それであの後てんやわんやで、なんだかんだあってあの男子生徒――織斑一夏というらしい――が世界初の男がISを起動した例として報道された。説明に適当な表現を使っているのは決してボクが馬鹿とか、そういうわけではない。ただ説明するのが面倒だっただけだ。また、軽く検査したらしいがボクたちの他に男性でISを起動させられる人はいなかったらしい。
あ、ちなみにもう1人の男性起動者であるボクが特に注目されることはなかった。
――容姿のせいであろうことはいうまでもないが、あまり理解していない――と思いきや、
「多分この容姿のせいなんだろうなぁ」
とそういいつつ髪を手櫛でさらさらと梳かす。――無駄にこの仕草が小動物的な意味で様になっているのだが、さすがにそれは本人では気づけない……
とはいっても容姿だけでなく織斑一夏の特殊性のせいも勿論ある。織斑一夏はブリュンヒルデとなった織斑千冬の弟らしいので、それもネタとして良かったのだろう。
その時は織斑と聞いてボクの胸が鼓動を早めたのがわかった。別に惚れているとかそういうわけではなく、ただボクの目下の興味の対象になっているISについて、使用した感覚はどうだったかとか、ボクに強烈な印象を与えた白騎士だったとかのせいだ。
白騎士だったということを知っているのは然程驚くことでもない。調べただけだ。かなり力を尽くしたような気もするけど。
数日の後にボクのことも結局報道された。容姿のせいでというのは半分当たりで半分はずれといった形だった。どうやらボクのことを見た職員は完全にボクのことを女性と思ったらしく、それで今まで話題にのぼらなかったということらしい。ボクがIS学園入学希望を正規のルートに変更したおかげで気づいたとか。用紙にはしっかり男と書いてあるからね。
…信用されてない気がするけれど。
適当に支度を済ませ、IS学園に向かう。とりあえず試験だ。戦闘試験? というのをするらしい。ボクはまだ触っただけでISに乗った事はないのでそれはそれでわくわくする。
といっても何よりも眠いという感情が今のボクは先に立ってるけど……。
ボクは基本的にいつも眠たそうにしている……らしい。実際ボクは眠いと大体常に思っているからそれは正しい。またその睡眠欲に逆らうようなことはあまりしないし。
試験会場についたのでISに乗りこみ、試合場へいく。すると試験官のような人がボクに話しかけてきた。
「あなた……本当は女の子じゃないんですか?」
「嫌ですよ先生~。ボクは男です~」
眠いのでボクの声は随分と間延びした声になってしまう。試験官の人は緑色の髪の色をしていて、眼鏡をかけており雰囲気がドジをしそうな感じを出している。失礼かもしれないけれど。
「そうですか…。む? なんか変な感覚が……。まるで憐れまれているような…? まぁいいです。では! 緋桜宮さんの試験を始めます!」
そう試験官が言ったのでボクはコンソールを開く。とりあえず機体のチェックを素早くその場ですまし、ステータスを確認。どうやらこのISは『
初心者用の訓練機だからなのか、防御……つまり装甲のステータスが高い。それをみているボクはいつの間にか少し苦そうな表情をしていたらしく試験官の人に心配されてしまった。
意識を眼前に戻すとボクは軽く謝り再開しても大丈夫との意を告げる。そして試験官の人から迫りくる銃弾を避けていった。
そうそう。相手の機体は『ラファール・リヴァイヴ』という第2世代型量産機だ。試験官の人用に多少なりとも改造は加えられているが、基本はそれである。
このラファールはとにかく武装の多さによりオールラウンダーなところが長所で、この打鉄では少々……というかかなりきついと思う。オールラウンダーといっても突出したところがないといわれて、嫌う人もいるみたいだけど。
この打鉄には強力と言える程の遠距離武装がない。あるといってもミサイルくらいだ。
ボクが初めてISを動かすのに、攻撃を耐えられているのはひとえに動体視力が高く、さらに脳から行動に移すために各神経に送られる指令伝達が非常に早いためだ。並んでくる文字列を認識して、さらなる文字列を打って
それでも隙をつくることはあり、時折シールドエネルギー(SE)が削られている。
ボクは自分に出来ることを活かそうと考え、ミサイル及び機体制御をマニュアルに変えた。
――姿勢制御の方法はもう掴んだ。ミサイルの誘導をボクが指定すれば避けられはしない!
そうしてボクは宙にコンソールを出し、ミサイルへの指令を入力しつつターンを織り交ぜて銃弾を避けていく。試験官が驚いたような素振りを見せた気がする。多分こちらが初心者ということで舐めていたのだろう。
そう考えて間もなく、ボクの機体からミサイルが発射されラファールを追いかける。勿論簡単に射線からは避けられるが逃がさない。ボクは2基のミサイルへ高速で指令を打ち込んでいく。そしてミサイルは軌道を変え、正確にラファールを追いかけ始めた。
何度か回避して振りきれない事に気づいたのか試験官は驚愕した表情を見せていた。そして顔色を元に戻し、銃弾をミサイルに向かって撃った。って……え……。
これは想定外だった……コンソールの小さな画面に表示される消失(ロスト)の文字。さすがに操作で銃弾を避けるのは不可能だ。
あまりに予想外の状態に呆然自失となっていたボクは接近戦に持ち込まれていたことに、試験官の人が視界一杯にまで広がって見えてから、ようやく気付いた。慌てて後退しようとするが、もちろん逃がしてもらえず刃が迫った。そして……
ギィンッ!
とわずかに高い音を立てて刃がボクのすぐ目の前で弾かれる。そしてSEの部分に表示されている数字が明らかなほどに減っていくのが見える。
つまり刃はシールドに弾かれたということだろう。それをわかっても、頭はまだ呆然としたまま動かず、ブザーが鳴ってボクはそこで負けたことを理解した。