヤーの軌道を読み切り、思った通りに飛んでくるワイヤーに向かって剣を振る。

 

「何っ!?」

 

 ラウラさんが驚く声が聞こえる。確かにスペック上では打鉄はシュヴァルツェア・レーゲンにかなり劣っている。けれど、相手の動きが予測……いや、予知できるならこの程度の差を埋めるくらい出来る。

 

 ボクは剣を構えラウラさんの方へと突っ込む。

 

「馬鹿め! 私にAICがあるのを忘れているのか!」

「忘れるわけないじゃないか。逆に君がそれに頼りやすいということも」

 

 ボクはラウラさんに接敵する直前に剣を投擲、すぐさま打鉄からミサイルを撃ちだす。

 

「くっ!」

 

 ラウラさんは慌てて剣を止めた後の停止結界(AIC)の発動を止め、ミサイルを避けることを試みる。通常だったらぎりぎり外れていたかもしれない。それほどの反応の速さだった。けれど、このミサイルはボクが操作している。つまり、外れることはない。

 ミサイルは間違いなく当たり爆発して煙をあげた。だが、ボクはそれに満足することなくすぐさま剣を拾う。あのラウラさんがミサイル程度でやられるわけもない。

 

 煙が晴れると案の定黒いISが姿を見せた。

 

「貴様……一体……」

 

 ラウラさんは若干戸惑うような素振りをみせるが、その迷いをすてるように斬りかかってくる。正直この近接格闘戦はスペック差が露骨にでる。いくら予知に近いことができるといっても、攻撃が到達するまでのタイムラグが遠距離や中距離と違って格段に少ない。だからボクとラウラさんとの斬り合いは徐々にボク側が劣勢になっていった。

 

 そんな時だった。ボクとラウラさんの間に千冬先生が割って入ったのは。

 

「やれやれ……これだからガキの相手は疲れる」

「教官!(千冬先生!)」

 

 千冬先生はISの武器を生身で扱い、ラウラさんの攻撃を止めていた。ボクの攻撃はボク自身が慌てて止めた。千冬先生はボクの攻撃に対してちらりと目を向けたものの対処する様子はみられなかった。これは信頼……されてるのかな……。

 千冬先生は武器をかちゃりと降ろすと、口を開いた。

 

「模擬戦をやるのは構わん。だが、アリーナのバリアーを破壊されては教師として黙認しかねる」

 

 あ、あぁ…。一夏くんだね。それをやったの。

 

「この戦いは学年別トーナメントに持ち越してもらおう。そこの頭に血を登らせてる馬鹿もいいな?」

「あ、ああ…」

「教師には、はいと答えろ。馬鹿者が」

「は、はい…」

 

 一夏くんも可哀想だね。今回やりあってたのはほとんどボクとラウラさんだというのに。

 

「緋桜宮。お前がこんなことをするとは意外だったな」

「え……」

 

 ボクはそれほどまでに千冬先生からの信頼を獲得していたのだろうか?

 本来の調子が戻ってきたのでボクはふざけて大きな ? マークを展開してみるけど…

 

 ゴスッ!

 

「あ、ああぅ……」

 

 頭を思い切り、ガツンとやられた。

 

「やれやれ…」

 

 さすがに申し訳なかったです。ごめんなさい。

 そしてこの場はお流れとなったのだけれど。

 

「ふん。私が戦いたかったのは織斑一夏だったのだが……」

 

 という言葉をボクに残してラウラさんは去っていった。

 あとになって見返してみるとこの行動はボクらしくない気がした。

 けれど、生命の危機に入っている、そしてそれを助けれる可能性がボクにはあったのだから行動したボクはきっと間違ってない。

 

 自分でも自分の感情が整理できずにボクはちょっともやもやとした気分になるのだった。

 

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