IS‐のんびり屋な天才‐   作:石っこ

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第26話

 海上200メートル。そこで静止していた『銀の福音』はまるで胎児のようにうずくまっていた。そんな福音が何かにきづいたかのようにふと顔を上げる。次の瞬間、超高速で飛来した砲弾が頭部を直撃、大爆発を起こした。

 

「初弾命中。続けて砲撃を行う!」

 

 こちら側のチームでそれを行ったのはラウラだ。ラウラは砲戦パッケージ『パンツァー・カノニーア』を装備しており、通常の装備とは違い八〇口径レールカノン≪ブリッツ≫を二門装備していた。

 

(敵機接近まで……四〇〇〇……三〇〇〇――くっ! 予想よりも速い!)

 

 福音が近付く間も砲撃を行っているものの、その半数以上を福音はエネルギー弾によって撃ち落としながら突き進んでいた。

 

 砲戦仕様は反動相殺のために機動との両立が難しい。そして福音がラウラに迫るが、ラウラはにやりと口元に笑みを浮かべ―

 

「――セシリア!」

 

 福音が伸ばしたその手は届くことなく、セシリアによって遮られた。今現在はセシリアは高機動パッケージへと換装を済ませており、ビットを塞ぎスラスターとして扱うことで機動力を上げ、下がった火力を大型BTライフルで補っていた。

 

『敵機Bを確認。排除行動に移る』

 

「遅いよ」

 

 セシリアの射撃を避ける福音を、また新たな機体が襲う。

 それは防御用のパッケージを装備したシャルロットだった。

 

『優先順位を変更。現空域からの離脱を最優先に』

 

「させるかぁっ!」

 

 海面が膨れ上がり爆ぜ、水しぶきを上げる。

 そこから飛びだしたのは紅椿とその背に乗った甲龍だった。

 

「離脱する前にたたき落とす!」

 

 福音へと接近する紅椿に乗る鈴が機能増加パッケージにより、強化された衝撃砲で福音を襲う。それはいつもと違い不可視の弾丸ではなく、今は赤い炎を纏っている。さらに増加され、四門となった衝撃砲は福音に勝るとも劣らない弾雨を作り上げていた。

 

「やりましたの!?」

「――まだよ!」

 

 衝撃砲を受けてなお、福音は機能を停止させてはいなかった。

 

『銀の鐘最大稼働――開始』

 

 福音は両腕を左右一杯に広げ、さらに翼も外側へと開く。――刹那まばゆいほどの光が爆ぜ、エネルギー弾の一斉射撃が始まった。

 

 

 

 

「――今!」

 

 そして最後のステルスモードに入っていた機体……ボクが福音の後ろをとる。

 刃を振り上げ、その翼に向かって振り下ろす。福音は射撃の方を済ませはしたが、こちらの攻撃を避けることは出来ない。

 

 ボクの振り下ろした刃は正確に福音の翼を斬り落とした。

 だが、片側だけの翼になりつつも福音はまだ圧倒的な性能を以てこちらへと応対してくる。

 

「――ッ!」

 

 ボクは慌てて離脱して、『高速仕様変化(ラピッドトランス)』によって、エネルギーシールドを展開し、一瞬の後に防御態勢へと入る。

迫りくるエネルギー弾を避けれるものはすべて回避し、残りをすべて弾く。

 

 そして福音の下に入っていた鈴音さんの攻撃。双天牙月による斬撃のあと至近距離からの拡散衝撃砲を浴びせる。――狙いは頭部に接続されたマルチスラスター≪銀の鐘≫

 

「もらったぁぁぁ!!」

 

 お互いに衝撃砲とエネルギー弾を浴びせつつも、鈴音さんは止まらず、深いダメージを受けながらも福音のもう片翼を奪った。

 

「はっ、はっ……! どうよ――ぐっ!」

 

 それでも受けたダメージは思いの他深く、鈴音さんはうめき声を上げる。

 

 そして――誰かが「勝った」と言おうとした時、変化は起きた。

 

 

海面が強烈な光の珠によって吹き飛ぶ。

 

 球状に蒸発した海の中心で、青い雷を纏った福音がうずくまるようにしている。

 

「これは……!? 一体何が起きているんだ……?」

「!? まずい!これは――第二次形態移行(セカンドシフト)だ!」

 

ラウラさんがそう声を発した瞬間、福音がかすかに顔を上げた。無機質なバイザーに覆われたその顔からは何の表情も読み取れないが、ボクはいちはやく構えてそれに続くようにみんなも構えた――けど、その対応は遅かった。

 

『キアアアアアア……!!』

 

 咆哮するような声を発し、福音はとてつもないスピードでラウラさんに飛びかかる。

 

「なにっ!?」

 

 あまりにも速いその動きにラウラさんは対応できず、ラウラさんは足を掴まれた。

――そして、切断された頭部から新たな翼……エネルギーの翼が生えた。

 

「「ラウラを……離せっ!!」」

 

 いちはやくボクとシャルロットさんが挟撃をかけて、解放させようとするけどボクは蹴りを繰り出されそれを避けるため距離をとり、シャルロットさんは刃を空いた方の手で掴まれた。

 

「よせ! 逃げろ! こいつは―――」

 

 その続きをラウラさんが紡ぐことはできずに、眩いほどの輝きと美しさをもったエネルギーの翼に抱かれた。

 刹那、エネルギー弾雨を零距離で食らい、ズタズタにされてラウラさんは堕ちていった。

 

「ラウラ! よくもっ……!」

 

 ブレードを捨ててシャルロットさんはショットガンを呼びだし、引き鉄を引く。

 いや、正確には引こうとした。完全にシャルロットさんが引き鉄を引ききる前に、福音から生えた小さなエネルギー翼から発射された、エネルギー弾がショットガンとシャルロットさんの体を吹き飛ばしたのだ。

 

「な、なんですの!? この性能……軍用とはいえ、あまりに異常な――」

 

 再び高機動による射撃を行おうとしていたセシリアさんの眼前に、一瞬にして福音が迫る。それは『瞬時加速(イグニッションブースト)』それも四か所による、爆発的な加速だった。

長大な銃は接近されると打つ手がない。銃身をあげようとするも、福音に横に蹴られそのままエネルギー弾の一斉射撃を受けて、セシリアさんは蒼海へと堕ちていった。

 

「私の仲間を――よくも!」

 

急加速して接近した箒さんは続けざまに斬撃を放つ。互いに高速での回避と攻撃を繰り返しながらの格闘戦。だが性能の差か、それとも気力の差か、徐々に紅椿が押していた。

 

「うおおおおおっ!!」

 

―しかし、現実は非情だった。箒さんの機体はエネルギー切れを起こして、急激にパワーダウンする。

 

 

「………………」

 

ドクン。

 

ボクの中で何かが脈打ったような気がする。

 

ドクン。

 

思考が焼き切れんばかりに加速される。

 

ドクン。

 

気がつけばボクは――

 

福音に無謀ともいえる突撃を仕掛けていた。

 

 

 

『!?』

 

福音は箒さんを掴んでいた手を放して、箒さんは落下していく。

救出も必要だけれど、あの程度だったらなんとかなる。最悪でもISがそういった事態にはならないようにしてくれる。

なら――ボクは全力を持って戦う。

 

 

12枚もの展開されたビットのようなエネルギーシールドを、さながらブーメランのようにして攻撃として扱う。そこまでの速度でもないそれを福音は避けるけれど、その先には複数のシールド。ヒュンヒュンと音を立てて福音を追尾していく。エネルギー弾で撃墜しようとしても、巧みにそのシールドは向きを変え、違う方向へと受け流す。

 

『危険。この機体の排除を優先』

 

バサリと翼を大きく開いて一斉射撃を福音は行う。

 

――36門から発射されたエネルギー弾の総数108発。その中回避可能な数は82発。もとから命中率が低いせいもあって、回避できる数は多い……!

 

ボクは繊細な軌道を描き、紙一重の差でいくつものエネルギー弾を回避。108発すべての軌道を読み、それに合った回避方法をコンマ単位で判断、制御して避けていく。避けきれないものは舞っているシールドで海へと流す。

 

それはさながら演舞のようで、幻想的な様子を映し出していた。

 

「ふっ!」

 

避けきったボクは再びシールドを動かす。このシールドは攻防一体。エネルギー防御を前提として扱っているため、実弾には弱いが今の状態では滅法相性のいい装備だ。

 

迫りくる盾を回避する福音。その高速の動きはとても捉えられるとは思えなかった。―だが

 

「チェック」

 

上下左右と同時にシールドが囲む。そのままシールドは命中して、福音にダメージを与えるはずだった。だが、福音はそのシールドの出来うる限りを掴み、さらには残りを蹴り飛ばし、あるいはエネルギー弾の掃射により破壊していた。

 

「そこまでは出来たっておかしくない」

 

ボクが呼びだしたのは以前使った振動する刀。今できたわずかな隙を狙い斬撃を叩き込む。

 

ギャリギャリギャリ!

 

「火力が足りない……!」

 

ボクの出した刀の威力では福音を起動停止させるには程遠い。このままでは持久戦となって、いずれは軍用でつくられた――さらに相手は第2次形態移行までしている――福音との差が出てくるだろう。

 

だが――

 

「俺の仲間は誰1人としてやらせねぇっ!」

 

刀を止められ、膠着状態に入ったボクと福音に強力な荷電粒子砲の狙撃が横入りした。福音への直撃コースだったのだが、直撃からそれを緊急でずらした福音には脱帽せざるを得ない。

 

ボクが抱いていた火力不足を補える……そして、ボクたちの強力な心の支えとなる存在―― 一夏くんが、新たな形態となった白式を纏って現れた。

 

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