朝のHRにて。
「きょ、今日は転校生を紹介します……」
なんか真耶先生落ちこみ気味に見えますよ? 大丈夫ですか?
そういえばシャルルさんがいないね。どこいったんだろう。
カツカツ
足音が聞こえたのでとりあえず思考を止めて、そちらに視線を向ける。
「……あ」
「シャルロット・デュノアです。みなさん、改めてよろしくお願いします」
「えっとぉ……デュノア君は、デュノアさん……ということでした……」
「……は?」
あ~。結局ばらしちゃうんだね。う~ん、ということは結局自分の国とは折り合いをつけたのかな? つけたとしたらどんな風につけたんだろ?
あと箒さんの顔が唖然とした感じになってるけど……というかこれ怒る手前にありそうじゃないか?
「デュノア君って女?」
「おかしいと思った! 美少年じゃなくて美少女だったわけね!」
お、おぉ……。クラスのみんなの反応が……。
「って! 織斑君! 同室だからまさか知らないってことは……」
「ちょっと待って! 昨日って確か男子が大浴場使ったわよね!?」
そこそこ困った感じに白熱してきたところで――
ドガーン!
壁を破って鈴音さんがご登場……。いいのかなぁ。後でこってり千冬先生に絞られそうな予感がするんだけど。
「いぃちぃかぁーーー!!!」
「ちょ、ちょっと待て!」
おっと、さすがにあれが当たったら一夏くん死んじゃうね。ボクがちょっと守ってあげよう。コンソールを出して素早くタイピング。決定、完了っと。
一夏くんの目の前に盾が現れる。今回は以前の反省をいかして攻撃を受け止め次第消滅するようになってるから安心だね!
思った通りボクの盾は鈴音さんの衝撃砲を防ぎきった……のだけど。
「一夏さぁぁーーん!!」
セシリアさんがわざわざIS展開して撃とうとしてるんだけど……。ごめん一夏くん。サポートの限界がきそうだ。
ちゅどーん!
これは――一夏くーーん!!
「あ、ラウラさん」
と、思いきやラウラさんがAICを使用することで受け止めていた。
「ラウラ!? どうして俺を……」
「ふ、ふん。私の嫁が助けようとしているのだから、私も救った方がいいだろう」
ぴきーん
その場の空気が凍る。そんなさなか凍らせた張本人に一夏くんは疑問をぶつける。
「よ、嫁って……誰が?」
「ほら、あそこにいるだろう」
といってボクの方向を指さしてくるのだけど。ボクは思わず後ろを振り向く。誰もいない。それはそうだ。ボクは最後列なんだから。
再び前に向き直る。ボク以外の人は今は着席してるから指の高さにはない。ってことはつまり――
「ボク?」
1拍遅れて……。
「ええぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
大絶叫が教室に響き渡った。
「はふぅ……」
ボクたちはいつも通り平常運転です。
「そういえばラウラさん。どうしてボクはラウラさんの嫁なの?」
「? 日本では自分の気に入った者を‘俺の嫁’とか‘自分の嫁’とか言うそうだが……?」
「あ、あぁ~。そういうことかぁ~。でもそれは多分間違ってるような……」
そういう会話をボクたちは今現在繰り広げているわけなのだけど――「さ、彩花君の場合嫁で正しいのかも……」とか軽く頬を染めて言ってる人がいて困ります。
「こ、こいつは私の嫁だぞ!?」
ラウラさん。変な自己主張をしないでください。抱き寄せてくれるのは温かくて気持ちがいいのだけれど、ボクだって男なんです。傍目にはわからないかもしれないけど、ボクだってちょっと焦ってるのですよ。たとえば口調がおかしくなっていることとか。
「そういえばラウラさん。付きあってほしいんだけど……」
「つっ! 付き合う!? お、お前がいいというならわ、私は別に……」
「ほ、ほんとに!? 彩花君!それでいいの!?」
「え? だってラウラさんは専用機持ちだし……」
どう考えたってラウラさんが適任じゃないか。いや、別に専用機持ちならだれでもいいような気もするけど。ところでどうしてラウラさんは照れてるんだろ。
「んん? なんか私たちと彩ちゃんの言ってることが噛み合ってないような……」
「奇遇だね。なんかボクもそう思い始めてきたんだ」
ボクたちの間に見解の相違が発生していることをお互い理解して一旦会話を止める。一息置いて同時に口を開いて出てきた言葉は――
「彩花君の付き合うっていうのは、男女の交際って意味だよね?」
「付き合うっていうのはISの訓練一緒にやろうって意味だよね?」
……おぉ……。なんかものすごいレベルで噛み合ってなかったみたいだ。
「あ、彩ちゃん……。その認識違いは酷すぎるよ……。乙女を騙すような言い方になってたよ!」
「え? えっと、あ、あはは。ごめんごめん」
なぜか謝らなければいけない雰囲気がしてボクはラウラさんの方を見る。
「わ、私と付き合って……か」
あ、あれー? ラウラさーん?自分の世界に入り込んでるぅ~?
「ら、ラウラさーん。い、一緒にISの訓練をしましょー」
「訓練? そ、そうだな訓練だな」
ラウラさんがどこか落ち込んだように見えるけど……あぁ。小動物みたいな感じになっててかわいいなぁ。ボクも他の人からはこんな風に見えてるのかな?
ついついボクからラウラさんを抱きしめてしまった。抱きしめられることはあってもその逆ってのは始めてかも。なんだか新鮮な気持ちだ。
「「「あ、彩ちゃんっ!?」」」
なんかクラスのみんなが驚いたような雰囲気を出しているけど……失礼な。ボクだってかわいいものが好きなんだよ。抱きしめたくなっちゃったんだよ。
「さ、彩花……」
ラウラさんが照れてる。あふぅ~赤面した顔もなんだか新鮮だなぁ
「や、やめてあげて彩花君! 乙女の純真をもてあそばないで!?」
「ふぇ?」
なんかとても変なことを言われたような気がしつつ、ボクはひきはがされた。あ~う~。もうちょっとだけ……
「だ、駄目よ!」
「わ、私は別に構わない……」
ほら! ラウラさんもそういってるし。
「む、無理なのよ! これ以上やられたら見ている私たちがどうにかなってしまうわ!」
「そ、そうなの?」
「そうなのか?」
あ、ラウラさんもやっぱり疑問に思うよねー。どうにかなるってなんだろ。
「と、とにかくっ! 君たちがじゃれあうのは禁止!」
「どうして貴様にそんなことを言われなければならん」
ラウラさんが冷たい瞳と声音を向けてばっさりと切り捨てる。そ、それはいくらなんでもばっさりすぎだよ。
「ラウラさん。それはちょっと酷いよ……」
「そ、そうなのか? それはすまなかった……。それと彩花。私のことは名前だけで呼べ」
「え? 名前だけ? ……。ら、ラウラ……?」
ぼふんっ! と効果音が聞こえそうなくらいにラウラさんが赤面した。
「ちょ、ちょっと私はこの辺で失礼させてもらおうっ!」
といってラウラさんはどこかへ駆け出していく。あ、あれ? ボクとの訓練は……?
結局一夏くんに付き合ってもらうことにした。
「一夏くーん! 付き合ってー!」
「なっなに!?」
あれ? 箒さん、何をそんなに驚いているのさ。あとシャルロットさんに鈴音さん、セシリアさんも。
「おう、いいぜ?」
「「「「いいんだ!?」」」」
「ん? みんななんで驚いているんだ?……なぁ彩花」
一夏くんが心底わけがわからないといった風な顔をしてボクの方を見る。正直ボクもわけがわかりません。
「何かな一夏くん?」
「俺たちが話してるのって……。ISの訓練を一緒にやろうってことだよな?」
「そうだね~」
当たり前だね。
「なんでこいつらはこんなに驚いているんだ?」
「さぁ……。ボクにもわからないけど……」
「「「「な、なぁんだ。訓練のことかぁ……」」」」
「なんだと思ったんだよ?」
「「「「べっ、別に?」」」」
ねぇ一夏くん。なんでみんな驚くんだろうね? あ。まさかさっきみたいに男女の交際だと勘違いしたとか? あ、あはは。さすがにそれはあり得ないよね。ボクと一夏くんは男同士なんだし。
「それよりも一夏くん。そういうわけで早くアリーナに向かおう?」
「そうだな」
そういってボクたちはアリーナに向かった。
「それでだよ一夏くん。まず付き合ってもらいたいのはボクが第1次移行を済ませることなんだ。やっぱり戦闘しながらの方が正確なデータをとってくれる気がするしね。一応ボクのパーソナルデータは読み込ませてあるから、実際に乗って調整するだけだし」
「わかった。……けど第1次移行もすませてないのに大丈夫なのか?」
一夏くんが心配するような素振りをするけど、一夏くん自身がそれをやったよね?
「平気平気。一夏くんだってやったじゃん」
「それもそうか。……じゃ行くぞ!」
そういって会話を切ると一夏くんはボクの方へと突っ込んでくる。一夏くんには遠距離武装がないから当たり前だね。
ボクは雪片弐型を最初からあるブレードで弾いて流す。そういえばだけどボクはこれ以外に武装をインストールしていない。本格な武装がつくのも第1次移行が終わってからだから……。それまでに変な事したくないしね。そう考えると相手が接近戦しかできない一夏くんでよかったのかも。
「彩花やるな!」
「ありがと~」
白式の動きを読み、IS本体の動きを読むことで武装である雪片弐型の動きを読む。いくら思考の高速化がなされているとはいえ中々難しい。
――というか彩花以外にここまで出来る人はいないが――
「くっそ! あたらねぇ!」
「よ、く言うよ!」
ボクに攻撃はあたっていないけれど、同様に一夏くんにも攻撃があたらない。受け止めた後、逸らして隙を作って攻撃するのだけれど避けられてしまう。作ってる隙が不十分なのかなぁ……
「お前予知でもできるのか?」
「予知は出来ないけど予測ならしてるね~」
ボクの返答に一夏くんが若干呆れ気味な視線を返す。
「通りで俺の振る剣より先に武器が守りに入ってるわけだ……って、それ反則気味なレベルだな!?」
「そう? まぁ読めてもどうしようもない攻撃とか、受け止めさせてから体勢を崩すということも出来るわけだし結構穴はあるよ」
「それもそうだな」
そういって会話を済ませるとボクたちはまた剣を構え直し数合打ち合う。
そうしてしばらくすると――
「あっと……。そろそろ第1次移行が終わりそうだ。ちょっと攻撃やめてもらえるかな?」
「わかった」
機体に乗っているボクごと白い光が包む。
そして再び見えるようになった時には形が変わっていて……
「ん? 彩花。ブレードがなくなってるな」
「あれ? ほんとだね」
ボクは武器装備欄を確認する。でもそこには――
武装がなかった
「一夏くーん。ボクの専用機、武装がないみたいだ~」
「………………は?」
一夏くんだけでなく、見ている箒さんたちも同様にぽかんとした顔をして、辺りを沈黙が支配した。
彩花の専用機がやっと登場しました。