IS‐のんびり屋な天才‐   作:石っこ

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のんびり日常っていいですよね。和みます。
読んでくれている皆様にものんびりとしていただけたら幸いです。


第32話

「それにしても誰も連絡くれないとかどういうことだ?」

 

 一夏くんはそんな風にぼやく。というのも……

 

「仕方ないだろう、今朝になってヒマになったのだから」

「そうよ。それとも何? いきなりこられると困るわけ? エロいものでも隠す?」

 

 とは箒さんと鈴音さんの言。さらに今ここにいるメンバーはこのふたりだけではなく。

 

「ご、ごめんね。うっかりしちゃってて」

「わ、わたくしは、ケーキ屋さんに寄っていて忙しかったので」

 

 シャルロットさんとセシリアさんもいる。それにボクたち3人と一夏くんを加えて……合計8人もいるね。凄い人数だ。

 

 確かにこの人数がなんの連絡もなく押し寄せてきたら、迷惑する人が大半な気もするけど。って、ケーキ? もしやケーキといったかい? 思わず部屋の中の匂いをかいでしまうボク。いや、甘いものには目がなくて…… 

 

すんすん

 

「さ、彩花さん!?」

 

 あ、ホントになんか甘い匂いがする。色々なものが混ざり合っているから特定はし辛いけど……とても上品な香りでおいしさのレベルがある程度想像できる。きっと人気のお店なんだろうなぁ。ボクも食べたかったなぁ。それとケーキは3種! 混じり合っている匂いの種類的にはそのあたりだと思う!

 

「あ、当たってますわ……」

「すごいね彩花くん……」

 

 セシリアさんとシャルロットさんの反応を見るに、どうやら当たっているらしい。ところでどこら辺が当たっているのだろう? 人気店というところか3種というところか? あるいは両方かもしれないけど。

 

「彩花。まずはそのヨダレを拭こうぜ」

 

 一夏くんが唐突によくわからないことを言ってくる。ヨダレ……?

 はっ! 気付けばボクは少しばかりヨダレを垂れ流していたようだ。はしたないね。

 

 ちょっと恥ずかしさで赤面しながらも、ふきふきとティッシュで口元を拭ってゴミ箱に入れる。っと、そういえばボクも来た理由をいっておこうかな。

 

「ボクはだね……」

 

 来た! ボクの才能を発揮する場所が来たよ! ……といってもそれほど特別なことをするわけじゃなく、ただ、理由を文字にして打ってその画面を投影するだけだったけどね。

 

「え~っとなになに……? 前略 一夏様……近頃はどうお過ごしでしょうか……って読みづらいんだが……」

 

 え? という思いを込めて周りを見れば、みんなが頷いているので仕方なく、本当に仕方なくボクは口頭で言うことにした。

 

「要約すると、一夏くんが実家にいると聞いたから、遊びにきただけだよ!」

「それだけかよ! なんでこの文章は原稿用紙6枚分くらいあるんだよ!」

「え……それは……お茶目?」

「普通にしてくれ!」

 

 一夏くん、いいツッコミだね! そのままの一夏くんでいてくれるとボクは嬉しい。その一夏くんは息をついていて少し苦しそうに見えるけど……誰だ! こんなことをしたのは!

 

「さーやちゃんだと思うけど……」

「同じくだ」

「ボクはなにもしてないでしょ!?」

 

 本音さんとラウラからきた、非難の色を持った声に反論して他の面々を見たんだけど……気がつけばここは敵陣地(アウェイ)だった。みんな酷くない?

 

「え~っとー、私が来た理由は~、なんだか面白そうだったから~かな?」

 

 うんうん。ボクもほとんどそんな感じだよ本音さん! ボクが激しい同意を心の中でしているのに対して、その言葉でボクたちが来た時にはもういた4人はがっかりした様子を見せてるけど……なに? ボクたちには居てほしくないって意思表示なの?

 

「私は……そこのふたりに強引に連れられてだな……」

 

 とラウラ。その手はボクと本音さんをしっかりと指差していて。えー、それはないよラウラー。

 

「ラウラだって途中でテンションあがってたじゃないかー」

「そうだそうだー」

「なっ!? た、確かに教官の家にいけるのがうれしいとは言ったが……」

 

 途端さっきまでのげんなりした感じが嘘のように、ボクたちの反論に狼狽し始めるラウラ。どうだ。ボクたちはこの耳でしっかり聞いてたんだぞー

 

「たんだぞー」

 

 本音さん心を読まないでください。

 

「ま、まぁよくわからんが仕方ない……のか? ……ところで午後はどうする? みんな室内っつーか、うちの中がいいんだよな?」

「え? ボクはどっちで――むぐ!?」

 

 一夏くんの問いかけに返事しようとしたら、急に鈴音さんに口を抑えられた。なになに!? 何が起きたの!? 

(……察しなさいよ! 彩花!)

(……? 何を?)

 

 アイコンタクトで会話するけど、鈴音さんがなにを言っているのかさっぱりわからない。なんて言っているのか、はわかるんだけど、どうしてか、がわからないんだよね。

 

「?」

 

 ほら、一夏くんだって不思議がってるよ? 鈴音さんは一体なにがいいたいのさ。

(っ~~~~!! とにかく! 彩花も中がいいって言っておきなさい! いいわね!?)

(う、うん)

 

 鈴音さんがあまりにも鬼気迫る表情なのと、ボクたちのやりとりを鈴音さんの後ろから見ている、セシリアさんや箒さんの圧力を感じたのもあったから、頷かざるを得なかった。

 というわけで一夏くんの方に向き直り一言。

 

「ぼ、ボクも中がいいな」

「そうか? んー、じゃあお茶でも入れるからちょっと待っててくれ」

 

 はぁぁぁ。言い切ったぁ~。

  一夏くんがお茶の準備をすると言ったので あ、ボクも手伝うよと言おうとしたんだけれど、一瞬の圧力を感じてボクは思いとどまった。その合間に、

 

「あっ、僕手伝うよ」

「ん? そっか。悪いな、客なのに。それじゃあテーブルの片付けを頼む」

「うん♪ 任せて」

 

 と、そのやりとりをぼんやりとみているボクたち。まさかさっきの圧力はシャルロットさん? いや、まさかね……。とかなんとか思っていたら突然鈴音さんとセシリアさんが立ち上がって

 

「あ、あたしも手伝うわよ!」

「いや、さすがにそんなにいらないと思うよ?」

「ほ、本来ならわたくしの役目ではありませんが、ここは力を貸して差し上げますわ!」

「役目じゃないなら別に加わらなくてもいいと思うけど」

「彩花 (さん)うるさい(ですわ)!」

「ご、ごめん」

 

 なぜか怒られるボク。え? ボクってそんなにおかしなこと言った? 怒られるようなこと言った? ……うぅぅ……理不尽だよ……。ボクを慰めてラウラー!

 

「な、なぜ私の方へ来る!?」

 

 突然の急展開に見るからに狼狽するラウラ。突然さがウリの緋桜宮彩花でございます!

 

「いや~ラウラってば黒猫さんだし?」

「ここでその話題を引っ張るなぁぁぁ!」

 

 ラウラに猫の話題を出したらちょっと怒られた。ついでに逃げられた。仕方ないのでボクは本音さんを頼ることにしました。

 

「本音さーん!」

「お~、よしよし~」

「あぁ~うぅ~」

 

 ばふっと本音さんに抱きとめられて、撫でられるボク。それが結構気持ち良くて微妙な声を出してしまった。そしてその光景に合わせて、ごくり と誰かの喉を震わせる音が聞こえてきたような気が……? いや、どうでもいいことだと思うけどね? つい洞察力が有り余ってしまったものだから。

 

 そして、ふと鈴音さんとセシリアさんの方を見ればやっぱりというかなんというか、断られていたようで。うーん、無理だってボクは先に教えてあげたつもりだったのになぁ。

――無論わかりづらい表現ではあったが――

 

 シャルロットさんが手伝ってくれたおかげで後片付け(ケーキの!うらやましい)からお茶の用意までつつがなく進み、それから15分後にはみんながテーブルでくつろいでいた。

 

「おりむー、この暑い中で熱い緑茶なんだ~」

「おう。まぁちょっとしたこだわりみたいなもんなんだ」

「へぇ。ボクはやっぱり温度は気候に合わせたい派かなぁ~」

 

 一夏くんのこだわり。食後は熱茶。うん、なんかどうでもいいことを言った気がする。あっ、でもどうでもいいなんて言ったら一夏くんがかわいそうかな?

 

「……よくわからんが誰かに憐れまれてる気がする」

「はぁ?」

「いや、何でもない。……それでこの後はどうする? うちはみんなで遊べるもんとかないんだが」

「まー、そういうことだろうと思って、あたしが用意してきてあげたわよ。はい」

 

 と言って鈴音さんが差し出した紙袋には様々なカードゲームとボードゲームが溢れていた。具体例を挙げたいのは山々なのだけれど、一夏くんが中身を覗いているからよく見えない。

 

 次々に他の面々が紙袋の中を覗いて、やいのやいのと盛り上がる。ボクはのんびりみんなが掃けるのを待ってたけど。ちなみに一夏くんはなんだか人生の先達のような達観した目でその様子を眺めていて……

 

「大丈夫一夏くん? なんだかすごく雰囲気がお年寄りっぽいよ?」

「ぐっ……! そ、そんなに年寄りくさかったか?」

「うん」

 

 答えると一夏くんがずーんと沈んだ様子を見せる。あれ? 悪いこと言っちゃったかな……。

 

「はぁ、じゃあまずは全員でやれそうなやつから行くか」

 

 そういって一夏くんが取り出したのはバルバロッサというゲーム。

 

「ほう、我がドイツのゲームだな」

 

 ドイツ国旗を見つけたラウラが少し嬉しそうにしている。ラウラはずっと軍人だったからこういう遊びの経験は乏しいんだろうし、楽しんでくれればいいんだけどね~。って、ボクもなんだかお年寄りっぽいかな?

 

「あ、私は見てるね~」

「あれ? 本音さんは見学?」

「うんうん。私は見てる方が楽しいからね~」

 

 なるほどー。確かに見てて面白いという気持ちもわかる気がする。少しばかり蚊帳の外っていう雰囲気にはなるかもしれないけど、それでも外から見ると色々なことに気づけるというもある気がするし。

 

「っと、彩花もいるか? カラー粘土」

「うーんと……ボクはとりあえずゲームには参加しないけど粘土だけもらってもいい?」

「あいよー」

「粘土だけで何する気よ……」

 

 若干鈴音さんに呆れの視線で見られた。えぇ……そんな目で見なくてもいいじゃないかー。鈴音さんだって子供のころに粘土遊びってやんなかった? ちなみにボクはしたことない。だからちょっと楽しみだったり。

 

「まぁいいけどね。とりあえず後で彩花が作ったのも判定するから」

「あ、うん。わかったよ」

 

 どうやらボクの作品もみんなに見せて当てられることになるらしい。ゲーム自体には参加しないわけだけど、せっかく作るんだからそういうのがあっても確かに面白いよね。

 

 こねこねこねこね

 

 うーん。ちょっとここら辺のでっぱりが甘いかな? あ、ここら辺を調整すると対比としてイイ感じになるかも。

 

 こねこねこねこね

 

 せっかくカラー粘土なんだし彩色もしっかりとしたいような気もするね。えーっとここら辺は桃色で……って桃色はないか。なら赤と白を混ぜて……

 

 こねこねこねこね

 

 木の質感もできれば表現したいな。ということは粘土の表面に少し水を塗ったりして、濃いところと薄いところをわけるとか?

 

「うわぁ~さーやちゃん凄いね~」

 

 本音さんが褒めてくれる声が頭の片隅に聞こえたけれど、今は粘土に集中。

 

 

・・・・・・・・・・

 

 

「さて、彩花の方はどうなってんだろうな」

「む? 嫁も作っているのか?」

「へぇ。彩花君の作った作品かぁ。僕も興味あるなぁ」

「ま、わたくしのものには及ばないでしょうけど」

 

 と、最後のセシリアの言葉には皆が(お前が言うか…)と思っていたが、さきほど自信満々だった様子を思い浮かべると、とてもじゃないがそんなことは言えなかった。

 

 ちなみにセシリアが作ったものはイギリスで、本人の口から答えが出るまでにでてきた回答は、『潰れたジャガイモ』『原初細胞体』『ぐちゃぐちゃのピザ』『藻』『ボロ布』『ケガをした犬』『ジャンプ中の猫』である。……つまりはよくわからない造形だった。

 

 と、そんな回想を止めて一夏たちは、何かをやり遂げたようなきれいな笑顔をみせている彩花のもとに近寄った。本音もなぜか彩花と一緒に達成感にあふれる顔をしている。理由はさっぱり不明だが。

 

「「「「こ、これは……」」」」

 

 全員が動揺しつつ、一斉に息をのむ。そして大きく息をすって一言。

 

 

 

 

「「「「「何をどうやったらこんなものができあがるの!!??」」」」

 

 

 

 

「ほぇ?」

「うん?」

 

 彩花たちはどこ吹く風といった様子でどこか遠い視線をしている。この達成感溢れるふたりを邪魔するのは若干ためらわれたが、あまりにも気になるのでいかないわけにはいかなかった。……なぜ本音が達成感に溢れているのか本当に甚だ疑問ではあったが。

 

「これ……本当にどうやって作ったんだ?」

「え? えーっと、普通に粘土をこねたり凹凸を頑張ってつけたり、水を付けた指で粘土をなぞったりして濃淡をつけてみたんだけど……」

「「「「こいつ本物だ!!」」」」

 

 全員がもう一度彩花の作った桜を見る。そして感嘆。彩花の作った桜は本物のそれと比べても遜色がない……というほどではないが、現実のものとそう差を感じないレベルだった。

 

 幹の表面にある多少でこぼことした感じから、桜の花をひとつひとつ表現する繊細さまで、そのどれもに全力を込めているのが伺える。

 

「本当に無駄な才能ばかり持ってるわねー、あんたは……」

「えへへ、そうかなぁ~」

 

 鈴が言った言葉に思わず にへら~とした笑みをこぼしてしまう。

 

「……彩花。それ褒められてないと思うぞ」

「そうなの!?」

 

 と思いきや一夏からはいったツッコミに彩花は驚いたような顔をして口元を押さえている。だが、顎に指をあてて少し考える様子を見せたかと思えば口を開いた

 

「あ、でも一夏くん。ボクは褒められていると判断したからそれでいいんだよ!」

「まぁお前がいいならいいと思うけどな」

 

自分自身で無駄な才能と公言しているので、別にそれでもよかったのだろう。彩花は笑みを再びつくるとそれを深めて喜んだ。

 

 

 

 

 

~緋桜宮 彩花~

 

 

「あっ、そういえば一夏くんたちの部屋ってどこにあるの?」

 

ボクは粘土も作り終わったし、ちょっと気になったので訊いてみた。ちなみにボクの粘土はもちろん壊すには壊すんだけど、とりあえず片付けの時間まで放置しておくことになった。なんでも壊すのがもったいなく見えるからだとか。

 

「ん? 俺の部屋か? それなら階段を上った先にあるぞ。ちなみにその近くにあるのが千冬姉の部屋だから、入るなよ? 入ったら殺される」

「はーい」

 

 一夏くんにも情報をもらったしボクは立ち上がり部屋を出る。

 

 

 

 ……ところで、ボクの発言をもう一度よく思い出して欲しい。いや、特に強い理由があるわけじゃないんだけど。ボクが言ったこと。それは一夏くんたち(・・・・・・)と言ったんだ。つまりはその中に千冬先生の部屋も含まれるわけで……。何が言いたいかと言うと、もちろん千冬先生の部屋も入りますよー! ってことなんだよ!

 

「えーっと。あっちが一夏くんの部屋で……こっちが千冬先生の部屋かなぁ? じゃぁお邪魔しまーす!」

 

ガチャリとドアを開けて部屋の中に入る。

 

「あ、違った。この部屋一夏くんっぽい」

 

 と思いきや、すぐその部屋を出たのだった。ボクが一夏くんの部屋をしっかりみなかった――もとい後回しにしたのは理由がある。今、千冬先生の部屋を先に見なければいけないと本能が言っているんだよ!

 

「じゃ、今度こそお邪魔しまー……」

 

ダンッ!

 

「……うん?」

 

 階段の方から聞こえてきた異音についそちらの方を向く。手はドアノブにかけたままで。

――するとそっちには鬼……じゃない。悪魔……でもない。修羅……あぁ違う! 千冬先生がそんな気迫を放っていたから錯覚してしまった。

 

「奇遇だな緋桜宮……。貴様もしや私の部屋に入ろうとしていたか?」

 

 だらだらと冷や汗が流れているのが自覚できる。この場合どういう返答をしたらいいのか。千冬先生の瞳はボクの考えを見透かしているようにみえる。嘘をつけば――けれど、これはハッタリで嘘をつけば逃れられるかもしれない……! どっちだ、どっちにすれば!

 

「ほう、ダンマリか? ならば私の部屋に入ろうとしていたと判断するが」

「はいっ! 実は入ろうとしてました!」

 

 あ、あれ? お、おかしいなぁ……。嘘をつくつもりだったんだけど、気がつけば本当のことを……。と思ってたら千冬先生からの気迫がやわらいだ。

 

「そうか」

 

 やった! もしかしてボク正しい方選んだ!? さすがボク! 自動で正しい方選ぶなんて!

 

ガスッ!!

 

「馬鹿者が」

「……うきゅぅ……」

 

 そもそもどちらを選んでも失敗だったようだね……

 

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