いや~ラウラさんに追い返されちゃったよ。ボクは何かラウラさんの癇に障ることでも言っちゃったのかな? う~ん、覚えがない……。
――嫌われてなんかないよね? あぁ~ぅ~嫌われてたらやだなぁ……。そういえばボクの専用機は結局、
あ、一夏くんとシャルルさんとそれとちょっと遠くに真耶先生だ。
「あ、彩花君! ちょうど良かったです。あなたたち男子に伝えたい事がありまして」
「ボク達に伝えたいこと?」
一体なんだろう。ボクたちに共通している点といえば、あの試合に関わったこととかかな……。
――はっ! もしかして事情聴取みたいなことするのかな!? さぁ吐け! お前はあの時何をしていたのかを! みたいな。ドラマの見すぎだって? あぅ……そうかも。
「なんと! 男子に大浴場が解禁になりました!」
いやぁ一体どんなことを聞かれちゃうんだろうね~。ほら、例えば身長体重とか。そんなこと聞くわけないって?ちょ、ちょっとしたお茶目だよ。
「マジですか!? 山田先生!?」
あれ? 一夏くんもやっぱり身長体重聞かれると思う? いやー。ここにもボクの同志がいたとは。うんうん。
「あの……一夏、山田先生? なんか彩花君が自分の世界に入り込んでいるようなんですが……」
「「えっ?」」
ボクたちに事情聴取をする人は誰なんだろうね? やっぱIS学園は女性ばかりだから女性なのかな? もしかして千冬先生とか!? それだったらこわそ……
「あの~彩花君?」
「大丈夫ですちゃんと聞いてます今から事情聴取やるんですよね?」
「お前全然聞いてないのな……」
一夏くんが項垂れてる。え? ボクなにかした?
そのあと一夏くんに再度の説明をしてもらい、ボクたちにお風呂が解禁されたのを知った。それにしても一夏くん。語り方が凄いね。なんか凄い熱の入った説明の仕方だった気がするよ。
「お風呂は久しぶりって感じがするような……シャワー使って体洗ったりはしてたけれど」
「やっぱ日本人は風呂だよな。彩花もそう思うだろ?」
「うん、そうだね……ブクブク……」
「ちょ、彩花!? 沈むな沈むな!」
お、おっと……。危うくボクはどこかの河を渡ってしまうところだった。
「一夏、彩花君、は、入ってもいいかな?」
「おーう。いいぞー」
え? いいの? 一夏くん。君はそれでいいというのか! 一夏くんも中々スケベよのう。お代官様こそ……。やっぱりドラマの見すぎかな。それはともかく一夏くんは特に何も考えず許可しちゃったみたいだけど、シャルルさんが女の子だって絶対忘れてるよね?
「し、失礼します……」
「う、うおっ!?」
やっぱりね……。ちなみにボクは入口に背を向けて一夏くんと向かい合っている形だったから、大丈夫だった。
「お、俺上がるから!」
ボクはガシッ!と立ち上がりかけた一夏くんの肩を掴む。
「一夏くん……? どこへいこうというのかな? 君がシャルルさんを呼んだんだよ? そしてこのお風呂にボクとシャルルさんを2人っきりにするつもりかい? ……それはちょっといただけないなぁ」
「……お前は見た目女の子だから大丈夫だ!」
「ッ!! 一夏くん……。君は言ってはいけないことをいってしまったよ……。ボクの復讐をうけてみろぉ~」
そういうやいなや、ボクは一夏くんの向きを反転させてシャルルさんの方へと向かせる。ボクは背中を向けているからセーフだね! あっはっは。こんなのボクのキャラだったっけ……?
「―――ッ!??」
一夏くんが振りむいたのに応じてシャルルさんが動揺している様子を見せた。ちょうど湯に足を入れる音がしていたからタオル脱ぎかけ……だったのだろうか。一夏くんはともかくシャルルさんには悪い事しちゃったかなぁ。
「わっ、悪い……」
一夏くん。悪いと思うなら即座に目を逸らすべきだったとボクは思うよ。ちょっとシャルルさんの方を見つめてたもんね。きゃー、一夏くんってばえっちなんだから。
「やかましい! もとはと言えば彩花……」
「わー。暴力はんたーい」
「うひゃっ!」
ボクはシャルルさんの方へと勘を頼りにつつつと進んでいき肩をあわせる。
「ぐっ! 卑怯だぞ彩花……」
「はっはっは。これも兵法の一種…って。ボクはなんだかのぼせてきそうだからこの辺で失礼するよ~。お2人さんごゆっくり~」
ボクがそういってお風呂からあがろうとすると一夏くんは止めるような素振りを見せてきたけど、シャルルさんの方を向くわけにもいかないから止められない。
シャルルさんはと言えば顔を赤くしてた。一夏くんと2人きりってことで早くも緊張しているのだろうか? う、恨むなら一夏くんを恨むんだよ!?
とてとてと軽く小走りになりつつ大浴場から退散する。
一夏くんのうらめしそうな声が聞こえてきた気がするけど、気のせいだろう。ああ、気のせいだとも。そうに違いない。
お風呂をあがるとちょっとのぼせた感じになっていて、頭がボーっとするのが自覚できる。
「ちょっと頭冷やそうかな……」
お風呂上がりの体を冷やしてしまうのはよくないというけれど、ボクはむしろこの時間が結構好きだなぁ。火照った体を涼しい風が凪いで冷ましてくれるのは。どこか心地がいいし。
「ふぅ……」
まだきちんとしたボクだけの専用機になっていないので、ISは待機状態になっていない。だからアリーナの格納庫に入れっぱなしだ。早く済まさないとね~。
のんびり夜空を眺めながら視線を巡らす。その先には人がいるように見えて……
「…………? 誰だろう……」
シルエットからはうまく判別できない。かといって近付いて確認するのも怪しい気がする。仕方がないのでボクは諦めて自室へと戻ることにした。
部屋でボクはボク自身のパーソナルデータを入力しておく。これをISに読み込ませればわずかな違いや、ちょっとした感覚の部分などの設定をすませるだけで済むからだ。
「ふあぁ……もう寝ないとだね」
目が眠気を訴えてくるのがわかり、しぱしぱと目を閉じたり開いたりする。
「これで……完了っと」
最後の確認にYESの文字を押し、ディスプレイを閉じる。
「恒例の……ベッドダ~イブ! ……むぎゅっ」
ボクを温かな柔らかいものが包み込んでくれる。
「あふぅ~。ふにゃ~」
ゴロゴロ。
「うにゅ~」
よし。こんなものでいいでしょう! ボクは掛け布団をしっかりと自分にかけて、目を閉じた。