ご指摘いただいた面を加味した閑話とかも作っていきたいですね。
とりあえず、この銀の鐘編を終わらせてからですが……
「紅椿は全スペックが現行機を上回る、束さんお手製だよっ!」
束さんがこの紅いIS――『紅椿』というらしい――の説明を嬉々としてはじめている。少しなりとも自慢したいようにも見える。
全スペックが現行機を……。へ~、なんかものすごいISだなぁ。
「なんたって紅椿は天才束さんが作った第4世代型ISなんだよ~」
「第4世代……っ?」
だ、第4世代か……。確かまだ各国でも第3世代の試作中の段階だよね? そんな中で第4世代かぁ~。
「各国でやっと第3世代型の試験機ができた段階ですわよ!?」
「なのにもう……!?」
うん、シャルロットさんの驚きもよくわかるよ。でも多分IS製作者であるこの人のやることに毎回驚いてたら身がもたなくなると思う。だってほら、ISだって以前は考えられもしなかったものだし。
「そこはほれ~、天才束さんだからぁ」
束さんは軽い調子で当然のことのように言うけど、誰からみてもそれがおかしいということは明らかだった。多少なりともISの研究をしようとしてきたボクにはわかる。
「そういえば第4世代型というのは何をコンセプトにして作られてるの?」
確か第3世代機は操縦者のイメージ・インターフェースを用いた特殊兵器の搭載……だよね。第4世代はどんな感じで作られているんだろ?
「ん? 彩花ちゃんの質問にも答えちゃうぞ~! 私が作った第4世代機である紅椿は、装備の換装無しでの全領域・全局面で展開できるようにできてるんだよ~!」
全領域、全局面。第2世代からは装備の換装で戦い方を変更できるけれど、それをしないで全てを補える――ってところなのかな? ――そういえばボクのISは……
「さぁ箒ちゃん! いまからフィッティングとパーソナライズを始めようか!」
「さ、篠ノ之」
箒さんが紅椿に乗りこみ、束さんが高速で手を動かしデータを入力しはじめる。
「箒ちゃんのデータはある程度先行していれてあるから~、あとは最新データに更新するだけだね!」
「凄い……。信じられないスピードだわ…」
隣で鈴音さんが呟く。……そうなのかな? まだあの人は本気でやるというレベルまではしてない気がするし、ボクだって頑張れば出来る気がする。
「はいっフィッティングしゅうりょ~! ちょ~速いね、さすが私ぃ!」
あまり自覚はなかったけれどボクや束さんが出来るあの領域は速いに属するのかな。
「そんじゃ、試運転も兼ねて飛んでみてよ! 箒ちゃんのイメージ通りに動くはずだよ!」
「ええ、それでは試してみます」
そういって箒さんは空へと飛び立つ。その際にでた風圧がボクたちの髪をなびかせ、眼を閉じることを余儀なくされるが、それでも紅椿を認識することはできた。
「何これ速い!」
「これが……第4世代の加速……ということ……?」
みんなが驚いている通り、紅椿の速度はかなりのものだ。装甲無し状態にスラスター増設したボクのISに追随するレベル……? というか現行機を上回るはずの紅椿にボクのISが速度だけでも匹敵できるってのは驚きだけれど。――ボクもIS自体の性能改造を視野にいれてみよう。
「どうどう? 箒ちゃんが思った以上に動くでしょ~!」
『ええ……まあ』
箒さんはいくらか戸惑いのこもった声で返事をしている。訓練機とは違って自分に馴染むためだろう。
「じゃあ刀使ってみてよ~!右のが
束さんのその発言から少しして、箒さんが雨月を構えて空に向けて突きを繰り出す。その突きにあわせてエネルギーが射出され、その一撃は空を穿った。ボク自身も驚きと興奮し始めているのを自覚した。
「いいねいいね~! 次はこれ撃ち落としてみてね~!」
束さんのその発言に合わせて束さんの隣にミサイルの発射台が出現し、かなりの量のミサイルを撃ち出す。そのミサイルは箒さんを追うけれど、箒さんが振った空裂の一振りで全てが撃墜された。
空裂からでたエネルギーはさっきの突きとは違った幅広の斬撃といった形で、自らを追うすべてのミサイルを呑み込んだ。
「やるな……」
「すげぇ……」
ラウラさんと一夏くんが感嘆の声を漏らす。ラウラさんもが認めるということでどれだけのものかが想像できるかと思う。
「う~んいいねいいね~! あはははは」
束さんがその結果を見て喜んだような無邪気な笑いをこぼす。それはあたかも子どものようで、とても天才科学者とは思えないような笑みだった、
「やれる……! この紅椿なら!」
――箒さん……?
「みなさんっ! 大変です!」
紅椿に対してそれぞれの思いを抱いていた、そんなボクたちの方向へと声が聞こえた。この声は――真耶先生かな?
「織斑先生ー!」
真耶先生が千冬先生のもとへと走って駆け寄る。息を切らせて走っているのと、その顔色から察するに随分急な用件らしいけど……
「こっこれを……!」
……? 真耶先生が千冬先生になにか携帯デバイスのようなものを渡し、千冬先生はそれを宙に投影する。
「特命任務レベルA……現時刻より対策を始められたし……」
特命任務……? しかもレベルはAだって? 特命は結構軍事機密なども関わったものだから相当なものであることが予想できる。それのランクがAともなると、特命の中でもさらに機密事項であるだろう。
「テスト稼働は中止だ! お前たちにやってもらいたいことがある」
ボクたちにやってもらいたいこと……。この会話の流れを考えるとその任務への対処だよね……。
「あれ? こちらの方は?」
今やっと気付いたようで、真耶先生が束さんの方を向きつつ千冬先生にそう問う。
「篠ノ之束だ」
「え? ……ええぇぇぇ!!」
呆けたような顔を見せてしばらく。自分の頭に染み込んだと同時に真耶先生の大声が響き渡った。
真耶先生……天然だなぁ。微妙にボクは温かな気持ちになりながらそんな様子を見ていた。
「2時間前、ハワイ沖で試験稼働にあったアメリカ、イスラエル共同開発第3世代のIS、『
みんながしんとしてその言葉を聞く。
「情報によれば無人のISということだ」
「無人……」
以前IS学園に無人ISが乱入してきたことがあったけど、その影響を受けているのだろうか。
「その後衛星による追跡の結果、福音はここから2キロ先の空域を通過することがわかった。時間にして50分後。学園上層部からの通達により、我々がこの事態に対処することになった。教員は学園の訓練機を使用して空域、および海域の封鎖を行う。よって本作戦の要は専用機持ちに担当してもらう」
「はっはい!?」
一夏くん……ボクたちが呼ばれてるんだから、そのくらいは予想してしかるべきだと思うけど……。
「つまり暴走したISを我々が止めるということだ」
「マジ!?」
「いちいち驚かないの」
鈴音さんの言うことももっともだよ一夏くん。ボクたち男が毅然としていないとね。
「それでは作戦会議を始める。意見がある者は挙手するように」
「はい。目標ISの詳細なスペックデータを要求します」
セシリアさんがそう意見を出す。確かに相手の能力がわからないことには作戦のたてようもない。とはいっても充分な機密であるようで千冬先生は渋面を作っていた。
「ふむ……だが決して口外するな。情報が漏洩した場合、諸君らには査問委員会による裁判と、最低でも2年の監視がつけられる」
「了解しました」
言い終わると画面にデータが次々と表示されていく。
「広域殲滅を目的とした特殊射撃型……わたくしのISと同じオールレンジ攻撃を行えるようですわね……」
「攻撃と機動の両方を特化した機体ね……厄介だわ」
攻撃と機動の特化……かぁ……。ある意味一夏くんの白式も該当しそうだね。機動力高いし。特化といえるほどじゃないかもしれないけどさ。
「この特殊武装がくせものって感じがするね…連続しての防御は難しい気がするよ」
シャルロットさんがそう言う。福音の
「このデータでは格闘性能が未知数……偵察は行えないのですか?」
「それは無理だな。この機体は、現在も超音速飛行を続けている。アプローチは1回が限界だ」
少し強めに1回の部分を強調して千冬先生は言った。これが意味するところは……
「1回きりのチャンス……ということはやはり、一撃必殺の攻撃力を持った機体であたるしかありませんね」
「うんうん……」
なぜか一夏くんが頷いている。……一夏くん。理解してないのかな? その一撃必殺の攻撃力を持った機体っていうのは間違いなく君のことなんだけど……。
「なに頷いてんのよ。あんたの事よあんたの!」
「おっ? えぇ!?」
え、えぇ……。一夏くんやっぱりわかってなかったの……?
「あんたの【零落白夜】で落とすのよ!」
「それしかありませんわね……ただ問題は……」
「どうやって一夏をそこまで運ぶか……エネルギーは全部攻撃に使わないと厳しいだろうから、移動をどうするか……」
「目標に追いつける速度を出せるISでなければいけないな……超高感度ハイパーセンサーも必要だな」
みんなが会話を進める中、急に慌て始めた一夏くんが口をはさんだ。
「ちょ、ちょっと待ってくれ」
ん? どうしたのさ一夏くん。
「俺が行くのか!?」
ボクたち一同は全員同じように呆れ顔を一瞬作ったものの、すぐに顔をもどした。
「「「「当然!」」」」
あの、一夏くん……いくらなんでも自分ぐらいしかその任につけないってことは自覚しようよ……。
「ユニゾンで言うな!」
「織斑。これは訓練ではない。実戦だ。……もし覚悟がないなら無理強いはしない」
一夏くんはごくりと息をのんだ。彼にも思うところはあるだろうし、断ることも考えられる。そうすると雰囲気が固くなったような気がした。
「……やります。俺が…やってみせます」
「よし。それでは現在専用機持ちの中で最高速度が出せる機体は?」
「わたくしのブルー・ティアーズの高機動パッケージを使えば……」
セシリアさんがそんな意見を出すけどそれじゃ駄目だ。――だからここでボクが意見を出す。
「……今回は箒さんが適任です」
「彩花?」
箒さん自身が驚いた顔をしている。確かに彼女にとっては自分が突然矢面にたつとは思いもよらなかったのだろう。
「箒さんのIS……紅椿は現行ISを上回る性能を持ちバランスもいい。ボクのISも調整によっては出せないこともありませんが、ボクはボクでしたいことがあるので……。それにセシリアさんのパッケージの到着と換装を待つより紅椿の調整を済ませた方が早いでしょう」
もちろん箒さんは初戦闘とも言えるため、不安なところは残るが……それを補ってあまりある性能を持ったISがある。それに――
「でっでもっ!」
「セシリアさん。絶対に君が換装を済ませるより、調整を済ませた方が速いんだ。それに今は束さんという人材もいるし」
そう。おそらくセシリアさんの高機動パッケージは今から用意するのだろう。だとすれば時間的余裕もあまり得られないし、最速でアクションをかけるにはこちらの方がいい。
あとは束さんが協力してくれるかだけど……
「あらあら~?」
ボクが言い終わったあたりで天井から声が聞こえる……って天井?
みんなが視線をやると天井の板が一枚外れて、大きなひらひらした物体が飛びおりてきた。
「とうっ」
すたっと着地して、数回手で埃を払うような仕草をすると、その物体――束さんは口を開いた。
「束さんの言いたいことを全部彩花ちゃんにいわれちゃったねぇ~。君、私の助手にでもならないかい?」
突然のことに頭が固まりかけるが、なんとか返答をする。
「あ、いえ……光栄ですけどIS学園の生活も楽しいので」
「う~ん。それは残念だね~。まぁとにかくそういうことなんだよ! 今回においては紅椿が適役! それに私が調整も済ますし、すぐ終わるよ~!」
ふぅ……。これで調整を済ます人の問題も解決した~。
「それでは作戦実行員は織斑と篠ノ之。任せたぞ」
「「はい!」」