IS‐のんびり屋な天才‐   作:石っこ

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第20話

 

「ふぃ~つかれたね~」

「そうだね~」

 

ただいまボクは部屋にいます。自由時間も終わったので今は夕食の時間を待っている最中。本音さんと談笑しながら待つのは楽しくて、逆に夕食の時間が来てほしいのかわからなくなる。

 

「疲れたけど楽しかった~」

「ね~」

 

 なんともゆるりとした会話だけど、精神的にもリラックスできるし、いいよね~こういうの。

 ちなみにボクたちは浴衣姿だ。泊まるところが和風なところなので、着るものもそうなるらしい。ゆったり着こなせば着心地はいいから文句などあるわけもないです。

 

「具体的にボクが疲れたのはみんなにもみくちゃにされた時かなぁ」

「あぁ~あれね~」

 

 少しだけ皮肉っぽく言ってみた。いや、本音さん。あれねじゃなくてボクは救援信号を送ったんですよ? 助けてください……

 

「いや、さーやちゃん。さすがにそれは無理だよぉ~」

「無理……? なんで?」

 

 無理というのはどういうことだろう?

 

「あそこに入っていったらきっと私は弾かれてたねっ!」

 

 本音さんは胸を張りながらそんなことを言う。そんな自信満々に言わなくても……。

 

「許してよ~。私だって見てて楽し……じゃなくて心苦しかったんだから~」

 

 ――あれ? なんか今楽しいって言いかけてたような……。き、気のせいだよね?

 

「よくはわからないけどそういうものなの?」

「そういうものなの~」

 

 少しだけ考え込む素振りをする。そういうものなのか、覚えておこう。  

「なら仕方ない……のかな?」

「うんうん~」

 

納得できないようなできるような……。でも夕食の準備も整ったみたいだし行かないとね。

 

 

 

 

 夕食はこれぞ和! みたいな感じのものだった。刺身に軽いすきやき風な鍋とか、結構豪華に見える。

 ボクたちがいただきますと挨拶をしてから、そうたたない内にちょっとしたアクシデントが起こった。

 その元は一夏くんたちの方。

 

「どうしたセシリア?」

「そ、その……足が……」

 

 どうやらセシリアさんは足がしびれているようだ。むぅ……セシリアさんは正座に慣れてなさそうだしね。ボクも慣れているとは言い難いけど、きっとセシリアさんほどじゃない。

 

「なら、食べさせてやろうか?」

「それは本当ですの!?」

 

 !!!

 

 なぜか周りの空気が鋭くなったような気がする。主にセシリアさんに向かって。そんなに食べさせっこがいいのならみんな隣の人とやればいいのにね~。

 

「あー! セシリアずるい!」

「織斑君に食べさせてもらうなんてー!」

「……なら、みんなで食べさせっこすればいいんじゃないの?」

 

 

 

しん……

 

 

 ボクが言った一言でこの場は静まり返った。

 

「……あれ?」

 

 なぜかみんなそれは違うんだよ……という感じの目でボクを見てくる。な、なんだって!? 一体ボクはどこで道を間違えたんだ――

 

 

「みんなで食べさせ合い……かぁ……。そうだ! 彩ちゃんに食べさせてあげよう!」

「お! それはいいね!」

「え? え?」

 

 なんだかよく分からないうちにボクが食べさせられる側に回ったようだ。どこにそんな会話の流れが……?

 

「というわけで彩ちゃん。はい、あ~ん」

 

 目の前に差しだされる箸。周りの雰囲気から察するに、拒否という選択肢はすでに消えている気がする。

 

「……あ、あ~ん」

 

 正直気恥ずかしいものがある。な、なんというか……子供っぽいっていうか……。

 

「キャー! やっぱり彩ちゃんかわいい!!」

「ほ、ほら私のも私のも!」

「う、うん」

 

 四方八方から食べ物を差しだされる。そんなにたくさん出されてもボクは食べきれない気が……というかみんなの食べる分が減っちゃいそうだけどいいの?

 

「食べものが減ったって構わない! それで彩ちゃんが見れるのなら!」

「そ、そうなの……?」

「という訳でっ、はい、あ~ん!」

「あ、あ~ん……」

 

 もぐもぐ。そりゃあ結構高そうなご飯だしおいしいから文句はないのだけれど……。ほんとにみんな自分の減っちゃって大丈夫なのかな?

 

「なに? 彩ちゃんに食べさせるのはありなの!?」

「私も私もっ!」

 

 

 

 なんだか結構な人がボクのところに集まってきたよ……

 

バン!!

 

「お前たちは静かに食事をすることはできんのか!!」

「お、織斑先生……」

 

 ここで千冬先生の登場か……。ぴたりと動きを止め、みんな静まり返ってしまった。

 

「織斑と緋桜宮。あまり騒動を起こすな。鎮めるのが面倒だ」

「わ、わかりました」

 

 一夏くんは素直に頷いたものの、ボクとしては反論せざるを得ない。ほら、不満感を隠しきれないクラスを代表して。

 

「でもですよ千冬先生! これはみんなの絆を深めようって一環なんじゃないかとボクは……」

「ん? もう一度言ってみろ?」

 

 だらだら。ち、千冬先生の表情が変わったわけじゃないんだけど、ボクから嫌な汗が噴き出てくる。これは……反論したらやられる!

 

「いや、あの……なんでもないです」

「なら返事は?」

「わかりました!」

「ならいい」

 

 ボクが元気な返事をするのを確認すると、千冬先生が扉を閉めて去っていく。

 

「はぁ~」

 

 そのタイミングにみんなが息をついた。わかる、わかるよみんな! あれは無理だよね! 逆らえる気がしないよ!

 

 これで第1次夕食戦争は終結した――いや、そんなもの始まってすらないんだけどね。

 

 

 夕食も終わり、次は旅館の大浴場。つまりはお風呂だね。

 もちろん旅館だから男子と女子両方ある。

 で、男子は2人しかいないから……

 

「うっわ~」

 

 バシャバシャ!

 

「さ、彩花……」

 

 ボクは浴場で泳いでいた。みんなわかるよねこの気持ち! やっちゃいけない行為だとはわかっていても、誰もいなければやってしまうという、この背徳的な行為を!

 それにしても広いなぁ。どう考えても2人で使う用じゃないしね。

 

「彩花!」

「ひゃ、ひゃいっ!?」

 

 突然強く呼ばれたので思わず声が裏返ってしまう。

 そして一夏くんの方を振り向くんだけど――。な、なんか怖いよ一夏くん?

 

「彩花、そこに正座」

「え?  ちょ、ちょっとここ、石でできてていたそ……」

「いいから座りな?」

「わかりました……」

 

 その時の一夏くんは千冬先生と同じ、有無を言わせぬ雰囲気を漂わせていて、やっぱり姉弟なんだなぁと思わされた。

 

 

 それからボクは一夏くんに風呂のルールを教え込まれるという状況に陥った。――ボクは忘れていたよ。一夏くんが風呂にかける思いは強いんだってことを! でも、わかってほしい! 別にルールがわかってなかったわけじゃなくて、つい衝動というか……。言い訳するなって? うん、ごめん。

 

 

 

 

 そういえば余談だけど、男性の浴場と女性の浴場は結構しきりが厚いらしくて声は聞こえなかった。――誰か期待してる人がいるかもしれないから言っておくけど覗き穴もないからね? 探せばあったのかもしれないけど……ボクも一夏くんもそんなこと微塵も考えなかったし。ある意味若干失礼?

 

 

 

 

「はふぅ~」

 

 お風呂からあがって熱を冷ますために渡り廊下で軽く風を浴びる。そんなところにラウラさんがきた。

 

「どうした?」

「この熱を少し冷まそうと思ってね~」

 

 ラウラさんは首をかしげて、次に顎に手を当てて考えるようにすると口を開いた。

 

「ふむ……。湯上りにはあまり良くないと聞いているような気もするが……」

「それはそうなんだけど、やっぱり気持ちいいからね。ラウラも浴びていかない?」

 

 ボクの提案にラウラさんは迷っているようだった。あまりよくないというのと誘われているからというのが、彼女の中で格闘しているのかもしれない。

 

「そうだな……。誘われているのを無碍に断るわけにもいくまい」

「あはは。堅いなぁ」

 

 そんな風にのんびりボクとラウラさんは夜空を眺める。

 

「そういえばだが、お前は……」

「うん?」

「…………。いや、何でもない」

「そう?」

 

 何か疑問に思ったことでもあったのかな? ボクのISの事とか? トーナメントの時は第1次移行もすませてなかったし、その後もラウラさんに見せたことはなかったしなぁ。

 

 

 

 

 

「ふむ。確かに気持ちがいいものだ」

「でしょ?」

 

 数分後、清々しい顔をしながらラウラさんが言った。ボクとしても共感してもらえたようで嬉しくなり、ついつい声が上がり調子になってしまう。

 

「あぁ……だがこのくらいにして戻ろうか」

「うん、そうだね。冷えるくらいまでいっちゃうと良くないしね~」

 

 ボクとラウラさんは連れだって戻る――って?

 

「あれ? ラウラさんもこっちくるの?」

「当然だろう。私はお前を探していたのだからな。そして私のことは呼び捨てだと……」

 

 あっと……。心の中ではさん付けしてるからか、予想外のことがあるとつい呼び捨てじゃなくなってしまう。こういうところも気を付けた方がいいのかな。

 

「ボクを?」

「ああ」

 

 ふむ。ボクを探してたのか~。多少疑問に思うところはありつつも、敢えて突っ込まず歩を進める。

 今ボクが向かっているところは当然、自分たちの部屋なんだけど――

 

「なんだろあれ……」

「ん? ……あれは……?」

 

 ボクと同様にラウラさんも驚いているような返答を返す。

 それもそうだ。なんせボクたちの視線の先には、専用機持ち3人と箒さんが固まって一夏くんの部屋の前で聞き耳を立てていたからだ。

 

 

「あっれ~? 何してるのみんな」

「「「「ッ!!??」」」」

 

 ボクの声に驚いた拍子に襖が部屋の方向に倒れた。中にはうつ伏せになっている千冬先生とそれにマッサージを施していたであろう一夏くんが―― ……? えっと、マッサージを気にしてたの?

 千冬先生は呆れたような目線でこちらを見ると口を開いた。

 

「お前たちは何をやっているんだ……ちょっとそこに座れ」

「それってボクも入ってます?」

 

 もしかして関与してないはずのボクも、すぐ後ろにいるから含められているのかと思い聞き返す。

 

「入っていないと思ってるのか?」

「もちろん!」

 

 なんかボクはここで負けれない気がした。退いてはいけない。男にはそんな時が――なんか激しく使うタイミングがもったいない気がする。

 

「………………はぁ。じゃあ、緋桜宮以外そこに座れ」

「きょっ! 教官! 私もですか!?」

 

 ラウラさんもボクと同じように、自分は含まれていると思っていなかったためか、ボク以外という発言に驚き狼狽した様子になる。

 

「ラウラ……? あー。お前は別に構わん。緋桜宮と共にいればいい」

「了解しました!」

 

 どことなく声を弾ませた感じでラウラさんが返事をする。座らないでいれた事がそんなに嬉しいのかな? やっぱりラウラさんも正座は慣れていないってことだよね~。一応千冬先生は指定してないけど、どう考えてもこの雰囲気は正座だ。それ以外ありえない。

 

「それとラウラ。教官じゃなく織斑先生と呼べといっただろう」

 

 千冬先生が一度視線を戻してそう言った。その鋭い眼光は獅子――いや、それを超えたものを思わせる。

 

「はい、織斑先生」

「それでいい」

 

 千冬先生が一瞬出したオーラはやっぱり本能的に来るものがあるね……。

 

 

 

 

「まったく……。何をしているか馬鹿者が」

「ま、マッサージだったんですかぁ……」

「? なんだと思ったんだ?」

 

 一夏くんのその言葉にみんなが一様に顔を赤く染める。ボクとラウラさんは意味がわからず顔を見合わせる。

 

「なんだろ?」

「さぁな」

 

 目の前では一夏くんの問いに彼女たちが答えているところだった。

 

「べ、別に……」

「特に何というわけでは……」

「あ、あははは……」

 

 上から順に鈴音さん、箒さん、セシリアさんと言い訳をするけど、セシリアさんの笑いが怪しすぎるよ。2人もちょっと怪しいけどセシリアさんの乾いた笑いは段違いだ。

 

「?」

 

 一夏くん! 鈍い、鈍すぎるよ! みんながなんか嘘ついてるって気付こうよ! ボクがつっこめばいいのかもしれないけど、つっこむなというオーラが出てるからやめた。

 千冬先生なら気付いているだろうと思って、そちらを見るけど敢えてつっこまないようだった。

 

「こう見えてこいつはマッサージがうまい。……そうだ。お前たちもやってもらったらどうだ」

 

 千冬先生は先ほどの話題に戻す。ん。マッサージかぁ……。一夏くんもこの人数は大変だと思うしボクもする側に回ろうかな。千冬先生の質問に肯定する声も聞こえたし、やるっぽいからね。

 ツボの位置とか覚えたことあるし、多分地味にボクは出来ると思う。

 

「よし、それじゃ最初はセシリアからだ」

「そうだ一夏くん、ボクもできると思うけど手伝おうか?」

 

 一応やれと言われたのは一夏くんなので、助けがいるかどうか問う。お節介になっても困るし。

 

「ん? 彩花も出来るのか? そうだな……」

「いや。緋桜宮はラウラにやってやれ」

 

 一夏くんがいいかけたところを遮って、千冬先生がそんなことを言った。

 

「ラウラに?」

 

 そう言われて思わずボクは振りむく。ラウラさんはといえばこくこくと頷いていた。

 

「じゃあそうしようかな」

「残りは一夏。お前が全員やれ」

「あ、ああ……わかったけど……。せっかく彩花もいるのにみんな待ちでいいのか?」

「「「もちろん構わないぞ!!」」」

 

 みなが力強く答えた。ちょっぴりボクも傷ついたり。

 

「うんうん。さすがにボクも一夏くんの腕前には敵わない気がするしね~。やってもらうならうまい方にやってもらった方がいいだろうし……。やっぱりラウラさんも一夏くんにやってもらう?」

 

 そう考えてラウラさんに問いかけるけど、

 

「いや、私はお前でいい。……むしろお前がいい」

「そう? ボクでいいならやらせてもらうよ」

 

 ボクと一夏くんは顔を見合わせ

 

「「それじゃ、始めますか」」

 

 

 

 その部屋には甘い嬌声が響いたという……。

 ってなんか色っぽい感じになっちゃったね! でも実際その表現が適している気がするのだからなんともいえないけど……。

 

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