IS‐のんびり屋な天才‐   作:石っこ

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第27話

「彩花。悪いんだがもう少しだけ粘っててくれるか?」

 

一夏くんはそんな問いかけをボクにしてきていて。

 

「別に大丈夫だよ。随分待たされたから今更少しくらいね~」

 

「うっ……!」

 

「ごめんごめん嘘だよ。じゃあ少しの間ボクが引き受けておくから。でも出来るだけ早くしてほしいかなぁ~」

 

「おう。……彩花。お前なんかいつもと違うな」

 

「そうかな? ま、早くいってきなよ」

 

会話をそこで切ってボクと一夏くんは再び別れる。どうやら一夏くんは箒さんの下へと向かったらしい。

 

「さって。福音さん。もう少しだけボク1人と付き合ってもらおうかな~」

 

ボク自身に気持ちの余裕も出てきたせいか、口調が少しのんびりとした本来の口調に戻る。そんなボクにはお構いなくさっきまで通りの激しさで、福音は攻撃をしてきた。

 

「エネルギーシールドはなくなったけど……さらに精密な回避と剣で弾けば問題ない」

 

完全に無駄を省いた回避と振動する剣で無理やりエネルギー弾を弾く。

瞬間。福音はボクの目の前まで迫ってきていた。――ここでボクまで堕ちて一夏くん1人に戦わせるわけにはいかない――ボクは剣を上へ投げ、福音と近接格闘に入る。

 

 その装甲一切を削られたボクの機体は、福音の無茶苦茶なスピードの拳打にも応対するレベルの動きを可能としてみせた。だが、福音がする近接格闘はオマケのようなものだ。福音はボクが繰り出す拳を両手で掴み、翼を広げてエネルギー弾を撃つ体勢に入る。

 

「……1回しか通じないだろうけど…さ」

 

そして今。上空に放り投げた剣がちょうど福音に当たるように落下してきていた。これが当たるように誘導しながらボクは戦っていたのだ。

剣が福音の頭部に直撃。けれど、ただの落下エネルギーだけでは大したダメージを生み出せるはずもない。少しのダメージをあたえ、福音に距離をとらせる程度だった。

 

「武装はいくらでもあるけどね」

 

武装の切り替えどころか、戦い方の変化までもを可能とするボクの機体には充分な量の武器が登録されている。即座にロングレンジライフルを呼びだし、構える。

そして――

 

「お帰り」

 

「ああ。待たせたな」

 

一夏くんが戻ってきたんだ。これでボクたちの戦いも勝つにしろ、負けるにしろ――

 

「じゃあ、行くぜ!」

 

一夏くんの掛け声と共に、最後になるであろう戦いが始まった。

 

 

 

 

福音は相も変わらず、圧倒的な射撃性能でボクたちを襲う。

 

「彩花! 俺の後ろに入れ!」

 

「? 了解!」

 

 ボクは一夏くんの指示通り後ろへと入る。頑張ればよけれないこともないと思うけど、きっと効率的な方法があるのだろう。

 

「――雪羅。シールドモードへ切り替える」

 

一夏くんの一言でさっきまでクローになっていた武装がシールドへと変化し、福音の放つエネルギー弾を打ち消す。――これって……零落白夜のシールド……? そして形状の変化……。もしかしてこの武装は多機能武装なのかな。つまりは荷電粒子砲もこれか。

 

そう軽く判断した後、ボクと一夏くんが連携で福音を追い詰め、攻撃を与えるけれど決定打が出ない。

 

「くそっ!」

 

『状況変化。最大攻撃力を使用する』

 

――まずい。ボクと一夏くんが互いにそう感じる。そして一夏くんがその直感通りに動きだそうとしたところで

福音が翼を開き全方位に対して嵐のようなエネルギーの弾雨を降らせる。

 

「何やってんのよ! あたしたちは腐っても代表候補生よ? 余計な心配してないで、さっさと片づけちゃいなさいよ!!」

 

(――それでも!それでもボクは――)

 

一夏くんは今の言葉で踏みとどまって再度福音に攻撃を仕掛けに行ったが、ボクは全力で弾を弾いていく。鈴音さんの言う通り余計な心配かもしれない。けれど、こうせずにはいられなかった。

 

「ああああぁぁぁぁぁ!!」

 

機体の速度を限界まで上げ、接近したエネルギー弾を即座に弾いていく。

 

(まだだ!まだ――足りない!)

 

いつかに感じたような視界が紅く染まるような感覚。それとともに加速される思考。

 

呼びだし(コール)。ボクは幅広で長大な大剣を出した。その剣を一振り、二振り。半ば振るというより、振り回されていると表現した方が正しい気がするくらいの振り方で振っていく。これは重武装用の装備なので、今の細身なフォルムで扱うには少しきつめだ。だから振り回されるようになりながらも、しかし狙いは的確にその弾雨を弾いていく。

 

「さ、彩花……」

 

誰かが呟く声が聞こえる。けれど気にしている暇はない。弾けるだけの弾を全て弾いてボクは息をついた。

 

「はぁっ……はぁっ……」

 

長大な剣を消失させる。展開していると重さで下に引っ張られるためだ。無茶な機動をしたせいで、かなり疲労した。福音の方を見れば一夏くんの動きもなんだかぎこちなく焦りの色が見える。

 

(まさか――エネルギーが……!?)

 

「一夏!!」

 

そんなボクの抱いていた懸念と一夏くんが抱いていたであろう焦燥を吹き飛ばすように、紅い機体――紅椿をまとった箒さんが現れた。

 

「箒!? お前、ダメージは――」

 

「大丈夫だ! それよりも、これを受け取れ!」

 

そう叫んだかと思うと、一夏くんの纏う白式が発光した。

 

「これは……エネルギーが回復!? 箒、これは――」

 

「今は考えるな! いくぞ!」

 

その箒さんの掛け声でボクたちは再び動き出す。

いくらボクがほとんど攻撃を受けていなくてエネルギーが減っていないといえど、無理な運用でやはりある程度は減っているうえ、身体的な疲労は隠せない。このチャンスを生かせなければ勝機はないだろう。

 

 

「うおおおっ!」

 

一夏くんが初めに巨大にしたエネルギー刃で横薙ぎをする。それを福音は一回転して回避した。

 

「箒!」

 

「任せろ!」

 

一夏くんの方へと向けられた翼を、紅椿の二刀が並び一断の斬撃で断ち切る。

 

「逃がすかっ!」

 

続けてボクが振動する剣を呼びだし、一刀のもとにもう片方の翼を断ち切る。

 

そして一夏くんが最後の一突きを繰り出そうとし……福音は体の全てのエネルギー翼を一夏くんに向けた。

 

「おおおおおっ!!」

 

一夏くんは全身にエネルギー弾を浴びつつも、スラスターを最大出力まで上げて福音へと刃を突き立てた。

 

「はぁっ、はぁっ、はぁっ……」

 

それで決着がついたと思ったら、ISスーツの消えた操縦者が海へと落下していく

 

「――ッ!」

 

ボクは瞬時加速(イグニッションブースト)を発動し、高速で接近、そして操縦者を抱き上げる。

 

「……無人じゃなかったのかな…?」

 

情報に食い違いがあったようだけど、これで福音の騒動は終焉を迎えた。

 

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