IS‐のんびり屋な天才‐   作:石っこ

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第22話

 

 

「う……うぅん……」

 

なんだか温かい。気温とかそういう方向性の温かさじゃなくて、どこか――

 

「………………うにゅぅ」

 

 ――声? ボクの頭上辺りから声がした。惚けてるというより完全にお花畑となっている頭を上に向ける。

 

「……あふぅ」

 

 ――――あれ? えっと……。本音さん?

 ボクの目の前には本音さんの顔。ということはつまりボクが今体をうずめているのは――

 

「本音さんの体……ということだよね」

 

 う、う、うああぁぁぁぁ! ボクはなんということを……。起こさないようにゆっくりと体を引き、立ち上がる。本来簡単なことであるはずのそれが、焦りからかやけに時間がかかった。

 

 

「あ……良かった。非が完全にボクだけじゃなくて」

 

 立ち上がって本音さんと自分がいた位置を確認する。

 どうやらお互いが掛け布団だけをひっつかんだまま転がったらしい。そして共に寝た……と……。

 

「う~ん。本音さんには気づかれてないから大丈夫……かな? こんな事実しらせて嫌がらせたりするのもなんだしね」

 

 隠しておくのもどうかと思うけど、触らぬ神に祟りなしっていうじゃない? ということは無駄な火種は投じない方がよいということなんだよ。

 

「シャワーを浴びたいけれど……多分空いてないし……」

 

 結局ボクは本音さんが起きるまでISの装備についていじることにした。

 

 

 

「……さすがに戦闘中に武装の追加なんてよほど余裕がないと出来たものじゃないよ……。鈴音さんは遠距離射撃武器が衝撃砲しかなかったし、軌道も読みやすい上に空間圧兵器だからチャージも長くて構成できたけど……」

 

 あの時の武装構成は実際は一杯一杯だった、ということだね。ボクの意識のほとんどは複製に向いてたから、狙いも正確じゃなかったし。奇襲気味になってなければ鈴音さんにだって普通に弾かれていただろう。

 

 今はボク本来のISの運用をするために様々な武装を拡張領域に登録してある。追加のスラスターから、対エネルギー装甲。遠距離射撃武器に近接特化の刀。

 以前から登録ばかりを進めていて、実戦をあまりする暇もなかったし、IS自体の研究もあまりできていない。ボクには専用機があるから時間はたくさんあるけどね。

 

 説明しかけたけど、ボクのISはシャルロットさんの高速切替(ラピッドスイッチ)の大型版というところだろう。ボクの登録した武装を呼びだし、それを装備することで戦法からなにまでがガラリと変わる。

 相手が速度重視でちまちま削ってくるなら、削らせないように重装甲。高速でありつつも決定打をもつのなら、装甲を捨てて自らも高速化し高機動射撃型に変更、とかね。

 

「ん~」

 

 適当にいじくりまわす。IS自体に手を出すのもありだけれど、今はあまりするべきじゃないと思うからね。

 

「追加の装備……かぁ……」

 

 一応悩む。すでに多種多様な戦闘スタイルにできるように様々な武装は登録してあるし、今すべきことは武装の調整かな? ……あ。

 

「バランス的な装備を作るのもいいかもしれない!」

 

 そういえば相手の型が最初から解っているとは限らないわけだし、最初の部分戦闘がしやすい、万能タイプのものを作るのもいいかもしれない。

 そう考えたボクは急いで自分でデータを作っていく。

 

「えっと、これがこうなって……? いや、ここからエネルギーブレードを形成、展開できるように……」

 

 頭はかなりの速さで動くけれどいかんせん時間が足りなかった。

 

 

「あれ~? さーやちゃん起きてたの~」

「あ、本音さんおはようございます」

 

 本音さんが起きだした……ということは、もうすぐ時間だ! ということなんだよ! すいません、多分嘘です。本音さんは体内時計が正確で……とかそんなことは多分ない……と思う。

 

「ボクが部屋の片づけをやるから先いってて~」

「うん~ありがとねさーやちゃん」

 

 会話を交わし、本音さんに掃除はボクに任せるように言って、先にいっててもらう。

 

「ふっ。ボクの培ったお掃除スキルをみせちゃうぞ~!」

 

 

 

 

数分後。

 

 

 

 

「よし、これで完璧だね!」

 

 部屋内にはゴミがなく、あるいは来た時よりも綺麗になっていた。

 

「いや~。ありがとうボクの作った機械!」

 

 彩花本人は特に仕事をしていなかった……。

 

 

 

 

「ん? あそこにいるのは一夏くんと箒さんかな? お~い」

 

 ボクは渡り廊下で、視界に入った一夏くんと箒さんに声をかける。

 

「なにしてるの?」

「あ、あぁ……」

 

 一夏くんは歯切れの悪い返答を返して地面を見る。

 

「なんでもない」

 

 対して箒さんは背を向け、歩いて行ってしまった。

 ――地面?

 

「…………お?」

 

 地面からは……耳が生えていた。な、な、なんだこれは~! 面白いよね! 一夏くんもそう思うよね! ……あれ? なんでそんなげっそりしたような顔してるのさ。引っ張ってと書いてあるんだから引っ張ろうじゃないか!

 

「……ん、しょ!」

 

 案外その耳は簡単に抜けた。力のないボクでも抜けるぐらいには。

 抜けた耳の先には紙のようなものが張り付いており、それに目をやる。

 

「えっと……なになに? 残念でした?」

 

 ひゅ~ん

 

 上から落下音が聞こえる。

 何か大きなものが降ってくるような音の大きさなので、思わず上を見上げた。

 

「え、えっと……人参?」

 

 ボクの視界に入ったのは人参だった。一瞬呆けそうになるも、考えてみれば生えてた耳がうさぎ耳だったから……そういう関連性があったのかぁ……

 

「彩花? 何を考えてるんだ……? というか! そこは危ないぞ!」

 

 生えてたうさぎ耳と降ってくる人参の関連性だよ一夏くん。それとボクなら心配ないよ。

 

「ISを展開して止めるからね」

 

 瞬時にISを展開。そして高速で飛来する人参を受け止める。

 

「お、おお~なんか凄い凝ってるね!」

 

 ボクの方へと向かう運動エネルギーを受け流して、下へとその人参を突き立てる。

 すると――

 

「あっはっはっはは!」

「な、なんか展開が読めてきたぞ……」

 

 一夏くん、1人で悟ってないでボクにも教えてほしいのだけれど。

 

 プシューっと音をたててその人参が割れる。

 

「ふっふっふ~引っかかったねいっくん! ブイブイ!」

 

 そこからは誰かが出てきた。随分とテンションの高い人だなぁ。その人の前には一夏くんが倒れているから引っかかったのは一夏くんに見えるかもしれないけど、引き抜いたのはボクです、えっへん。

 

「お、お久しぶりです……束さん」

 

 ん? 束……束? 束ってISの製作者の?

 

「うんうん。おひさだね~本っ当にひさしいね! ところでいっくん、箒ちゃんはどこかな?」

「え、えっと……」

 

 束さんは自分で聞いたのにも関わらず、返答は求めていなかったようですでに動き出していた。

 懐から取り出したものはダウジングに使うような棒状のもの。取っ手から先は垂直に曲がった形状で、目的地につくと振れるというあれだ。

 

「ま、私が開発したこの箒ちゃん探知機ですぐ見つかるからいいんだけどね! じゃあねいっくん! またあとでね~」

 

 なんだか嵐のような人だったなぁ。

 

「えっと……一夏くん。束ってもしかして?」

「ああ。篠ノ之束。箒の姉さんだ」

「やっぱりねぇ……」

 

 なんというかこう、説明しづらいんだけどびびっとくるものがあった。

 

「ま、ボクたちも急いで向かわないとね~」

「そうだな」

 

 ひとまず束さんについてはスルーして、ボクたちはそんなこんなで朝食をいただきに向かった。

 

 

 

 

 

「よし、専用機持ちは全員そろったな?」

 

 今、ボクたち専用機もち+箒さんは1つのところに集められていた。

 なんでも専用機持ちに用事があるとかないとか。

 

「ちょっと待ってください。箒は専用機もってないでしょ」

 

 その疑問はもっともだよね鈴音さん。でも朝会ったあの人の調子からすると――

 

「それについても説明しよう。実はだな……「やーーっほーーー!」…………」

 

 誰かが高速でこちらに近寄ってくる。朝見た人――つまりは束さんだね。

 

「ちーーちゃーーん!」

 

 ガシッ!

 

 飛びこんできた束さんの頭を千冬先生ががっしりと掴む。は、速すぎて目で追えなかった……?

 

「やぁやぁ! あいたかったよぉちーちゃーん! さぁハグハグしよう! 愛を確かめ……」

「うるさいぞ束」

 

 千冬先生が脅すような声音で低めの声を出す。けれど束さんは全く動じる様子もなく、

 

「相変わらず容赦のないアイアンクローだねっ! っと!」

 

 さも当然のようにそれを外す。千冬先生は呆れたように溜息をついている。

 続いて束さんは岩陰へと向かった。……あれ? そういえば箒さんがいないような。

 

「じゃじゃーん! ……やぁ!」

「ど、どうも……」

 

 あ、箒さん。そんなところにいたんだね。なぜかはわからないけど、岩陰にしゃがんで隠れるようにしていたらしい。

 

「久しぶりだね~こうして会うのは何年ぶりかなぁ?」

「大きくなったね箒ちゃーん! 特に……おっぱいが!」

 

 その言葉を皮切りにどこから取り出したのか、箒さんが木刀で束さんを突いた。

 ちょ、ちょっと大丈夫かな……?

 

「殴りますよ」

 

 殴るという表現はおかしいようなとか、もうすでにやったよね? とか言いたいことは色々あるけれど……。

 

「殴ってから言ったぁ! 箒ちゃんひどーい!」

 

 若干涙目のようになる束さん。痛み的には千冬先生のアイアンクローよりも弱そうに見えるのだが、なんだかんだで千冬先生は手加減していたのかな。

 

「ねぇ、いっくん酷いよねぇ!?」

「は、はぁ……」

 

 うんうん。さすがに痛いですもんね、あれは。

 

「おい、束。自己紹介ぐらいしろ」

「え~? めんどくさいなぁ~」

 

 千冬先生の催促に露骨な反応をしめす赤髪(ピンク髪?)の束さん。

 けれど一応言うことは聞くのかボクたちの方を向き身を翻しながら言った。

 

「私が天才の束さんだよっ! ハロー!」

 

 じ、自分で天才って言っちゃうんだなぁ……。でも、ある意味すがすがしいよね! 自信を持った人っていうのは格好良いとボクは思うんだ。

 

「…………あれ?」

 

 なんだかじーっと束さんがボクを見つめてきているような……。とりあえずボクも見つめ返してみる。それで感じた事があった。

 

((この人(子)ボクと(私と)似てる……?))

 

「ちーちゃん! この子の名前はなんていうの~?」

「ん? こいつか? ……束が私たち以外に興味を持つとは珍しいな……。こいつは緋桜宮だ。緋桜宮彩花」

「彩花ちゃんっていうのかぁー。私が束さんだよっ! 撫でてもいいかい?」

 

 …………なんだかよく分からないことになっているような?

 

「べ、別にボクは構いませんけど……」

「そっかぁ! じゃあ遠慮なく! うりうり~」

 

 ボクが了承の意を示しきる前にすでに動いていた。まさぐるような手つきでさわさわと身体を撫でるように触られる。

 

「あっ! ちょ、そこは……あう……」

 

 なんだかボクはいけない一線を越えてしまったような……一夏くんから始まるみんなも目を逸らしてるし。

 

「あれ~? 君、男の子?」

「あ、はい~。一応そうです」

 

 しばらくやって満足したのか、さきほどの行為を中断すると疑問に思ったらしいことをぶつけてきた。

 

「そっかそっかぁ! ん? あれ? ということは……いっくん以外にも男の子でISを起動させる人が……?」

「……?」

 

 どうしたんだろう。突然少し険しい顔になった。

 

「おい、束。そろそろ本題に入れ」

 

 千冬先生が続きを促すと、少々納得のいかない様子を保持していたものの頷いて、バッと手を高く挙げた。

 

「わかったよちーちゃん! ……さぁ! 大空をごらんあれ!」

 

 空? ボクたちが見上げるとそこから何かが降ってきた。――って。こんなの朝もあったような……。その時は人参だったけど。

 

「じゃじゃーん! これぞ箒ちゃん専用ISこと、紅椿!」

 

 空を切り裂き飛来したダイヤ型のようなもの。

 そこからは紅いISが現れた。

 

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