絶賛後ろ向き状態
「んじゃあさっそく紅椿をいじろっかな!」
テンション高く束さんがそう言うのだけれど
「………………」
対して箒さんは無言。えっと……どうして無言なんだろう。
「んあー。もっと笑ってよ。ほらほら、作戦メンバーにも選出されたし、いいことずくめでしょ?」
「この顔は生まれつきなので」
「んー、そっかなぁ」
束さん!ボクも大いにその疑問に同意します!生まれつきなわけがないですよね~。というわけでボクが笑わせてみます。彩花いきまーす。
「……ん?さ、彩花っ!?ちょっ、やめっ!あ、あはははは!!」
「箒さんってば~、生まれつきなんてことないくせに~意地張ってるの?」
「おっ、お前にはっかっ、関係ないだろうっ」
「おお~。いいよいいよ彩花ちゃん!もっとやっちゃえ~」
ボクは束さんからの応援を受け更にヒートアップ!しそうなところで箒さんが怒っちゃった。
ビュン!と目の前を木刀が通過していく、どこから出したのかは相変わらずわからないけど、入手元は多分お土産屋だと思うんだ。
「さっ彩花……!」
「……ほ、箒さん落ちついて!ボクはおいしくないよ!」
「誰が食べるかっ!」
「ふむぅ。箒ちゃんも中々楽しそうだねぇ」
「彩花。その辺にしとこうぜ。というかなんでお前は今もそんなにいつも通りなんだ……」
「それはほら。今回出撃するのが箒さんと一夏くんで、ボクが入っていないからじゃないかな」
「くっそぉぉぉぉ!」
ふっふっふ、一夏くん。ボクに死角はないのさ!
ガツン!
そんな風に一夏くんと会話をして油断したところに木刀の一撃が入る。
「きゅ、急に止まるな!」
「そ、それはないよぉ……箒さん……」
「彩花ちゃんは面白いね~」
束さんから面白いとのお墨付きをいただきました!束さんも充分面白い人だと思いますよ?
「さって、そろそろほんとに始めようかなっ!…ふーむ、ぺたぺた。背部と脚部、それに腕部の展開装甲を推進力に回そうかねー。それ以外は支援攻撃モードでいいでしょ。うんうん、でははじめまーす」
束さんがそう言うと、周囲に光の粒子が集まり何かが現れる。
前腕部だけのパーツが浮いていて左右2つずつの計4つで、ISのアームアーマーに似ている。
「これは束さんのIS……?」
一夏くんが隣でそんな声を漏らすけど、これはISじゃないと思うなぁ。だからってなんなのかっていうのはいまいちわからないんだけどね。
「んー?違うよ、いっくん。これは私の移動型ラボなんだよ。ちなみに『吾輩は猫である(名前はまだ無い)』」
移動型ラボ……。なんだか面白そうだね。ボクの4つのコンソールもまあ似たようなものだけど、ちょっと違うかな。主にできることが。
「じゃあはじめるじぇい」
そして束さんは生身と機械の腕を使いつつ高速で作業を開始した。
その作業の中で異彩を放っているのが束さんが一切機械の補助などを受けたりせずに、作業をしていることだった。さすがにあれはIS製作者である束さんぐらいにしかできないと思う。ボクがやるにしてもISのことを完全にわかってないと無理そうだからきついね。
「やることがないならオルコットから高速戦闘のレクチャーを受けておけ」
隣で一夏くんがそんなことを言われている。
「緋桜宮には少し聞きたいことがあるからこちらにこい」
え。ちょっと千冬先生?ボクは今束さんの作業を目に焼き付けるのに忙し……
「返事は?」
「……はい」
ボクって将来尻にしかれるタイプ?展開装甲は今まさにボクが考えていた、バランス装備の完成系だからそういうのもしっかり見ておきたかったんだけど……。まあ戦闘でのデータを少し使わせてもらえば大丈夫かな?
「緋桜宮。さきほどお前が言っていた自分がしてみたいことというのは何だ?」
うん?ボクがしたいこと?……あー。そんなこともいったなぁ。
「ボクがしたいことはですね~。暴走したISを止めることです」
「?それは今やっているだろう?」
む。どうやら千冬先生と話が噛み合っていないようだ。なんだか毎回こんなことが起きている気がする。もはやボクの常時発動スキルだね!……嬉しくないんだけど。
「えっと……。物理的干渉によるものじゃなくプログラムに干渉して暴走を止めることです」
ボクのその言葉を聞いて千冬先生が驚いたような顔を見せる。そんなに驚くことなのかなぁ?
「……お前はそれが可能だと?」
若干千冬先生の声音が低くなる。ボクはその声に若干違和感を抱きつつも返答をする。
「はい。もちろん今のままでは不可能です。けど、一夏くんたちが接触して情報が入れば、ISのコア・ネットワークを利用して繋がることにより無理矢理解除に入ろうと思っています。といっても一夏くんたちが落とせばそんな必要はありませんから、あくまで保険ですね」
「緋桜宮……お前は……」
千冬先生のボクを見る目が少しおかしいように感じる。ボクに向けられた目でありつつもどこか他の人をみているというか……説明しづらい。なんだろうなぁ……
~織斑 千冬~
緋桜宮彩花。一体なんだというのだろうこいつは。まさか暴走した福音をプログラム的な攻撃で止めるだと?そんなことが可能だと誰が思える?たとえこの場にいる全職員が力を尽くしたところでそんな離れ業は不可能だろう。
(こいつは束と同じ……?)
私の頭の中に束の姿が浮かぶ。こいつはおそらくあいつと同じ次元……誰にもたどり着けない高みにいるのだろう。もしもこいつが束と同じようになることや、私と敵対するとしたら……。私はその時……。
「千冬先生?」
「あ、あぁ……」
内心私の心は随分とかき乱されている。あいつと同じような天才……いや、天災が他にもいるとはにわかに信じがたい。
「とりあえずボクのやりたいことはそれです。やらずに済むのならそれでもいいんですけどね~」
「わかった。わざわざすまなかったな」
「いえいえ~」
…………緋桜宮。お前はどこに行こうとしている?そして何をしようと……?
~緋桜宮 彩花~
うん。千冬先生との話も終わったから箒さんたちの方に戻ったんだけど、そのころには調整も終わってたよ。あぁうぅ~。
時刻は11時半。7月の空は晴れ渡り、容赦のない陽射しを地へと浴びせている。
といってもボクたちはモニターされている映像を室内で見ているだけだから、その陽射しの強さのほどがしっかりとわかるわけじゃないけれど。
そして一夏くんたちの声……会話が聞こえてくるのだけれど……。
ボクは千冬先生の方を見る。すると千冬先生もどうやらボクと同じ気持ちのようで、若干苦そうな顔をしていた。千冬先生はボクの視線に気づいたのかボクの方に振り向いてきて、お互いに苦笑を洩らす。その理由とは……。
「織斑」
『はい』
「どうも篠ノ之は浮かれているな。あんな状態ではなにかを仕損じるやもしれん。いざというときはサポートしてやれ」
『わかりました。ちゃんと意識しておきます』
「頼むぞ」
……と、こういうわけだ。今の箒さんは自分が専用機を手に入れてことを喜んでいるのか、どこか楽しそうな…浮かれているような状態を示す声音の言動を入れてくる。
……これじゃ、作戦の不安要素が増えちゃうよ……。
「では、はじめ!」
その言葉と共に紅椿が強力な加速を見せ、空へと上がった。
一夏くんを乗せた紅椿はしばらくの間飛翔し……目標を発見した。
「……見えたぞ一夏!目標に接触するのは10秒後だ!」
……ここからだ。ここからボクの戦いも始まる。